情勢の特徴 - 2019年10月前半
●「1日の消費税率引き上げと同時に飲食料品などの軽減税率制度も始まり、税率が2通りになる。2023年からは税率ごとの税額を書いた『インボイス(税額票)』が使われるが、それに先だって1日からは請求書に税率ごとの売り上げを記す簡易版が導入される。インボイスには中小企業の負担が重いとの批判も根強いが、政府は適正な納税に欠かせない仕組みとして採用する。消費増税前の一般的な請求書は、商品ごとの税込み価格と合計額を書くシンプルなものだった。1日からは税率が8%と10%に分かれるため、請求書は軽減税率対象商品に印を付けた上で、10%と8%それぞれに売り上げの合計額を書くことが求められる。この請求書は『区分記載請求書』と呼ばれる。さらに23年10月からは、これに税率ごとの消費税額と税務署から割り振られる登録番号なども加えた本格的なインボイスの利用が始まる。インボイス以外の請求書も引き続き発行できるが、それでは請求書を受け取った企業が仕入れで支払った分の消費税を控除してもらえない。一定規模以上の企業は、取引先からインボイスの発行を求められそうだ。…インボイスを出すためには消費税の課税事業者になる必要がある。現在消費税が免税されている事業者が課税事業者に切り替わることで、免税事業者が客から受け取って手元に残したままの消費税(益税)が吐き出されるという期待もある。政府はこの一部を軽減税率導入のための財源として見込んでいる。」(『日本経済新聞』2019.10.01)
●生活保護を利用する1人暮らし高齢者世帯が増え続け、10年間で1.7倍、全利用世帯の半数に達した。1人暮らしの高齢者世帯には、無年金や低年金の世帯が多い現状がある。…厚生労働省の調査によると、今年7月に生活保護を利用した世帯は料162万9千世帯で、約89万7千世帯が高齢者世帯だった。その9割にあたる約82万世帯が1人暮らし高齢者世帯で、全利用世帯の半数を占めた。生活保護を利用する1人暮らしの高齢者世帯は年々増加。2018年度は月平均80万4873世帯で、10年前(08年度・46万8390世帯)の1.7倍となった。…18年国民生活基礎調査で、「65歳以上の者のいる世帯」で、世帯類型別に「公的年金・恩給受給者のいない世帯」の割合をみると、夫婦のみ世帯では1.6%(12万5千世帯)だった。ところが、男性の1人暮らし世帯では8.7%(19万4千世帯)、女性の1人暮らし世帯では3.6%(16万5千世帯)だった。このなかには、働くなどして収入を得ている世帯も含まれているが、1人暮らしの高齢者世帯で無年金の世帯が多い。また、17年老齢年金受給者実態調査をもとに、老齢年金を受給する1人暮らし世帯の家計の状況をみると、平均年収は約204万円で公的年金(年平均約145万円)が7割を占めている。また、4割近い世帯が年収150万円未満という状況だ。現在、1人暮らしの高齢者世帯は683万世帯(18年)だが、国立社会保障・人口問題研究所は、40年には896万3千世帯に達すると推計している。(『しんぶん赤旗』2019.10.08より抜粋。)
●「国土交通省は、建設企業が実施する直轄国道の除雪作業で課題となっている、小雪時の経常的な支出を作業待機の有無にかかわらず補てんする仕組みづくりを検討する。3日に開かれた全国建設業協会傘下の関東甲信越地方建設業協会長会が主催する関東甲信越地方ブロック会議で明らかにした。会合では、新潟県建設業協会が安定的・持続的な道路除雪体制の確保を要望。道路除雪が積雪寒冷地の住民生活、経済活動などを支えていることから、それを担う地域建設業の安定経営を下支えする意味で、小雪時でも待機作業員の人件費や除雪機械の維持修繕費などの固定費が補てんされる仕組みづくりを求めた。これに対し、国交省の担当者は冬季に工事収入が落ち込むという積雪寒冷地の建設企業の実態を考慮し、『小雪時において、待機の有無にかかわらず従業員や除雪機械を確保しておくための経常的な支出をカバーする仕組みを検討していく』と回答。ことし1-3月に実施した道路除雪の施工実態調査の結果を踏まえ、『必要に応じて積算基準を見直す』と加えた。」(『建設通信新聞』2019.10.07)
●「東日本建設業保証は、前払金保証実績からみた2019年度上期(4-9月)の公共工事動向をまとめた。請負金額は前年同期比5.7%増の5兆3553億円で、19年ぶりに5兆3000億円台を突破、2001年度の水準に達している。『防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策』を始めとする各種政策の効果とみられるが、地区別では震災復興事業の反動減により東北の落ち込みが目立つ。」(『建設通信新聞』2019.10.10)
●「政府は公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)が改正されたことを踏まえ、発注者の共通ルール『運用指針』の見直し作業を進めている。改正骨子案に対する地方自治体や建設業団体の意見を踏まえた改正案を近く取りまとめ再度、意見を募る。受発注者双方に参加してもらう丁寧なステップを経て、12月にも運用指針を策定。2020年度に新たな運用指針に基づく発注事務が始まる。」(『建設工業新聞』2019.10.15)
●「政府は1日、2019年版の『過労死等防止対策白書』を閣議決定した。重点業種として新たに定めた建設業とメディア業の実態調査をまとめた。特に労働時間が長かったのが建設業の現場監督で、6人に1人にあたる16.2%が週60時間以上。月換算すると、労災認定の目安である『過労死ライン』の残業80時間を超過する水準だった。政府は『過労死等防止対策大綱』で…、労働時間が週60時間以上の労働者の割合を2020年までに全体の5%以下にする目標を掲げており、18年の全業種平均は6.9%だった。建設業への調査では、9.9%が60時間以上だった。職種別でみると、現場監督が16.2%、施工管理や設計士など『技術者』は7.1%、現場で作業する『技能労働者』は3.5%だった。現場監督の労働時間が長くなる理由(複数回答)は『業務量が多い』が64.1%でトップ。『事務書類が多い』(49.3%)、『人員不足』(47.7%)、『顧客からの不規則な要望』(44.2%)が続いた。」(『日本経済新聞』2019.10.01)
●「日本埋立浚渫協会(埋浚協、清水琢三会長)は、港湾・空港工事に従事する技術者と技能労働者の働き方改革について意識調査の結果をまとめた。週休2日の取り組みに対し、元請・下請技術者の9割、技能労働者の、8割が『現在の給与水準が確保・改善されるなら歓迎』と回答。遠隔地で作業する場合、『早く帰りたいが土日もしくは日曜は休みたい』と回答した技能労働者は8割近くに上ることが分かった。」(『建設工業新聞』2019.10.02)
●「厚生労働省が、労働災害支給を決定(認定)した事案を基に建設業の過労死について調査・分析した結果によると、『現場監督、技術者等』で精神障害を発症した事案の半数以上が自殺事案だった。ともに現場で従事する『技能労働者等』とは異なる特徴となっている。『現場監督、技術者等』で自殺事案に関与したと考えられるストレス要因は、長時間労働が最も多かった。…10年1月-15年3月に労災支給決定(認定)した建設業の事案を分析した。精神障害事案は149件で、職種別では『技能労働者等』が62件で最も多く、『現場監督、技術者等』の59件、『管理職、事務・営業職等』の28件が続いた。『現場監督、技術者等』の59件のうち、30件が自殺事案。自殺事案のストレス要因は『長時間労働』が19件で最も多い。『技能労働者等』は異なる特徴となっている。精神障害事案62件で、発症に関与したストレス要因は『労働災害の被害』(目撃、加害を含む)が半数以上の34件に上る。精神障害事案62件のうち自殺事案は12件で、『現場監督、技術者等』に比べると低い水準だった。」(『建設通信新聞』2019.10.03)
●建設業で働く個人事業主である「一人親方」の実態を把握するため、厚生労働省が2018年末までに全国建設労働組合総連合(全建総連)など建設業関係団体を通じて行った初のアンケート結果がこのほど明らかになった。仕事の受注方法や労災保険、安全経費など十分保護・保障されていない実態が浮き彫りになった。アンケートは約4万2000件の回答があり、このうち全建総連が取りまとめた約3万9000件を建設政策研究所が集計、分析した。…仕事の受注方法を働き先別にみると、「出来高払い」はぜネコンで62%、住宅メーカーで57.7%を占める。一方、地元工務店は「出来高払い」(38.2%)のほか「材工込み」(25.2%)、「発注者から直接仕事を請け負うことがある」(24.3%)もあり、不動産会社も同じ傾向だった。労災保険の給付基礎日額で、最も多いのが5000円(30.4%)、次いで6000円(11.8%)、4000円(9.4%)。休業補償としては低水準であることが分かる。労働災害防止対策など安全経費について、「書面で契約しないことが多い」は34.6%、「必要な経費を認められている」21.5%、「安全経費を含めた見積もりを提示したことはない」16.5%だった。(『しんぶん赤旗』2019.10.03より抜粋。)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステムと連携し、技能者の能力を客観的に評価する『能力評価基準』をことし4月の制度開始後、初めて認定する。7日に鉄筋、型枠、機械土工の3職種(団体)から、それぞれの能力基準案の申請があり、8日付で大臣認定を受ける。登録基幹技能者制度があるすべての職種(現在35職種)で、今年度内に能力評価基準の申請手続きを完了させることが決定しており、10月中には今回の3職種を含めた10職種前後が申請・認定される予定。今後、各団体による基準策定が加速する見通しだ。」(『建設通信新聞』2019.10.08)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、都道府県建設業協会の会員企業を対象とした『働き方改革の推進に向けた取り組み状況に関するアンケート調査』の結果をまとめた。休日数、残業時間、賃金水準とも改善され、就労環境は着実に向上している。関係者の意識の高まりが大きな要因で、働き方改革の目的と効果を引き続き周知・徹底することで、改革実現への歩みはより一層加速しそうだ。また、外国人材の雇用に対する関心も高くなっている。…全建が2018年から実施している『休日月1+(ツキイチプラス)』は、『取り組んでいる』が前回調査と比べ約6ポイント増の13.6%、『取り組みを検討している』が約7ポイント増の39.2%と拡大。回答項目として新たに追加した『既に4週8休制を導入している』(11.4%)と合わせ、休日促進に対する積極姿勢が強まっている。…取得休日数を職場別にみると、現場は『4週6休』が50.2%で最多。『4週7休』は11.1%、いずれも横ばいで推移している。『4週8休』は約2ポイント増加し11.3%、4週6休以上の中で最も伸びている。…一方、事務所は『4週8休』が0.5ポイント増の45.0%を占める。…現場、事務所とも休日数が拡大していることで、会社が定める年間休日数も『116日以上』(約2ポイント増の10.1%)『101-105日』(約4ポイント増の33.2%)が増えている。」(『建設通信新聞』2019.10.09)
●「東京地区生コンクリート協同組合(斎藤昇一理事長)は、2020年4月1日以降の引合い受付分の生コン価格を1立方メートル当たり1000円引き上げることを決めた。あわせて祝祭日の出荷特別割増料・キャンセル料と戻りコンの取消料も引き上げる。10月中旬以降、取引先ゼネコン18社への説明を開始する。…今回の値上げは、骨材費と輸送費、生コン輸送費、働き方改革への対応、セメントの値上げによって計1700円のコスト増となっているため。…建設需要が踊り場を迎えている影響で、19年度上期の出荷量は計画比2割減となっており、19年度通期の出荷量も前年度の355万立方メートルを下回る310万-315万立方メートルになる見込み。価格下押しの局面ではあるが、五輪前後も東京都内の旺盛な再開発需要が陰りを見せていないことから値上げに踏み切る。」(『建設通信新聞』2019.10.02)
●「災害時の緊急対応を担う地域建設業で十分な体制が維持できていない実態が、全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)の調査で明らかになった。災害時の緊急対応に必要な人員や機材が確保されているかどうかを会員企業に聞いたところ、『体制(能力)が不足している』と回答した企業が3割弱に上った。慢性的な人員不足で『10年後には災害・除雪には対応できない企業が半分近くを占めると予想される』と先行きを危慎する声も寄せられた。」(『建設工業新聞』2019.10.03)
●「山梨県の建設企業で現場技術者の建設コンサルタントなどによる“厚待遇での引き抜き”が相次いでいる。発注機関から受注した工事の現場監理業務に従事させるのが狙いで、一部の建設企業では技術者の減少に伴って受注量が低下し、会社の存続に関わる深刻な状況に陥っている。引き抜き数に歯止めがかからないばかりか、むしろ加速しており、山梨県建設業協会と会員企業は頭を悩ませている。」(『建設通信新聞』2019.10.04)
●「台風15号の強風により大きな被害を受けた千葉県内各地で応急復旧支援に参加した関東圏域の地域建設業界から、災害対応で新たな体制整備が必要だとの認識が急速に広がり始めている。河川や道路の応急復旧といったこれまでの支援と違い、ブルーシートによる屋根修復に作業が集中、町場の職人との連携や安全管理取り組み周知などの必要性を実感したからだ。実際、千葉県内の災害対応の支援を行った、千葉県以外の各地の建設企業・団体は今回、2つの課題に直面した。1つ目は、国土交通省地方整備局や千葉県内各自治体からの要請を受けた県建設業協会など地域の建設業団体にとって、これまで行ってきた具体的な災害対応支援は、河川堤防の修復や道路啓開、応急道路整備など土木工事が主体。しかし今回求められたのは、屋根修復。土木を手掛ける企業が多い業界団体にとって、町場の屋根工事業の職人を探すのは難しい。2つ目は近年、厳しくなりつつある安全管理への対応だ。緊急の災害対応とはいえ、例えば『足場設置』『フルハーネス型安全帯』に対応できず事故が起きた場合の企業責任の有無だ。ただこれだけ広域的で屋根修復に焦点が当たった災害支援は初めてのケースで、建協などの業界団体と加盟企業にとって知見とノウハウは乏しかった。…課題の1つである安全管理関係では、千葉県内での屋根補修作業で、自宅の屋根修理などで重篤な墜落事故が多発している。業務として建設企業の従業者が屋根補修を実施した案件でも、スレートの屋根を踏み抜き、約6メートル落下して長期休業を余儀なくされる労働災害が発生した。厚生労働省千葉労働局によると、労働者死傷病報告(休業4日以上)から、9月25日時点で今回の屋根補修作業で3件の墜落事故が発生し、4人が被災したことを把握している。…仮に墜落災害が起きた際、事業として請負契約していた場合は、対策を講じていたかどうかの企業責任は問われる。被災者は労働者災害補償保険の適用を受ける。請負契約では通常の事業(工事)と同様に対策を講じなければならない。問題は、事業ではなくボランティア活動で墜落災害となった場合だ。一般論としては、労働安全衛生法(安衛法)令の適用外で、被災者の労災保険も適用されない。ただ、実態として関係機関から要請を受け、事実上、企業の業務命令・指示として被災地に行きボランティア活動をするケースがある。労働者はボランティア活動と言っても、企業の命令・指示と受け取って支援活動に当たっている。こうした場合の被災者補償などはケース・バイ・ケースになるといえる。労働基準監督署は、企業から給与や宿泊費、旅費の支払いがあるかを調べるなどして判断するとみられる。」(『建設通信新聞』2019.10.01)
●「プラスチックごみ(廃プラ)が国際的な問題となるなか、日本は削減対策で『後進国』との見方が浮上している。野心的な削減目標を公表しているものの『燃やすリサイクル』を重視し、プラ使用量の削減や新素材導入では欧米に出遅れているためだ。企業の一部では危機感が広がり、原料そのものを見直して新たなリサイクル体制を築こうとの動きも出始めた。…日本は自国の排出する海洋プラごみは世界全体の1%未満で、プラ再生率は17年時点で86%と世界トップ水準だと公言してきた。だが世界が日本を見る目は異なる。日本の対策は焼却時に発生するエネルギーを使う『サーマルリサイクル』が6割を占める。18年の経済協力開発機構(OECD)の報告書では、二酸化炭素(CO₂)の排出を理由にリサイクルと認められず再生率は約2割に低下した。再生率は欧州連合(EU)平均の約3割に及ばない。日本の課題はプラ排出量の多さだ。17年の総排出量は前年比0.4%増の903万トンと4年ぶりに増加した。1人当たりプラスチック包装容器の排出量は、年間30キログラム超(14年時点)と中国やEUに比べて多い。…プラ削減の有効打は代替材料や原材料へのリサイクルだが、日本は出遅れた。化学大手の独BASFやブラジルのブラスケムなどがバイオプラの量産に動き、現時点で世界の使用量は日本の50倍の年約200万トンにもなる。米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は30年までに全ての包装の再利用などを可能にする。英蘭ユニリーバなどは25年までに包装用プラを再利用やリサイクル、生分解性に切り替える。背景には環境配慮などを企業に求める『ESG投資』の広がりがある。日本企業の間では世界とのズレを感じ、『機関投資家などの投資対象から排除されかねない』との危機感も出る。一部の企業は動いた。花王や三菱ケミカルホールディングスなどは今年1月、対策に取り組む企業連合をつくり、足元で265社・団体に広がった。会長を務める花王の沢田道隆社長は『焼却ではなく回収方法を含め、廃プラリサイクルの技術開発を進める』と語る。」(『日本経済新聞』2019.10.05)
●「(一財)建設経済研究所と(一財)経済調査会経済調査研究所は9月26日、建設経済モデルによる建設投資の見通し(2019年9月)を発表した。19年度の住宅着工戸数は前年度比でマイナス6.4%の89.2万戸と予想、20年度の全体の着工戸数については、同マイナス4.2%となる85.5万戸と予測した。」(『日本住宅新聞』2019.10.05)
●「大手電力会社が持つ送電線の容量不足が深刻になっている。日本経済新聞社が大手電力のデータを基に調べたところ、北海道や東京など東日本で送電線の5~8割が空き容量不足に陥っている。未稼働の原子力発電所のために容量を確保し再生可能エネルギーを接続しにくい実態がある。送電線の有効な使い方が広がらなければ現在16%の再生エネの比率を2030年に22~24%に引き上げる国の政策にも影響を及ぼしかねない。送電線は発電所から家庭へ電力を送る役割を担う。日本では送電線は停電など非常時に備え原則として普段はピークの容量の半分しか使わない。電力会社は発電所をつくる際に送電線を使う権利を確保する。今回の調査では使える容量が全て埋まり、再生エネなどの新設の発電所につなげない送電線を『空き容量不足』とした。…容量不足にはいくつかの理由がある。送電線の権利は先着順で埋まる制度の問題だ。送電線の整備は1970年代から本格的に進み、新設計画のあった大型の火力や原子力発電所で権利が埋まった。電力大手は原則、廃炉を決めた原発の権利は手放すが、未稼働でも今後の再稼働を目指す原発の権利は維持している。これに対し再生エネ各社は実際は空きがあると批判。接続できないことが電力供給への参入障壁になっている。…再生エネ事業者などが新規に発電所をつくる際に、容量不足の地域では電力大手が送電線の整備費用の一部負担を求めている。負担が重く、発電所建設を断念する事業者が相次いでいる。経済産業省も見直しには着手している。非常時のために空けている送電容量の5割の一部を再生エネの事業者に開放するほか、最大出力で確保している枠を実際の発電量に即したものにするよう電力大手に促している。…欧米では地域の電力を蓄電池などを使って融通し合うスマートグリッドなどが進む。再生エネ普及につながるため日本でも導入が期待される。電力大手が整備した送電網は老朽化が進む。太陽光や風力は発電量が安定せず送電線に負荷がかかりやすい。20年4月からは発電と送電の部門が分離され、さらに大規模投資がしづらくなる。」(『日本経済新聞』2019.10.11)
●「12日夜から13日未明にかけて東日本を縦断し、各地で河川氾濫などを引き起こした台風19号による住宅の浸水被害は、総務省消防庁によると15日午前5時時点で9832棟となった。国土交通省によると、堤防の決壊を確認できたのは7県の47河川で66カ所。死者は12都県で66人、行方不明者は15人に上っている。被害は広範囲にわたり、全容はなお明らかになっていない。被災現場で警察や消防、自衛隊が行方不明者の捜索などを続けている。…総務省消防庁によると、住宅の床上浸水は6315棟、床下浸水は3517棟だった。被害が大きかった茨城県は未集計で、今後さらに増えるのは確実だ。全壊は31棟、半壊は42棟で、一部損壊は837棟に上った。国交省によると、堤防の決壊は15日午前1時時点で7県の47河川66カ所に上った。同省は15日に長野市の千曲川を現地調査し、決壊の原因や復旧方法を検討する。土砂災害は19都県で146件。いずれも被害の全容は不明で、数字はさらに増える可能性がある。浄水場の被災や水道管の破損などによる断水は続いている。厚生労働省によると、一時最大14万3千戸だった断水は、15日午前4時時点でなお13都県の13万3千戸で継続している。浄水場とポンプ場が水没した福島県いわき市で4万5千戸が断水している。一方で、一時最大52万戸だった停電は15日正午時点で約3万3千戸で復旧が進む。東京電力パワーグリッドによると、管内の停電は千葉県を中心に2万戸で、16日までに大半が復旧する見通し。」(『日本経済新聞』2019.10.15)