情勢の特徴 - 2019年7月後半
●「後継者難などで廃業した都市部の町工場の跡地に住宅が建ち、周辺の町工場が郊外への移設や廃業を余儀なくされている。後から来た近隣住民との間で、騒音や異臭を巡ってトラブルになる『住工混在問題』が深刻になっているためだ。都心部への人口の一極集中が、『大廃業時代』の中小企業の生き残りをさらに難しくしている。…戦後、住工混在問題は2度の大きな波があった。高度成長期には東京都大田区などで住宅が急増し、工場群は押し出されるように川崎市や横浜市などに移った。バブル期は地価の上昇で一等地に近い町工場の周辺で宅地化が進んだ。ただ大企業の海外生産移転で町工場が淘汰され、問題は顕在化しなかった。3回目の波と今回の背景には都心部への人口の一極集中がある。町工場が操業する地域の大部分は住宅も工場も建てられる『準工業地域』だ。東京都世田谷区や目黒区など『住居専用地域』の地価が高止まりし、消費者が手を出しやすい準工業地域の宅地化が進む。市区町村の人口が増えると町工場が減る相関関係がある。住民基本台帳と経済センサスをもとに算出したところ、2016年時点の事業所数の12年と比べた減少率は東京都大田区や墨田区、川崎市中原区など人口が増えた地区で軒並み全国平均を大きく上回った。問題解決に向け、町工場は理解を求めようと動く。川崎市にある工業協同組合は約5年前から近隣住民を対象に工場見学ツアーを始めた。…自治体の支援も広がる。墨田区は中小企業と近隣住民のトラブル防止に特化した融資制度を19年度に設けた。川崎市は17年度から町工場を新増設する際、3千万円を上限に工事費用などを助成しており、約20件の申請があった。町工場と住宅をすみ分ける動きもある。大阪府東大阪市は17年、一部地域で住宅の建設を制限し、混在が進まないようにした。…25年までに経営者が70歳を超える企業のうち、127万社で後継者が未定――。中小企業庁は約650万人の雇用が失われ国内総生産(GDP)が22兆円損失すると試算する。サプライチェーン(部品供給網)に影響が出かねない危機が迫る。町工場は近年、ロボットやドローン(小型無人機)を開発する新興企業と連携して試作をするなど、日本の技術力を底上げする機能も持ちつつある。ものづくりの裾野を守るため従来の仕組みを見直す転換点にある。」(『日本経済新聞』2019.07.25)
●「厚生労働省は全会社員を対象に、希望すれば個人型確定拠出年金(イデコ)に入れるように基準を緩める検討に入った。勤め先で企業型の確定拠出年金に入っていても、追加で個人型のイデコにも加入し、併用できるようにする。少子高齢化の進展で公的年金は先細りが避けられない。自力による資産形成の機会を増やし、老後の備えを後押しする。老後資金が2000万円不足するとした金融庁審議会の報告もあって、若い世代を中心に資産形成への関心が高まっている。公的年金を補完するイデコや少額投資非課税制度(NISA)を使って、老後資金を若いうちから積み立てる会社員が増えている。厚労省が仕組みを見直す確定拠出年金は一定額を毎月、預金や投資信託などの金融商品で運用し、60歳以降に年金として受け取る。税制上のメリットもある。確定拠出年金は企業が掛け金を拠出する企業型と個人が自ら積み立てる個人型(イデコ)の2つがある。3月末時点で700万人が加入する企業型に対して、イデコは120万人で、普及が課題となっている。企業型を導入している会社でも労使の合意があれば、社員がイデコを併用できる。しかし、今の仕組みは、企業型のみを提供する会社が社員のイデコ加入を認める場合、企業の拠出金の上限額を5.5万円から3.5万円に引き下げる必要がある。社員が受け取る年金が減る可能性があり、企業や働く人から見直しを求める声が出ていた。厚労省は社員がイデコに加入する場合でも、企業型の掛け金の上限額を下げない方向で制度を見直す。社会保障審議会(厚労相の諮問機関)で議論し、財務省や与党と調整を進める。20年度の税制改正要望に盛り込み、20年の通常国会に関連法の改正案提出をめざす。」(『日本経済新聞』2019.07.29)
●「北海道建設業信用保証、東日本建設業保証、西日本建設業保証は、前払金保証実績に基づく2019年度第1四半期(4-6月)の全国の公共工事動向をまとめた。請負金額は前年同期比4.2%増の5兆1011億円。地区別にみると、北海道、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国が軒並み増加した一方、復興事業の落ち込みなどにより東北、九州で減少した。…都道府県別では30道府県が増加、17都府県が減少している。自然災害に伴う復興事業の本格化、『防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策』の影響などが各地でみられる一方、自然災害の復興事業が落ち着いたことによる反動減も散見される。…発注機関別では、国が前年同期とほぼ同額の8026億4700万円。独立行政法人等が0.2%減の9269億9800万円、都道府県が2.2%増の1兆2248億6200万円、市区町村が8.2%増の1兆8349億9700万円、地方公社が4.7%増の415億3700万円、その他が16.6%増の2701億3400万円。」(『建設通信新聞』2019.07.18)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、都道府県と政令市、県庁所在市の最低制限価格、低入札価格調査制度に関する運用状況をまとめた。中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)の最新モデル以上は6月時点で、47自治体。改定前の旧モデルは28自治体、その他独自算定式が18自治体、算定式非公表が5自治体となっている。」(『建設通信新聞』2019.07.29)
●「厚生労働省は、産業別・都道府県別の外国人労働者(技能実習含む)の雇用状況をまとめた(2018年10月末現在)。建設業は雇用事業所数、労働者数とも前年同月と比べて2割以上増え、伸び率は全産業の中でトップ。和歌山県を除く全地域で軒並み上昇している。在留資格は特定活動、国籍はベトナム、ネパール、インドネシアが拡大傾向にある。建設業の外国人雇用事業所数は21.3%増の2万0264カ所(全産業の占有率は0.8%増の9.4%)。製造業、情報通信業、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業、教育・学習支援業などの伸び率が1割程度にとどまる中、大幅に増加している。労働者数も24.4%増の6万8604人(0.4%増の4.7%)で、伸び率は他産業を大きく上回っている。…在留資格は特定活動が64.9%増の3280人で拡大している。このほか、専門的・技術的分野の在留資格が35.7%増の5994人(このうち技術・人文知識・国際業務は37.1%増の4946人)、技能実習が25.6%増の4万5990人、資格外活動が10.0%増の442人、身分に基づく在留資格が9.3%増の1万2894人。国籍はベトナムが36.1%増の3万1949人で、伸び率、人数ともトップ。中国が8.7%増の1万2696人、韓国が12.1%増の995人、フィリピンが16.4%増の8144人、ネパールが27.2%の420人、ブラジルが8.2%増の2584人、ペルーが9.9%増の806人、G7・8+オーストラリア・ニュージーランドが19.3%増の437人。インドネシアは今回調査から新設され、3766人に上っている。全産業の外国人労働者数は14.2%増の146万0463人。過去最高を更新した。」(『建設通信新聞』2019.07.16)
●「厚生労働省が16日に発表した2019年上半期(1~6月)の労働災害発生状況調査結果(速報値)によると、建設業の死傷者数(休業4日以上)は前年同期比1.1%減の5875人となった。死亡者数は10.4%減の103人。業種別割合は全体の33.7%を占め、2位の製造業(死亡者数55人)や3位の陸上貨物運送事業(37人)を大きく上回っている。建設業の死傷者数を事故の型別に見ると、『墜落・転落』の2049人(前年同期比54人減)が突出する。次いで『はさまれ・巻き込まれ』719人(33人増)『転倒』671人(30人減)、『飛来・落下』537人(18人減)、『切れ・こすれ』464人(32人増)の順だった。死亡者数の事故類型別内訳は『墜落・転落』が44人(6人減)と最多。次いで『崩壌・倒壊』が15人(増減無し)、『交通事故(道路)』が11人(4人増)、『激突され』が10人(5人増)、『はさまれ・巻き込まれ』が9人(6人減)と続いた。」(『建設工業新聞』2019.07.17)
●安倍晋三首相は参院選挙で「この6年間で雇用が大きく改善し、380万人が仕事に就いた」と繰り返している。最も増えたのは「暮らせない年金」のせいで働かざるをえない高齢者だ。…総務省の「労働力調査詳細集計」によると、2012年から18年の間で就業者は384万人増えた。この間の増減を年齢階層ごとにみると、最も増えたのは65歳以上の255万人増。現役世代の25~64歳は38万人しか増えていない。特に25~34歳、35~44歳、55~64歳の層では就業者が減っている。働く中高年が増える理由は…「生活のため」。厚生労働省の「労働経済白書」2018年版によると、仕事をしている理由に生活費や収入を挙げた中高年は65歳で74.5%、70歳でも58.2%。…学生アルバイトの増加も就業者数を押し上げている。労働力調査によると、高校生や大学生など学校に通いながら働く15~24歳の就業者は6年間で68万人増えた。高い大学授業料や生活費のため、働かなければ勉学を続けられない若者が安倍政権下で増えた。「雇用改善」どころか生活苦が深まった結果だ。(『しんぶん赤旗』2019.07.18より抜粋。)
●「茂木敏充経済財政・再生相は23日の閣議に2019年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。少子高齢化と人口減少が進む日本で企業が収益や生産性を高めるためには、働き手の多様化を進める必要があると分析。多様な人材を活用していくために、年功的な人事や長時間労働など『日本的な雇用慣行の見直し』が欠かせないと強調した。白書は内閣府が日本経済の現状を毎年分析するもので、今後の政策立案の指針の一つとなる。今回の副題は『「令和」新時代の日本経済』。生産性の向上を通じて、潜在成長率を高める必要性を訴えた。白書によると、日本の生産年齢人口(15~64歳)に対する高齢者人口(65歳~)の割合は43%で、世界の先進国平均より高い。2040年には64%まで増加することが見込まれている。政府は年齢や性別にかかわらず多様な人材を活用することで人手不足を緩和する働き方改革を進めてきた。高齢者の雇用拡大を巡っては、若者の処遇に影響を与えるとの懸念も根強いが、白書が上場企業の実際の状況を分析したところ、高齢者雇用の増加が若年層の賃金や雇用を抑制する関係性は見られなかったという。外国人労働者に関しても日本人雇用者との関係は補完関係にあるとの見解を示した。人材の多様性は生産性の向上につながることも分かった。企業における人材の多様性と収益・生産性の関係を検証したところ、男性と女性が平等に活躍している企業ほど収益率が向上している傾向が明らかになった。人材の多様性が高まった企業の生産性は、年率1.3%程度高まるとの分析を示した。内閣府による企業の意識調査によると、多様な人材が働く職場では、柔軟に働ける制度や、仕事の範囲・評価制度の明確化が求められている。『同質性と年功を基準とする人事制度では、個人の状況に応じた適切な評価ができない』として、日本型の雇用慣行の見直しを迫った。」(『日本経済新聞』2019.07.23)
●「厚生労働省が23日に発表した2019年5月分の毎月勤労統計調査結果(確報値)によると、建設業就業者に支払われた現金給与総額(1人当たり平均)は前年同月比1.0%増の35万4052円だった。…建設業の常用雇用労働者総数は2.5%増の274.1万人。常用雇用労働者の入職率(新たに就職した人の割合)は0.24ポイント高い1.46%、離職率は0.08ポイント高い1.22%だった。建設業の月間総実労働時間は5.9%減の153.2時間。内訳は所定内労働時間が6.3%減の139.7時間、所定外労働時間が0.7%減の13.5時間。出勤日数は1.2日少ない18.7日となった。」(『建設工業新聞』2019.07.24)
●「内閣府は24日、フリーランスとして働く人の数を306万人から341万人程度とする推計を公表した。国内の就業者全体の約5%を占める。内閣府がフリーランスの人数を推計するのは初めて。政府は多様で柔軟な働き方を後押ししており、フリーランスの実態を把握することで今後の政策に役立てる考えだ。日本ではフリーランスを直接の調査対象とする公的統計は存在せず、内閣府は今回アンケート調査を実施して人数を推計した。会社員らが副業でフリーランスとして働く場合も含んでいる。最大の推計値である341万人には個人事業主だけでなく、法人を設立した人も含まれる。341万人のうち、本業がフリーランスの労働者が228万人、副業が112万人と推計した。就業者全体における本業がフリーランスの人の割合は3%程度で、米国の6.9%に比べると半分以下にとどまる。」(『日本経済新聞』2019.07.25)
●「特定技能による外国人受け入れを行う11職種のうち、業務区分『土工』について、国土交通省は24日、同省内で関係団体との意見交換の場を設けた。人力、機械などによる掘削や埋め戻し、盛り土など基本的な土工業務に加えて、資機材・土砂の搬入・運搬、足場の組立・解体、薬品の散布・混合といった関連業務もこなす汎用性の高い多能工的な役割を求める方向で認識を共有。少人数で作業を行う地方の土木工事などでは作業のボリュームゾーンを担えることになるため、受け入れに関心を持つ団体が増えている。…『土工』については、外国人の技能実習を行っていないことから、来年2月に実施する海外試験の合格者が初の受け入れ人材となる。今後は、『特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領―建設分野の基準について―』で定められている土工の業務内容などについて、7月中に意見を受け付け、方向性を固める。あわせて、JACの非会員で受け入れの希望がある団体に対しては、加入を呼び掛けた。」(『建設通信新聞』2019.07.25)
●労働者の副業や兼業をする際の労働時間について、厚生労働省の検討会は25日、『複数職場の労働時間は通算せず、事業所ごとに管理する』ことを盛り込んだ報告書をまとめた。長時間労働を防ぐための労働時間の『通算規定』が緩和され、長時間労働を助長する危険な内容だ。…労働基準法では、複数の職場で働く場合の労働時間は通算するとしている。労働時間は指針で、使用者が客観的な方法で把握するよう求めている。報告書案では、『使用者の時間管理がしやすくなる』などとして、労働時間を通算せず、それぞれの企業で上限規制にもとづき労働時間を管理すればよいとした。…通算する場合でも、本業と副業の企業ごとに1カ月単位など長い期間で上限を決めて、「労働者の自己申告」をもとに時間内に収めればよいとする選択肢も示した。…残業代については、①労働者の自己申告を前提に所定労働時間だけを通算して支払う②通算せずに事業主ごとに支払う―の2案を示した。いずれも労働時間の把握や歯止め効果が後退し、残業代不払いや長時間労働を生む危険な内容である。(『しんぶん赤旗』2019.07.27より抜粋。)
●「日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)は、働き方改革で労働時間が減る技能者に支払う賃金をどの程度上げるべきかを調査した結果をまとめた。週休2日や年次有給休暇の取得などで就労日数が減少した際に、技能者の7割弱を占める日給や日給月給による給与目減りを防ぐには、国土交通省が設定した労務費に掛け合わせる補正係数『1.05』を『1.17~1.23』に改める必要があるとした。…18年度の雇用実態調査で把握した関西地区の型枠大工の平均日給(職長l万9205円、職人1万6976円)を使い、影響度を調べた。就労日数は、2018年の277日から4週8休、有給休暇(年5日の法定義務と想定される取得日数)などを差し引いた221日と仮定。給与の目減りを防ぐには労務費を15%引き上げることに加え、有給休暇などに伴い管理費が労務費相当で2~8%上がるとし、これらを合算して17~23%のコストアップを反映する必要があるとした。適正な工期の確保も求めた。」(『建設工業新聞』2019.07.29)
●「総務省が30日発表した2019年6月の労働力調査によると、女性の就業者数(原数値)は3003万人と、比較可能な1953年以降で初めて3千万人を突破した。前年同月に比べて53万人増え、就業者全体の伸びの9割近くを女性が占めている。専業主婦らが新たに仕事に就くことが増えているためだ。…男女合わせた就業者は6747万人。女性の就業者が全体の44.5%を占め、09年平均と比べて2.6ポイント上昇した。欧米の主要先進国の大半は40%台後半で、日本もその水準に近づきつつある。女性の就業者を年代別にみると、65歳以上の伸びが目立ち、19年6月は359万人と09年平均と比べて145万人増えた。一方、65歳以上の女性の就業率は17.7%で、男性(34.3%)と比べて低く、引き続き増加が見込まれる。…女性の生産年齢人口(15~64歳)の就業率は71.3%で、前年同月に比べて1.9ポイント上昇し過去最高になった。年代別では15~24歳は50.5%と、同年代の男性を上回る。25~34歳は78.1%、35~44歳は77.8%と10年前より10ポイント以上高い。女性の場合、30歳前後から結婚や出産を機に仕事を辞め、就業率が下がる『M字カーブ』が課題とされてきたが、解消に向かっている。…ただ働き方の多くはパートなど非正規で、女性の雇用者全体の55%を占める。男性の非正規は23%で2倍以上の差がある。人手不足を補う性格が根強いため、例えば女性管理職の割合は欧米と比べて低い。独立行政法人の労働政策研究・研修機構によると、日本の管理職に占める女性の比率は16年時点で12.9%。一方、米国は43.8%、フランスは32.9%だ。日本では終身雇用と長時間労働を前提とする働き方がなお主流だ。出産や育児で休職や短時間労働が必要になる女性は昇進する際、依然として不利になりやすい。人口の減少が続くなか、安定した経済成長を保つためには働き手の多様化が欠かせない。勤務年数でなく、能力に応じて評価する仕組みづくりなど、男女を問わず働きやすい環境を整える必要がある。」(『日本経済新聞』2019.07.30)
●「中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は31日、2019年度の全国の最低賃金の目安を27円引き上げて時給901円にする方針を決めた。上げ幅は3.1%で、引き上げ額は過去最大となった。三大都市圏は28円上がり、東京都と神奈川県は初めて1000円を超える。大阪府は964円となる。持続的な賃上げには企業の生産性向上が課題だ。」(『日本経済新聞』2019.07.31)
●「国土交通省は、i-Constructionを始めとする生産性向上に向けたこれまでの取り組みとその効果・課題を分析し、今後の方向性をまとめた。維持修繕などICT対象工種の拡大や都道府県と人口10万人以上の市を中心とした平準化率の向上促進、BIM/CIMの適用拡大などを提示。個別の取り組みだけでなく、現場全体で生産性がどのように向上しているか、具体的な導入効果の把握に向けた検討も進める。」(『建設通信新聞』2019.07.18)
●「大林組は鉄筋構造と同様の強度を持つ、純木造の高層ビルを2020年3月に着工する。横浜市の自社研修施設として建設。地上10階建ての高層ビルを純木造で実現するのは国内初だという。22年3月の竣工を目指す。…国内では環境保全や土砂災害防止のため、人工林の維持管理が課題になっている。国内では樹齢50年を超える人工林の面積が全体の65%を占め、高度成長期に植えた木が活用時期を迎えている。林業育成のためにも、木材需要の約4割を占める建設現場での取り組みが求められていた。高層ビルでの木材活用に力を入れる企業は増えている。竹中工務店は木造と鉄筋コンクリートなどを組み合わせる技術を開発しており、20年には12階建ての集合住宅が竣工する予定だ。住友林業は41年までに、全体の9割が木材となる高さ350メートルの超高層ビルを建てる構想を発表している。」(『日本経済新聞』2019.07.19)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、法人会員を対象とした2018年度の決算(単体)状況調査結果をまとめた。売上高総額は前年度比5.9%増の16兆4780億円、完成工事高も5.7%増の15兆6750億円と過去5年で最高となった。完成工事総利益(工事粗利)の総額は1.3%減の1兆9060億円、工事粗利率は0.8ポイント減の12.2%と若干落ち込んだが、依然として高水準を維持している。」(『建設通信新聞』2019.07.24)
●「消費税率の10%への引き上げが10月に予定されているが、前々回、前回の消費税率引き上げの際と比べ、懸念されていた駆け込み需要の動きが鈍い。帝国データバンクが全国の企業を対象に今年6月に実施した消費税率引き上げに対する意識調査(有効回答9977社)によると、建設業(1498社)は45.9%が『駆け込み需要はない』と回答。全体でも約半数(48.2%)が『ない』と答えた。ただし、『既に駆け込み需要がある』との回答は、建設業は19.6%に止まったが、他業界に比べると突出して高い。」(『日本住宅新聞』2019.07.25)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)が18日発表した2019年上半期(1~6月)の首都圏のマンション発売戸数は前年同期比13%減の1万3436戸だった。上半期として3年ぶりの減少で、バブル崩壊後の1992年(1万959戸)以来の低水準になった。価格高騰で購入客の新築離れが進んだのが主因。10月の消費増税前の駆け込み需要も空振りに終わった。新築マンションの販売不振を受け、在庫が積み増している。6月末時点の在庫は7438戸と、1年前に比べ1070戸増えた。…販売不振が目立つ中、19年上半期のマンション価格は平均で6137万円と前年同期比2.9%上昇。7年連続で上がった。都心部を中心に不動産価格が上昇したほか、駅近くなど需要が底堅い好立地のマンション開発が相次いだことが価格を押し上げた。しかし、購入客の手が届きにくい水準にまで値上がりした結果、発売月に売れた割合を示す契約率は66.5%と、売れ行きの好不調の目安となる7割を上期としては4年連続で下回った。…一方、中古マンションの人気は高まっている。東日本不動産流通機構(同・千代田)によると、首都圏の成約件数は18年に新築マンションを3年連続で上回った。過去数年間に発売し、立地・規模の優れた物件が中古市場に出回り始めている。」(『日本経済新聞』2019.07.19)
●「東京電力ホールディングスは福島第2原子力発電所の全4基を廃炉にする。月末の取締役会で正式に決める。原発事故を起こした福島第1を除くと、東電が廃炉を決めるのは初めて。東電はこれまで福島第2について廃炉を検討すると表明していたが、具体的な廃炉作業が始まる。福島第2の廃炉費用は計2700億円以上と見積もられていた。東電の準備金だけでは足りないが、国が廃炉の会計制度を見直し大きな損失を一度に計上しなくてもよくなったことや、専門知識を持つ人手の確保などのめどがついたと判断。近く福島県の内堀雅雄知事に決定を伝え、東電は月末の取締役会で正式に決める。19年度中に廃止措置計画を原子力規制委員会に提出する方針だ。原発事故を起こした福島第1と合わせ、福島県内の10基全てが廃炉になる。福島第1と並行し、福島第2の全4基を約40年かけて廃炉にする。東電が持つ原発は柏崎刈羽(新潟県)だけとなる。」(『日本経済新聞』2019.07.20)
●「開幕まで残り1年となった2020年東京五輪・パラリンピックの大会予算は1兆3500億円と見積もられている。大会組織委員会や東京都は招致段階で掲げた『コンパクト五輪』を捨てて計画見直しを進めてきたが、コスト膨張の圧力は消えていない。大会の成功とコスト抑制、2つの命題を解く難しい道のりが続く。1年後の五輪の競技会場は4割が都外となっている。13年の招致当時、臨海部に新施設を整備し、選手村の半径8キロに会場の85%を集中させるとした『コンパクト五輪』の姿は大きく変わった。招致段階の大会予算は総額約7千億円とされていたが、その後の試算で計画通りに実行すれば2兆~3兆円になる可能性があると判明した。都は夢の島に建設予定だったバスケットボール会場やバドミントン会場などの建設を断念し、他の既存施設に切り替えるなどのコスト圧縮を進めた。その結果、18年12月発表されたのが1兆3500億円という額だった。」(『日本経済新聞』2019.07.24)
●「2020東京五輪・パラリンピック関連施設の整備工事は順調に進行している。施設整備の進捗率は軒並み7~9割に達している。多くは外観がほぼ完成し、内装工事や設備工事の段階に入っている。メインスタジアムとなる新国立競技場(東京都新宿区、渋谷区)は5月中旬に最難関とされた屋根工事が完了した。大屋根の架構に段階的なリフトアップ工法を採用した東京アクアティクスセンター(東京都江東区)と有明体操競技場(同)、屋根を分割して組み立てて躯体上部をスライドさせながら架設した有明アリーナ(同)も屋根工事が既に完了。馬事公苑(東京都世田谷区)は競技関連施設がほぼ完成した。施工者の経営破綻を受け再発注した有明テニスの森(同)の屋外テニスコートなどの整備工事は2020年3月(当初19年7月末)、カヌー・スラロームセンター(東京都江戸川区)の管理棟の建設工事は19年12月(当初19年5月)に竣工時期を変更している。一部施設は既に完成し、供用を開始している。夢の島公園アーチェリー場(東京都江東区)は4月、海の森水上競技場(同)は6月、カヌー・スラロームセンターと大井ホッケー競技場(東京都品川区)は7月にそれぞれ供用開始した。」(『建設工業新聞』2019.07.24)
●「開催が1年後に迫った2020年東京五輪・パラリンピックに備え、路上などの工事を調整する取り組みの試行が22日から始まった。国や東京都などの道路管理者に加えて、電力、ガスといったインフラ事業者も対応を開始。受注者に無理のない範囲で交通規制を伴う工事などを抑制し、工事関係車両の運行も控えてもらう。道路交通のデータを収集・分析し、来夏の大会本番時に向けた対策検討に役立てる。」(『建設工業新聞』2019.07.24)
●「水害や土砂災害の逃げ遅れを防ぐため、5月末から5段階の『警戒レベル』が導入された。7月上旬に九州の大雨で『全員避難』を意味するレベル4が出た際、避難率は1%未満にとどまり、住民の避難行動に大きな変化は見られなかった。危険度を分かりやすく伝えるという狙いを生かすには、今後の周知、浸透が課題となる。6月下旬から7月上旬に活発化した梅雨前線が九州南部に大雨をもたらし、鹿児島市は3日午前9時半すぎ、59万人超の全市民を対象にレベル4の避難指示を出した。テレビで避難の呼びかけが繰り返されるなか、同市内に住む会社員の男性(35)は『家の近くに川はないし大丈夫だろう』といつも通り出勤。夕方に帰宅すると近くの崖が大きく崩れていたため、慌てて家族と避難所に身を寄せた。男性は『危なかった』と避難の遅れを反省する一方『レベル4と言われても、どのくらい危険なのか分からなかった』と振り返る。レベル3以上の警戒レベルは市町村が判断して出すことになっており、レベル3は『高齢者等は避難』、4は『全員避難』、5は既に災害が発生している状況を示す。総務省消防庁によると、4日早朝時点で、鹿児島、宮崎、熊本の3県でレベル4の避難指示・勧告の対象は約183万人に上った。このうち実際に避難所に入ったのは7871人で、避難率は0.43%にとどまった。避難所以外の安全な場所に避難した人もいた可能性はあるが、特に避難行動を取らなかった住民が多かったとみられる。…大雨の際に気象庁や都道府県が出す様々な防災気象情報も、大雨警報はレベル3、土砂災害警戒情報は4、大雨特別警報は5などと危険度に応じて『警戒レベル相当情報』として整理された。ところが、判断主体が異なるため、気象庁などの警戒レベル相当情報と市町村の警戒レベルが食い違い、同じ地域で異なるレベルが混在してしまうこともある。6月に広島県と気象庁が4市町に『レベル4相当』の土砂災害警戒情報を出した際、3市町は雨の状況などを考慮してレベル3の避難準備情報にとどめ、レベル4の避難勧告を出したのは広島市だけだった。記録的短時間大雨情報のように警戒レベルに当てはめられていないものもあり、様々な情報全体が統一的に整理できているわけではない。」(『日本経済新聞』2019.07.26)
●「国土交通省はコンパクトシティー政策の具体化に向けた取り組みを加速する。都市再生特別措置法(特措法)を根拠とする『立地適正化計画制度』の実効性を高めるため、2020年度から実施する施策の経費を来年度予算の概算要求に盛り込む。複数市町村による連携を法改正により支援。…国交省によると、政策効果をより高めるため、自治体の広域連携を促す仕組みづくりが必要という。そのため、都市再生特措法を改正し、複数市町村による立地適正化計画の共同作成を可能にする協議会の創設を盛り込む方針だ。」(『建設工業新聞』2019.07.31)