情勢の特徴 - 2019年12月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●全商連付属・中小商工業研究所はこのほど、2019年下期営業動向調査の結果を発表した。10%への消費税増税が目前に迫った9月に実施したもので、次期経営見通しは全業種で「悪くなる」と予測するなど、10%増税が景況に与える深刻な影響への懸念が広がっていることが特徴だ…消費税率が10%になった場合の商売への影響については、全6業種で「売り上げが減る」(「売り上げが大幅に減る」を含む)と予測し、次期の経営見通しについて、全6業種が悪化するとしている。とりわけ宿泊・飲食業が大幅な悪化を見通している。(『全国商工新聞』2019.12.02より抜粋。)
●「総務省が6日発表した10月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり27万9671円だった。物価変動の影響を除いた実質で前年同月に比べて5.1%減った。マイナスは11カ月ぶり。落ち込み幅は5%から8%に消費税率を上げた後の2014年4月(4.6%減)より大きかった。増税前の駆け込み需要の反動に台風の影響も重なった。費目別でマイナスの影響が大きかったのは3.9%減の食料だ。…交通・通信は6.3%減となり、通勤や通学の定期代、タイヤなど税率が上がる前の9月に駆け込み消費がみられた品目で反動減が鮮明になった。家電を含む家具・家事用品は16.3%の大幅減となった。電気冷蔵庫や電子レンジといった耐久財のほかに洗濯用洗剤、トイレットペーパーなど買い置きのできる品物が顕著に減った。保健医療で紙おむつ、コンタクトレンズ洗浄液、栄養剤なども落ち込んだ。」(『日本経済新聞』2019.12.06)
●「政府は5日、事業規模約26兆円の経済対策を閣議決定した。財政措置は13.2兆円で、国と地方を合わせた歳出規模は9.4兆円程度。うち国費は7.6兆円となる。2019年度補正予算案と20年度予算案に振り分けて計上する。財政投融資は3.8兆円になる。…取り組む施策は▽災害からの復旧・復興と安全・安心の確保▽経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援▽未来への投資と東京五輪・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上―の三つが柱。経済対策に基づき19年度補正と20年度当初を『15カ月予算』として一体的に編成。予備費を含めた19年度予算と20年度予算の臨時・特別の措置などを適切に組み合わせ、機動的で万全な対策を講じる。」(『建設工業新聞』2019.12.06)
●「政府・与党は収益が伸びているのに設備投資に消極的な企業に対し、税優遇の適用を厳しくする方針を固めた。研究開発の取払組みなどに応じた優遇制度で、設備投資額が減価償却費の1割以下なら対象外としていたのを3割以下に改める。すでに創設が固まったスタートアップ企業への出資に対する税優遇と合わせ、企業内部にたまったお金を成長投資に振り向けてもらうことを狙う。」(『日本経済新聞』2019.12.11)
●「日銀が13日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はゼロとなり、9月の前回調査から5ポイント悪化した。米中貿易戦争で外需の低迷が続き、4四半期連続の悪化となる。大企業非製造業も個人消費の落ち込みで2期連続で悪化した。…業況判断DIは景況感が『良い』と答えた企業の割合から『悪い』と答えた割合を引いた値。大企業製造業のゼロは、日銀が大規模緩和に踏み切る直前の2013年3月(マイナス8)以来、6年9カ月ぶりの低水準となる。…主要16業種のうち11業種で悪化した。アジア向け輸出が低迷する自動車や鉄鋼のほか、東京五輪の建設需要が一巡した窯業・土石製品などが悪化した。台風19号による工場の操業停止も響いた。」(『日本経済新聞』2019.12.13)
●「国土交通省関係の2019年度補正予算案の大枠が明らかになった。同省が12日の自民党・国土交通部会に調整状況を報告した。国費総額は1兆2634億円で、大部分は災害からの復旧・復興と安全、安心の確保に充てる。財政投融資は約6000億円を計上し、新名神高速道路の6車線化や都市再生機構を通じた都市再開発の促進などを実施する。公共事業の効率的な執行を目的に977億円の『ゼロ国債』も設定した。」(『建設通信新聞』2019.12.13)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、自治体も含めた災害対応のさらなる円滑化・迅速化に向けて、『災害復旧における入札契約方式の適用ガイドライン』を改定する。近年の災害対応の事例を踏まえ、見積もり活用や工事の一時停止など積算や施工段階の内容を追加する。公共工事品質確保促進法(品確法)の改正により調査等の業務が法律の対象として明確に位置づけられたことを受け、災害復旧工事に関する業務についても対応を明記する方針だ。」(『建設通信新聞』2019.12.02)
●「国土交通省関東地方整備局は、日本建設業連合会の『労務費見積もり尊重宣言』を踏まえ、元請企業の労務費賃金改善の取り組みを促進するため、全国の整備局に先駆けてモデル工事を試行する。同局発注工事を対象に、総合評価方式の技術評価や工事成績評点でインセンティブ(優遇措置)を付与する。…総合評価方式では発注者が、ホームページやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などで入札契約手続きの審査基準日までに入札・契約参加企業が『労務費見積もり尊重宣言』を決定・公表した事実と、参加企業から提出された労務費(労務賃金)を内訳明示する旨を記した誓約書などの両方を確認した場合に1点を加点する。…工事成績評定に当たっては、労務費が内訳明示されていない場合は、落札者が総合評価方式の技術評価で加点された場合のみ減点する。減点は3点を検討している。見積書に加え、注文書に労務費が内訳明示されている場合は、工事完了検査時に見積もり尊重宣言を公表した事実を確認できれば加点する。加点は2点を検討している。総合評価で加点していない場合でも、工事完了検査時に確認できれば対象となる。」(『建設通信新聞』2019.12.04)
●「総務省は3日、地方自治体を対象にまとめた2019年度上半期(9月末時点)の公共事業予算執行状況を公表した。18年度から繰り越された予算と19年度の当初予算を合算した24兆1295億円に対し、契約率は前年同期を0.2ポイント上回る60.8%だった。支出済み額割合は0.1ポイント下回る18.5%となった。」(『建設工業新聞』2019.12.04)
●「経済産業省や国土交通省、総務省など13府省庁は、公共調達で中小企業の受注機会を一層確保するとともに、発注時期を平準化する取り組みを強化する。政府の契約目標に9年が連続で達していないことに加え、発注時期や公共工事の施工時期が集中することで受注者の働き方改革が遅れる恐れがあるため。『官公需に関する関係府省等副大臣会議』を10日に設置し、担当者レベルだった関係府省庁の連携を政務に引き上げた。政務の関与により、取り組みをてこ入れする。」(『建設通信新聞』2019.12.11)

労働・福祉

●「国土交通、厚生労働両省は建設資材の物流体制を改善するための指針をまとめる。資材運搬を担うトラックドライバーの長時間労働の是正や生産性向上につながる取り組みを盛り込む。両省は11月29日に東京都内で開いた『建設資材物流における生産性向上及びトラックドライバーの労働時間改善に関する懇談会』で指針の骨子案を提示した。年度内に策定する予定だ。…建設資材の物流を巡っては、天候や設計変更などで計画通りに搬入ができなくなると、限られたスペースにトラックが集中し『荷待ち時間』が過大になる。指針『取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン(建設資材編)』の骨子案によると、特にドライバーの荷待ち時間が長い資材の品種に特化して、課題の洗い出しや原因分析を行う。課題を類型化した上で、課題解決の方向性や各関係者が取り組むメニューを示す。荷待ち時間削減に向けた解決策として、スマートフォンのアプリなどを活用した情報共有や車両の動態管理などによる搬出入の円滑化などを記載する方針だ。課題を詳しく洗い出すため、トラック協会の会員約5.5万事業者を対象に、荷待ち時間の実態調査(調査期間12月~2020年1月)を行う。待機時間を削減した優良事例も集め、指針の参考資料とする。ドライバーが車両から資材の荷下ろしなど付帯作業を行うケースも散見されるため、運送事業者、荷主事業者それぞれに付帯作業の実態調査も今月行う。いずれの調査も同2~3月に結果をまとめる。」(『建設工業新聞』2019.12.02)
●「経団連は2020年の春季労使交捗で会員企業に、年功型の賃金など横並びを特徴とする日本型雇用システムの再検討を呼びかける方針だ。人工知能(AI)などのデジタル人材が獲得しにくくなっていることが背景にある。日本の有力企業の多くが会員である経団連が方針を打ち出すことは、戦後続いてきた日本型雇用システムが変わる契機となりそうだ。」(『日本経済新聞』2019.12.04)
●「外国人の新在留資格『特定技能』について、国土交通省は建設分野への受け入れ計画の認定状況をまとめた。11月に国交省の独白基準をクリアしたのは35社・80人。7月からの累計は119社・287人を認定した。287人を職種別にみると建設機械施工が96人と最も多く、鉄筋施工60人、型枠施工38人、左官35人、内装仕上げ32人、コンクリート圧送22人、屋根ふき4人の順となった。…認定された287人はすべて、試験が免除される技能実習生(173人)または建設就労者(114人)からの移行者となっている。国別にみると、ベトナムが最も多い211人で、中国32人、フィリピン16人、インドネシア13人、カンポジア9人、モンゴル3人、ミャンマー・タイ・ネパール各1人となった。」(『建設工業新聞』2019.12.04)
●「国土交通省は、インドネシアの建設業を所管する公共事業・国民住宅省と会談し、建設分野での特定技能外国人の送り出し・受け入れに向けた具体的取り決めに関する協議を進めることに合意した。2020年度以降に現地での教育訓練と技能評価試験を実施することを確認。インドネシアで試験を実施する職種については、今後、建設技能人材機構(JAC)や建設業者団体と調整を進めていくこととした。」(『建設通信新聞』2019.12.09)
●地震、台風、豪雨といった災害時、地元建設業者とともに大切な存在がいる―公務員だ。例えば、国土交通省の職員は「2016年の熊本地層では、前震発生(4月14日)から月末までの半月間に、被災現場を所掌する出張所係長が200時間を超える超過勤務を行った。2018年2月の福井豪雪では、3日で4時間しか睡眠が取れなかった職員や、極寒のなかで24時間以上現場対応」(詳しくは、国土交通労働組合「国土強靭化を支える国土交通省の職場実態」『建設政策』2019年7月号)とのこと。災害対応が業務である以上当たり前とはいえ、あまりにも過酷。国の公務員(人件費、定員)削減が引き起こした一つの実態だ。それにもかかわらず、安倍内閣は、今後の公務員の削減計画「定員合理化計画」(2020年~24年度)を決定した。国土交通省は、次年度に向けて、内閣人事局に「防災・減災対策や社会資本の老朽化対策等の体制強化」で224人を要求、それでも足りない、というのが現場の声だ。(『全国商工新聞』2019.12.09より抜粋。)
●「国土交通省は9日、『建設工事における安全衛生経費の確保に関する実務者検討会』を開き、これまでの検討内容をまとめた提言「建設工事における安全衛生経費の適正な支払いに向けて」の案を提示した。請負契約締結時や追加・変更契約時に、工事に必要な安全衛生対策項目を元下間で共有できる確認表や安全衛生経費を内訳明示する標準見積書の作成・普及を図ることで、安全衛生経費の見える化を進めることを提言。戦略的な広報活動を通じた意識改革や施策を継続的に進めるための仕組みの構築も盛り込んでいる。」(『建設通信新聞』2019.12.10)
●「国土交通省は建設現場で働く一人観方へのヒアリング結果をまとめだ。元請または注文者との契約では『書面による契約はなし。金額だけ口頭で伝えられる』などの声が寄せられた。安全衛生経費については『請求したが支払われなかった』『下請案件では請求しづらい』といった厳しい実情が浮き彫りとなった。国交省は全国建設労働組合総連合(全建総連)の協力を得て、9月24日と10月10日の2日間、首都圏で働く20人(30~60歳代)の一人親方を対象にヒアリングを実施。…元請に安全衛生経費を請求しても受け入れられず、『むしろ安全会費を差し引かれる。さらにヘルメット代や業務処理用タブレット代も引かれる』などの意見があり、『消費税のように安全衛生経費の割合などを数値で明確に示してほしい』といった要望も寄せられた。安全衛生対策に関する器具や費用については『ヘルメットなども使用期限があるにもかかわらず、古いものを使い続けているのが現状だ』『元請が支給していたヘルメットやマスクが、今では半値で買い取れといった対応だ』といった実情が分かった。労働災害防止に向けた取り組みについては『労働災害防止協議会による会合が月1回ある』『1次下請の安全パトロールも頻繁に行われている』との意見があった。小さいけがも報告するよう指導するゼネコンもあり、『「労災隠しは犯罪」という意識が浸透している』との声もあった。施主や元請の責任について聞いたところ、『地元工務店は安全衛生対策の費用に関して無頓着すぎる』『いまだに「けがは自分持ち」という認識だ』『工期の圧力によって安全性が犠牲になっているケースがある』といった意見が出た。行政機関などに対しては『国が(安全衛生経費を含めた)契約書のひな型を作って義務化し、守らない事業者を開示したり、処罰してほしい』『安全衛生経費の支払い対応状況に応じて元請をランク付けしてほしい』などの要望が寄せられた。」(『建設工業新聞』2019.12.11)
●「新たな経済対策に盛り込まれた『建設キャリアアップシステムを活用した地域建設企業の生産性向上』の概要が分かった。専門工事企業の施工能力の“見える化”制度に関するシステム開発と、現場を支える職長・中堅クラスの技能者を対象としたスキルアップ講習を実施する。中小規模が多い専門工事企業では経営基盤の脆弱性や人材不足といったリスクを抱えているケースが多いことから、建設キャリアアップシステムを活用した人材育成に積極的に取り組む企業を支援する。」(『建設通信新聞』2019.12.12)
●「日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)は、全国の型枠工事業者を対象とした2019年度雇用実態調査の報告書をまとめた。型枠大工、型枠解体工とも賃金は前回(18年度)調査と比べ、ほぼ横ばい。15年度から同水準で推移しているため、公共工事設計労務単価の引き上げ分を考慮すると、実質的に低下している。また、社会保険加入率は大幅に改善している半面、その原資となる法定福利費の確保については依然として一部の発注者、元請企業から理解が得られておらず、加入継続への危機感が強まっている。同協会では契約単価の向上・安定化とともに、法定福利費を確保する仕組みの制度化を行政機関に要望していく方針だ。」(『建設通信新聞』2019.12.13)

建設産業・経営

●「海外建設協会(蓮輪賢治会長)は、会員企業を対象に調査した2019年度上期(4-9月累計)の海外建設工事受注実績(速報値)をまとめた。総額は前年同期比20.3%減の8325億2400万円と一服感がみられるものの、過去3年の平均並みで推移。増減傾向の判断については単年度ではなく、中長期的な視点が求められるため、今後の動向が注視される。地域別ではアフリカが唯一増加、経済成長に向けたインフラ需要の高まりが背景にあるとみられる。総額の内訳は、本邦法人が26.8%減の2196億6200万円、現地法人が17.7%減の6128億6200万円となっている。…地域別では、アフリカが94.4%増の345億6600万円。ケニアのODA有償案件である道路工事がけん引している。このほか、アジア、中東・北アメリカ、北米、中南米、欧州、東欧、大洋州は軒並み減少。アジア、北米、欧州は本法、現法とも落ち込んでいる。総額の全体比率はアジアと北米で8割以上を占めている。国別の上位10カ国をみると、1位は2期連続で米国(受注金額2579億円)。台湾が都市鉄道などの影響で8位から2位(1077億円)に上昇。シンガポール、オーストラリア、タイが続いている。」(『建設通信新聞』2019.12.06)
●「建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二部会長)は2019年度『建設専門業の経営革新支援研修会』を、20年1月28月の関東地区から3月4日の北陸地区まで全国10地区で開催する。研修テーマは『建設業の働き方改革を巡る最近の動きについて』と『建設キャリアアップシステム(CCUS)について』。厚生労働省、国土交通省各地方整備局、建設業振興基金(振興基金、佐々木基理事長)の担当者が説明する。」(『建設工業新聞』2019.12.09)
●「建設経済研究所は、売上高上位40社の全国ゼネコンを対象とした『2020年3月期第2四半期決算主要建設会社決算分析』を発表した。受注高は前年同期比で大手、準大手、中堅の全階層で減少し、総計としては直近5年間で最も低い水準となった。一方、売上高は完成工事高の増加から全階層で増加となり、直近5年間で最高となっている。調査は、直近3年間の連結売上高の平均が上位の40社(大手5社、準大手11社、中堅24社)を対象に実施した。各社の決算短信などから判明する19年3月期第2四半期決算の財務指標を分析している。分析結果によると、受注高(単体)は、前年同期比12.0%減の5兆1539億6500万円。建築(8.2%減、3兆6137億2800万円)、土木(20.7%減、1兆4074億6900万円)ともに減少となった。企業別でみると、増加したのは、大手が5社中3社、準大手は11社中3社、中堅は24社中7社だった。通期予想に対する達成度は38.6%だった。売上高(連結)は、6.8%増の7兆7021億5300万円。大手は4社すべて、準大手は10社、中堅は17社で増加するなど、最近5年間で最も高い水準となっている。売上総利益(連結)は7.2%増の9555億1300万円だった。利益率は前年同期と変わらずの12.4%。利益率は横ばいだったものの、手持ち工事の順調な進捗から完成工事高が増加したため、直近5年間で最も高い水準となった。本業のもうけを示す営業利益(連結)は、10.0%増の5187億3700万円。営業利益率は6.7%で前年同期から0.2ポイントの上昇となった。全40社が営業黒字を確保。大手は4社、準大手は8社、中堅は12社が営業利益を増加させている。経常利益は7.9%増の5454億0200万円。経常利益率は0.1ポイント増の7.1%だった。」(『建設通信新聞』2019.12.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「政府は2日、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉に関する会合を開き、廃炉工程表の改定案を示した。建屋内のプールに残る使用済み核燃料を2031年末までに全て取り出す目標を新たに掲げた。事故後30~40年とする廃炉の完了時期は維持した。廃炉作業で最難関とされる溶融燃料(デブリ)の取り出しは21年に2号機から始める。ただ既に工程に遅れが生じ、直近ではトラブルが相次いでいる。…東電は11年12月に政府が作った廃炉工程表に基づいて廃炉作業を進めている。工程表は約2年に1度改定しており、17年9月以来となる。費用は廃炉だけで約8兆円と政府は試算している。今回、41~51年までの廃炉完了時期は維持した。廃炉作業は放射性物質のリスクを低減するためプールに残る使用済み燃料とデブリの取り出し、さらに汚染水対策を主要な柱にしている。改定案は1~6号機の原子炉建屋のプールに残る使用済み燃料を31年末までに取り出すことを明記した。当初は炉心溶融した3号機からの燃料取り出しは14年末に始める予定だったが、約4年遅れの今年4月に始まった。炉心溶融に至らなかった4号機ではすでに全量を取り出している。廃炉で作業が最も難しいとされるデブリの取り出しは21年にまず2号機から始める。1~3号機では、原子炉圧力容器やその外側の格納容器にデブリがたまっている。総量は900トン程度と推計されているが、詳細な量や成分は分かっていない。放射線量が高く人が近づくことはできないため、作業は遠隔となり難航が予想される。日々発生している放射性物質に汚染された水を巡っては、発生量を現在の1日平均170トン(18年度)から20年中に150トンに減らす目標を掲げてきた。改定案では発生量を最小限に抑える方針を示したが追加の数値目標は出さなかった。」(『日本経済新聞』2019.12.02)
●「厚生労働省は、建築物の石綿(アスベスト)飛散防止対策で見直しの方向性を固めた。解体部分の床面積の合計が80平方メートル以上の解体工事と請負金額100万円以上の改修工事は、石綿の有無にかかわらず施工業者が作業開始前に、労働基準監督署へ届け出ることを義務付ける。届け出の内容は工事に関する基本情報や事前調査の結果などで、電子システムで行う。年度内に正式決定し、2020年度に関連省令を改定する予定だ。」(『建設工業新聞』2019.12.04)
●「2018年に東京都で販売されたマンションの価格は、新築、中古ともに年収の10倍を超えていることが4日、東京カンテイ(東京・品川)の調べでわかった。平均年収に対する倍率は新築で13.3倍、中古で10.49倍だった。新築は7年連続、中古は6年連続で上昇しここ10年で最高を更新した。一般世帯にはますます手が届きにくくなっている。」(『日本経済新聞』2019.12.05)
●「国土交通省は、首都直下地震が高い確率で発生すると想定されていることを踏まえ、企業などが東京圏に過度に集まっている状況を是正する取り組みの強化に向け、集中する要因の分析を始めた。6日に『企業等の東京一極集中に関する懇談会』(座長・増田寛也東京大公共政策大学院客員教授)の初会合を開いた。2020年6月に取りまとめる。国土形成計画に基づいて東京圏への過度な集中の是正に向けた取り組みが進められているが、企業などの動向が大きく変化する状況にはなっていない。効果的な施策を講じる必要があるため、諸外国の都市圏と比べながら、企業活動や働き方を含む多角的な視点で要因を分析する。」(『建設通信新聞』2019.12.09)
●「経済産業省は再生可能エネルギーによる発電事業の普及に向け、論点の中間とりまとめ案を示した。再エネの『主力電源化』の支援制度は一過性ではなく、他電源との競争力があり持続可能なものにすることが不可欠と強調。コスト競争力の有無で電源を分け、2種類の支援制度を提示した。災害時の有効な電力供給源にするため、発電設備の安全対策や周辺地域への悪影響の解消の必要性も明記した。総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)基本政策分科会の下に設置した『再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会』の5回目会合が12日に東京都内で開かれ、中間取りまとめ案を提示した。▽電源の特性に応じた支援制度▽地域に根差した再エネ導入の促進▽再エネ主力時代の次世代電力ネットワーク▽その他の論点―の4章で構成する。」(『建設工業新聞』2019.12.13)

その他

●「英国の下院総選挙(定数650)は13日開票を終え、ジョンソン首相率いる与党・保守党が過半数を獲得した。ジョンソン氏は『1月31日までに欧州連合(EU)から必ず離脱する』と勝利宣言し、公約だった2020年1月末の離脱へ準備を加速させる姿勢を強調した。16年の国民投票で離脱を決めてから3年半。英政治の混乱で迷走が続いてきた英国のEU離脱は実現へ大きな節目を迎えた。…保守党は過半数を奪還したことで、EUからの離脱関連法案を単独で可決できるめどをつけた。ジョンソン政権は議会の主導権を回復し、クリスマス休暇入りまでに離脱案の審議を再開する方針だ。英議会が1月中に新離脱案を可決すれば、20年末までは離脱のショックを和らげるためにEUとの経済的関係を維持する『移行期間』付きの離脱が決まる。総選挙はEU離脱が最大の争点だった。3年半にわたる政治の迷走で国民に『ブレグジット疲れ』が広がるなか、労働党は離脱か残留かを明確にできず、大敗を喫した。地盤だった中部の地方都市で離脱支持層の票を保守党に奪われ、相次いで議席を失った。…総選挙の結果、英国がEUから『合意なき離脱』をして、経済などが大混乱する事態はひとまず避けられるめどがついた。ただ1月末に離脱できても、20年末までの移行期間中に英・EUで新たな自由貿易協定(FTA)をまとめられなければ、EUの単一市場や関税同盟から合意のないまま切り離されるリスクがまだ残っている。」(『日本経済新聞』2019.12.14)