情勢の特徴 - 2020年1月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国立競技場が完成し、東京五輪・パラリンピック関連の施設整備に一区切りがついた。今後は五輪関連の需要が底上げしてきた建設投資にブレーキがかかるとの見方もあるが、建設会社が受注しながら未着工の案件は最高水準まで積み上がっている。建設が後ろにずれている原因は人手不足。労働力の制約が建設投資の振幅をならし、息の長い投資につながる面もありそうだ。…五輪のようなイベントがあると、それまでは建設投資が一気に盛り上がり、終われば反動減に悩まされるという振幅がつきものだった。このため『五輪後』は堅調だった建設需要に陰りが出るとの見方もあったが、大手ゼネコンのトップの表情は明るい。なぜか。その理由を端的に示しているのが工事の受注残だ。国土交通省によると、19年10月末時点で受注して未着工の案件(金額ベース、非居住用建築)は約6.3兆円。今の統計になった09年以降で最高水準に積み上がっている。12年の約3.2兆円のほぼ2倍だ。オフィスビルなどの工事を受注しても、技術者や建設現場で働く作業員が足りず、順番待ちの列ができているというわけだ。実際、19年11月の建設業の有効求人倍率は6倍と右肩上がりで、全体平均の1.5倍を大きく上回る。順番待ちを反映して、工期も延びる傾向にある。着工から完成予定までの期間が6カ月以上の工事の件数の割合は13年度は全体の11%弱だったが、18年度は13%超まで増えた。…日銀も19年10月末に公表した『経済・物価情勢の展望(展望リポート)』で、海外経済が減速するなかで設備投資の粘り強さを検証した。建設投資については『人手不足で建設工事がゆっくり進捗していくもとで、先行きの建設投資は緩やかながらも息の長い増加傾向を維持する可能性が高い』と指摘した。人手不足が制約になる構図は外食や運輸など他の業種にも通じるが、ある日銀幹部は『需要を先送りできるか否かの違いが大きい』と話す。人手不足を交渉材料に、ゼネコン側が受注をコントロールし、自ら振幅をならしている面もあるという。もっとも、『未着工期間が長いということは、環境変化で計画そのものを白紙撤回するリスクもつきまとう』(日銀幹部)。建設投資の中身がネット社会に対応した物流拠点の整備や老朽化施設の建て替え、再開発など待ったなしの対応とはいえ、海外経済の減速が続くなか、いつまでも需要をつなぎ留めておけるという保証はない。人手不足という制約が、緩やかで息の長い成長という『効用』をもたらすのか、やはり成長の阻害要因となるのか。建設投資の行く末はひとつの試金石になる。」(『日本経済新聞』2020.01.20)
●「災害多発を受けた防災機能の強化や景気の下支えを狙った経済対策を柱とする2019年度補正予算が、30日の参院本会議で成立した。災害復旧・復興や国土強靭化対策などに充てる公共事業関係費には1兆5653億円を計上。20年度当初予算と一体的に編成する『15カ月予算』の考え方の下、切れ目のない予算執行に万全を期す。建設産業にとっては、入札不調・不落対策など円滑に予算を執行するための施工体制の確保が焦点となる。」(『建設通信新聞』2020.01.31)
●「建設経済研究所と経済調査会は30日、建設経済モデルによる建設投資の見通し(1月推計)を発表した。前回(2019年9月)初めて公表した20年度の見通しから、名目建設投資を前年度比1.8%増の63兆2700億円と予測し、前回の0.8%増、62兆7100億円から上方修正した。19年度補正予算案を織り込んだことで、2.9ポイント上昇の3.5%増と見込んだ政府建設投資が全体を押し上げた。」(『建設通信新聞』2020.01.31)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、最も優れた技術提案を行った参加者と価格や施工方法などを交渉して契約相手を決定する『技術提案・交渉方式』を直轄工事で運用するためのガイドラインを改定した。適用事例を踏まえ、工事特性に応じた選定フロー、手続きの考え方、設計・技術協力のより具体的な進め方などを追加・拡充。記載内容を充実させて、同方式の積極的な適用に役立てる。」(『建設工業新聞』2020.01.16)
●「国土交通省は、直轄工事における2019年度上期の工事契約達成状況をまとめた。19年11月末時点の契約達成率は、土木関係が96.6%、建築・設備関係が91.4%と、おおむね契約が締結できている結果となった。不調・不落の増加に対する懸念が上がっているが、契約達成状況を基に同省は『再発注などにより最終的には契約に至っており、着実に執行が進んでいる』と説明している。」(『建設通信新聞』2020.01.22)

労働・福祉

●「日本建設産業職員労働組合協議会(鈴木誠一議長)は16日、加盟するそれぞれの労働組合にとって、2020年の賃金交渉における要求基準となる基本構想を発表した。キャッチコピーは『力を合わせて手にしよう!確かな賃金 明るい未来』。基本構想をベースにして、それぞれの労働組合が歩調を合わせながら、賃金水準の向上に取り組んでいく。…とりわけ生活の基盤となる月例賃金の向上を重視。各年ごとの基本構想とは別枠で定めている『あるべき賃金水準(個別賃金水準)』の獲得を前提に加盟する労働組合との協働で月例賃金の増額を目指す。堅調に推移する企業業績の見返りとして、生活給としての側面が強い一時金の上積みや、新規採用の動向や人材の確保を左右する初任給の引き上げにも取り組む。」(『建設通信新聞』2020.01.17)
●「建設業での労働災害による2019年(1-12月)の死亡者数は2年連続して減り、死傷者数も3年ぶりに減少する情勢となっていることが分かった。厚生労働省が17日にまとめた19年の労働災害発生状況(速報、1月7日時点)によると、建設業での死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)14.0%減(40人減)の246人と、2年連続して減少した。死亡者数が309人だった18年の確定値と比べ、現時点で63人少ないため、近年の確定値までの推移を踏まえると、19年の死亡者数(確定値)は270人程度になるとみられ、過去最少だった16年の294人も下回ることになりそうだ。」(『建設通信新聞』2020.01.20)
●「国土交通省が登録基幹技能者に対し、建設キャリアアップシステム(CCUS)への積極的な登録を呼び掛けている。登録申請するだけで最上位(レベル4)のゴールドカードを交付する特例措置が年度内で終了。来年度以降は登録申請、更新申請の2段階(それぞれ手数料が必要)を経てゴールドカードを交付する。足元の資格保有者数は約7万人。うち2割強の約1万7000人がゴールドカードを取得している。」(『建設工業新聞』2020.01.23)
●「外国人の新在留資格『特定技能』について、国土交通省は建設分野への受け入れ計画の認定状況をまとめた。2019年12月末時点で、国交省の独自基準をクリアしたのは累計132社・308人となった。うち出入国在留管理庁の入国審査で在留許可が認められたのは11月末時点で、建設分野に59人。全員が試験を免除される技能実習などからの移行者となっている。…308人を職種別にみると、建設機械施工が102人と最も多く、鉄筋施工68人、型枠施工40人、左官37人、内装仕上げ34人、コンクリート圧送22人、屋根ふき4人の順となった。国別にみると、ベトナムが最も多い221人で、中国38人、フィリピン17人、インドネシア15人、カンボジア9人、モンゴル・タイ各3人、ミャンマー・ネパール各1人となった。」(『建設工業新聞』2020.01.27)
●「内閣府の2019年の推計によると、フリーランスは国内就業者の約5%にあたる306万~341万人程度とされる。独立行政法人の労働政策研究・研修機構(JILPT)の実態調査では、フリーランス全体の39.5%が取引先と専属・優先するなどの『取り決めをしている』か『取り決めはないが、専属や優先が慣行となっている』と回答した。こうした人たちは仕事の大半を特定企業に依存する『名ばかりフリーランス』だ。名ばかりフリーランスの多くは取引先に対して弱い立場にある。JILPTによると、専属などの取り決めに違反した場合、12.4%が『次回の契約更新がなされない』、23.1%が『現在の契約が解除される』ことが想定されると答えた。期日までに報酬が支払われないなどのトラブルが起きても泣き寝入りをするしかない場合も多い。企業に属する働き手と異なり、最低賃金や労働時間なども保証されず、不安定な働き方を強いられる。…厚生労働省は17年10月から検討会で議論を始めた。取引先に対し弱い立場にあるフリーランスを守るために、報酬の基準を設けたり、企業が安全や健康を守る取り組みをするよう求めたりする方向だ。ただ保護すべき対象の定義など細かな論点が煮詰まらず、2年以上も議論が続いている。…海外でもフリーランスの保護規制は動き始めているが、各国とも手探りの状況だ。すでに1億6000万人の労働力人口のうち6000万人近くがフリーランスで働く米国。ニューヨークでは16年に約45万人のフリーランスが所属する『ユニオン』の働きかけで、フリーランスの最低報酬を定める法律が成立した。正式な労働組合ではないが、労使に近い枠組みで保護策を作り始めている。フランスでは18年から仕事を仲介するプラットフォーマ一に対し、一定以上の収入を得た労働者の事故のリスクをカバーする保険の提供を義務付けた。ドイツではフリーランスも労働保護法の対象とし、安全管理や健康確保措置などを企業に義務付けている。」(『日本経済新聞』2020.01.28)
●「厚生労働省が31日発表した2019年平均の有効求人倍率は1.60倍で前年比0.01ポイント低下した。過去3番目の高さだったものの、製造業など一部の求人に陰りがみられ09年以来10年ぶりに低下した。総務省が同日発表した19年平均の完全失業率は18年から横ばいの2.4%だった。有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。最も高かったのは1973年(1.76倍)で、19年は18年に続き3番目に高い水準だった。求職者数が0.8%減の171万人だったのに対し、求人数が1.6%減の273万人と減り幅が大きかった。企業の生産活動に陰りが出始め、求人減につながった。特に米中貿易戦争の影響を受けた製造業で、新規求人数が19年2月以降11カ月連続で減少するなど、減少が目立つ。12月の有効求人倍率は前月と同じ1.57倍だった。失業率は2.4%と2年連続で1992年以来の低い水準が続いた。」(『日本経済新聞』2020.01.31)

建設産業・経営

●「北海道、東日本、西日本の公共工事前払金保証事業会社3社は17日、四半期ごとに実施している建設業景況調査の結果を発表した。2019年10~12月の地元建設業界の景気に関するBSI値(景況判断指数=『良い』と『悪い』の回答差)はマイナス3.0。前回(同7~9月)に比べてマイナス幅が0.5ポイント縮小したものの、『悪い』とする傾向が続いている。…地元建設業界の景気に関するBSI値は、14年7~9月の0.0を境に21四半期連続でマイナスとなった。先行きを示す1~3月はマイナス7.5と厳しさがさらに増す見通しだ。10~12月の景気動向を地区別にみると、近畿と九州を除くすべての地区で『悪い』傾向。…受注動向に関するBSI値も景気動向と同様に減少傾向を示している。全体ではマイナス7.0で、前の四半期よりマイナス幅が1.5ポイント拡大した。官公庁工事はマイナス7.5で前の期と同じ、民間工事はマイナス8.5でマイナス幅が1.0ポイント拡大した。1~3月の全体のBSI値はマイナス11.0とマイナス幅が大きくなる見通しだ。…建設労働者については、労務の確保のBSI値がマイナス25.0で、前の期よりもマイナス幅が1.0ポイント縮小したものの、人材確保が困難な傾向が続いている。賃金のBSI値は17.5で、前の期よりも1.0ポイント縮小したが、建設労働者の賃金上昇傾向が続いている。調査では、経営上の問題点も質問した。『人手不足』を挙げた回答が最も多く、続いて『従業員の高齢化』『受注の減少』の順となっている。」(『建設工業新聞』2020.01.20)
●「前田道路労働組合(松浦孝中央執行委員長)は23日、前田建設が開始したTOB(株式公開買付)による連結子会社化に断固反対することを同労組の総意として機関決議した。24日に開かれる同社役員会に反対意思表明文を提出するとともに、前田建設の株式を21万8000株所有する株主の意見としても前田建設に対して表明文を提示していく。」(『建設通信新聞』2020.01.24)
●「鹿島の押味至一社長はこのほど日本経済新聞の取材に応じ、2021年3月期の連結純利益について『900億~950億円程度になる』との見通しを明らかにした。同期を最終年度とする中計経営計画の目標を最大で約2割上回る。米国で手がける電子商取引(EC)事業者向け物流倉庫など海外での不動産事業が伸びる。…18年策定の中計では来期の純利益の目標を『800億円以上』としており、これを約100億~150億円上回ることになる。鹿島は人口減少や公共事業の縮減によって国内では中長期的な成長が望めないとみて、資金を海外投資に振り向けている。米国では現地に営業チームを置いてEC事業者の意向をさぐり、自社で有望な土地を仕入れて物流倉庫を施工してきた。建物の建設工事だけを請け負う案件に比べて高収益が狙える。今期の連結純利益は、従来予想の前期比14%減の950億円を確保できそうだ。主力の国内建設事業では横浜市の複合商業施設、三井物産本社ビルなどが完成予定。来期はこうした大型案件が減るが、その分を米国の物流倉庫などでカバーし、純利益はほぼ横ばい圏になる見通しだ。海外不動産事業には来期までの3年間で2400億円の投資枠がある。『国内の建設需要の伸び悩みが避けられない中、海外で成長するしかない』(押味社長)との判断で、それ以前の2倍以上に増やした。投資枠は約800億円残っており、来期はシンガポールの複合商業施設などアジアの案件にも積極投資する。同事業の今期の粗利益率は25%程度と高く、中長期的に収益の柱の一つになるとみている。」(『日本経済新聞』2020.01.24)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「阪神大震災から11日で25年。歳月の流れとともに震災後に生まれた世代が増えてきた。風化への危機感は強く、震災の経験や備えの大切さを次世代や世界にどう伝えていくのか。『減災』への取り組みは、阪神以降、東日本大震災など大規模災害が相次ぐ日本だけではなく、国際社会の共通の課題だ。阪神大震災の教訓は、被災地から国内外に積極的に発信されている。国際協力機構(JICA)関西(神戸市中央区)では海外の行政官らに震災の教訓や防災対策を学んでもらう『防災研修』を行う。アジアやアフリカを中心に、計118の国・地域を受け入れてきた。研修の一つ『コミュニティ防災』では当時の写真と実際の街を見比べたり、ハザードマップづくりを学んだりする。災害時、避難や救助など主体的に行動できる住民を増やす効果がある。国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する狙いもある。…阪神大震災の経験を伝える学習施設『人と防災未来センター』(神戸市中央区)。2018年度の海外からの団体客は約3万1千人で、13年度に比べ約1万4千人増えた。特にベトナムや韓国、中国などアジア圏が多い。関西を訪れるインバウンド(訪日外国人)増による影響が大きい。震災を風化させない取り組みは国内でも活発化。兵庫県によると、震災の教訓や経験を伝える行事は19年度、90件以上。語り部活動やコンサート、シンポジウムなどがあり、主催者も自治体やNPOなど幅広い。震災の教訓の発信に力を入れる背景には、四半世紀がたち記憶や教訓が風化していくことへの危機感がある。神戸市では震災を経験している職員は41%(19年4月時点)にまで減少。震災当時、震災業務に従事した職員が定年で退職していくことが要因だ。市担当者は『当時の教訓をどう引き継ぐか重要な課題』と話す。…阪神大震災の被災地、兵庫県では被災者の高齢化が進んでいる。被災者らが暮らす災害復興公営住宅の高齢化率(65歳以上)は53.7%(2019年11月末時点)と過去最高を記録した。県内の一般県営住宅の38.5%(同時点)と比べても高齢化は進む。背景には災害弱者の高齢者を優先して入居を進めたことがある。…復興住宅の入居者数は県が調査を始めた01年に約4万3千人で、高齢化率は40.5%だった。入居者は徐々に減少。19年11月末時点で約2万9千人となり、高齢化率は53.7%まで上昇した。復興住宅に暮らす被災者には住まいの自力再建を選んで退去していくケースが多い。他方、一人暮らしのお年寄りをはじめ、転居にかかる負担が大きい高齢者は住まいの再建が進みにくく、相対的に復興住宅での高齢化率が高まっているのが実情だ。11年の東日本大震災でも高齢化は避けて通れない。岩手県での復興住宅の入居者数は約9千人(19年8月末時点)で、高齢化率は44.2%に上る。今後、高齢化率は一段と上昇するとみられる。」(『日本経済新聞』2020.01.17)
●「国土交通省は自然災害によって特に大きな被害が予想される地域での都市開発を抑える。学校や工場といった業務用施設の開発を原則禁止し、住宅などの建設に踏み切った事業者名を公表する仕組みも設ける。土地の開発規制を強化し、近年相次ぐ自然災害の被害を減らす狙いだ。通常国会に都市再生特別措置法などの改正案を提出する。」(『日本経済新聞』2020.01.21)
●「内閣は、都市再生特別措置法などの改正案を今通常国会に提出する。2019年の台風19号など頻発化・激甚化する自然災害の発生を踏まえ、安全なまちづくりを推進するため、災害危険区域、地すべり防止区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域の4区域が該当する災害レッドゾーンで、『自己の業務の用に供する施設』の開発許可を原則禁止する。2月上旬の提出を予定する。国土交通省が社会資本整備審議会都市計画・歴史風土分科会都市計画部会の都市計画基本問題小委員会を27日に開き、改正案の概要を説明した。都市計画法、都市再生特措法、建築基準法の3つを束ね、▽災害ハザードエリアの開発抑制▽災害ハザードエリアからの移転促進▽立地適正化計画と防災の連携強化――などの観点で必要な措置を講じる。開発抑制の措置は、自社オフィス、自社ビル、自社店舗、病院、社会福祉施設、旅館・ホテル、工場、倉庫など開発者自らが利用する施設を『自己の業務の用に供する施設』と定め、災害レッドゾーンは市街化区域であっても開発許可を原則禁止する。市街化調整区域の災害ハザードエリアにおける開発は、許可権者が個別に審査して開発審査会の議を経た上で、安全性が確認された行為に限って許可するよう開発許可制度を厳格化する。」(『建設通信新聞』2020.01.28)
●「経済産業省は31日、東京電力福島第1原子力発電所にたまり続ける処理水の処分方法などを話し合う小委員会に報告書案の修正版を示し、大筋で了承された。海洋放出と、蒸発させる水蒸気放出が『現実的な選択肢』とした。特に海洋放出は国内の原発で実績があるため『より確実に処分できる』と明記した。今後、政府が地元自治体などの意見を聞き、最終的な処分方法を決める。…小委では約3年にわたって風評被害などの社会的な影響を含めて処分方法を議論してきた。事務局の経産省が昨年12月に示した当初案で地下埋設などの5つの処分方法から、薄めて海に流す海洋放出と水蒸気放出という国内外で前例のある方法に絞り込んだ。前回会合で出た委員の意見を踏まえて案を修正した。海洋放出と水蒸気放出のメリット、デメリットを詳細に明記した。国内での実績、設備の取り扱いやすさなどを海洋放出のメリットとしてあげた。風評被筈はどちらの方法でも発生するものの、水蒸気放出は『海洋放出より幅広い産業に影響が生じうる』と指摘した。海洋放遡が優位と読める書き方だが、処分方法は『政府が幅広い関係者の意見を丁寧に聞きながら、責任と決意を持って決定することを期待する』との記載にとどめた。政府が今後、地元自治体、漁業関係者などの意見を聞いて、処分方法を決定する見通しだが、メドは立っていない。海洋放出には地元の漁業関係者を中心に風評被害への懸念が根強い。処理水には取り除くのが難しい放射性物質トリチウムを含む。トリチウムを含む水は基準値以下に薄めれば海に流すことが国際的に認められている。」(『日本経済新聞』2020.01.31)

その他

●「英国は現地時間の31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)に欧州連合(EU)を離脱する。前身の欧州石炭鉄鋼共同体が1952年に6カ国で始まって以来、2013年のクロアチア加盟まで28カ国に拡大してきたEUは初めて加盟国が減少する。73年のヨーロッパ共同体(EC)時代に欧州統合に加わった英国にとっては、47年間主要国として加盟してきた舞台からの退場となる。英国民が2016年の国民投票で示した民意が、約3年半を経て実現する。離脱すると12月末までは、激変を緩和するために現在の英・EU関係が続く『移行期間』に入る。期間中は域内での『通関手続きなし・関税ゼロ』の貿易や、人の移動の自由が維持されるなど市民生活や経済に大きな影響は出ない。EU法の英国への適用やEUへの拠出金の支払いも続く。一方で加盟国ではなくなるため、英国はEUの政策決定に原則として関与できなくなり、欧州議会やEU機関の会議に参加できなくなる。EUが持つ情報への英国のアクセスも限られそうだ。欧州議会でも英出身の73人が議員資格を失う。離脱後は自由貿易協定(FTA)など、将来関係の交捗に焦点が移る。2月以降に具体的な協議に入るが、交渉が不調に終われば年末の移行期間終了までに合意できず、経済が混乱する『合意なき離脱』と同じ状況になるリスクは残っている。」(『日本経済新聞』2020.01.31)