情勢の特徴 - 2020年3月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「キャッシュレス決済が一部の中小企業の資金繰りを圧迫している。中小では日々の現金売り上げを運転資金に回す企業が多いのに対し、キャッシュレス決済では入金までの時間がかかったり、決済事業者によって入金のタイミングが異なったりするためだ。決済事業者への手数料も重くのしかかる。政府のポイント還元策は中小事業者を対象にするが、資金繰りの面では重荷になっている。…キャッシュレス決済は現金と異なり、売上金の回収までに時間がかかる。例えばカード決済は振込手数料の高さから一般的に月2回が多い。カード会社によっては月末絡め翌月末振り込みのものもあり、販売時から入金までに最長2カ月近くかかることもある。近年増えてきたスマホ決済などは条件付きで、素早く入金になるものもある。例えばペイペイはグループのジャパンネット銀行を指定口座にすれば翌日入金だ。LINEペイは基本的に月末締め翌月末振り込みだが、1回あたり250円の手数料を支払えば最短即日入金される。ただスマホ決済は少額利用が多く、店側の業態によってはカード決済より利用頻度が少ない。決済手段が大幅に増え、入金管理が煩雑になっている企業もある。…キャッシュレス推進協議会が1月に発表した中小企業を対象にしたアンケート調査によると、回答を得た約1100店舗のうち2割がキャッシュレス導入にともなう入金サイクルの変化によって資金繰りに困ることがあると答えた。同調査ではポイント還元事業の売り上げへの効果も調査した。全体では61.3%の中小店舗が効果が『なかった』『あまりなかった』と答えている。売上高が1000万円以下の店舗に限ってみると、72%が同様に答えている。加盟店がキャッシュレス事業者に支払う手数料の問題もある。中小企業庁によると、中小企業の売上高に占める営業利益率は、例えば小売業では平均1.44%だ。ポイント還元事業では加盟店手数料の上限を3.25%としている。もし売り上げの大部分がキャッシュレス決済となれば、決済事業者へ支払う手数料は重い負担となる。」(『日本経済新聞』2020.03.01)
●「厚生労働省は2日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための小学校などの休校に伴い、保護者が仕事を休んだ場合に賃金を補償する制度の概要を発表した。雇用形態や企業規模にかかわらず、従業員が日額8330円を上限に賃金の全額を受け取れるよう企業に助成金を支給する。子どもが小学生までを基本とし、対象期間は2月27日~3月31日までとする。小学校、高校までの特別支援学校、学童保育、幼稚園や保育所などが臨時休業し、子どもの世話が必要になった従業員が補償の対象だ。地域の判断で休校しなかった小学校に通う子どもでも、風邪の症状が出て新型コロナに感染した恐れがあり、看病が必要になった保護者の賃金は補償される。中学生と高校生の保護者は対象外とした。テレワークなどで在宅勤務する場合は対象外。従業員側の判断で通常の年次有給休暇を取得した場合も対象外となる。企業が助成金を受け取り従業員の休業補償に充てるには、年次有給休暇とは別の有給の休暇を取得させる必要がある。支払った賃金に相当する額を全て国で負担する。ただ、1人当たり1日8330円が上限だ。財源に雇用保険を使うため、失業給付(基本手当)の日額上限とそろえた。労働時間が週20時間未満の短時間労働者は雇用保険に入っていないが、こうしたパート労働者向けの補償は一般会計で賄う。」(『日本経済新聞』2020.03.03)
●「内閣府、財務省は12日、四半期ごとに実施している法人企業の景気予測調査(1~3月)の結果を発表した。大企業・建設業の景気に関するBSI値(景況判断指数=『上昇』と『下降』の回答差)は11.9。前回(2019年10~12月)に比べ16.6ポイント上回り、プラスに転じた。内閣府によると『都市部での大規模開発が多く、好調を見込んでいる』(経済社会総合研究所景気統計部)という。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、4~6月はBSI値はマイナス17.4と、再びマイナスに転じる見通し。ただ調査時期が2月15日時点と政府の大規模イベント自粛要請前だったため、景況感はさらに悪化している公算が大きい。中堅企業・建設業のl~3月のBSI値は、前回を12.3ポイント上昇し4.5となったものの、4~6月にはマイナス13.6とマイナスに転じる見込み。中小企業・建設業の1~3月のBSI値は、前回から7.7ポイント低下しマイナス12.7となった。4~6月もマイナス11.1を見込み、マイナス傾向が続く。不動産業の1~3月のBSI値は、大企業がマイナス1.5(前回と比べ1.2ポイント上昇)、中堅企業がマイナス8.0(2.1ポイント上昇)、中小企業がマイナス8.5(同じ)となった。4~6月のBSI値は、大企業がマイナス8.5、中堅企業がマイナス3.8、中小企業がマイナス6.7と、マイナスの値が続く見通しだ。」(『建設工業新聞』2020.03.13)

行政・公共事業・民営化

●「政府は3日、復興庁設置法などの改正案を閣議決定した。2020年度までの復興・創生期間が終了した後も国が前面に立って東日本大震災の被災地復興を進めるため、21年度末までと定めていた復興庁の設置期間を31年度末まで10年延長する。復興財源を確保するため、復興債の発行期間や政府保有株式の売却収入などを充当する期間は25年度末まで5年延長する。21年4月1日の施行を目指す。」(『建設通信新聞』2020.03.04)
●「予算計上された公共事業の執行が人手不足で滞っている。国土交通省によると都道府県発注工事の入札で企業が手を上げなかったり、応札価格が安く落札に至らなかったりした件数は2018年度まで3年連続で増加し、19年度上半期も前年を上回って推移する。豪雨や台風の被災地で入札の不成立が目立つ。公共事業による景気下支え効果は政府の期待ほど出ないおそれがある。公共工事の入札では、入札がなかったものを『不調』、予定していた価格を上回る入札しかなく、落札に至らなかったものを『不落』と呼ぶ。国交省の集計では、18年度に都道府県が発注した工事の7.0%で不調・不落が発生した。増加は3年連続。19年度上半期は8.1%で上昇傾向が続いている。不調・不落が増えている要因の一つが、毎年のように発生する大型の自然災害で工事が急増し、建設事業者や働き手が不足していることだ。18年の西日本豪雨で大きな被害が出た東広島市では、19年度に入って実施した復旧工事の入札のうち半数近くが不調となった。同市の担当者は『復旧・復興以外の公共事業にはとても手がまわらない』と話す。建設業の人手は被災地だけでなく、全国的に不足している。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)によると、足元の建設業の労働投入量は11~12年度の平均と比べてほぼ横ばいなのに対し、建設工事の量は民需と公需の合計で2割程度増えた。国交省が19年に都道府県に聞いたアンケート調査では、全国19地域が『(不調・不落の)件数の増加が懸念される』と回答した。災害復旧の発注件数の増加に加え、東京五輪関係の再開発事業などに人手がとられているという。」(『日本経済新聞』2020.03.06)
●「国土交通省は世界貿易機関(WTO)政府調達協定が適用される工事や設計・コンサルティング業務の基準額変更に伴う関連通知を各地方整備局に6日付で出した。2020~21年度に直轄事業で協定が適用されるのは、工事が6億9000万円(18~19年度6億8000万円)以上、設計・コンサルが6900万円(6800万円)以上。いずれも18~19年度より適用基準額が引き上がる。」(『建設工業新聞』2020.03.09)
●「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、国土交通省が講じた直轄工事・業務の一時中止などの措置について、5日時点で工事約9000件のうち約200件の申し出があったことが分かった。業務は約1万2000件のうち約1200件だった。受注者からの申し出を受け、15日までの一時中止を措置。工期・履行期限延長の措置については設計変更の協議を進める。」(『建設工業新聞』2020.03.10)

労働・福祉

●「建設キャリアアップシステムを活用した建設技能者の能力評価制度が2020年度から本格的にスタートすることから、各能力評価実施団体は、統括的な役割を担う協議会を立ち上げることを決めた。3月下旬に『能力評価制度推進協議会』の設立総会を開催し、会長・副会長を選出した上で、新年度から事業運営を開始する。レベル判定手数料は試算結果を基に、一律3000円に設定することで合意した。建設キャリアアップシステム活用の能力評価制度は、各専門工事業団体などが務める能力評価実施団体が策定する能力評価基準を基に4段階のレベル分けを行うもの。建設キャリアアップシステムに蓄積された就業日数や保有資格などの経験・技能から客観的に評価される。登録基幹技能者制度があるすべての職種(35職種)で、今年度内に能力評価基準の申請手続きを完了させることが決定しており、現在、▽鉄筋▽型枠▽機械土工▽左官▽内装仕上▽防水施工▽切断穿孔▽サッシ・カーテンウォール▽建築大工▽トンネル▽圧接▽電気工事▽コンクリート圧送――の計13職種が国土交通省から認定されている。20年度からは建設キャリアアップシステムと連携したレベル判定システムによる能力評価が開始される。新たに立ち上げる能力評価制度推進協議会は、効率的なレベル判定システム運用や各団体における事務負担の軽減の観点から、建設企業(技能者)からの評価手数料徴収やシステム保守費用など必要経費の支払いといった能力評価の実施のための事業運営を統括して担う。協議会運営で損失が生じた場合は、協議会規約に基づき、各団体が負担する。レベル判定手数料については、登録者数の実績ベースでの試算結果と、レベル判定システムの保守費用や建設キャリアアップシステムとの連携費用、事務手数料などを総合的に勘案し、全職種・全レベル一律で3000円に設定する。カードの更新料1000円とあわせて能力評価制度推進協議会が徴収し、各種運営経費に充てる。」(『建設通信新聞』2020.03.02)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステムと連携し、技能者の能力を客観的に評価する能力評価基準について、新たに『とび』職種を認定する。3日に基準の策定主体である日本建設躯体工事業団体連合会と日本鳶工業連合会からそれぞれ能力基準案の申請があり、4日付で大臣認定を行う予定だ。」(『建設通信新聞』2020.03.04)
●「改正出入国管理法(入管法)に基づく新在留資格(特定技能外国人)の対象に『とび』など7職種が追加されたのを受け、建設技能人材機構(JAC、才賀清二郎理事長)は3日に東京都内で理事会を開き、正会員として日本空調衛生工事業協会(日空衛)や日本鳶工業連合会(日鳶連)、全国建設労働組合総連合(全建総連)など12団体の入会を承認した。新たな職種を盛り込んだ建設分野の運用方針(改正)が2月28日に閣議決定された。追加されたのは▽とび▽建築大工▽建築板金▽配管▽保温保冷▽ウレタン断熱▽海洋土木工―の7職種。これにより新在留資格は計18職種となった。新在留資格の受け入れ企業は、JAC正会員の建設業団体の会員かJAC賛助会員に限定される。建設業団体またはJACの会員証明書の取得が受け入れ審査の第一歩となる。正会員は今回の理事会で12団体が加わり、計36団体となった。」(『建設工業新聞』2020.03.04)
●「企業が未払いの残業代を請求されるケースが増えている。人手不足で転職者が増え、新しい会社に移る前後に残業代の支払いを求める人が増えた。4月からは法改正で請求できる期間も延長される見通しだ。働き方の見直しが進み、企業も厳格な労務管理を迫られる。…残業代を巡るトラブルが増えている背景には2つの要因がある。まず働き方改革の本格化で当局の監視が厳しくなった。労働基準監督署の勧告を受けて残業代支払いに応じた企業数は2018年度で1768社。5年前に比べて25%増えた。都内で内装工事を請け負うある中小企業は、昨年、労基署から指導を受けた。残業代として数万円の手当を払っていたが、労基署は労働時間が適切に管理されておらず、不払いがあると指摘。過去1年間の未払い残業代の支払いと再発防止策の徹底を求めた。2つめは人手不足を一因とする転職者数の増加だ。未払い賃金の請求は在職中より退職後に行われることが多い。仕事をしている間は、人間関係や処遇が悪くなることを心配する人が多いからだ。転職を機に働いていた職場の環境に疑問を持ち、未払い残業代の請求に動く人が増えている。…企業には誤解もある。業務手当や職務手当という名目で毎月一定額の固定残業代を払っていたとしても、労働契約や就業規則などに明記されていなければ認められない。また時間外労働によって生じる残業代が固定残業代を超えた場合は差額分を支給する必要がある。…専門家は4月に施行される予定の法改正の影響で、残業代請求が急増すると懸念している。これまでは残業代を含む未払い賃金を企業に請求できる期間(消滅時効)は労働基準法で2年と定められていた。これが4月以降は当面、3年になる見込み。将来的に5年という案も検討されている。…『1カ月あたり100時間未満』をはじめとする19年4月に大企業に適用された残業時間の上限規制は、20年4月から中小企業にも適用されるようになる。『仕事の付け回し』をやめ、所定の時間で仕事を終えられるのかどうか。働く社員も企業側も、それぞれが効率的な働き方と労働時間の管理に向き合わなければならない局面にさしかかっている。」(『日本経済新聞』2020.03.05)
●「建設現場で働く外国人労働者に安全衛生教育を行う担当者がゼネコンの協力会社で不足している。建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)が実施した調査で明らかになった。外国人労働者の安全衛生教育に『取り組んでいない』と回答した協力会社に理由を尋ねたところ、『教育する者(講師または通訳)がいない』と『専門スタッフがいない』が上位を占めた。寄せられた意見の中には、『母国語で教育を実施してくれるところがあるといい』といった要望もあった。調査には建設労務安全研究会(労研)会員企業32社、協力会社393社が回答した。」(『建設工業新聞』2020.03.06)
●「国土交通省がまとめた2020年1月の建設労働需給調査結果によると、全国における6職種の過不足率は前月比で0.9ポイントの減少となる0.9%(プラス数値が大きいほど技能労働者が不足)だった。前月に『不足』から『過剰』に転じた鉄筋工(建築)はさらに過剰傾向が強まり、マイナス3.4%となっている。職種別の過不足率は、型枠工(土木)が1.7%(前月比0.9ポイント減)、同(建築)が0.4%(1.6ポイント減)、左官が3.7%(1.2ポイント増)、とび工が1.5%(1.1ポイント減)、鉄筋工(土木)が2.4%(1.4ポイント増)、同(建築)がマイナス3.4%(2.5ポイント減)となった。」(『建設通信新聞』2020.03.09)
●「外国人の新在留資格『特定技能』に関連し、国土交通省は建設分野への受け入れ計画の認定状況をまとめた。2月末時点で、国交省の基準をクリアしたのは累計185社、425人となった。うち出入国在留管理庁の入国審査で在留許可が認められたのは2019年12月末時点で、建設分野に107人。全員が試験を免除される技能実習などからの移行者となっている。」(『建設工業新聞』2020.03.13)

建設産業・経営

●「日刊建設通信新聞社が実施した大手・準大手ゼネコン31社への『人材採用調査』では、20年4月新卒採用で、全体の64.5%に当たる20社が前年の採用数を上回った。大手5社の採用人数は、3年連続で200人を超え、清水建設、大成建設、大林組の3社は300人を超えた。積極的な人事採用を行っているフジタも226人となった。ただ、予定人数を『確保できた』と回答したのは14社と半数に満たず、6社が『できなかった』、11社が『苦労した』とした。特に『施工管理の人材採用に苦戦した』『同業他社との人材獲得競争が激化』『土木系の採用に苦労した』『技術系社員の確保に苦労した』『設備機械系の人材を確保できなかった』と、各社が担い手確保に積極的に動く中で技術系の母集団形成に苦戦した企業が多い。また、『実質的な採用活動の早期化が顕著』『想定以上に就職活動の早期化が進んでいた』という声も多く、経団連の『採用選考に関する指針』が廃止される1年前から採用活動の早期化が進んだとみられる。一方で、五洋建設が『女性技術者の応募が増えている』と指摘するように、半数を超える16社の女性の採用人数が前年を上回った。採用者数の32.6%に当たる15人の女性を採用する佐藤工業や、27.9%に当たる97人の女性を採用する清水建設を筆頭に、12社が採用者数に占める女性の割合が2割を超えた。国土交通省や業界団体などが力を入れてきた『女性活躍推進』の取り組み効果が一定程度、表れているとみられる。今後の採用方針については、新卒の採用を『増やす』が3社、『減らす』が2社で、『維持』が24社で圧倒的多数を占めた。中途採用についても、『増やす』が6社、『減らす』が3社で、『維持』が20社となった。」(『建設通信新聞』2020.03.02)
●「住宅リフォーム推進協議会(國井総一郎会長)がまとめた『2019年度住宅リフォーム事業者実態調査』で、8割の事業者が人手不足を感じていることが分かった。将来への不安を抱える事業者も多く、業界一丸となった対応が急がれる。調査は住宅リフォーム業者の実態把握が目的。18年度長期優良住宅化リフォーム推進事業と住宅ストック循環支援事業に登録された事業者を対象に、昨年8~9月、郵送とインターネットで実施した。回答があった2804件を集計した。リフォーム工事に携わる職人や資材の充足状況に関する問いに対し、『資材は充足しているが人手が不足している』と回答したのが68.4%(前年度比2.1ポイント増)。『人手も資材も不足している』と答えたのは8.3%(2.4ポイント増)となり、人手不足を感じている事業者は76.7%に上った。一方、『人手も資材も十分ある』と答えたのは17.5%(4.5ポイント減)と前回より減少した。リフォーム事業の課題や今後取り組んでいきたい施策は何か訪ねたところ、『人材確保』を挙げたのが55.3%(4.5ポイント増)と最も多かった。次いで『人材育成』が49.6%(1.7ポイント増)で、多くの事業者が『人材』に関心を持っていた。新築とリフォームを含む建築工事全体の中で、500万円未満のリフォーム件数が83.7%(1.7ポイント増)を占め、価格を抑えた工事が増えている実態も分かった。」(『建設工業新聞』2020.03.03)
●「全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)が実施した会員の実態調査アンケートによると、国と地方自治体の発注工事で工期が『適切でない』と考えている企業の割合は全体の79.8%に達したことが分かった。前年(80.5%)からの改善幅は小さい。週休2日を確保するためにも発注者に対し『現状の工期設定の1.2倍~1.3倍は必要』とする意見などが寄せられた。調査は2248社を対象に昨年10~12月実施し680社が回答した。工期設定が『適正でない』と回答した企業の割合は、工事の発注機関別に国68.0%(前年71.5%)、都道府県80.4%(81.1%)。今回からまとめて質問した市町村は83.2%だった。適切な工期設定を求める意見の中には『施工に当たり設計内容や地元との協議などの未確定事項が多すぎ工期が足りなくなる』との指摘や、『工程上、年度内施工が厳しい時期に年度内完了工事を発注するのは、結果として不調の大きな原因になることがあるのでやめてほしい』といった要望があった。入札契約制度関連では予定価格の設定も『適正でない』と回答した企業が多い。発注機関別は国52.1%(56.7%)、都道府県64.4%(62.3%)。市町村は71.8%が『適正でない』と回答した。国の積算基準では、市町村の小規模修繕工事で適正な利益が確保できないとして、歩掛かりの見直しを求める意見が多かった。」(『建設工業新聞』2020.03.05)
●新型コロナウイルス感染の影響により、福岡県では建設業の一人親方、個人事業主から「材料が確保できなくなる」「この先、受注が減るのではないか」など不安の声が広がっている。福岡市でリフォーム業を営む一人親方の江口謙二さん(68)は、中国製の部品調達に支障を来している。システムキッチン、トイレユニットなど住宅設備機器の生産が滞り、「手に入りにくくなっている」と話す。取引先の卸業者でも在庫が減り、「見積もりはするが、着工が遅れるかもしれないことを発注者に説明している」とのこと。本来であれば、転出・転入の入れ替えなどで忙しい時期だが、先を見通せない状況に不安を隠せない。国土交通省が感染拡大防止策として、感染者が出た場合は工期の見直しができるとの対応方法を発表した。「自分たちのような小さな業者は、これからが心配」と語る江口さん。感染拡大の収束も見えない中、経済的な落ち込みも続くと、「ますます、注文が減るのではないか」と危機感を募らせている。(『しんぶん赤旗』2020.03.05より抜粋。)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、傘下団体会員企業の建設キャリアアップシステムの浸透に向け、29件の『モデル工事現場』を選定した。同システムを導入している現場の現状を共有し、地域建設業が取り組む上でのメリットや課題などを明確化することで、システムへの理解、利用促進につなげる。また、対象現場で得られた各種情報を基に『システム普及に向けた提言』をまとめ、2020年10月から始まる国土交通省各地方整備局などとの地域懇談会・ブロック会議で提示する方針だ。」(『建設通信新聞』2020.03.06)
●「AI(人工知能)や画像解析を応用した『配筋検査システム』の研究開発が、ゼネコン20社の共同で進められている。配筋施工支援を目的としたタブレット端末での『配筋チェック機能』、検査効率改善を目的とした特殊カメラなどでの『配筋検査機能』の2つの機能を統合したシステム開発を目指している。期間は2019年4月からの約2年間。20年度には配筋チェック機能の現場試行を開始する予定だ。」(『建設通信新聞』2020.03.10)
●「中小建設企業の採用活動が思うように進んでいない。全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)が行った会員の実態調査によると、2019年度に新規に正社員を『採用していない』と回答した企業の割合は、技術者が53.2%(前年55.4%)、技能者で63.7%(69.8%)だった。『採用した』と回答した企業のうち、採用人数が『1人』の企業は技術者が77.0%(77.1%)、技能者が72.8%(73.9%)と多くを占め、採用できても若干名にとどまっている実態が明らかになった。」(『建設工業新聞』2020.03.10)
●「前田建設工業は13日、前田道路に仕掛けた敵対的TOB(株式公開買い付け)で応募数が買い付け上限を上回り、TOBに成功したと発表した。前田道路への出資比率は25%から51%に上昇し、取締役の選任権限を得る。ただ徹底抗戦した前田道路との溝は深い。前田道路の時価総額が前田建設を逆転した状態も続いたままだ。『総合インフラ企業』として相乗効果を引き出したい考えだが道の町は険しい。…前田建設は公共インフラの管理・運営を担うコンセッション事業の拡大を目指している。前田道路と有料道路のコンセッションのほか、情報通信技術を活用した有料道路料金の収受システム開発などで連携したい考え。役員選任などを通じ経営への関与を深める。だが相乗効果を発揮できるかは不透明だ。前田道路は経営陣だけでなく労働組合や協力会社も一丸となり、前田建設のTOBに反対してきた。前田建設は前田道路へ継続的にインフラ運営事業の意義を説明し理解を求める方針だが溝は深い。資金収支の改善も課題だ。前田道路は敵対的TOBへの対抗策として2月に3月6日を基準日とし1株650円の特別配当を打ち出し、4月の臨時株主総会に諮る予定だ。可決されれば400億円程度が流出する。前田建設はTOBに861億円を費やしており、グループ全体の手元資金が大幅に減ることになる。一方、前田道路は同業最大手のNIPPOとの資本業務提携協議の行方が不透明になった。『今後もNIPPOと協議は続けていく』(前田道路幹部)というが、前田建設が阻止に動く可能性もある。前田建設の時価総額は1434億円と、前田道路(2612億円)を下回る。前田建設の保有する前田道路株の時価を引けば、前田建設は本業で価値をほとんど生めていないことを意味する。早期に相乗効果を出すことが求められそうだ。」(『日本経済新聞』2020.03.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省がまとめた1月の新設住宅着工戸数は、前年同月比10.1%減の6万0341戸と、7カ月連続で減少した。持ち家、賃家、分譲住宅すべてで減少。うち、持ち家は13.8%減の1万8037戸で、1965年1月(1万7614戸)に次ぐ低水準となった。貸家は2.5%減の2万4147戸、分譲住宅は14.6%減の1万7856戸だった。分譲のうち、マンションは27.5%減の6789戸、一戸建ては2.8%減の1万0881戸。」(『建設工業新聞』2020.03.02)
●「東京電力福島第1原子力発電所事故で全町避難が唯一続く福島県双葉町で4日、帰還困難区域など一部地域の避難指示が解除された。放射線量が高い同区域の解除は初めて。駅周辺への出入りが自由になり、14日にはJR常磐線が全線開通する。『復興が一歩前進する』と期待が膨らむ一方、住民が帰還できるのはまだ先。9年の立ち入り制限で町は荒れ、不安も大きい。…今回、避難指示が解除されたのは常磐線の不通区間にある双葉駅とその周囲の区域と、隣接する町北東部の避難指示解除準備区域の計240ヘクタール。町全体の4.7%に相当する。これまで同駅を含む町内の大半の地域は帰還困難区域に指定されており、同区域での避難指示解除は県内7市町村で初めてとなる。これとは別に駅の周辺は居住はできないものの、自由に立ち入りができる『規制緩和区域』(約560ヘクタール)となった。このエリアは特定復興再生拠点区域として、除染やインフラ整備が集中して進められる。駅では営業再開の準備が進む。駅舎や踏切は真新しく塗り替えられ、駅前ロータリーも舗装された。5日に大熊町の大野駅周辺で、10日に富岡町の夜ノ森駅周辺でも避難指示が解除され、常磐線富岡-浪江間(約20.8キロ)の運行が14日から9年ぶりに再会する。しかし駅前の地域でさえ、商店や建物のガラスは割れ、庭木などは荒れたままだ。…今回の解除は住民の帰還を伴うものではなく、住宅整備などを進めるための『先行解除』の位置づけだ。双葉町の担当者は『駅から人の流れをつくり出せれば、復興の加速につながるはず』と期待を寄せる。同町の避難者は約6800人で、22年春ごろから帰還を始め、27年までに約2千人の居住を目標としている。」(『日本経済新聞』2020.03.04)
●「東日本大震災は11日、発生から9年を迎えた。政府の『復興・創生期間』が残り1年となり、被災地では住まいや交通網などの整備が完了に近づく。一方、東京電力福島第1原子力発電所事故の影響が残る福島県を中心に、現在も約4万7千人が避難を続ける。長引く避難生活で震災関連死は3700人を超えた。政府が復興庁の設置期限を10年延長するなど、復興への道のりはなお遠い。…復興庁によると、被害の大きかった若手、宮城、福島の3県の災害公営住宅の整備率は、1月時点の平均で計画戸数の99%に達した。高台移転による宅地造成も計画戸数の99%を整備した。復興道路は全体計画的570キロの7割が開通済み。JR常磐線の富岡-浪江間(20.8キロ)が14日に再開し、震災で被災した路線はすべて復旧する。ハード面の整備は完了間近だが、生活再建は道半ばだ。内閣府などによると、全国の避難者数は10日時点でなお4万7737人。応急仮設住宅にも約6千人が入居している。福島第1原発が立地する福島県双葉町で4日、9年ぶりに町内の一部で原発事故による避難指示が解除されたが、人が住めるようになるのは2022年春以降だ。」(『日本経済新聞』2020.03.11)
●「政府は10日、石綿飛散防止対策を強化する大気汚染防止法改正案を閣議決定した。ガイドラインで対応していたレベル3建材を追加し、レベル1-3の全ての石綿含有建材を法規制対象にする。石綿含有建材の使用有無に関する事前調査の結果は、都道府県などに報告することを建築物の解体・改造・補修を行う元請業者に義務付ける。下請業者を作業基準順守義務の対象に追加。事前調査結果の報告義務違反や、隔離しないでレベル1、2建材を除去した元請業者、下請業者に対する直接罰を創設する。施行日は公布から1年以内で、事前調査結果報告の義務化のみ公布から2年以内とする。今通常国会で審議される。事前調査結果報告の義務化は、一定規模以上の工事を対象とする。労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則の改正を検討する厚生労働省は、事前調査結果の簡易届出制度を創設する方針で、届出が必要な工事の基準を▽80平方メートル以上の建築物解体工事▽請負額100万円以上の建築物改修工事――とする方向で有識者会議の議論をまとめている。環境省も有識者会議を今後設置し、厚労省の基準をベースに一定規模以上の基準を検討する。」(『建設通信新聞』2020.03.11)
●東京電力・福島第1原発の事故発生から9年。3号機では昨年、炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機の原子炉建屋では初めてとなる使用済み核燃料プールからの燃料取り出しが始まった。しかし当初計画から4年以上の遅れとなり、1、2号機でも核燃料の取り出しは難航している。その先には“本丸”である溶け落ちた核燃料デブリの取り出しが待っており、困難な道のりは長く続く。(『しんぶん赤旗』2020.03.11より抜粋。)

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