情勢の特徴 - 2019年5月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「建設中の整備新幹線の投資効果が着工前の見込みより低下している。人件費や資材費の上昇で建設コストが膨らんでいることなどが理由だ。国土交通省による最新の試算では、九州と北陸で建設中の区間の費用対効果は投資に見合う目安とされる『1』を下回った。全線開通で大きな効果が見込めるとして工事は続く見通しだが、専門家からは着工条件の甘さを指摘する声が出ている。整備新幹線の着工には安定財源を確保することや、効果が費用を上回ることなど5つの条件がある。効果は移動時間の短縮による利便性の向上や運賃収入の増加などから算出し、建設や維持にかかる費用を上回ることを目安とする。両新幹線は着工前にはこの条件を満たしていた。ところが最新の試算では、効果が費用を下回る例が出てきている。最新の事業評価では北陸新幹線の金沢-敦賀(福井県)の投資効果は費用に対して0.9、九州新幹線西九州ルート(長崎新幹線)の武雄温泉(佐賀県)-長崎は0.5にとどまる。2012年の着工時にはどちらも効果の方が大きいことを示す1.1だった。」(『日本経済新聞』2019.05.16)
●「国の2020年度予算編成を巡る社会資本整備関係の議論が本格的に始まった。財務省は16日の財政制度等審議会(財政審、財務相の諮問機関)財政制度分科会歳出改革部会に提出した資料で『将来人口の減少から、インフラの費用対効果(B/C)を算定する上での効果が減少する』と指摘。人口減少を踏まえたインフラの集約化・撤去や、将来世代の負担とニーズに見合った効率的な維持管理・更新といった方針を示した。」(『建設工業新聞』2019.05.17)
●「2020年東京五輪・パラリンピック期間中の渋滞対策を検討している国や東京都が、首都高速道路の通行料金を日中に1000円上乗せる案を軸に調整していることが18日、分かった。都などは今夏、民間企業にも呼びかけて混雑緩和の試行実験を予定しており、その結果も踏まえて上乗せ額を決める。対象は会場へのアクセルで交通量の増大が見込まれる首都高中央環状線の内側で、早朝から午後10時を想定している。これまで国は上乗せ額を500~3000円の幅で流入車両の抑制効果などを試算。1000円ならば利用者の負担を抑えつつ、交通量を抑制できるとみている。経済活動や公共交通に配慮して事業用のトラックやバスなどは対象外にする。」(『日本経済新聞』2019.05.19)
●「日米欧の先進国で現金流通高が急増している。クレジットカードなどを使うキャッシュレス決済比率の高い国も含む各国・地域で5年間に2~4割増えた。預金金利の低さといった金融環境が原因で現金を手元に置く傾向が強まっている。預金に比べて当局が捕捉しにくいため、脱税などの不正に使われている恐れもある。…家庭や企業に出回る現金流通高は国内で18年までの5年間に22%増え、115兆円となった。日本は現金志向が強い『キャッシュレス後進国』ともいわれるが、現金流通の急増は日本だけで起きている現象ではない。米国はカード決済の国内総生産(GDP)比率が32%と日本(10%)の3倍だが、現金流通の伸び率は18年までの5年間で40%に達した。英国はカード決済比率が46%とさらに高いが、現金流通は5年間で22%拡大した。ユーロ圏はカード決済比率が16%、現金流通の伸びが29%だった。」(『日本経済新聞』2019.05.27)
●日本中どこでもインターネットを通じて注文でき、宅配業者が短時間で届けてくれる便利な時代…。ネット通販の市場規模は8.6兆円と、全国の百貨店の売上高約6兆円を上回るまでに成長している。一方、末端で担う宅配個人事業者は、長時間労働や低収入を余儀なくされ、経営実態は過酷だ。…国土交通省「宅配便取扱実績」によれば、宅配便の取扱個数は急速に増加しており、2017年度は42.5億個に達した。あるネット通販は、地域限定の1次配送業者5社と提携し、宅配業務を委託している。1次配送業者は自ら配送を行うのではなく、さらに下請け企業や個人事業主に業務の全部もしくはその一部を請け負わせている。その実態は…。家を出るは朝5時半。6時15分には社の倉庫に到着し、荷物の仕分けを行い、積み込み作業を行う。8時過ぎに午前の配送に出発し、昼食を挟んで午後2時前後に午後便の荷物を取りに戻り、午後の配達に出て、一巡すると夕方6時ごろ。それから夜間の配達と午前・午後の再配達に入り、配達を終えるのは午後9時過ぎ。…受け取る報酬は1個170円で、この日は2万9240円。同業者の中では配達個数の多い方で、月収は約70万円前後。そこからガソリン代4万円、車両保険3万円などの経費が引かれ、手取りは60万円ほどに。しかし、1日の労働時間は15時間超、週休1日の過酷さだ。(『全国商工新聞』2019.05.27より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「衆院国土交通委員会(谷公一委員長)は24日、建設業の働き方改革の促進や建設現場の生産性向上などを目的とした建設業法などの改正案を全会一致で可決した。…公共工事品確法の改正案は、災害時に緊急性に応じて随意契約など適切な入札契約方式の選択や、債務負担行為などの活用による翌年度にわたる工期設定などを『発注者の責務』と規定。調査や設計などの業務を公共工事品確法の対象として明確に位置付ける。改正法成立後、今回の法改正の理念を現場で実現するため、地方自治体や業界団体などの意見を聞き、公共工事品確法の『基本方針』や、発注者共通の『運用指針』を改定する。建設業法の改正案では『工期』の概念を導入し、中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)による『工期に関する基準』の作成・勧告や、著しく短い工期による請負契約の締結禁止などを措置する。元請の監理技術者に関する専任義務の緩和や、許可要件の経営能力(経営業務管理責任者)に関する規制の合理化などを盛り込む。平準化については入契法の改正案で措置する。両法案の可決に当たり、付帯決議も採択。建設業法・入契法一括改正案については、元請・下請間の請負代金の支払いの適正化など請負契約の適正化を図るとともに、重層下請構造の改善に向けた取り組みを進めることなどを求めた。公共工事品確法改正案の付帯決議では、災害対応に従事する地域の建設業者が将来にわたって活躍できるよう要請。予定価格の設定に当たり、平常時から可能な限り最新の単価設定や見積もりを活用するとともに、災害時には見積もりを積極的に活用し、災害対応などに必要な費用を反映した適正な価格となるよう努めることを求めた。」(『建設工業新聞』2019.05.27)
●「政府は、昨年12月に決定した『防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策』(2018~20年度)の進捗状況をまとめた。国の予算や民間資金などを合わせた約7兆円の総事業費のうち、19年度末までに約5兆円がプロジェクトに配分される見通し。計160項目で設定している事業実施の目標値は、19年度末までに当初予定より10項目多い35項目が達成できる見込みだ。」(『建設工業新聞』2019.05.30)

労働・福祉

●「政府は15日、希望する高齢者が70歳まで働けるようにするための高年齢者雇用安定法改正案の骨格を発表した。企業の選択肢として7項目を挙げた。70歳まで定年を延長するだけでなく、他企業への再就職の実現や起業支援も促す。企業は努力義務として取り組まなければならなくなる。…企業が取り組む選択肢の7項目のうち、同じ企業内で雇用を継続するのは3つだ。①定年延長②定年廃止③契約社員や嘱託などによる再雇用――だ。社外でも就労機会を得られるように支援する。④他企業への再就職支援⑤フリーランスで働くための資金提供⑥起業支援⑦NPO活動などへの資金提供――だ。」(『日本経済新聞』2019.05.16)
●「国土交通省は15日、第2回建設業社会保険推進・処遇改善連絡協議会(会長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)を開き、2019年度に取り組む重点事項をまとめた。建設キャリアアップシステムを活用した技能者の能力評価基準は年度内に33職種での策定を目指して取り組むことを確認。20年度から4種類のカードを公布することを原則化する。」(『建設通信新聞』2019.05.16)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、久保田俊平議長)は16日、『2018時短アンケート』の結果を公表した。1ヵ月の平均所定外労働時間は前年比0.7時間増の47.5時間とほぼ横ばいにとどまった。建設産業に魅力を感じる割合も2009年以来初めて低下したほか、週休2日の実現に対しては約3割が『実現しない』と回答するなど、企業が注力する働き方改革による大幅な改善は見られなかった。」(『建設通信新聞』2019.05.17)
●2020年東京五輪・パラリンピックをめぐり、競技会場などの建設現場で過酷な労働環境があったとの報告書を、労働組合の国際組織である国際建設林業労働組合連盟(本部ジュネーブ)がまとめた。…大会組織委員会や日本スポーツ振興センター(JSC)などに改善を求めた。報告書によると、同連盟は10年以上にわたり、五輪などの国際イベントにおける建設現場の労働環境を調査。東京大会についても16年から調査に入り、今年2月には新国立競技場の作業員らから聞き取りを行った。…東京大会をめぐっては17年3月、新国立競技場の建設工事に従事していた下請け会社の男性社員=当時(23)=が自殺。新宿労働基準監督署が、自殺直前の月190時間を超える残業が精神疾患の原因になったとして労災を認定した。報告書は、東京大会に関し2人の労働者が亡くなったと指摘している。大会組織委は「内容を確認中で、対応については今後検討する」、JSCは「事実関係を確認中。事業者に法令順守や適切な労務感を行うよう要請している」とそれぞれコメントした。(『しんぶん赤旗』2019.05.17より抜粋。)
●日本の賃金を時間当たりでみると過去21年間で8%減っており、主要国の中で唯一のマイナスであることが経済協力開発機構(OECD)の調査で分かった。…最新データである2018年の時間当たり賃金(時給)を1997年と比較すると、韓国は167%、イギリスは93%、アメリカは82%、フランスは69%、ドイツは59%も増加している。一方、日本は8%減少していた。(『しんぶん赤旗』2019.05.18より抜粋。)
●「厚生労働省は18日までに、2018年に労働災害で死傷した外国人は2847人だったと発表した。7年連続の増加で、過去最多を更新した。このうち劣悪な労働環境が指摘されている技能実習生が784人を占めた。…厚労省によると、18年の外国人の死傷者数は前年の2494人から14.2%増えた。10年前(1443人)と比較するとほぼ倍増した。この間、外国人労働者数は3倍に膨らみ、約146万人となっている。死傷者のうち技能実習生が784人(27.5%)で、過去最多を更新。外国人労働者における技能実習生の割合(18年は21.1%)を上回る状態が続いている。」(『日本経済新聞』2019.05.19)
●「2018年に東京電力福島第1原発の廃炉作業に関わった290事業者のうち、53.1%に当たる154社で作業員の割増賃金の不払いなど法令違反が見つかったとの調査結果を福島労働局がまとめた。対象事業者には是正を指導。16、17年の違反率は50%を下回っていたが再び増加に転じた形で、高止まりが常態化している。福島労働局は原発事故が起きた11年から廃炉の作業現場を抜き打ちで訪問し、実態を調査している。18年の違反は315件で、元請け企業が下請け企業に十分な指導をしていないなど安全衛生に関わるものが65件、賃金や就業規則など労働条件に関わるものが250件だった。違反率は11年が最も高く、51事業者のうち38事業者と74.5%に上った。事故発生直後で放射線量が高く、経験のない環境下で作業を強いられたことが原因とみられる。その後はほぼ40~60%で推移。廃炉作業に習熟する企業が増えたこともあり、作業員の安全に直結する違反は減っており、18年も大半は軽微な違反という。ただ、事業者が作業員に残業代をきちんと支払わなかったり、労使間の合意がないまま賃金から親睦会費や食費を引いたりするなど、労働条件に関わる違反は多いままだ。作業員を雇う際に賃金や勤務時間を明示していないケースもあった。」(『日本経済新聞』2019.05.20)
●「厚生労働者が17日発表した2018年(1~12月)の労働災害発生状況調査結果(確報値)によると、休業4日以上の死傷者数は建設業で前年比1.6%増(245人増)の1万5374人となり、2年連続で増加となった。このうち死亡者数は4.3%減(14人減)の309人。2年ぶりに減少した。」(『建設工業新聞』2019.05.20)
●「厚生労働省は23日、労働災害統計の死亡災害発生状況には含まれない建設業での『一人親方』の死亡者数が、2018年(1-12月)は前年比4人増の55人だったことを明らかにした。労働者扱いとはならない中小事業主や役員、家族従事者も含めた『一人親方など』の18年死亡者数は7人減の96人だった。中小事業主の死亡者数が前年の47人から13人減の34人となった。」(『建設通信新聞』2019.05.24)
●「厚生労働省は外国人労働者の賃金実態に関する定期調査を始める。国の基幹統計の一つで毎年実施する賃金構造基本統計の調査対象に、『特定技能』の在留資格や技能実習生などで日本で働く外国人を加える。外国人労働者は改正出入国管理法の施行で今後の増加が見込まれており、不当に低い賃金で働かせていないか監督を強化する。賃金構造基本統計は年1回の調査。1人当たりの平均月額賃金などを調べている。7月に実施する調査から対象となる在留資格を追加する。」(『日本経済新聞』2019.05.28)
●「3次以下の下請企業で法定福利費が十分に受け取れていない状況が続いていることが、国土交通省の調査で分かった。1次と2次は官民とも法定福利費を確保できている工事の割合が上昇しているのに対し、3次以下は低い水準が続く。法定福利費を内訳明示した見積書の提出が進む一方、請負代金内訳書への明示は市区町村発注工事で約4割にとどまる。…調査は建設業許可業者の中から無作為に抽出した2万5700社を対象に2018年9~11月に実施し5471社の回答を得た。公共工事と民間工事、団体の所属の有無などを問わず幅広く、社会保険の加入状況や、雇用する技能者に支払った賃金や法定福利費の実態を把握し、担い手確保に向けたさらなる取り組みを検討するのが目的。…直近の一現場で法定福利費が100%受け取れた公共工事の割合は1次下請が62.9%(17年度調査49.1%)2次も60.8%(43.7%)と約6割に上った。これに対し3次以下は41.7%(41.7%)と同水準となった。民間工事は1次59.8%(43.4%)、2次52.6%(38.5%)、3次以下47.2%(25.6%)。3次以下も割合が上昇したものの、公共工事と比べて20%未満しか受け取れなかった工事の割合が11.1%(公共工事8.3%)と高い傾向が表れた。」(『建設工業新聞』2019.05.28)
●「民間調査会社の東京商工リサーチが27日に発表した『2018年決算の上場企業2591社の平均年間給与調査』によると、建設業が718万7000円(前年707万3000円)で4年連続トップとなった。業種別で唯一の700万円台。活発な建設投資による業績改善だけでなく、人材確保のための賃金アップも要因として分析している。上場2591社の平均年間給与は606万2000円(中央値593万5000円)。前年に比べ7万円増えた。給与の増加は7年連続で、この間に42万5000円上昇した。」(『建設工業新聞』2019.05.28)

建設産業・経営

●「大手・準大手ゼネコン26社の2019年3月期連結決算が出そろった。手持ち工事が本格的な消化期間に入り、26社中7社の連結売上高が過去最高となった。大林組が初めて連結売上高で2兆円を超えたほか、鹿島も20年3月期の売上高見通しを2兆円超に設定して大台に乗せる見込みだ。消費増税の駆け込みもあって受注も堅調に推移しており、20年3月期も高水準の売上高が続くとみられる。大手4社の連結売上高は、大林組が過去最高の2兆0397億円、鹿島が1兆9743億円と高い水準になったほか、清水建設、大成建設も前期を上回った。いずれも首都圏を中心とする建築事業の手持ち大型工事が順調に進捗したことが寄与した。…連結売上高は準大手も順調で、長谷工コーポレーション、五洋建設、フジタ、前田建設、東急建設、東鉄工業が過去最高を記録。前田建設が4921億円で5000億円台に迫ったほか、長谷工コーポレーション、五洋建設、戸田建設、フジタの4社が5000億円超えとなった。売上高の先行指針となる単体受注高は、…各社とも好調で、26社中21社が前期を上回った。繰越高も高水準が続いており、大成建設は2兆円台が続いているほか、清水建設も2兆1384億円まで積み上がっている。利益面では、6割が連結過去最高益となった前期の反動で減少した企業があったものの、26社中17社が単体の完成工事総利益(工事粗利)率10%超を維持した。」(『建設通信新聞』2019.05.16)
●「国土交通省は15日、建設工事受注動態統計調査の2018年度の集計結果を発表した。全体の受注高は前年度比4.3%増の86兆9379億円。新推計を導入した13年度以降で過去最高値となった。内訳は元請受注高が4.2%増の60兆2323億円、下請受注高が4.5%増の26兆7056億円となっている。…元請受注高のうち、公共機関からの受注は2.3%減の15兆5942億円、民間等からの受注は6.7%増の44兆6381億円。公共機関からの受注が減少する一方で、堅調に推移する民間受注が全体の受注高を下支えする結果となった。」(『建設通信新聞』2019.05.16)
●サブリース業界大手レオパレス21(東京都中野区)建築基準法違反問題で、不備のある物件が4月末の時点で計1万5628件に上ったことが明らかになった。前回の公表数から約1000件増加。調査が済んだ2万1277件のうち7割超の物件で不備が見つかった。調査は途上にあるため施工不良の物件はさらに増える可能性がある。…不備が見つかった1万5628件のうち、屋根裏や天井裏に設置し延焼や音もれを防ぐ壁(界壁)がなかったのが1992件、界壁の不備が4281件など合計7613件の施工不良を公表した。残りの8015件は「軽微な不備」と説明している。(『しんぶん赤旗』2019.05.16より抜粋。)
●「国土交通省は17日、納期の長期化が続いている高力ボルトの需給の安定化に向けた対策をとりまとめ、契約適正化の対応を建設業界団体などに要請した。同省は水増し発注や重複発注などの仮需要を除いた実需ベースでは需給に大きな乖離は見られず、『市場の混乱に基づく一時的な現象である』と分析。対応策として、不確実な注文を抑制し、納期・納入先が明確な注文を優先するための統一の発注様式を作成、ボルトメーカーや流通業者に活用を申し入れた。ゼネコンなどには様式に必要となる現場情報などを提供するよう呼び掛けた。」(『建設通信新聞』2019.05.20)
●「高水準が続いてきた建設業界の受注環境が変わり始めている。大手ゼネコン(総合建設会社)8社合計の2019年度の受注見通しは前年度を1割超下回る。20年の五輪を目指した都市開発需要が一巡したうえ、足元の景況感の悪化で民間企業が設備投資を抑制しようとする動きが影響する。人手不足を背景に強気の受注を続けてきたゼネコン各社にはや秋風の予感が漂ってきた。…11年の東日本大震災からの復興需要、20年の東京五輪に向けた都市再開発などゼネコン各社が請け負う仕事は切れ目無く続いた。人手不足が重なったこともあり、各社は利益率の良い工事を強気に選ぶことができ、業績を押し上げてきた。主要ゼネコンが加盟する日本建設業連合会(東京・中央)の調査では18年度の国内建設受注額は15兆9900億円と20年ぶりの高水準だった。…ゼネコン各社が今年5月に公表した19年度の受注見通しは弱気があらわれた数字となった。売上高が4000億円を超える3月期決算のゼネコン8社の見通しを合計すると18年度比12.1%減の約6兆3300億円だったのだ。…背景の一つがここにきての景況感の悪化だ。…3月の日銀短観によると19年度の全規模・全産業の設備投資計画はマイナス2.8%だった。非製造業がマイナス5.6%となったことなどが響く。20年の東京五輪を目指したホテル建設需要などが一巡。さらに工場や物流拠点なども新設計画が景況感悪化で先送りとなり、仕事がなくなるとの危機感がゼネコン各社に生じている。」(『日本経済新聞』2019.05.23)
●「海外受注額が堅調に推移し、2018年度の受注額は2兆円をうかがう1兆9375億円に達した。建設企業の海外受注額が過去には好調の目安とされてきた1兆円台から2兆円近くにまで拡大したのは、一部の企業による多様で徹底した海外市場の取り込みが大きな要因となっている。その結果、海外受注額を押し上げたこれらの企業の海外受注額に占めるシェアはさらに高まる形となっている。」(『建設通信新聞』2019.05.29)
●「日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)は、1次下請業者を主体とする正会員とは別の新たな会員資格『特定会員』を設置した。改正出入国管理法で制定された新たな在留資格『特定技能』の外国人材を雇用する2次下請以下の型枠工事会社の入会を可能にする。特定会員の権限は外国人材受入れに限定し、総会での決議権などはないこととする。」(『建設工業新聞』2019.05.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「海を漂うプラスチックごみを巡り、従来の生活関連だけでなく、漁業や観光が排出源として問題視され始めた。英国の研究グループは北大西洋でのプラスチックごみのトラブルが2000年以降に10倍に増えたと指摘し、ごみのうち半分は網など漁業由来だったと分析した。地中海では夏場のバカンス客がゴミを4割も増やす。プラスチック消費量が増えるなか、国際的な対策が急務となっている。…石油由来のプラスチックは安価で軽量な素材として、レジ袋や食品包装、衣類や工業製品などに幅広く使用されている。15年の世界生産量は約4億トンと50年前に比べ20倍以上となった。新興国の需要拡大で国連は30年までに生産量が6億トンを超えると予測する。自然に分解されないプラスチックごみは現状年間800万トン以上が海に流れ込んでいるとされ、世界各地で問題が顕在化している。…経済協力開発機構(OECD)は海洋プラスチックによる生態系への打撃や漁業や観光業への悪影響などの経済的コストは年間130億ドル(1兆4300億円)に達すると警鐘を鳴らす。」(『日本経済新聞』2019.05.23)
●「国土交通省は、コンパクトシティー政策の推進に向けた今後の方向性(骨子案)をまとめた。都市再生特別措置法で位置付けられた『立地適正化計画』制度の実効性を高めるため、同法などの改正や新法創設につながる要素を盛り込んだ。複数の市町村が連携して立地適正化計画を作成する協議会の設立を同法に盛り込むことを検討。災害発生のリスクが高いハザードエリアからの自主移転を減税などで後押しする新法も想定している。次期通常国会への法案提出を目指す。」(『建設工業新聞』2019.05.24)
●「首都圏で分譲された新築マンション価格の割高感が強まっている。東京カンテイ(東京・品川)によると、2018年はマンションの平均価格が前年比1割上昇し過去最高を更新。株価収益率(PER)をもとにした、価格が賃料の何年分に当たるかを表す数値『マンションPER』が18年は24.98となり、調査対象の00年以降で最も高く、住宅が手に届きにくくなっている。」(『日本経済新聞』2019.05.30)
●「政府の中央防災会議(会長・安倍晋三首相)は31日、南海トラフ地震の想定死者数を23万1000人とする最新の試算を公表した。建物の耐震化の進展などを加味して2013年試算より3割減少したが、10年間で8割減らすという目標にはペースが追いついていない。東西に広がる震源地の片側で大地震がある『半割れ』が発生した際、残る側で『事前避難』などの警戒措置をとることを基本計画に初めて明記した。」(『日本経済新聞』2019.05.31)

その他