情勢の特徴 - 2019年11月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府が策定する『新たな経済対策』のうち、国土交通省関係の概要が19日に明らかになった。対策の柱の一つとして『災害からの復旧・復興と安全・安心の確保』を掲げる。災害に備え機能を強化する改良復旧を活用し、災害復旧事業を迅速に実施する。台風被害で明らかになった課題について緊急施策を講じ、防災・減災、国土強靭化をさらに推進する。経済活力を支えるインフラの重点整備なども盛り込む。安倍晋三首相は8日の閣議で『復旧・復興の取り組みの加速、生産性の向上などのため、15カ月予算の考え方で新たな経済対策を策定する』と表明。新たな対策の柱の一つとして、堤防決壊などの要因を検証し、水害対策を中心に防災・減災、国土強靭化を進めると説明した。国交省関係では▽災害からの復旧・復興と安全・安心の確保▽経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援▽未来への投資と東京五輪・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上―の三つを柱に設定する。台風15、19号などによる一連の豪雨や暴風による被害を踏まえ、8日に閣議決定した『被災者の生活となりわいの再建に向けた対策パッケージ』に基づき、被災地の復旧・復興を加速させる。」(『建設工業新聞』2019.11.20)
●「全国で近年、豪雨による浸水被害や地震災害が相次いでいる。河川の堤防整備や災害に強い街づくりが急務だ。道路や橋、トンネルなどインフラの老朽化対策も欠かせない。建設投資はこれまで抑制傾向が続いてきたが、今後は増える可能性が高まっている。…歳出に占める投資的経費の割合(全国平均)は2018年度が12.9%で、14%台だった14年度から低下傾向が続いてきた。だが、近年の甚大な自然災害を背景に、建設投資の膨張圧力が高まってきている。東日本を襲った19年10月の台風19号を受け、関東や甲信越、北陸の市長会が国に対し、復旧・復興への支援の緊急要請を出した。復旧・復興のための投資に加え、高規格堤防の導入など防災機能強化に向けた投資が今後、膨らむ可能性がある。」(『日本経済新聞』2019.11.23)
●「政府は現在検討中の経済対策の一部として約1兆円の財政融資を使い、高速道路を整備する方針を固めた。超低金利を生かし、インバウンド需要増や災害対策のため車線を増やす。20年度には成田国際空港の滑走路整備に4千億円強を貸す見込みで、観光立国へとインフラを強化する。政府は高速道路の整備に向け、独立行政法人の日本高速道路保有・債務返済機構に融資することを検討している。財源としては、国債の一種である財投債で30年債と40年債を組み合わせて発行する見通しだ。名古屋と神戸を結ぶ新名神高速道路について4車線から6車線に拡張する事業に活用する。ほかにも東北などで暫定的に2車線となっている区間の4車線化に充てる。」(『日本経済新聞』2019.11.23)
●「財政制度等審議会(財政審、財務相の諮問機関)は25日に2020年度予算編成の建議をまとめた。社会資本整備の重点課題にストック効果の最大化と維持更新コストの最小化を掲げ、『質』の重視を提言した。ストックの整備水準が『概成しつつある』との考えを示し、前年度の建議と同様に公共事業の『量』を拡大する状況にはないとした。…社会資本の整備に当たっては、将来の人口や交通需要の減少も見据え、『量』の観点から新規採択を厳選。機能転換や広域共通利用などを含め『使い方』を改善して既存ストックを最大限活用していくことが重要とした。再編・集約による既存ストックの最適化を進めるべきだと指摘。…治水事業は相次ぐ集中豪雨に加え、土地利用の変化により災害リスクが高まっていると指摘。堤防やダムなどハード整備の重要性とともに、土地利用の規制や都市計画との連携といったソフト対策の必要性を示した。道路や下水道、鉄道といった料金収入などの利用者負担や受益者負担が得られる社会資本は、料金収入などにより必要な整備や維持管理などを行うとした。」(『建設工業新聞』2019.11.26)
●「政府は2020年度予算編成の基本方針原案をまとめた。10月の消費税率引き上げ後の経済の下振れリスクに備える。来月策定する新たな経済対策では景気の下支えに加え、台風や豪雨などの被災状況を踏まえた防災機能の強化に対応。19年度補正と20年度当初を『15カ月予算』として一体的に編成する方針を示した。…原案には東日本大震災、熊本地震をはじめ各地の災害からの復興や防災対応の強化を、現場との連携を密に着実に進めると明記。19年度予備費により台風などの被災者の生活やなりわいを再建するとともに、19年度補正予算で切れ目のない対策を講じ、復旧・復興を加速させる。防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策(18~20年度)を着実に実行。台風被害を踏まえた課題を検証し、水害対策を中心に防災・減災、国土強靭化をさらに強力に進め、国民の安全・安心を確保する。…このほかに予算の重点項目として、▽ソサエティー5.0(政府が提唱する超スマート社会)時代に向けた人材・技術などへの投資やイノベーションの促進▽次世代型行政サービスなどの抜本強化といった生産性向上に向けた取り組み▽設備投資の拡大を含めた需要拡大に向けた取り組み―なども打ち出した。」(『建設工業新聞』2019.11.29)

行政・公共事業・民営化

●「都道府県の発注工事で低入札価格調査基準がおおむね見直された。中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)モデルと国土交通省の基準がダンピング対策の強化を目的として4月に改定。国交省の調査によると、10月時点で国の基準より高い水準または国の基準を採用していたのが45団体。2019年度内に1団体が改定する予定。残り1団体は非公表だった。」(『建設工業新聞』2019.11.19)
●「国土交通省関東地方整備局は、埼玉、千葉、東京、神奈川の4都県で、鉄筋工を含む土木工事を対象に『登録基幹技能者』活用促進モデル工事を試行する。熟達した作業能力と豊富な知識があり、施工管理などのマネジメントができる優れた『登録基幹技能者』を活用し、現場の臨場による段階確認から、机上の段階確認に変える。19日に管内の関係部長、事務所長などに通知した。今後、入札契約手続きを開始する。全国の整備局では初の試行となる。」(『建設通信新聞』2019.11.20)

労働・福祉

●「群馬県は2018年度に営繕工事で実施した週休2日(現場閉所)工事を対象に、受注者の現場代理人や主任技術者へのアンケートを実施した。対象工事は4件。週休2日の確保で何が必要かを聞いたところ、▽余裕を持った工期の設定▽日給制労働者等の収入確保▽下請業者の協力―の3項目に回答が集中した。週休2日工事は本年度も継続しており、アンケートで課題把握に努める。」(『建設工業新聞』2019.11.18)
●福島県いわき市で17~18日に開催された「全国建設研究・交流集会」(建設関係労働組合などの主催)で、建設業の外国人労働者の実態が明らかにされ、討議が行われた。建設業界では1997年のピーク時に600万人台後半だった就業者数が2000年代に大幅に減少し、18年には503万人となっている。建設業で働く外国人労働者は外国人建設就労者受け入れ事業が緊急措置として決定された14年以降急増し、18年10月現在で6万8604人に上っている。集会で惠羅さとみ成蹊大学アジア太平洋研究センター主任研究員が報告した。「外国人建設就労者受け入れ事業」はわずか2回の閣僚会議で14年4月に15~20年度の時限措置として決定された。「2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会関連の建設需要に適確に対応するため、即戦力になる外国人建設就労者の受け入れを行う」(告示)とされた。しかし「実績は6年間延べ7万人という当初の想定を大幅に下回り、18年度末時点で5400人程度にとどまっている。ふたを開けてみれば、拡大したのは技能実習生(技能移転を通じた開発途上国への国際協力が目的)だった」と惠羅研究員は言う。技能実習生の過酷な労働条件も明らかになった。賃金は最低賃金に張り付き、不払い問題も発生している。「10万円未満が34%、10万円以上12万円未満が27%を占めている」と氏家正一・建設政策研究所研究員が報告した。…法務省の「技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム・調査・検討結果報告書」によると技能実習生の失踪も増えている。14年に4847人でしたが、18年には9052人と、ほぼ倍増した。氏家研究員は、失綜の動機として最も多いのは「低賃金」で、全体の63.7%を占めると報告した。「暴力を受けた」も4.8%あったことを明らかにした。(『しんぶん赤旗』2019.11.26より抜粋。)
●「厚生労働省は26日、賃金引き上げなどの実態に関する調査の2019年結果を公表した。常用労働者1人当たりの平均賃金を19年に引き上げた、または引き上げる予定の企業は全産業の90.2%を占め、前年から0.5ポイント上昇した。現在の調査方法となった1999年以降で最も高く、8年連続で上昇している。建設業の賃上げ実施率は100%で、6.0ポイント上がった。…1人当たり平均賃金の改定額は、全産業で5592円となり、83円下がった。3年ぶりの低下。改定率は2.0%で、前年から変わらない。建設業の改定額は産業別で2番目に高い8261円で、900円の上昇。改定率は2.4%で、0.2ポイント上がった。」(『建設通信新聞』2019.11.27)
●「国土交通省は、社会保険の加入や賃金の支払い状況に関する実態調査を実施する。今回調査から新たに、給与形態や休日取得状況といった働き方改革の推進に関連した項目を追加。また、建設業社会保険推進・処遇改善連絡協議会での検討を踏まえ、建設業退職金共済制度の活用状況や一人親方の実態も確認する。…19年度調査から新たに、月給制、日給月給制など給与形態や4週8休、日曜のみなど所属技能者の休日取得状況の質問項目を追加。また、建退共制度の活用状況や一人親方の実態を確認する項目も設け、公共・民間別の建退共証紙の交付状況や、自社で専属的に従事する一人親方、自社から独立した一人親方の動向などについて質問している。」(『建設通信新聞』2019.11.28)

建設産業・経営

●「全国鉄筋工事業協会(全鉄筋、岩田正吾会長)が2次下請以下の業者をブロックごとに組織化する取り組みが本格的に動きだす。…下請組織は、改正出入国管理法に基づく外国人材(特定技能1号)を2次以下の下請でも受け入れを可能とするための措置。受け入れには、建設技能人材機構(JAC、才賀清二郎理事長)に企業自ら賛助会員となるか、JACに加盟する全鉄筋傘下に入る必要がある。関東ブロックの下請組織は、関東鉄筋工事業団体連合会(関東鉄筋連、知念辰昇会長)メンバーの東鉄協、協同組合東京鉄筋工業協会(鉄工協)と、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬各県の鉄筋業協同組合・協会で設立。一般社団法人として名称は「(仮称)関東鉄筋業協会」とする。…設立に向けて今後、年内に東鉄協と鉄工協の合同役員会での検討と、関東ブロックの組合・協会に下請組織案を提示するなどの手続きを経て、20年3月の関東鉄筋連団体長会議で設立を決定。定款とスケジュールを検討する。下請組織は特定技能外国人の受け入れが目的で、別の施策の取り扱いについては今後の検討事項とする。」(『建設工業新聞』2019.11.20)
●「地域の守り手として全国各地で発生する災害に対応する一方、生産性向上と働き方改革や、建設産業の新たな共通制度インフラになりつつある建設キャリアアップシステムなどに取り組む地方建設企業の存在感が高まっている。台風15、19号被害に対し地元建設企業と建設業協会など業界団体が、都道府県単位を超えた広域連携によって『地域の守り手』として本領を発揮したことが理由の1つだ。一方で、生産性向上と担い手確保につながる働き方改革や適正工期と施工時期の平準化の取り組みには若干の不安も漂う。」(『建設通信新聞』2019.11.21)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)の生産性向上推進本部は、生産性向上推進要綱(2016年4月策定)の18年度フォローアップ報告書をまとめた。生産性の指標としている『技術者・技能者1日(8時間)当たりの施工高』については、会員企業の土木・建築平均が前年度比3.86%上昇し9万3282円となり、06年度以降で最高値を更新した。また、今回から追加した『土木・建築の完成工事高から完成工事総利益を控除した数値』は8万1899円。さかのぼって調査した過去9年で2番目に高かった。」(『建設通信新聞』2019.11.25)
●「国土交通省は28日、中央建設業審議会に設置した『工期に関する基準の作成に関するワーキンググループ(WG)』の初会合を開いた。建設業法の改正により、中建審が作成・勧告することと規定された『工期に関する基準』の具体的な内容を検討する。工期基準は2020年10月から施行する『著しく短い工期の禁止』の前提となるもので、公共・民間、元下を問わずすべての工事に影響する議論となる。20年5-6月にWGで基準案をまとめ、7-8月の中建審総会で基準を作成する。」(『建設通信新聞』2019.11.29)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省と法務省は所有者の全容が分からない土地について、一部の所有者によって売却や賃貸ができる仕組みをつくる。所有者の所在が分からない『所有者不明土地』を対象とする。売却などの手続きを柔軟にすることで企業や近隣の住民が土地を取得しやすくし、九州本島の面積に相当するとされる所有者不明の土地の活用を進める。」(『日本経済新聞』2019.11.18)
●「国土交通省は、『河川・気象情報の改善に関する検証チーム』の初会合を14日に東京・霞が関の国交省内で開き、議論の方向性を示した。豪雨などが発生した場合の河川水位や気象情報の発信方法を改善する。台風19号で浮き彫りになった課題や現場の実態を踏まえ、▽体制▽システム▽情報の内容―の三つの視点に沿って効果的な方法を検証する。2020年3月に改善策をとりまとめる。」(『建設工業新聞』2019.11.18)
●「2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設工事が終わり、整備費は計1569億円で固まった。3千億円起とも試算された旧計画の撤回を経て、費用の上限と限られた工期をクリアした。30日に正式に完成し、運営主体の日本スポーツ振興センター(JSC)に引き渡される。」(『日本経済新聞』2019.11.20)
●「国土交通省は20日、社会資本整備審議会道路分科会の基本政策部会を開き、道路政策のビジョン素案を示した。道路の耐災害性強化や幹線道路ネットワークの機能強化、モビリティー革命への対応、海外と国内各地の結び付き強化などに向けた道路政策を展開し、災害に強く、国内外の人やモノが交流する社会を目指す。年内をめどにまとめる。ビジョンは同部会の提言として作成する。おおむね20年後を見据え、目指す社会像と、実現に向けた道路政策の中長期的な方向性を示す。目指す社会像は、▽国土の災害脆弱性とインフラ老朽化を克服した安全社会▽人とモノが移動し、高齢者、子ども、障害者を含む全ての人が交流・活躍する社会▽世界と人やモノが行き交う社会――の3つを設定した。」(『建設通信新聞』2019.11.21)
●「国土交通省は22日、社会資本整備審議会河川分科会に設置した『気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会』(委員長=小池俊雄土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長)の初会合を開き、気候変動に伴う降雨量の増加や海面水位の上昇に対応した新たな水災害対策の具体的な検討を始めた。洪水が発生することを前提に、行政、企業、住民ら関係者が連携して流域全体で備える対策を2020年夏をめどに取りまとめる。…小委員会は、新たな水災害対策の検討と、台風19号など19年の災害で明らかになった課題の包括的な検討を担当する。国交省は、新たな水災害対策の方向性として、▽洪水や内水などの制御と氾濫防止▽洪水や内水などの被災対象減少▽洪水や内水などの発生を前提とした被害の軽減と回復力の向上――の3つを示した。ハード整備だけでなく、土地利用の規制、居住誘導、コンパクトシティーの推進、マイ・タイムラインの普及、民間ビルや高台の避難場所確保、企業のBCP(業務継続計画)に沿った対応促進、水害保険の加入促進など、自助、共助、公助の観点から、流域のあらゆる主体が連携した対策を検討する。」(『建設通信新聞』2019.11.25)

その他