情勢の特徴 - 2019年7月前半
●「国が進める『防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策(2018-20年度)』終了後の公共建設投資の減少が地方で現実味を帯びている。複数の広域自治体は財政健全化の観点から20年度を境に投資的経費(普通建設事業費)を大幅に削減する方針を打ち出しており、地域の守り手である中小建設企業の体制維持への影響が懸念される。」(『建設通信新聞』2019.07.01)
●「財務省は2日、2018年度の国の税収総額が60兆3563億円と過去最高になったと発表した。給与や消費の伸びを背景に17年度比で約1.5兆円増えた。これまでの最高だったバブル期と比べると、消費税が増えて法人税の比率が下がるなど税収構造は大きく変わった。今後も伸びを維持するにはグローバル化やデジタル化の進展に応じた改革が欠かせない。18年度の税収は全体の8割を占める『基幹3税』がいずれも17年度を上回った。所得税は給与の伸びや株式の売却益の増加を受け、19.9兆円と1兆円増えた。消費税は個人消費の伸びで0.2兆円増の17.7兆円、法人税も企業業績が堅調で0.3兆円増の12.3兆円だった。予算の使い残しなど剰余金は1兆3283億円になった。」(『日本経済新聞』2019.07.03)
●国の経済規模を示す国内総生産(GDP)のうち、半分強を占めるのが家計消費支出だ。その伸び悩みが日本の景気を押し下げ、消費不況を長引かせている。…経済協力開発機構(OECD)の資料で欧米諸国の家計消費と比べると日本経済の異常は明らかだ。2017年のGDPに占める家計消費支出の割合を比べると、アメリカ68.4%、イギリス65.7%、イタリア60.9%であるのに対し、日本は55.5%にすぎない。アメリカで好調な経済を維持しているのは厚い内需がけん引力となっているからだ。…GDPに占める家計消費支出の割合の推移を比較すると、日本は第2次安倍政権発足直後の13年から17年までの5年間で、5.9ポイントも減少している。一方、カナダ、アメリカ、イギリスは割合を上昇させている。…日本で消費の割合が減少しているのは、所得が減少しているからだ。賃金の伸び悩みに加えて、14年に…消費税増税が物価を押し上げ、実質賃金を減少させた。さらに、年金額の減少や社会保障改悪で保険料負担が増加したことが、所得の減少に拍車をかけた。(『しんぶん赤旗』2019.07.04より抜粋。)
●「若い世帯の借金が膨らんでいる。2018年の20~30代の負債残高は政府による現行調査が始まった02年以降で最高となった。持ち家志向が強く、住宅ローン残高が増加している。ローン金利の低さなどから『賃貸住宅に住むよりも得』と判断した人が多いが、負債を抱えたことで普段の消費は節約に努める傾向が見える。…30代までの人による戸建てやマンションの購入が活発だ。日本総合研究所の根本寛之氏が国勢調査を基に調べたところ、00年に46.6%だった30代の持ち家比率は15年に52.3%まで高まった。これに合わせて若い世帯が抱える住宅ローンも増えた。総務省の家計調査(2人以上の世帯)によると、世帯主が30~39歳の家計の全負債額は18年に1329万円と、調査が始まった02年以降で最高。02年比で1.8倍だ。29歳以下も675万円と2.7倍になった。一方、50代の世帯の負債額はほぼ横ばいの傾向にある。根本氏は『持ち家比率の上昇は若年層に限られる』と指摘する。日銀の超低金利政策による住宅ローン金利の低下で購入を決めやすくなったことが知られるが、原因はほかにもある。一つには企業が社宅や賃貸補助を減らしたことが影響している。経団連によると企業の住宅関連の福利厚生費は17年度に従業員1人当たり月1万1436円。ピークの96年度に比べ3割減った。低負担で賃貸住宅に住みながら貯蓄する機会が減り、購入に踏み切るタイミングが早くなった。第一生命経済研究所の星野卓也氏は『大都市への人口集中が続き、都心の不動産は価値が下がりづらいという見方が購入動機になっている』と推測する。…生涯のコストを考えて購入しながらも、日常生活では節約を迫られる若者が多い。可処分所得に対する消費支出の割合を示す消費性向について内閣府は『若年層は低下傾向にある』と指摘し、理由として住宅ローンで支出の余力が落ちていることを挙げる。日本政策投資銀行は総務省による5年に1度の全国消費実態調査を基に2人以上の勤労者世帯を分析した。1999年には住宅ローンのある世帯の方が住宅ローンのない世帯より消費支出が多かったが、04年に逆転。14年にはローンのある世帯が月31万3000円だったのに対し、ローンなしの世帯は33万1000円だった。今は低位で安定している金利が上がれば、ローンを抱える世帯がさらに消費に慎重になる可能性もある。」(『日本経済新聞』2019.07.08)
●「建設工事従事者安全健康確保推進法(建設職人基本法)に基づく国の基本計画を踏まえた都道府県計画の策定が進んできた。国土交通省の調査によると、5月時点で計画を策定したのは16団体(2月時点5団体)。策定の意向は29団体あった。国交省では、工事従事者の安全と健康の確保する取り組みは処遇改善につながり、担い手の確保育成にとって重要だとし、計画の策定と推進を後押しする。」(『建設工業新聞』2019.07.01)
●「東京都は2020年東京五輪・パラリンピック開催時に備え、今月から来月にかけて試行する都発注工事の調整で取り組み内容を明らかにした。受注者の負担にならない範囲で試行への協力を依頼。大会期間に相当する集中取り組み期間(土日を除く22日~8月2日、同19~30日)に都内全域で施工している約2000現場の約6割で、工事車両の削減やルート変更、休工日の振り替えなどの混雑回避策を講じる。試行内容の効果を検証した上で、来夏の大会本番時に取り入れる調整方法を検討する。…都は五輪開幕1年前の今月24日を試行の『コア日』と位置付け、より多くの受注者に協力を要請。同日に合わせ現場の休工日を設定するといった取り組みで、協力現場は集中取り組み期間中で最多となる約1500現場に達する見込みだ。試行後は担当部署単位で取り組み状況を集約し効果や課題などを検証。データを基に大会本番時の工事調整の具体策を詰める。具体策の取りまとめに当たっては、都の年間発注量を維持することを前提とする。」(『建設工業新聞』2019.07.03)
●「国土交通省は、ことしの通常国会で成立した改正建設業法で規定した工期の適正化に関連する制度の方向性を提示した。新たに盛り込んだ『著しく短い工期による請負契約の禁止』などについて、今後、政省令で定める事項の具体的なイメージや運用を例示。2020年秋の建設業法の施行までに整備する各項目を整理した。…中建審で検討する工期に関する基準については、定量的なものでなく、工期を設定する際に考慮すべき事項を盛り込む。例えば、全工期に共通する事項として、多雪や寒冷、多雨、強風などの自然的要因や、週休2日、祝日、年末年始、夏季休暇などの不稼働日を想定する。準備、施工、後片付けなど各工程で考慮すべき事項もそれぞれ規定する。設計変更については、工期の変更が認められないケースが多いことから重点的に確認する方針だ。著しく短い工期の判断基準は、工事の内容や工法、投入する人材や資材の量などに影響され、一律に判断することが困難なことから、許可行政庁が工事ごとに個別に判定する。判定は、休日や不稼働日など中建審が作成した工期に関する基準で示した事項が考慮されているかの確認、過去の同種類工事の実績との比較、建設業者が提出した工期の見積内容の精査を基に行うことになる。著しく短い工期の禁止に違反した場合の措置として、発注者に対しては、国交相などが勧告を行うことができる。必要に応じて報告または資料の提出を求めることも可能とし、勧告に応じない場合はその旨を公表する。違反者が建設業者である場合は、現行の建設業法に基づく勧告や指示処分の対象となる。また、公共工事の元請業者が下請業者と著しく短い工期で下請契約を締結していると疑われる場合は、工事発注者が許可行政庁にその旨を通知することも定められている。工期に影響を及ぼす事項としては、支持地盤深度や地下水位、地下埋設物、土壌汚染などの地中の状況、近隣対応、騒音振動、日照阻害などの周辺環境、設計図書に起因する調整、資材の調達を例示。注文者があらかじめ知っている情報を建設業者に提示することにより、手戻りを防止し、働き方改革の取り組みを促進する。」(『建設通信新聞』2019.07.12)
●「内閣官房国土強靭化推進室は、全地方自治体に求めている『国土強靭化地域計画』の策定状況をまとめた。7月1日時点で策定済みまたは策定中(予定含む)の市区町村(政令市除く)の割合を都道府県別に見ると、北海道と和歌山、鳥取の3道県がそれぞれ30%を上回る。10%以上30%未満が10県、1%以上10%未満は24都府県、ゼロが10府県となっている。」(『建設工業新聞』2019.07.12)
●「鹿島は建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用する取り組みとして、経験年数に応じた建設技能者個々の独自分類瞥導入する方向で検討している。CCUS登録者は、技能と経験に応じて4段階に分類される。まずは2種類のカードが発行される見通し。同社は当初から4段階に分け社内データを整備することで、建設技能者の確実なステップアップを後押しする。顔認証システムも併せて導入。本人確認の正確性向上や現場運営管理の効率化を図る。…CCUSでは当面、見習い技能者などが対象の『ホワイトカード』と登録基幹技能者を対象とする『ゴールドカード』の2種類が交付され、将来的に4段階となる予定。同社は先行する形で▽レベル1(初級・見習い技能者)▽レベル2(一人前の中堅技能者)▽レベル3(職長として従事できる技能者)▽レベル4(高度なマネジメントを有する技能者・登録基幹技能者など)―の4段階に分類し社内データを蓄積していく。さらに、1次下請の社員など技能者以外の現場従事者や技術者、管理者などを対象にした特殊カードも独自に発行する。」(『建設工業新聞』2019.07.02)
●「4月に本運用が始まった建設キャリアアップシステム(CCUS)。この3カ月で建設技能者の登録件数は着実に増え、6月末時点で約6万1000人(5月末約4万6000人、4月末約2万9000人)にキャリアアップカードが発行された。事業者の登録件数も6月末で約1万5000件となった。」(『建設工業新聞』2019.07.05)
●「国土交通省は5日、外国人の技能実習と外国人建設就労者受入事業(特定活動)の受入企業に求める基準を見直し、月給制や建設キャリアアップシステムの登録などを義務付ける内容の告示を制定・公布した。常勤職員数を上限とする新たな受入人数の制限も設ける。技能実習生の人数に関する制限は2022年4月1日から、それ以外の規定は20年1月1日から施行する。外国人技能実習生のうち、建設分野では、分野別の失踪者数が最多となっており、対応が求められていた。4月から新たな在留資格『特定技能』の運用が開始されたことを受け、技能実習制度・外国人建設就労者受入事業においても新制度との整合性を図りながら適正な運用を進める。技能実習に関しては、受入企業と技能実習生の双方の建設キャリアアップシステムの登録を義務付けるほか、建設業許可を必須とする。雇用主による労務管理、就労監理が難しいことや現場ごとに他業者との接触が多く、引き抜きの可能性が高いことなどの建設業特有の課題に、建設キャリアアップシステムを活用することで対応する。技能実習生の待遇面では、月給制を義務化する。具体的には、休業の場合も賃金の60%の報酬を支払うことや強制的な有給処理の禁止などを、近く策定するガイドラインで規定する。季節による受注量の変動に伴う手取り賃金の減少を軽減させ、毎月の収入を予見できるようにする。」(『建設通信新聞』2019.07.08)
●「厚生労働省は9日、副業・兼業をする人の労働時間について、従業員の健康確保を前線に、単月100時間未満を上限とする残業規制などを柔軟に適用する方針を示した。…月内にも報告書をまとめ、今秋にも労使の代表者で構成する労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で議論する。同日、有識者で構成する検討会で報告書案を示した。残業時間の上限規制について、事業主が健康確保措置を講じることを前提に、通算せず事業主ごとに管理することなどを示した。労働基準法では複数の職場で働く人の労働時間は通算すると規定している。規制改革会議の答申には『労働時間の把握、通算に関する現行制度の適切な見直し』が盛り込まれた。多様な働き方に合わせ、制度の見直しを求めていた。現在労基法では法定労働時間を1日8時間、週40時間と定めている。超えた場合には割増賃金を支払う必要があるが、この仕組みについても見直しを検討する。現在は通算した法定労働時間を超えた場合には、副業側の事業主が割増賃金を支払う必要がある。通算せず事業主ごとに支払いを義務付けるなど、実態に合った制度設計を求める。厚労首の報告書案では『あくまで考えられる選択肢の例示』と述べるにとどめている。月内にも最終的な報告書をまとめ、今後は労政審での議論に移る。」(『日本経済新聞』2019.07.10)
●「2020年開催の東京五輪・パラリンピックが1年後に迫り、五輪関連の工事需要に陰りが出ている。代表的な工事資材である建設用鋼材の価格が下落に転じたほか、生コンクリートの出荷もマイナスが続く。都心再開発は続くものの、米中摩擦を背景にした景況感の悪化で設備投資もペースダウンしている。内需の一角の減速は、国内景気に影を落としそうだ。新国立競技場(東京・新宿)は11月の完成を控え、工事は全体の9割ほどが終わった。選手村(東京・中央)も年末までの完成に向け、宿泊関連施設の部分は全体の8~9割まで工事が進む。建設需要の動向を示す代表的な工事資材は、建物の柱などに使う建設用鋼材だ。日本鉄鋼連盟(東京・中央)の推計ではホテルなど関連工事も含めた五輪向けの鋼材需要は200万~300万トン程度。普通鋼鋼材の年間生産量の3%程度にあたり、鋼材消費を支えていた。1964年の前回の東京五輪の時は競技施設のほか、開催に向けた首都高速道路の整備といったインフラ向けの工事需要も根強かった。ホテルなど民間の関連工事も活発で、開幕1年前になっても建設需要は底堅さをみせていた。今回はインフラ整備も限られ、施設工事が終盤を迎えると柱などに使うH形鋼の荷動きが鈍っている。日本製鉄の鋼材を扱う流通事業者で構成するときわ会の東京地区のH形鋼の出庫量は、5月が1万3700トンと前年同月を9%下回った。…建設用鋼材と並び、建設需要の動向を示すとされる生コンクリートも、東京都内で需要の鈍化が鮮明だ。都内の生コンメーカーで構成する東京地区生コンクリート協同組合(東京・中央)の5月の出荷量は前年同月比約2割減の23万7640立方メートル。4カ月連続で前年を割り込んだ。…特需の一服は建設各社の業況にも表れ始めた。売上高が4干億円を超える3月期決算のゼネコン(総合建設会社)8社の19年度の国内受注見通しは、前年度に比べ12.1%少ない約6兆3300億円にとどまりそうだ。6年ぶりの低水準を見込む。五輪特需の剥落は、まだら模様が続く国内景気の下押し要因になりそうだ。景況感は世界経済の減速で打撃を受ける製造業で悪化する一方、雇用など内需の改善が追い風の非製造業で底堅さを示すなど二極化しつつある。」(『日本経済新聞』2019.07.07)
●「東京商工リサーチが8日発表した2019年上半期(1~6月)の建設業の倒産件数は前年同期比3.6%減の694件だった。上半期としては11年連続で前年同期を下回った。負債総額は0.6%増の677億2000万円。負債5億円以上の倒産件数が7件増の21件と増え、負債を押し上げた。…同社は建設業の倒産規模が低水準で推移している一方、今後の経営リスクとして慢性的な人手不足や公共工事の入札不調・不落増加を列挙。民間工事では10月からの消費税引き上げ前の駆け込み需要が減る可能性を挙げた。」(『建設工業新聞』2019.07.09)
●「鹿島は、建築現場で発生する二酸化炭素(CO₂)排出量などを月単位で集計する環境データ評価システム『edes(イーデス)』を開発した。建設廃棄物発生量や水使用量を含めて『見える化』することで、対策の効果や削減目標との乖離が確認できるようになる。全国の現場に順次展開し、2020年度を目標に土木現場を含む全ての現場に導入する予定。蓄積された環境データを分析・解析することでより効果的環境対策を探り、全社展開を図って、CO₂排出削減の加速化につなげる。」(『建設工業新聞』2019.07.12)
●「レオパレス21は12日、アパートの施工不良問題で267棟が消防法もしくは火災予防条例の基準に適合しない恐れがあると発表した。天井部に延焼を防ぐ部材がなかったり、外壁などに不具合が見つかった物件で、消火栓などの設置義務に違反している可能性があるという。ほかにも消防法の適合性の確認が必要な物件が3964棟あり、拡大する恐れがある。レオパレスが施工した全棟にあたる3万9085棟を調査する過程で判明した。一定以上の面積のアパートだと消火栓や自動火災報知機などを設置する義務がある。天井部や屋根裏、外壁などで不備が見つかった同社のアパートでは、これらの設備が設置されていなかった。該当するアパートは1993~2014年に建てたもので、28都府県と広範囲にわたる。東京都と神奈川県がそれぞれ56棟と最も多い。違反の可能性があるアパートには、廊下や室内に消火栓や火災報知機などの設置を進める。安全性には問題はないとして、入居者に住み替えは求めないという。」(『日本経済新聞』2019.07.13)
●「国土交通省の有識者会議は6月28日、コンパクトシティー政策と都市居住の安全確保をテーマに、2月から検討した結果の中間取りまとめ案を議論した。立地適正化計画の制度・運用を不断に改善して実効性を高めることや、市街地の無秩序な拡散を抑制することなど、コンパクトシティー政策を次のステージへ進めるために必要な施策を提言した。夏にも中間取りまとめを公表する。」(『建設通信新聞』2019.07.01)
●「停滞する梅雨前線の影響で記録的な大雨となっている九州地方で3日、自治体の避難指示、避難勧告が拡大した。鹿児島県内では堤防の決壊や土砂崩れが発生。企業活動にも影響が広がった。…3日の避難指示の対象は鹿児島、宮崎両県で109万人を超えた。避難指示は差し迫った危険がある場合に自治体が指定の避難所に避難するよう住民に指示するもの。2018年7月の西日本豪雨の際は広島県などで最大約91万世帯、約200万人に避難指示が出た。気象庁は3日、非常に激しい雨が同じ地域で数時間続いた場合、特別警報を出す可能性もあると表明した。特別警報は5段階の警戒レベルで最も危険度が高い『レベル5』に匹敵する。」(『日本経済新聞』2019.07.04)
●「国土交通省は、2020年度からの次期『国土調査事業十箇年計画』の策定に向け、地籍調査と土地分類調査の具体的方策の方向性に関する報告書をまとめた。地籍調査は、特に優先的に調査を実施する地域を整理するとともに、施策分野ごとの達成状況を表す指標を設定するなど調査区域の重点化を図る。あわせて、空中写真などのリモートセンシングデータを活用した新手法の導入や官民境界の先行的調査、手続き面の抜本的な見直しなど地籍調査を円滑化・迅速化するための措置を盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2019.07.04)
●「国土交通省は、首都圏を流れる利根川・荒川水系の水質源開発基本計画をリスク管理型へ抜本的に見直す。年度内に計画案をまとめる。同計画は全国7水系で定めており、リスク管理型への見直しは吉野川水系に続いて2例目。定量的な供給目標量を設定してダムを整備するなど需要主導型で水資源開発を進めてきたが、国土審議会の2017年5月の答申を踏まえ、危機的な渇水などのリスクに対応する視点を加えて計画を変更し、『水資源開発の促進』から『水の安定供給』へ転換する。…需要主導型で策定した現計画は、発生頻度が比較的高い渇水時を基準に水の安定供給を目指す内容だった。リスク管理型の計画では、危機的な渇水など『発生頻度は低いものの、水供給に影響が大きいリスク』を供給の目標に追加する。定量的な供給目標量は設定しない。目標の達成に必要な対策はハードに加え、ソフトを位置付ける。計画期間はおおむね10カ年に設定し、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを導入。中間年に対策効果などを点検し、必要に応じて計画を見直す。同計画は、産業と人口の約7割が集中する▽利根川水系▽荒川水系▽豊川水系▽木曽川水系▽淀川水系▽吉野川水系▽筑後川水系――の全国7水系で策定しており、利根川水系と荒川水系は1つの計画として定めている。利根川・荒川水系の現計画は、ハード対策に水資源機構が南摩ダムを建設する思川開発事業や、国土交通省の八ッ場ダム建設事業、霞ケ浦導水事業などを位置付けている。」(『建設通信新聞』2019.07.05)
●「復興庁は、東日本大震災の復興・創生期間が2020年度までとなっていることから、期間が終了する21年度以降の復興の基本方針を年内に策定する。策定に当たってこれまで実施した復興施策の効果検証などを行うため、有識者会議である復興推進委員会の下に『東日本大震災の復興施策の総括に関するワーキンググループ』を設置し、復興施策の総括を行うことを決めた。ワーキンググループ(WG)を5回程度開催し、10月をめどに総括を取りまとめる。…WGの調査審議項目は、▽復興の各分野(被災者支援、住まいとまちの復興、産業・生業の再生、原子力災害からの復興・再生など)の総括▽主要な事業についての効果検証▽得られた教訓や課題の取りまとめ――の3項目。これを年内にまとめる『復興・創生期間後の復興に関する基本方針』に反映する。」(『建設通信新聞』2019.07.05)
●「東京港の混雑が深刻さを増し、港湾物流がパンク寸前に陥っている。さらに2020年東京五輪・パラリンピックも迫り、東京港を管理する東京都が混雑対策を進めている。東京港の混雑はなぜこれほど深刻化したのか。背景を探ると、首都圏の主要道路と比べて整備が進まなかった状況が浮かび上がる。東京港の混雑対策は、東京のインフラ整備のひずみを映し出している。」(『日本経済新聞』2019.07.09)
●「環境省は、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染で出た除去土壌などを貯蔵する中間貯蔵施設(福島県大熊、双葉両町)建設地の地権者2360人(登記記録)の、2019年6月30日時点の用地交渉状況(確定値)を5日にまとめ、全体面積約1600ヘクタールの69.9%に当たる約1118ヘクタールを契約したと公表した。民有地の取得は約1079ヘクタールで、民有地取得予定面積のうち84.9%を取得した。全体面積約1600ヘクタールのうち、公有地などは約21%の約330ヘクタール。これら公有地などには、道路や水路など今後も元の機能を維持する土地も含む。契約済みの土地は、公有地約39ヘクタール、民有地の約1079ヘクタールの計約1118ヘクタールで、契約済みの土地は19年5月末時点と比べ1.8ヘクタール増えた。」(『建設通信新聞』2019.07.12)
●「国内で消費される全エネルギー量の約3割を占める住宅・建築物分野。産業や運輸の他分野に比べて増加が顕著であり、エネルギー使用の合理化が急務となっている。今年の通常国会で成立した『改正建築物省エネ法』には、省エネルギー基準への適合義務を建築確認要件にする建築物の対象範囲の拡大など、新たな対策が盛り込まれた。国土交通、経済産業両省は改正法の施行に向け、住宅などに課すエネルギー消費性能基準などの検討に入った。省エネ基準の適合義務範囲は現在、業務ビルを中心とする大規模非住宅建築物(延べ床面積2000平方メートル以上)の新築時に限っている。法改正によって中規模非住宅(300平方メートル以上2000平方メートル未満)を加える。建築物全体に占めるエネ消費量割合が高い中規模非住宅(2017年度15.9%)の対策を強化する。街区単位で複数以上の業務ビルの連携による省エネ対策も促す。省エネ設備を共同利用する場合、建築物内の設置スペースを容積率に算入しない特例措置を講じる。省エネ基準の適合義務対象になっていないマンションは所管行政庁による監督体制を合理化・強化。民間審査機関を活用し、省エネ基準に適合しない新築計画を確認する。必要に応じ指示や命令を出す。小規模住宅・非住宅(300平方メートル未満)の省エネ対策も担保。新築設計を行う建築士に対し、省エネ基準への適合可否などを建築主に必ず説明するよう義務付ける制度を設ける。建て売り一戸建て住宅を供給する大手事業者向けの『住宅トップランナー制度』(省エネ基準を上回る基準)も拡大。対象に注文一戸建て住宅や賃貸アパートを大量供給する大手事業者も加える。国の勧告・命令により実効性を担保する。地域ごとに異なる気候や風土の特殊性を踏まえ、地方自治体が独自に条例で省エネ基準を強化できる仕組みも設ける。」(『建設工業新聞』2019.07.12)