情勢の特徴 - 2020年1月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●昨年10月に生活保護を利用した世帯は163万7637世帯で、前年同月より1548世帯少なくなったことが8日、厚生労働省の被保護者調査でわかった。しかし、高齢者世帯は増え続けており、利用世帯の55%に達している。世帯類型別に利用世帯(保護停止中を除く)をみると、高齢者世帯が89万7264世帯(全利用世帯の55.1%)で、前年同月より1万5263世帯増えた。高齢者世帯の9割は1人暮らしの世帯(82万1201世帯)が占めており、家族や親せきからの支援が受けにくく、社会的に孤立しがちな1人暮らし世帯で貧困状態が広がっている実態が浮き彫りになった。これ以外の世帯では、障害者世帯が前年同月比3302世帯増の20万3101世帯となった一方で、傷病者世帯(20万4822世帯)、母子世帯(8万1217世帯)、その他の世帯(24万2802世帯)は前年同月より少なくなった。(『しんぶん赤旗』2020.01.09より抜粋。)
●「好業績下で人員削減策を打ち出す企業が増えている。2019年に早期・希望退職を実施した上場企業35社のうち、最終損益が黒字だった企業が約6割を占めた。これらの企業の削減人員数は中高年を中心に計9千人超と18年の約3倍に増えた。企業は若手社員への給与の再配分やデジタル時代に即した人材確保を迫られている。業績が堅調で雇用環境もいいうちに人員構成を見直す動きで、人材の流動化が進む。上場企業が19年に募集(または社員が応募)した早期・希望退職者は35社の計約1万1千人だった。東京商工リサーチが調べた。企業数も人数も18年(12社、4126人)の約3倍にのぼり、多くの電機大手が経営危機に陥っていた13年(54社、1万782人)の人数を超え、6年ぶりに1万人を上回った。35社の業績を日本経済新聞が分析したところ、全体の57%に当たる20社が直近の通期最終損益が黒字で、好業績企業のリストラが急増していることが分かった。この20社の削減幅は約9100人と、全体の8割を占めた。最終赤字の企業は15社(43%)だった。ただ、有効求人倍率は高止まりしており雇用全体としては悪くない状況が続く。」(『日本経済新聞』2020.01.13)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省関東地方整備局は、技能者の労務賃金改善に向けた取り組みとして『「労務費見積り尊重宣言」促進モデル工事』を試行する。8日に初弾案件を公告。労務費確保を後押しするため、工事の入り口(総合評価方式)と出口(工事成績評定)で加点処置などを実施する。同工事を試行するのは、国交省の各地方整備局で関東整備局が初めて。モデル工事の取り組みは日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)が2018年9月に発表した『労務費見積り尊重宣言』を踏まえて実施する。関東整備局は当面、WTO政府調達協定の対象となる一般土木工事のうち、段階的選抜の総合評価方式を採用する案件で試行する。年度内に複数案件の発注を目指す。…総合評価方式の加点では、入札契約手続きの審査基準日までに、入札参加企業が『労務費見積り尊重宣言』を決定・公表したことを同局が確認する。入札書類に決定した事実が分かるホームページの写しなどの添付を求める。下請企業への見積書に労務費の内訳明示を明記した誓約書も確認する。両方を満たせば技術評価で1点加点する。工事成績評定では工事完成検査と成績評定時に元請と下請が交わした見積書を抜き取り調査する。入札で加点処置を受けていたにもかかわらず、内訳明示がなかった場合は3点滅点する。見積書と注文書の両方で内訳明示していた場合は2点加点する。」(『建設工業新聞』2020.01.08)
●「宮城県の水道事業で2022年度からコンセッション(公共施設等運営権)方式の導入が決まった。昨年12月に県議会で関連条例が成立。上水道と下水道、工業用水道の水道3事業一体でコンセッション事業が行われるのは全国初となる。県が『みやぎ型管理運営方式』と呼ぶ大胆で先進的な民間活用に多くの企業が高い関心を寄せる。…県は条例の施行と同時にコンセッション事業の実施方針を公表した。公募型プロポーザルで行う事業者選定手続きのスケジュールや審査方法、参加資格を明示。3月にプロポを公告する。単体、複数の企業で組成するコンソーシアムいずれも応募可能。国内に法人を持つ海外企業の参加も認める。応募企業かコンソーシアム代表企業には事業の継続性確保という観点から資本金要件を定め、プロポの募集要項で最低金額を示す。応募企業らに対し、10年度以降に一定規模以上の浄水場(処理能力日量2.5万立方メートル)の運転管理や、下水処理場(同10万立方メートル以上)の運転管理を元請として3年以上連続で受託した実績も求める。…22年度にコンセッション事業を開始。事業期間は41年度末までの原則20年間(最長25年間)に設定する。…県が水道事業をコンセッションで進める最大の狙いは水道料金の引き上げを抑えることだ。人口減少による料金収入の落ち込みや水道施設の老朽化に伴う維持管理・更新費の増加が見込まれる中、民間ならではの豊富なノウハウと高度な技術力を最大限活用しコストを効率化。浮いた分で値上げの抑制に努める。…コンセッション事業の主な対象施設は9事業区域にある浄水場や下水処理場の設備。これらのストックは老朽化が進んでおり、運営期間中に順次更新期を迎える。一方、管路については運営期間終了後の20~30年後に更新期を迎えるため対象から除外。22年度以降も県が運営する。県の試算によると、県が22年度以降も9事業の運営を続けた場合、20年間で必要になる総事業費は3314億円。コンセッションの導入によって約250億円の削減効果を見込む。このうち約200億円分の削減を民間事業者に求める。県は現在、9事業ごとに浄水場や処理場の運転や設備の点検を民間に4~5年契約で委託している。コンセッション事業では9事業分の浄水場などの運転や設備の点検に加え、設備の維持管理・更新工事も一括して民間に任せる。従来の仕様発注から性能発注へと切り替え、民間事業者の技術力やノウハウを最大限生かせるよう提案の自由度を向上。人工知能(AI)やIOT(モノのインターネット)など先進技術を導入し、作業の大幅な省力化が進むことに期待する。昨年9月と12月に募集したコンセッション事業に対する関心表明書を提出した企業は約50社。商社やメーカー、ゼネコン、建設コンサルタントなどが含まれるという。」(『建設工業新聞』2020.01.14)
●「国土交通省と総務省は、公共工事における施工時期の平準化の取り組みを促進するため、地方自治体に対する働きかけを連携して行うことを決めた。国交省による土木担当部局・契約担当部局といった発注部局への要請に加え、総務省から財政担当部局に対しても取り組みを求める。平準化を進める上での課題の1つだった財務部局との調整について、総務省から直接働きかけてもらうことで、取り組みを進めやすい環境を整える。」(『建設通信新聞』2020.01.15)

労働・福祉

●厚生労働省が8日発表した昨年11月の毎月勤労統計調査(速報値)は、現金給与総額(名目賃金)が前年同月比0.2%減の28万4652円と、3カ月ぶりのマイナスとなった。名目賃金から物価変動の影響を差し引いた実質賃金は0.9%減で、2カ月連続のマイナスだった。…名目賃金のうち残業代を中心とする所定外給与は、製造業で11.9%減。所定外の労働時間も14.4%減と、2カ月連続で2桁のマイナスだった。企業が残業を縮小し、給与の減少につながっているとみられる。全産業でも所定外給与は1.9%減の2万304円。基本給などの所定内給与は0.2%増の24万6218円だった。(『しんぶん赤旗』2020.01.09より抜粋。)
●「国土交通省は、建設技能者の能力評価に対応した賃金の支払いを実現するため、能力評価実施団体に対して職種ごとの処遇目標を2O19年度内に設定するよう要請した。技能レベルごとの年収を明確化させることで、若い世代にキャリアパスを示し、新規入職の促進や離職の防止に役立てる狙いだ。明確化した処遇に基づいて元請に必要額を請求することにより、レベルに応じた賃金支払いの原資となる適正な請負価格の確保にもつなげる。…これまで、能力評価基準で各職種でキャリアアップしていくために必要な経験や技能が明らかにされてきたが、今回、さらに踏み込んで技能レベルごとの処遇を示すことで、若年入職者やこれから就職を目指す者へのキャリアパスをより明確にする。実際にレベルに応じた賃金を支払うために、下請けは新たに設定される処遇目標を踏まえた必要額を元請けに対して要求することになる。元請けは下請けから出された見積もりを尊重し、適切に請負価格を支払うことでスキルアップした技能者の賃金上昇につなげるという好循環を描く。」(『建設通信新聞』2020.01.10)
●「厚生労働省は労働者保護などの観点から労働基準法を改正する。賃金(退職手当除く)請求権が消滅する時効期間や、未払い賃金など付加金の請求期間を、現行2年から5年にそれぞれ延長。労働者名簿など重要書類の保存期間も2年から5年に延ばす。」(『建設工業新聞』2020.01.15)

建設産業・経営

●「2020年3月期の大手・準大手ゼネコンの通期業績は、前期に引き続き、好調のまま駆け抜けそうだ。ただ、その影で中小規模の建築物件で受注競争が徐々に激しさを増してきており、特に新設住宅着工戸数の減少を背景としてマンションの受注環境は悪化の一途をたどっている。売上面でも、夏季東京五輪の開催期間中の出来高が上がらない可能性があり、都内工事の比率が高いゼネコンには影響が出てきそうだ。」(『建設通信新聞』2020.01.06)
●「産業界全体で人材確保競争が激化する状況にあって、ゼネコン各社が将来を担う優秀な人材を採用するため、新たな取り組みに乗りだしている。女性技術者が活躍できる場を広げたり、ITやデータサイエンスに特化した人材などの確保に動きだしたりするゼネコンが増えてきた。建設業の業態や働き方の変化に対応し、これまでとは違う切り口で人材を獲得する動きが広がりそうだ。」(『建設工業新聞』2020.01.06)
●「海外建設協会(海建協、蓮輪賢治会長)の会員が堅調に増加している。国内外にネットワークを持つ海建協に加盟し、海外での事業を優位に展開しようと考えて入会を希望する企業は多く、正会員、賛助会員とも増加傾向が続いている。会員数は近く120社を超える見通しだ。ゼネコンの海外進出を商機と捉え、近年は賛助会員に外国籍の法律事務所の加入が目立つ。」(『建設工業新聞』2020.01.14)
●「民間調査会社の東京商工リサーチがまとめた全国企業倒産集計によると、建設業の2019年1~12月の倒産件数は1444件(前年比0.9%増)、負債金額は1463億9800万円(40.5%増)だった。増加は2008年以来11年ぶりだが、過去30年間で見ると18年に次いで2番目の低水準。同社は『復興需要やオリンピック需要を背景に活況を呈し、倒産抑制のけん引役となってきただけに今後の推移が注目される』と指摘している。…全産業の倒産件数は8383件(1.8%増)。建設業が占める割合は17.2%で、サービス業ほかに次いで2番目に多かった。負債総額は1兆4232億3800万円(4.2%減)で、建設業の占める割合は10.3%だった。同社は建設産業の動向について、都市部での再開発や国土強靭化対策が下支えし、建設需要は底堅いとしつつも、慢性的な人手不足や労務費の高騰、資材価格の上昇などで採算が悪化している企業が多いとみている。」(『建設工業新聞』2020.01.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は『道の駅』の防災機能を強化する。2020年に災害時の拠点となる機能を備えた施設を『防災道の駅』として認定する制度を創設し、設備整備への助成も検討する。主に市町村が整備を進めてきた道の駅の防災機能に統一基準をつくることで、災害時の有効活用につなげる。道の駅は24時間利用できるトイレや駐車場の設置、施設のバリアフリー化などを要件として、市町村などが整備し、国交省が登録する。1993年に初めて設置され、現在は全国に約1160駅ある。東日本大震災では沿岸部への救助活動や物資供給の中継地点として活用され、熊本地震でも住民の一時避難場所になるなど、すでに防災拠点としての運用を重ねている。現在、発電設備や備蓄倉庫を備え、市町村の地域防災計画に位置づけられている道の駅も500駅に上る。ただ、こうした取り組みは市町村独自に進められており、国交省は認定制度などの導入でより広く普及させたい考えだ。…認定を取得した道の駅には、防災設備の設置費の一部への助成なども検討している。『防災道の駅』と分かるよう認定マークも付与する。」(『日本経済新聞』2020.01.06)
●「国土交通省は、老朽化したマンションを対象に、再生の検討や長寿命化につながる改修の先導的な取り組みを公募し、採択した民間事業者らに補助金を交付するモデル事業を2020年度に創設する。高経年のストックが増える中、建て替えなどマンション再生の円滑化が課題となっており、解決につながる先導的な取り組みを支援することで、再生の手法や実績を蓄積して横展開する。20年度予算案に17億円を計上した。」(『建設通信新聞』2020.01.08)
●「厚生労働省は、『建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討会』による議論の中間取りまとめを公表した。80平方メートル以上の解体工事と請負金額100万円以上の改修工事を対象に、石綿含有の有無にかかわらず、石綿の使用有無に関する事前調査の結果を労働基準監督署に電子届け出することを施工者に義務化すべきとの判断を示した。年度末をめどに報告書をまとめた後、労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則の改正などを検討する。」(『建設通信新聞』2020.01.08)
●「全国の空き家を市区町村別にみると、最も空き家数が多いのは東京都世田谷区の約4万9000戸となった。2位は同大田区で、東京23区や県庁所在地市が上位に並んだ。管理不全の空き家が地域の課題となっているが、主要都市ほど深刻化している様子が読み取れる。空き家率では過疎が進む地域が高かった。総務省の2018年の住宅・土地統計調査の確定値に基づいて分析した。居住者がいない住宅のうち、リゾート地などに多い別荘を除いて算出。空き家数と、総戸数に占める空き家数の比率を示す空き家率をランキングした。 世田谷区内は東急世田谷線沿線や祖師谷地区など、戸建てや比較的小さい集合住宅が集まる地域で65歳以上の人口の割合が高い。区によると、空き家はこうした地域で目立つという。区の担当者は『旧耐震基準の住居も多く、区も対策を講じている』と説明する。空き家数の上位10自治体をみると、東京以外で最も多いのは鹿児島市の約4万7000戸で、大阪府東大阪市や宇都宮市が続いた。県庁所在地市が4市入った。一方、空き家率の比率が高い市区町村は夕張市や歌志内市、三笠市と、北海道でかつて炭坑として栄えた自治体が上位に入った。石炭産業の衰退で住民が減り、使われなくなった住戸が残っている様子が読み取れる。山口県周防大島町や和歌山県串本町など、都市部から離れた地域も3割前後の空き家率だった。」(『日本経済新聞』2020.01.12)

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