情勢の特徴 - 2019年9月後半
●「日銀が20日発表した資金循環統計(速報)によると、6月末の家計の金融資産残高は1年前と比べて0.1%減の1860兆円だった。2018年12月末以来、2四半期ぶりに減少した。米中貿易摩擦への懸念などによる株安で、株式や投資信託の残高が目減りした。現金・預金の残高は1.9%増え、統計を始めた05年3月末以降で最高を更新した。6月末時点の株式等の残高は前年比9.7%減の195兆円で、投資信託は3.7%減の70兆円だった。合わせて家計の金融資産の1割超を占める。株価下落の要因が大きいが、株式や投資信託の取引自体が減ったことも響いた。家計の金融資産の過半を占める現金・預金の残高は増加基調が続いている。6月末は1.9%増の991兆円で、50四半期連続の増加となった。世界経済の先行き不透明感から金融市場は不安定な状況が続いている。政府が進める家計の『貯蓄から投資へ』の取り組みは足踏みしている。」(『日本経済新聞』2019.09.21)
●資本金10億円以上の大企業(金融・保険業を除く)が保有する現金・預金が2018年度に66.6兆円となり、バブル期を超えて統計を比較できる1960年度以降で最高となった。…大企業の現金・預金はバブル絶頂期の1989年度に65兆円だった。しかしバブル崩壊後、取り崩しが進み、2007年度には31.5兆円まで減らしている。第2次安倍晋三政権が発足した12年度からは一路増加に転じた。大企業における現金・預金の増加は、内部留保の増加に歩調を合わせたもの。大企業の内部留保は07年度の228.4兆円から18年度は368.6兆円と、1.6倍にふくれあがっている。大企業の現金・預金と内部留保が増える一方で、労働者の賃金は低迷している。07年度に593.2万円だった大企業の労働者1人当たりの年間賞金は、18年度は578万円へと15万円以上も減少した。1989年の賃金、525.8万円と比較しても1割未満しか賃金は上昇していない。(『しんぶん赤旗』2019.09.25より抜粋。)
●「消費税率の引き上げに伴い、立場が弱い中小企業や個人事業主に対する顧客企業の不当要求が懸念されている。価格に増税分を上乗せ(転嫁)するのを拒み、実質的な値下げを強いるといった行為がこれまでも発覚しており、公正取引委員会は監視を強化している。 『鮮魚は8%のままなので、刺し身のトレーも8%扱いにして』。スーパーの仕入れ担当者が納入業者にこうした要求をした場合、消費税転嫁対策特別措置法に違反する疑いがある。鮮魚の納入には軽減税率の8%が適用されるが、トレーなどの包装材は10%。差額分の負担を納入業者に強いることになるためだ。2013年施行の特措法は増税に便乗して不当に値下げさせる行為などを禁止している。公取委は13年10月~19年8月、悪質なケース54件について是正を勧告し、他に5456件で指導をした。『増税前の価格に据え置かせるケースが多い』(担当者)。9月24日には、大東建託などが物件オーナーに払う賃料に14年の増税分を反映していなかったとして再発防止を勧告した。未払い税額は過去最多の計約30億円に上った。公取委は今回の消費増税に向けてガイドラインを改定し、軽減税率に伴う違反類型も追加。19年度、中小企業庁と共に『転嫁対策調査官(転嫁Gメン)』を約70人増員して600人体制とした。」(『日本経済新聞』2019.09.27)
●「2019年度下期から土木一式工事を対象に全国で初めて建設キャリアアップシステムに登録している事業者を総合評価で加点する取り組みを適用する山梨県は、試行結果を踏まえつつ、将来的には対象工事を建築一式工事など他工種にも広げる方針だ。…県の総合評価落札方式は、登録基幹技能者制度などで技能者を評価する仕組みがなかった。…試行内容は対象工事に入札参加する事業者が建設キャリアアップシステムに登録している場合などに、評価点を2点加点する。総合評価が適用される県の土木一式工事はA、B等級企業が対象で該当する県内企業は約250社。ただ、現状、建設キャリアアップシステムの事業者登録は一部にとどまっている。同県では、予定価格3000万円以上の工事を対象に原則、総合評価落札方式を採用している。」(『建設通信新聞』2019.09.19)
●「関東地方整備局らで構成する関東ブロック発注者協議会は、公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)運用指針に基づく2018年度『全国統一指標調査結果』をまとめた。施工時期の平準化などの取り組みが国や特殊法人、都県政令市と比較し、区市町村で進んでいない傾向が見られた。区市町村の取り組みを後押しするため、同局は都県と連携し講習会などでの周知活動を展開する。対象は同局管内の471機関。内訳は国17機関、特殊法人等25法人、9都県、5政令市、415区市町村。今回の調査結果では政令市を除く人口10万人以上の地方自治体だけを抽出し、取り組み状況の比較表を作成するなど、区市町村の取り組みに焦点を当てた。調査項目は▽設計変更ガイドラインの策定・活用状況▽平準化率▽最新の積算基準の適用状況―など5項目…500万円以上の工事を対象にした設計変更の実施率は▽国=90.3%▽特殊法人等=65.7%▽都県=72.2%▽政令市=72.0%。区市町村は都県でばらつきが見られた。平準化率(4~6月期の平均稼働件数・金額を年度の平均稼働件数・金額を割った値)は、国が件数0.84、金額0.91、特殊法人などが件数0.81、金額0.97。都県は件数0.71、金額0.80、政令市は件数0.65、金額0.77だった。区市町村は全体で件数がおおむね0.5~0.6程度、金額は0.6~0.7となり、前年度と比べてほぼ横ばいだった。 区市町村のさらなる取り組み促進に向け、同局は各都県と連携を強化する。ブロック単位で複数の自治体を集めた講習会などを実施し、細やかな情報発信に努める。」(『建設工業新聞』2019.09.20)
●「国土交通省は10月から12月にかけて稼働中の直轄工事を対象とした施工体制に関する全国一斉点検を実施する。…今回で18回目。一斉点検は、『基本点検』として監理技術者などの配置状況や施工体制台帳の備え付け状況、下請契約の締結状況を確認するほか、『一括下請点検』として元請業者の下請施工への関与状況、『下請業者点検』として下請の主任技術者の配置状況を確認し、併せて主任技術者へのヒアリングも行う。2019年度上半期発注工事が本格化する10月から12月までの期間内に任意の実施日を定めて抜き打ちで点検を実施する。…02年度から毎年度行っている一斉点検で施工体制の適正化や安全衛生、その他労働環境の改善への配慮が徹底されつつある。18年度一斉点検では、改善すべき事項のあった工事が全体の約10.8%(17年度約9.6%)と微増したものの、ここ数年間と同様に改善傾向にあり、建設業法などに関する理解の浸透が着実に進んでいることがうかがえる。」(『建設工業新聞』2019.09.27)
●「国土交通省は、経営事項審査の審査基準を見直す。8月29日に開いた同省と建設業4団体との意見交換で、建設キャリアアップシステムの普及・定着の新方策として石井啓一前国交相が表明した『経営事項審査などの評価方法の見直し』や改正建設業法で新たに規定された『建設業従事者に対する知識・技術・技能向上の努力義務』に対応し、従業員の取り組みを促進する企業を評価する。建設業経理の項目も見直し、講習受講など能力研さんに努めている者を評価するよう改める。…経営事項審査の審査項目のうち、今回主な改正または新設の対象となるのは、『技術職員数(Z₁)』と、『知識および技術または技能の向上に関する取組の状況(W₁₀)』『建設業経理の状況(W₅)』。技術職員数(Z₁)は現在、登録基幹技能者に3点、技能士1級に2点が付与されている。改正案では、2020年度から建設キャリアアップシステムを活用した4段階の建設技能者の能力評価制度が原則化されることを受け、登録基幹技能者と同等と評価される『レベル4』の建設技能者には3点、技能士1級と同等と評価される『レベル3』の建設技能者には2点の評価を付与する。20年4月から施行する。知識および技術または技能の向上に関する取組の状況(W₁₀)は新設する評価項目で、技術者・技能者の能力向上を積極的に後押しする企業に対して加点する。具体的な内容をみると、技術者についてはCPD(継続能力開発)の取得状況を評価する。所属する技術者が1年間で取得したCPD単位総数を、所属技術者の総数で除した数値に応じて、5段階で配点する。技能者については、基準日前3年間において能力評価基準でレベルアップした技能者の数を、所属技能者の総数で除した割合に応じて、3段階で配点する。レベル4技能者は所属技能者の総数からは除く。個々の企業で技術者と技能者の割合はさまざまであり、公平性の観点から最大で10点を上限として、技術者・技能者の比率に応じて、それぞれの取組状況を合算して算定する。周知期間などを考慮し、21年4月から施行する。」(『建設通信新聞』2019.09.17)
●「日本トンネル専門工事業協会(野崎正和会長)は13日、施工系の会員企業を対象に実施した『年次有給休暇5日付与』に関するアンケートの結果を公表した。各社が作業員に有給休暇を付与した場合の労務費の負担に苦慮しているというのが実情。大半の企業が元請企業への請求を前提にしているが、今後の交渉次第という状況も浮き彫りになっている。調査は、これまでほとんど年次有給休暇を取得していなかった『日給月給制』の作業員をターゲットに、ことし4月に『年次有給休暇5日付与』が義務化されたことに対する各社の対応の現状を把握することが狙い。施工系の会員企業(32社)を対象にアンケートを行った結果、27社から回答を得た。このうち、2社は月給制を採用していることから残る25社を対象に結果を集計した。8割以上の企業で就業規則の変更や作業員に対する口頭・文書による通知など『年次有給休暇5日付与』に対応済み。作業員ごとに作成が義務付けられた年次有給休暇管理簿も7割超となる18社が『既に作成・管理している』と回答した。焦点となる日給月給の作業員に有給休暇を付与した場合の労務費の負担増の対応策として、12社が『増加分を元請けに請求することとし、現在交渉中である』と回答。就業規則を変更して日給制から月給制への変更を検討しているという声もあった。大半の企業が元請企業への請求を前提にしているが、元請企業による対応や反応はさまざまというのが実情。交渉の過程として、負担増に対する支払い請求に肯定的である元請けと、否定的な元請けがおおよそ半々といった状況からも、負担増の“原資”をいかに獲得していくかが今後のポイントになりそうだ。」(『建設通信新聞』2019.09.17)
●「日本電設工業協会(後藤清会長)は、会員企業を対象に実施した働き方改革フォローアップ調査の結果をまとめた。2018年11月の内線工事部門の状況を調べたところ、回答した117社のうち49%が、監理技術者や主任技術者など『技術系社員』の時間外労働(残業)時間が80時間を超えていた。また、現場での週休2日の導入状況は、118社の37%が『ほとんど実施していない』と回答。18年11月の時点では、現場での働き方改革が進んでいない実態が明らかとなった。」(『建設通信新聞』2019.09.18)
●「国土交通省は、フィリピンからの建設分野の特定技能外国人の受け入れに向け、同国との具体的な協議を開始した。9‐12日にマニラを訪問し、関係機関と会談したほか、今年度の『電気通信』試験の実施予定地となっている日系企業のトレーニングセンターの性能を確認。『(職業訓練を所管する)技術教育技能開発庁(TESDA)は、電気通信以外の職種も含めた日本式施工の教育に対する参画に前向きな意向を示している』(国交省・労働資材対策室)としており、来年度試験での職種拡大への調整も進める。」(『建設通信新聞』2019.09.18)
●「企業の高卒採用意欲が強まる一方だ。17日に選考と内定が解禁となった2020年3月卒の求人倍率は27年ぶりの高水準になり、大卒も上回る。若手の人材不足を解消する貴重な戦力として、高卒に目を向ける企業が増えたためだ。…厚生労働省はこのほど20年3月の高卒予定者について、19年7月末時点の求人倍率が2.52倍だったと発表した。1年前の19年3月卒より0.15ポイント高く、1993年3月卒以来の高水準だ。…大卒も売り手市場が続くが、高卒の方がより採用側に厳しい。…採用で優位に立ちたい企業は待遇の良さを競っている。厚労省の調査では18年3月卒の初任給は前年比1.9%増え、伸び率は3年ぶりに大卒(0.3%増)を超えた。産労総合研究所による19年3月卒の調査でも高卒の初任給は0.9%増で、大卒の0.7%増を上回った。最低賃金の引き上げも影響している。 高卒採用が大卒と大きく異なるのは、高校とハローワークが深く関わる点だ。企業はハローワークを通じて高校に求人を申し込み、高校では教師と生徒が相談して応募先を1社に絞る。『1人1社』という1950年代から続くルールで、経済団体と学校側、国の3者による申し合わせだ。このルールに12年発足の新経済連盟と人材関連スタートアップのジンジブ(東京・港)が異議を唱えた。18年9月に文部科学省と厚労省に見直しを要望。ジンジブは『高卒者が職業選択の自由を確保し、十分な情報を得て企業を選択できると言い難い』と主張する。1人1社では企業の信頼度や生徒の適性の判断で教師の蓄積を生かせる半面、本人の理解や納得が不十分なまま就職している恐れがある。厚労省の調査では高卒の入社後3年以内の離職率は4割と大卒の3割を上回り、1人1社がミスマッチの一因との指摘が多い。見直しを求める企業側には、こうした筋論とともに思惑もある。1人1社では、長年の採用で教師と結びついた大手企業や地元有力企業が人材を確保しやすい。その割を食うのは新興企業だ。新経済連盟はITやサービス業の若い企業が多く、1人1社が続けば不利な状況を抜け出せない。人材サービス会社から見れば、高校とハローワークが担ってきた高卒の就職は入り込めていない市場だ。大卒と同様に求人情報の提供やイベントの開催、就職活動の助言で民間企業の活用が広がる可能性があり、ジンジブは高校生に照準を合わせて市場開拓を狙う。文科、厚労両省も1人1社が自由な就活を阻んでいるのを無視できず、見直しに着手。20年初めにも結論を出す見通しだ。新たな『金の卵』として高卒の採用熱が高まるなか、半世紀以上続く慣行に変革の波が及ぶ。」(『日本経済新聞』2019.09.23)
●「厚生労働省が20日に発表した2019年7月分の毎月勤労統計調査結果(確報値)によると、建設業就業者に支払われた現金給与総額(1人当たり平均)は前年同月比3.0%減の49万1417円だった。調査対象は5人以上が働いている事業所。調査結果の内訳を見ると、建設業就業者に支払われた給与総額のうち、固定給の『所定内給与』が3.7%増の31万9356円、残業手当などに当たる『所定外給与』が3.5%増の2万5952円、賞与などに当たる『特別に支払われた給与』が16.0%減の14万6109円となった。建設業の常用雇用労働者総数は2.6%増の276.0万人。常用雇用労働者の入職率(新たに就職した人の割合)は0.05ポイント高い1.43%、離職率は0.01ポイント高い1.29%だった。」(『建設工業新聞』2019.09.24)
●「日本建設業連合会の山内隆司会長と宮本洋一、押味至一両副会長は25日の理事会終了後に会見し、建設キャリアアップシステムの進捗について言及した。技能労働者の就業実績や資格を登録することで、公正な技能評価、工事の品質向上、現場作業の効率化などが期待される同システムの目的が『工事現場を支える技能労働者一人ひとりの処遇改善である』(山内会長)と強調。技能者単位の登録が遅れている現状を踏まえ、『まずは可能な限り早い段階で200万人の達成を目指す』とし、建設業界全体の登録意識と取り組みへの足並みがそろうまで『システムの必要性を関係者に訴え続ける』考えを示した。」(『建設通信新聞』2019.09.26)
●「建設産業労働組合懇話会(建設産労懇、会長・鈴木誠一日本建設産業職員労働組合協議会議長)は26日、11月の土曜閉所運動の取り組みを発表した。『みんなが手にする週休2日 だれもが休める建設産業』をスローガンに、土曜閉所の強調月間として、各組織がポスターの作成・配布、加盟組合への協力要請、閉所状況調査などに取り組む。会見した鈴木会長は『各企業、各組織が明確な目標を掲げて取り組んでいる結果、意識は高まりつつある。ただ、繁忙な地域などもみられる。引き続き、交代休より閉所を掲げて運動し続ける必要がある。各加盟組織の事情に応じて取り組むのが現実的だが、産労懇としては週休2日の実現とそのための土曜閉所を共通項として協力して取り組みたい』とした。」(『建設通信新聞』2019.09.27)
●厚生労働省は24日、違法な長時間労働(残業・休日労働)が疑われる全国の2万9097事業所を2018年度に調べた結果、約40%の1万1766カ所で法令違反を確認したとの監督指導結果を発表した。…違法な時間外労働は、残業をさせる場合に必要な労使の「36協定」がなかったり、協定の上限を超えて残業をさせていたケース。このほか賃金不払い残業が6.4%の1874事業所、過重労働による健康障害防止措置の未実施が12.1%の3510事業所にのぼった。違法な残業が確認された事業所のうち、過労死ラインに当たる月80時間超の残業をした労働者が確認されたのは約67%の7857カ所。100時間超は約44%で、200時間超も約2%だった。(『しんぶん赤旗』2019.09.27より抜粋。)
●「国土交通省は、改正建設業法において、建設業許可基準で社会保険への加入が要件化したことに伴い、規制逃れを目的とした“一人親方化”の実態把握や偽装請負の防止に必要な取り組みに乗り出す。抜本的な対策を講じるため、検討会の立ち上げや調査のための費用を2020年度予算の概算要求に計上。実質的に労働者として働いているにもかかわらず、規制・負担を逃れるために一人親方として使用する企業に対する実効性のある対策検討を行う。…規制逃れを目的とした一人親方化の対策検討については、ことし5月に開催した第2回建設業社会保険推進・処遇改善連絡協議会で重点課題に位置づけ、実効性のある対策の検討に着手することを決めた。今年度から施行した5日間の有休取得の義務化、20年10月から施行する社会保険加入の要件化、24年度から建設業にも適用となる罰則付き残業規制などを契機に、“社員の一人親方化”を進める懸念があるからだ。具体的な取り組みとしては、検討会の立ち上げや偽装請負、契約に関するアンケートの実施、パンフレットの作成・配布などを想定。建設業法の規制逃れあるいは法定福利費の負担逃れを目的とした一人親方化は、外見上は直ちに判然としないことから、調査による実態を踏まえた検討を進め、偽装請負を防ぐための実効性ある対策につなげる。規制逃れを目的とした一人親方化の対策検討のほか、社会保険加入の原資となる法定福利費の確保のための取り組みも継続して行う方針だ。法定福利費を内訳明示した請負代金内訳書の活用促進などの見える化の取り組みや見積書の活用状況に関する実態調査により、社会保険加入の定着を促す。」(『建設通信新聞』2019.09.30)
●「主要上場ゼネコン26社に非上場の竹中工務店を加えた計27社の直近決賃を分析したところ、工事採算を示す完成工事総利益(粗利益率)を公表している25社のうち、14社が前年同期の実績を上回った。半数超となる13社が粗利益率10%以上を確保。労務費や資機材の上昇基調にある中でも、好調な利益率を維持しているゼネコンが多い。…25社の粗利益率の平均は10.6%で、前期よりも0.1ポイント増加している。通期の粗利益率を見ると、公表している24社のうち11%台が6社で最も多い。10%台が5社、12%台は4社、9%台と8%台がそれぞれ3社などとなっている。10%以上は18社。単純平均は11.1%で、前期からは0.6ポイントの減少となる。マイナスになっているものの11%台を確保しており、堅調に推移しているといえそうだ。2020年東京五輪・パラリンピック後も首都圏では大規模再開発案件が予定されている。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)やカジノを含むIR(統合型リゾート)開発も控える。『建設需要はしばらく落ち込むことはない』(ゼネコン幹部)との見方は強いが、『首都圏大規模案件の競争が非常に厳しくなっている』 『これからの受注案件が重要であり、質の良い案件を見極めたい』との声もある。資材・労務費の上昇基調が続く状況もあるものの、『若い人に入ってもらうために年収の底上げが必要でダンピングはできない』(大手ゼネコン)との認識は各社に共通する。働き方改革を見据えた閉所日の拡大や、担い手獲得競争の激化が予想される中で、高水準の利益率をどう維持していくかが、今後の注目点となる。」(『建設工業新聞』2019.09.17)
●「物件のオーナーなどに支払う賃料に2014年の消費税増税分を上乗せしていなかったのは消費税転嫁法違反(買いたたき)に当たるとして、公正取引委員会は24日、賃貸住宅建設大手、大東建託と子会社の大東建託パートナーズ(東京)に再発防止を勧告した。 公取委によると、未払い分の消費税は計約30億円に上り過去最多。これまでの消費税未払い額は今年3月に勧告を受けた飲料の自動販売機大手、ジャパンビバレッジホールディングスの約2億1千万円が最多だった。大束建託は両社への勧告内容を事実と認め『法令に対する認識不足があった。10月にオーナーにお知らせして順次返金していきたい』としている。対象となるオーナーは47都道府県の約3万の個人や事業者。公取委によると大東建託パートナーズはオーナーから借りた駐車場や事務所を利用者に貸し付け賃料から運営管理費を差し引いた額をオーナーに支払っている。消費税が5%から8%に引き上げられた14年4月以降、利用者から受け取る賃料は税率5%に据え置く一方で、運営管理費には税率8%を適用。オーナーに支払う賃料にも増税分を上乗せしておらず、オーナーが受け取る金額が増税前より少なくなっていた。」(『日本経済新聞』2019.09.25)
●「建設経済研究所と経済調査会は26日、建設経済モデルによる建設投資の見通し(9月推計)を発表した。初めて打ち出した2020年度の見通しは、前年度比0.8%増の62兆7100億円と予測。新設住宅着工戸数が80万戸台の低水準になって民間住宅投資がマイナスに転じるが、政府建設投資や民間非住宅建設投資などが下支えし、全体として同水準になると見込んだ。今回の9月推計は例年の7月推計に相当する。四半期ごとに年4回公表しているが、参考にしている国土交通省の建設投資見通しが8月にずれ込んだため、公表時期を後ろ倒しした。これにより、19年度の公表は3回で、1回減となる。また、国交省の集計対象変更に伴い、建築物リフォーム・リニューアル投資を今回から加えた。19年度の建設投資は2.2%増の62兆2100億円と見通した。政府建設投資が3.1%増の21兆3400億円、民間住宅投資が1.8%増の17兆2200億円、民間非住宅建設投資が1.9%増の17兆4100億円、民間建築物リフォーム・リニューアル投資が1.0%増の6兆2400億円の内訳。集計対象の変更などにより、4月推計の見通しからの修正は示していない。19年度見通しを基にした20年度は、政府建設投資が0.6%増の21兆4700億円、民間住宅投資が1.2%減の17兆0200億円、民間非住宅建設投資が2.9%増の17兆9100億円、民間建築物リフォーム・リニューアル投資が1.0%増の6兆3100億円と見込んだ。」(『建設通信新聞』2019.09.27)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、会員企業96社を対象とした2019年4-8月まで(19年度累計)の受注調査の結果を発表した。受注総額は8月単月が現行の調査数になった12年以降で最低を記録したことから、累計も6年ぶりに5兆円を割り込み、前年同期比10.7%減の4兆7322億2900万円だった。…受注総額の内訳(累計)は、国内が10.5%減の4兆5386億0900万円、海外が13.9%減の1936億2000万円。減少幅は国内が5ポイント悪化、海外が6ポイント改善している。」(『建設通信新聞』2019.09.30)
●「資機材を流通に載せながら備蓄する『流通在庫備蓄方式』が災害時の広域的な支援に効果を上げている。千葉県内の広い範囲に被害が及んだ台風15号への対応で、群馬県建設業協会(青柳剛会長)は現地から要請のあった大量のブルーシートを迅速に供給した。使用するまで倉庫に備蓄しておくのと違い、常に新しい資機材を供給する方法は災害対応を巡る大きなポイントとなりそうだ。群馬建協では、災害協定を結ぶ関東地方整備局からの要請で12日、千葉県君津、市原両市に飲食料や屋根の養生などに用いるブルーシートをその日のうちに搬送。14日にも銚子市から求められたブルーシートを現地まで届けた。 ブルーシートだけでも1000枚近くに達した支援物資を迅速に確保し、現地まで届けることを可能にしたのは、2011年度に全国の建設業団体に先駆けて導入した同方式の存在が大きい。東日本大震災で資材調達が滞った経験を基に取り入れた方式は、ランニングストック方式とも呼ばれる。東京都や仙台市などの自治体も採用し、石油や食料、生活必需品などを備蓄している。群馬建協は11年9月に資材販売流通3社と協定を結び、災害時の応急復旧対策で必要となるブルーシートと大型土のう袋を県内に分散備蓄している。協会が必要な資材を流通会社から買い取り、保管を流通会社に委託。流通会社は自社の在庫に上乗せして委託分を保管する。これにより、いざという時に保管した資材が古くなって使えなくなるような心配がなく、急な調達依頼にも常に新しい資材で迅速に対応できる。…頻発する自然災害への対応では、地元業者自らも被災して動けなくなる可能性がある。そうした場合、広域的な応援に頼らざるを得ない。建設業界が地域の守り手として活躍する上でも資機材調達ルートを普段から確保し、緊急時に円滑に供給できるようにすることは一段と重要性を増す。加えて、今回の千葉県での台風被害のように現地の被災状況の把握が滞ったケースも想定しておかなければならない。群馬建協がSNS(インターネット交流サイト)を利用して現地情報を伝える『ぐんケン見張るくん』のような仕組みを各地に構築し、現地情報をリアルタイムで伝え応援要請を行うことも、考えていく必要がありそうだ。」(『建設工業新聞』2019.09.18)
●「地球温暖化がもたらす影響について国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめる報告書の原案が判明した。温暖化ガスの排出削減が進まないと、北極の氷が解けるなどして今世紀末までに海面が最大1メートルを超えて上昇すると予測した。高潮や洪水によって世界の10億人が危機にさらされ、2億8000万人以上が家を失う。影響は世界の科学者が最新の研究にもとづいて分析し、報告書にまとめる。原案は各国政府にインフラ整備や防災対策の強化を迫る内容で、温暖化のリスクが改めて浮き彫りになった。…IPCCではこれまでも温暖化によって80センチメートル程度の海面上昇があると分析していた。北極の氷床や陸地の氷が解ける速度が速まる兆候があり、原案では上昇幅を大きく見積もり、影響が深刻になるとの見解を示した。水没を恐れる島しょ国の脅威となるほか、沿岸部の大都市にも甚大な被害をもたらす。台風やハリケーンなどで陸地に海水が押し寄せ、広い範囲が浸水する危険が高まるためだ。温暖化対策の国際枠組み『パリ協定』の成否などへの言及はないものの、有効な対策を取らなければ被害が拡大すると警鐘を鳴らした。」(『日本経済新聞』2019.09.19)
●「国土交通省は2020年度、リニア中央新幹線の開業を契機にヒト、モノ、カネ、情報を世界中から引き付けるスーパー・メガリージョン(SMR)の形成と、その効果の広域波及に必要な取り組みを検討する。行政と経済界で組織する協議会でブロック別に検討し、個別の取り組みを示したロードマップを策定する。…JR東海が建設するリニア中央新幹線は、27年開業予定の品川~名古屋間(286キロ)が所要時間40分、45年より最大8年前倒しの開業が想定されている東京~大阪間(438キロ)は67分で移動可能と見込まれる。時間と距離が劇的に短縮されることから、リニア開業を契機に人の対流を活発化させ、各地域の個性を結び付けてイノベーションを生み出していくために必要な取り組みを検討する。…国交省のスーパー・メガリージョン構想検討会は5月の最終取りまとめで、リニア開業に合わせて求められる取り組みとして、▽個性ある3大都市圏の、一体化による巨大経済圏の創造▽中間駅周辺地域から始まる新たな地方創生▽SMRの効果の広域的拡大――の3つを示した。」(『建設通信新聞』2019.09.19)
●「東京五輪・パラリンピックのボート会場もある東京湾の人工島『中央防波堤埋立地』の帰属を巡って東京都大田区が江東区を相手取り、境界線の確認を求めた訴訟で、東京地裁(古田孝夫裁判長)は20日、全体の20.7%が大田区、79.3%が江東区とする判決を言い渡した。40年以上にわたり、住所が定まらなかった土地の帰属問題に初めて司法の判断が下された。」(『日本経済新聞』2019.09.21)
●「政府は、台風15号で被災した千葉県内の家屋のうち、国の支援制度の対象外となる『一部損壊』の判定を受けた住宅の修理費用を、被災自治体を通じて支援する。防災・安全交付金と特別交付税を活用し、自治体による支援金の約9割を負担する。耐震性など住宅性能の向上を目的とした瓦屋根の補修が対象。判定の前段となる被害認定調査も台風後の降雨被害を加味するなど被害を過小評価することがないよう徹底する。適切な判定と支援の拡充により、被災者の生活再建を総合的に後押しする。被害認定調査では、一部損壊と判定される屋根の被害でも、それにより雨水浸水被害があった場合は『半壊』と認定するなど柔軟に対応する。被害面積も対象部位だけでなく周辺の部位への影響を勘案し適切に判断する。」(『建設工業新聞』2019.09.25)