情勢の特徴 - 2019年6月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「世界の製造業で景気観が悪化している。英調査会社IHSマークイットが3日発表した5月のグローバル製造業PMI(購買担当者景気指数)は49.8と前月比0.6ポイント低下し、景気判断の節目とされる50を下回った。欧州債務危機が続いていた2012年10月以来、約6年半ぶりの低水準だ。米中対立による貿易や供給網への懸念で、生産が投資を手控える動きが広がっている。PMIは企業の購買担当者に受注や生産状況などを聞き取った経済指標。50を上回ると景気が上向き、50を割り込むと下向きの兆候とされる。」(『日本経済新聞』2019.06.04)
●「政府は、中小企業の事業継承を促進するため、後継者に企業の借入金の個人保証を求めない枠組み整備を進める。政府系基金機関が関わる有利の無保証化の拡大や金融機関の取り組みを見える化することによる融資慣行の改革をパッケージとして打ち出した。6月にまとめる成長戦略に盛り込み、2020年から実行に移す方針だ。」(『建設通信新聞』2019.06.04)
●「厚生労働省は7日、1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる2018年の合計特殊出生率が1.42となり、前年から0.01ポイント下がったと発表した。低下は3年連続だ。政府が25年度までにめざす子育て世代が希望通りに子どもを持てる『希望出生率』の1.8%は遠い。晩婚や非婚化の影響が大きく、政府は少子化対策の見直しを迫られそうだ。厚労省が同日発表した18年の人口動態統計で明らかになった。同年に生まれた子どもの数(出生数)は91万8397人で過去最少を更新した。前年比では2万7668人減った。出生率は05年に記録した1.26に比べると高い水準にあるが、女性人口が減っており、出生数は右肩下がりで、3年連続で100万人割れとなった。人口減は速度を増しており、18年は出生数と死亡数の差である人口の自然減が44万4085人となった。出生数を母親の年代別にみると、44歳以下の全ての年齢層で減った。…出生数は公的年金などの社会保障の前提となる国立社会保障・人口問題研究所の将来推計を1万人弱下回ったもよう。厚労省の担当者は『深刻な影響ではないが、注視していきたい』と述べた。出生数の低下が止まらない理由は主に2つある。人口減少と出産年齢の高止まりだ。25~39歳の女性人口は1年間で2.5%減った。第1子の出産年齢は30.7歳で過去最高水準にある。全国で最も出生率が低い東京都では0.01ポイント低下し1.20となったほか、神奈川県や大阪府などの大都市圏は全国平均を下回る1.3台で推移した。最も高いのは沖縄県の1.89だった。」(『日本経済新聞』2019.06.08)
●「政府が11日示した経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案では、社会保障の支え手拡大に軸足を置いた。働く高齢者や女性は増えており、雇用形態にかかわらず能力や意欲を評価する仕組みに変えていけるかが課題だ。今年の骨太で焦点を当てた就職氷河期世代が生まれたのは新卒採用に偏重した雇用慣行にある。年功序列と一括採用を前提にした日本型雇用の転機が急務だ。骨太の素案では『全世代型社会保障への改革』を柱に据えた。70歳まで就業機会を確保するよう企業に定年延長などの環境整備を求める。パート労働者すべてが厚生年金などに加入する『勤労者皆保険制度』の実現を掲げた。長く働き、税金や社会保険料を負担する人を増やす政策だ。厚生年金は年収106万円を超えると、保険料を払う必要がある。その負担を回避する目的で就労調整するパート労働者は多い。政府は年金保険料を負担するパートを増やすため、年収基準の引き下げを含めた公的年金の改正法案を2020年の通常国会に提出する。」(『日本経済新聞』2019.06.12)

行政・公共事業・民営化

●「政府は月内に決定する2019年度の『PPP/PFI推進アクションプラン』案をまとめた。国や地方自治体の公共事業にPPP/PFIを普及させるための施策や目標を列挙。運営(維持管理含む)期間中に収益が生み出しにくいという課題に着目し、事業の成果に応じ委託費を増減させる変動制の導入を検討する。同プランは毎年5~6月ごろに改定し、当該年度に重点化する普及策や目標を盛り込む。19年度版は重点項目として▽収益を生み出しにくい公共施設への導入支援・検討▽交付金や補助金で導入可能性検討を一部要件化した事業分野の拡大▽都道府県単位の『PPP/PFI地域プラットフォーム』に参加する地方自治体や地域企業などへの支援強化▽地方創生につながるPPP/PFI事業の支援強化―の4つテーマを設定する予定だ。」(『建設工業新聞』2019.06.04)
●「レオパレス21や大和ハウス工業の物件で施工不良が相次いで見つかった問題を受け、国土交通省は5日の外部有識者らによる検討会で、今夏にも再発防止策をまとめると明らかにした。国が大手住宅事業者を対象に品質管理の実態を定期的にチェックする仕組みの導入などを検討している。…国交省がまとめる再発防止策では、認定を受けた型式通りの設計図が作られているが、工事監督者の担当物件数が過剰になっていないか、監督者の指摘通りに施工されているか、などを国が定期的に把握する仕組みを設ける方針だ。具体的な制度や手順は今後詰める。」(『日本経済新聞』2019.06.06)
●「改正建設業法と改正入札契約適正化法(入契法)が5日の参議院・本会議で全会一致で可決、成立した。著しく短い工期での契約禁止など建設業における働き方改革の推進や現場の生産性向上、持続可能な事業環境の確保といった諸課題に対応するための規定新設や既存規制の合理化が柱となる。2020年秋(技術検定の見直しは21年春)から施行する。(『建設通信新聞』2019.06.06)
●「国土交通省は、公共事業における施工時期の平準化の取り組みの推進を加速させる。『新・担い手3法』の成立により発注者の責務として施工時期の平準化が規定されたことなどを受け、取り組みに遅れが見られている市区町村を後押しする。平準化の取り組みの進捗状況の見える化などの措置も想定し、発注規模で100億円以上などの市区町村について今後、重点的に対応を要請していく方針だ。」(『建設通信新聞』2019.06.11)
●「都道府県における低入札価格調査制度の見直しが進んでいる。ことし3月の直轄工事における低入札価格調査基準(調査基準価格)の改定を受け、全都道府県のうち、27団体が直轄基準並みかそれ以上の基準を採用していることが国交省の調査で分かった。一方、最低制限価格制度については、28団体が直轄水準以上に改定済みだが、4団体は『不実施』と回答しており、国交省は引き続き、実効性あるダンピング(過度な安値受注)対策の実施を求めていく。」(『建設通信新聞』2019.06.13)

労働・福祉

●「厚生労働省は、建設現場で働く外国人労働者の労働災害を防ぐため、事業主が外国人労働者に実施する安全衛生教育を支援する。改正出入国管理法で創設した在留資格『特定技能』の外国人労働者などを対象とした安全衛生教育で活用できる『安全衛生リーフレット』と『安全衛生教育用視聴覚教材』を作成する。…リーフレットは、▽型枠施工▽左官・内装仕上げ▽コンクリート圧送▽トンネル推進工、建設機械施工、土工▽屋根ふき▽電気通信▽鉄筋施工・鉄筋継手――の7業務区分で想定される作業の安全衛生対策をまとめる。業務区分別に主要作業単位や危険有害要因ごとに作成し、作業単位などを組み合わせリーフレット集とする。1業務区分当たりの作業単位などは7つ程度とする見込み。日本語を翻訳するのは、英、中国、ベトナム、タガログ、カンボジア、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴルの10言語を予定している。視聴覚教材は、7業務区分ごとに30分程度のものをつくる。運転免許更新時で使う講習ビデオのように事故などの再現を含む実写ビデオ教材を見ることで作業に潜む危険を理解させ、安全作業のポイントを習得できるような教材とする。外国語への吹き替えはリーフレットと同じ10言語。作成した教材は、ユーチューブへのアップロードに加え、アプリを制作し、スマートフォンでも見ることができるようにする。」(『建設通信新聞』2019.06.03)
●「政府の規制改革推進会議の答申案が5日、明らかになった。兼業・副業の推進に向け、複数の企業で働く人の労働時間を通算する制度の見直しを提言する。従業員の健康管理を前提に、通算で1日8時間働いた場合に生じる割増賃金に関して企業の支払い義務の緩和を求める。中小・零細企業の事業継承を支援するため、地方銀行が一時的に企業の株式を保有できるようにする。…労働基準法は複数の職場で働く人の労働時間は通算すると規定する。同法に基づき1948年には労働省(現と厚生労働省)の局長通達で、複数の企業で働く人の労働時間の通算管理を定めた。現在、法定労働時間は1日8時間、週40時間だ。本業で週30時間、副業で週15時間働く場合、5時間分が超過労働になる、割増賃金は副業側の企業が支払う必要があり、企業が副業を受け入れる足かせになっていると指摘されている。規制改革会議は仕事を掛け持ちする労働者を守る規制が働き方の選択肢を狭めていると判断した。答申案では『労働時間の把握、通算に関する現行制度の適切な見直し』を提言する。欧州では通算の労働時間と割増賃金の算出を切り離す制度を導入しており、同様の仕組みの検討を想定する。副業や兼業で労働時間が増えて過労死などが起きないよう歯止め策も求める。企業に従業員の健康確保を義務付ける。従業員が自己申告した総労働時間が一定時間を超えた場合、産業医による面接指導を実施することなどを検討する。厚労省も2018年に検討会を立ち上げ、副業・兼業の労働時間管理について議論している。7月にも報告書を取りまとめる予定だ。規制改革会議の答申も踏まえ、その後は労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で具体的な議論を始める。」(『日本経済新聞』2019.06.05)
●「厚生労働省は、『建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等の検討における技術的事項に係る対応の方向性』案をまとめた。石綿障害予防規則に基づく建築物の事前調査の方法(範囲)を一層明確化し、現地調査は必須にする。また、石綿含有建材を使用する建築物の解体などが今後増加することを踏まえ、事前調査者と分析者の具体的な要件などを明確にするとともに、能力習得のための講習制度などを整備する。」(『建設通信新聞』2019.06.05)
●「建設業の賃金上昇と雇用拡大が続いている。厚生労働省がまとめた2018年度の毎月勤労統計調査結果(確報値)によると、建設業の就業者に支払われた月額平均給与額は前年度比4.0%増の40万7793円と6年連続で増加。常用雇用労働者数も1.4%増の269.2万人と5年連続で増えた。」(『建設工業新聞』2019.06.05)
●「全国鉄筋工事業協会(岩田正吾会長)は7日、通期第34回の社員総会を開き、これまで派遣法に抵触しかねないとされていた“応援”を、技能者の技術研さんのための行為と位置付けることで、適法下で実施できる仕組みの構築を検討することを決めた。受け入れを希望する現場と、他現場での技能取得が可能な技能者をマッチングする『技術研鑚のためのマッチング支援システム』の開発を進める。新設した『労務委員会』(飛田良樹委員長)で検討する。地域ごとに設立する全鉄筋会員の協力会社(2次下請け)組織を確立する予定で、この組織加盟社が同システムを活用する形になる見通し。鉄筋業に限らず国内の建設業における専門工事業者では、繁忙な企業に対して余裕のある企業が技能者を融通することが慣例となってきた、ただ、建設業において繁閑調整のための人材の派遣は派遣法で禁じられており、建設業の“応援”が違法に当たる可能性があると指摘されてきた。…岩田会長は今回、『(応援ができなければ)若い技能者は、いったん入った現場しか経験できず、その現場の技量しか身につけられない。手が空いているから応援するのではなく、短期間でいろいろな現場の技量を学べる。技術研さんという位置付けで、人を交流させる』とし、技能研さんの位置付けとすることで適法下での応援が可能との考えを示した。開発するシステムは、技能を学べる現場と、技能習得を求める技能者をインターネット上でマッチングできるようにする見通しで、『在籍型出向契約になる』(岩田会長)とした。公益社団法人の全鉄筋が人材のマッチング事業を手掛けられるよう内閣府に定款の変更認定を申請する。総会ではあわせて、全鉄筋が新しい在留資格『特定技能』の外国人材を受け入れる『建設技能人材機構』(JAC)の正会員として海外で実施する技能試験の問題作成や試験官の派遣に協力することから、『登録支援機関』として申請することを決めた。」(『建設通信新聞』2019.06.10)
●「建設業における働き方改革推進の要となる週休2日や4週8休のモデル工事について、2019年度はすべての都道府県が実施予定であることが分かった。週休2日を実施した場合の受注者のコストアップに対応するため、共通仮設費や現場管理費の補正係数も実施予定の2団体を含め全都道府県で導入する。24年度から適用される建設業の時間外労働の上限規制に向け、都道府県レベルでも週休2日工事の浸透が確認される結果となった。」(『建設通信新聞』2019.06.12)
●「企業に未払い賃金を請求できる期間が延長を巡り労使間の対立が続いている。厚生労働省は2020年4月の改正民法施行をにらんで有識者検討会を設置。現行の2年から最長5年に延ばすことを検討していたが、経営側が反対、当初のとりまとめの予定から1年近たっても具体的な延長期間で結論が出ないままだ。現在、労働基準法では未払い賃金を請求できる期間を2年と定めている。だが、改正民法では賃金に関する債権の消滅時効を1年から原則5年に延長する。その結果、労働者保護のため、民放よりも優先して適用される労基法の方が請求期間が短くなるという『ねじれ』が生じてしまう。厚労省では17年末に検討会を設け、労基法を改正して請求期間を最長5年に延長する案などを議論してきた。当初は18年夏にも取りまとめる予定だった。だが経営側が『システム改修やサーバーの拡大に概算で1社当たり数千万円程度の費用が発生する』『経営基盤の弱い小規模事業者にとっては過大な負担となる』などの理由で反発。延長を求める労働者側との意見の調整がつかず、とりまとめは約1年後ろにずれ込んだ。13日に示した報告書案では『将来にわたり(現行の労基法上が定める)2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要』と明記、請求期間を延長する方針を示した。だが、具体的な延長期間や法改正の時期は盛り込まなかった。今後は、今秋にも厚労相の諮問機関である労働政策審議会で議論する。厚労省は改正民法の施行をにらみ、早ければ20年の通常国会にも改正法案を提出したい構え。だが、労政審に議論の場が移っても、労使間の隔たりが埋まるかどうかは見通せないままだ。」(『日本経済新聞』2019.06.14)

建設産業・経営

●「大和ハウス工業が建てた賃貸アパートと戸建て住宅の2000棟超に不適切な柱や基礎が使われていた問題で、同社は31日、外部調査委員会から中間報告を受けたと発表した。調査委は一部の設計責任者が違法性を認識していたことなどを指摘した。調査委は6月中に再発防止策を含む最終報告書をまとめる。調査委は国の認定を取得していない柱や基礎を使っていた一因を『設計責任者が認定を取得していると誤認した可能性がある』と言及。アパート屋外の2階廊下を支える柱は『関東の設計者の多くが本来の手続きに違反して建築確認申請をしていたことを認識』したという。調査委は違反を是正できなかった理由の調査を進めるとしている。同社を巡っては、中国のグループ会社で預金残高と帳簿に約234億円の差額が発生する不正も見つかっている。相次ぐ不祥事を受け、全社的な企業統治(ガバナンス)強化策を秋にも策定、公表する予定だ。」(『日本経済新聞』2019.06.01)
●「建設経済研究所は5日、売上高上位40社の全国ゼネコンを対象とした『2019年3月期(18年度)主要建設会社決算分析』を発表した。受注高は前年同期比で建築部門・土木部門ともに増加し、直近5年間で最高水準となった。売上高も大手、準大手、中堅の全ての階層で増加となり、こちらも直近5年間で最も高い水準だった。営業利益は全階層で減少したものの、17年に次ぐ水準を維持し、全40社が営業黒字を確保している。」(『建設通信新聞』2019.06.06)
●「清水建設は500億円を投じ、都内に技術研究所や研修施設を新設する。建設工事にIT(情報技術)や人口知能(AI)を取り入れる研究を加速させる。少ない人数でも質の高い建設工事ができる体制をつくり、深刻になる作業員の高齢化や人手不足に備える。新施設は2020年春に着工し、22年4月の利用開始を目指す、東京都江東区に約3万7000平方メートルの土地を取得する。研究所では大学やベンチャー企業と共同研究ができるオープンイノベーション拠点の開設も視野に入れている。研修施設では安全管理などを学ぶための土木工事現場を再現する。明治時代に同社が施工した渋沢栄一の邸宅も自社の歴史資料として青森県から移築する。建設業界では若い世代の入職が進まず、現場作業員の高齢化や人手不足が課題だ。建設各社は省人化や労働負荷を軽減するために、建機の自動運転などデジタル技術の取り込みを加速している。」(『日本経済新聞』2019.06.07)
●「NECが建設キャリアアップシステム(CCUS)とのデータ連携が可能な『建設現場顔認証入退管理サービス』の提供を開始した。作業員の所属会社や保有資格の情報などをCCUSから取得し、管理業務に役立てる。現場で記録した入退場データは就業履歴としてCCUSに登録できる。現場ごとにサービスを提供。価格は1人当たり1日30円となる。今後3年間で1万現場への販売を目指す。同サービスは、スマートフォンかタブレット端末にアプリケーションをダウンロードし、現場ごとに利用する。カードリーダーなどの装置は不要で、現場開設と同時に入退場管理を始めることができる。作業員が現場に入場する際、アプリを起動しカメラで自身の顔を撮影。顔認証によって本人確認を行う。GPS(衛星利用測位システム)の位置情報で『誰が、いつ、どこの現場に入場したか』が正確に記録できる。現場から退場する際もカメラで顔認証を行い、履歴として残す。」(『建設工業新聞』2019.06.12)
●「ゼネコンの海外事業で現地法人の受注比率が高まっている。海外建設協会(海建協、蓮輪賢治会長)が会員企業50社を対象に実施した調査で明らかになった。2018年度の総受注額は前年度比4.6%増の1兆9374億円。うち現地法人は18.7%増の1兆2324億円、日本の企業本体(本邦法人)が13.3%減の7050億円となり、現法が全体の64%を占めた。現法の増加が本邦法人の減少を補い、18年度の総受注額は過去最高を更新した。現法と本邦の受注比率はおおむね64対36(前年度は56対44)。現法は特に高い経済成長率を維持しているアジア(17.7%増の5398億円)で大幅な伸びを見せた。好景気が続く米国を含む北米(26.2%増の4609億円)も大きく増加した。この2地区がけん引し現法の受注もこれまでの最高額を記録した。」(『建設工業新聞』2019.06.12)
●「建設投資の都市間格差が顕著となる中、地方の建設企業が中央の同業他社を買収し、市場規模の大きい大都市圏に進出する動きが活発化しつつある。新潟県内では低迷する事業量とその先行きを不安視し、2社の地元建設企業が関東圏の建設企業とのM&A(企業の合併・買収)を実現。全国の中小建設企業で経営後継者不足が顕在化していることで、企業買収を通じた人手(従業員)不足の解消や受注面の反転攻勢を狙う地方建設企業の思惑は合致しやすく、他地域への参入はさらなる加速が見込まれる。今回、M&Aに踏み切った新潟県内の建設企業2社はともに総合建設業。千葉県と群馬県の建設企業を買収した。仲介役を担った新潟県事業引継ぎ支援センターの高橋尚樹統括責任者は、『(両社は)県内の仕事量減少を補うため(M&Aを)決断した』と説明。中小建設企業の他地域への新規進出は拠点設置などに伴う初期投資が負担となるほか、公共工事は当該地域で施工実績がないと受注しづらいことなどを考慮したとみられる。」(『建設通信新聞』2019.06.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「政府の中央防災会議(会長・安倍晋三首相)が31日に公表した南海トラフ地震の最新の想定死者数は23万1千人で、2013年の試算から3割減少した。一方で、新たな課題として浮上しているのが、東西に広がる震源域の片側で『半割れ』が発生した場合の対応だ。発生場所や規模が読めない中、市町村はどう住民に避難を呼びかけるか苦慮している。自治体を悩ませているのが震源域の半分でマグニチュード(M)8級の地震が起こる半割れのケースだ。一部地域が甚大な被害に見舞われた状況で、国はまだ地震が起きていない残り半分側の地域の対象住民に1週間の避難を求める。31日の中央防災会議で修正された南海トラフ地震防災対策推進基本計画には、半割れの発生から市町村や住民の対応までの動きが盛り込まれた。新たな基本計画は市町村に対し、事前に1週間避難の対象地域を指定し、避難場所や経路などを定めておくよう義務付ける。政府は20年春までに自治体がそれぞれ計画を定めるよう促しており、4月から各地で説明会も重ねてきた。…地域の『線引き』も壁となる。市町村はどの地域が1週間避難の対象になるかを計画に明示しなければならない。宮崎市の担当者は『対象地域は地価に影響しかねない。不公平感が生じないよう、近隣自治体と綿密に情報交換し、整合性を図る必要がある』と話す。国が自治体の計画づくりに関するガイドラインを公表した3月末より前から独自に取り組みを始めていた高知県黒潮町の担当者は『自分たちの地域に被害が出ていない段階で、避難の呼びかけに応じてくれるだろうか』と住民への周知に懸念を示す。想定される津波は全国最大の34メートル。全住民の避難先や避難経路の把握などを進めており、『住民への意識付けが大事』と力を込める。…福和伸夫・名古屋大減災連携研究センター長(地震工学)は『自治体や学校・福祉施設、鉄道事業者、その他の企業などの間で合意形成ができていないと、いざ住民の避難が始まったときに社会的混乱を招きかねない。地震はいつ起きてもおかしくなく、国はモデル地区を設定して自治体の計画づくりを積極的に後押しするなどの取り組みが求められる』と話す。」(『日本経済新聞』2019.06.01)
●「国土交通省は5月31日、『気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会』の第4回会合を開き、検討会提言の骨子案を提示した。河川整備計画は過去に発生した最大豪雨が被害防止の目標となっているが、気候変動の影響があっても目標とする治水安全度が確保できるよう河川整備の目標を見直し、整備メニューの充実と加速の必要性を提言。あわせて、気候変動により外力が変化した場合でもできるだけ手戻りが少ない効率的な整備を目指すとともに、河川整備計画の目標を上回る洪水に対する減災効果の向上を図るため、河川整備メニューや手順の点検を求める。」(『建設通信新聞』2019.06.03)
●「日本免震構造協会(和田章会長)が、会員企業108社の協力を得て集計した免震建築物の計画頭数は、2017年末までの累計で4557棟となった。16年4月に発生した熊本地震がどう影響を及ぼすか注目された17年の計画棟数は前年比7棟減の143棟にとどまり、過去最高を記録した13年の326棟をピークに4年連続で前年を下回った。同協会では20年東京五輪開催などに伴う建築費の高騰やこれを避けるため着工時期を先送りするケースがあったことも影響したのではないかとみている。…同協会では件数が伸び悩む一方で『延べ面積は増えている』と指摘。国内で年間に新築される建築物の総面積約1億5000万平方メートルのうち、『免震建築物は約500万平方メートルで3-4%程度のシェアを占めており、約1%だった2000年代初頭に比べても着実に普及している』としている。免震にかかるコストは施設規模が大きくなるほど相対的に低減することに加え、地震リスクを考慮すれば長期使用するほど免震建物は経済的に優位となるだけに、同協会では『一般消費者だけでなく、免震建築の経験がない設計事務所や構造事務所も対象としたチュートリアルセミナーをぜひ企画したい』とより一層の普及啓発に取り組む考えだ。」(『建設通信新聞』2019.06.06)
●「国土交通省は、造成宅地の大規模盛り土が地震によって地滑りを起こす『滑動崩落』の予防対策を検討する。滑動崩落対策工事の大半が被災地の復旧や再度災害防止を目的に行われている。今後は既存造成宅地で被害予防対策を推進したい考え。宅地の安全性確認(変動予測調査)や予防対策の方針などを議論するため有識者会議を立ち上げた。年内にも成果をまとめる方針だ。6日に東京都内で有識者会議『令和元年度大規模盛土造成地防災対策検討会』(委員長・二木幹夫ベターリビングつくば建築試験研究センター上席参与)の初会合を開いた。予防対策の検討対象は、盛り土で谷を埋めたり傾斜地盤を腹付けしたりして造成した大規模宅地。こうした宅地は東日本大震災(2011年)や熊本地震(16年)、北海道胆振東部地震(18年)で滑動崩落が発生している。予防対策は、政府が06年に創設した『宅地耐震化推進事業』に基づき、自治体が実施する変動予測調査や滑動崩落防止工事を交付金や技術的助言などで支援している。滑動崩落防止工事を行ったのは3月末時点で259地区。大半の257地区が大地震などで被災した地区の復旧工事で、予防対策はわずか2地区にとどまった。国交省によると、東日本大震災では1970年以前に盛り土で造成された宅地の多くが滑動崩落の被害を受けた。国交省は滑動崩落の危険性を周知し、予防対策の拡大につなげるため、自治体が変動予測調査に基づいて作成している『大規模盛土造成地マップ』の全国版を本年度に公表する予定だ。」(『建設工業新聞』2019.06.07)
●「経済産業省は太陽光や風力発電の事業者がつくった電気を大手電力があらかじめ決めた価格で買い取る制度を終了する。買い取り費用の増加で消費者の負担が高まっており、新たな競争入札制度を導入してコスト低減を進める。2020年にも関連法を改正する。政府は再生可能エネルギーを今後の主力電源として拡大する方針だが、遅れが目立つ送電網の整備などまだ課題も多い。経産省は12年に固定価格買い取り制度(FIT)を導入した。再生エネの電気を国が決めた固定価格ですべて買い取る仕組みだ。費用は電気料金に上乗せされる。買い取り費用は19年度で約3.6兆円にのぼる。うち家庭や企業に転嫁する分は約2.4兆円まで膨らみ、見直しの必要性が指摘されていた。経産省は対策として、ドイツなど欧州各国がFITの替わりに導入を進めている方式を取り入れる。50~100キロワット超の中・大規模の太陽光や風力の事業者には、自ら販売先を見つけたり、電力卸市場で売ったりすることを求める。価格は取引先との交渉や市場の状況で変わることになる。固定買い取りのメリットをなくす替わりに、卸市場で電力価格が急落し基準価格を下回った場合は国がその分を補填する。この措置を受けられる事業者は基準価格に関する競争入札で選ぶ。入札に参加する事業者は自社の発電コストを考慮しながら基準価格の候補を出し、経産省はその価格が低い順に一定数の事業者を認定する。基準価格は落札した事業者ごとに違う価格になる見通しだ。入札は数カ月ごとなど定期的に実施する。落札した事業者は市場価格の急落時でも損失が膨らむリスクを回避でき、中長期的に投資を進めやすくなる。一方、高く売れる取引先を見つけるといった経営努力が必要なため、事業者間の競争が進んで電気料金が下がる効果が見込める。小規模の事業用太陽光や家庭用の太陽光では買い取り制度自体は残すが、買い取りは全量でなく自家消費で余った分だけにする。買い取りにかかっていたコストは大幅に削減できる見込みだ。」(『日本経済新聞』2019.06.13)
●「国際的に問題となっている海洋プラスチックごみ(廃プラ)の対策を話し合う20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合で採択を目指す合意案が明らかになった。各国が自主的に削減に取り組むための国際枠組みを新設する。行動計画の進捗を定期的に報告する仕組みをつくり、実効性を持たせる。温暖化対策の『パリ協定』と同様に、廃プラ対策も国際協調で取り組む段階に入る。…合意案では、具体的な数値目標には踏み込まないが、各国に廃プラ削減に向けた行動計画の策定を求める。東南アジアなどインフラが整わない国や地域では、ごみ焼却施設の整備や分別処理の取り組みなどを盛り込むとみられる。先進国は資源を再利用するリサイクル率の改善や途上国支援などを計画で示す見通しだ。…廃プラは毎年少なくとも900万トン近くが海に流出しており、海洋生物や地球環境への深刻な影響が懸念されている。G20で排出量の5割弱を占めるとの報告もある。G20が新たな枠組みを創設することで、世界全体で廃プラ発生量の削減を目指す。新枠組みではパリ協定のように取り組みの報告を義務づけないため、今後は実効性の検証が課題となる。」(『日本経済新聞』2019.06.15)

その他