情勢の特徴 - 2020年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「経団連(中西宏明会長)は、インフラシステムの海外展開の推進に向けた提言をまとめた。政府に対しトップセールスや情報収集の強化、予算措置の充実と制度改善を要請。税金問題や工事代金の支払い遅延といった相手国とのトラブルの解決に向けた支援も求めた。近く政府に提言を提出し、政府が策定するインフラシステムの輸出戦略への反映を目指す。インフラシステムの海外展開に取り組む会員企業へのアンケートで明らかになった課題や要望を基に提言をまとめた。提言によると、政府、関係府省庁などに▽強力なトップセールスと相手国の情報収集の強化▽予算措置の充実と制度改善の推進▽デジタル技術を活用したインフラ整備の促進▽質の高いインフラ推進に向けた国際的なルール整備・標準化▽第三国市場連携を通じた競争力の強化▽幅広い分野でのインフラの展開▽安全対策の一層の拡充―の7項目を求めた。」(『建設工業新聞』2020.03.19)
●「トヨタ自動車とNTTが資本・業務提携する方針を固めたことが24日分かった。通信を活用した自動運転技術などの技術を共同で開発する。出資額は相互に2千億円規模となる。トヨタが2021年に静岡県の工場跡地を活用して建設する『スマートシティー』でも両社の技術を持ち寄る見通しだ。トヨタは外部企業の知見を活用することで次世代の技術開発加速させたい考えだ。…今回の相互出資で次世代車の開発に加えて大きな照準となるのがトヨタが21年から静岡県裾野市でつくり始める実証都市『ウーブン・シティ』向けの取り組みとみられる。『コネクテッド・シティー』と位置付け、2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地に新技術を詰め込み自動運転車などが行き来する未来都市をつくる構想だ。トヨタが商用向けに開発を進めている自動運転の電気自動車(EV)『イーパレット』などを走らせる。居住者は車のほか、室内用ロボットなどの様々な新技術を検証する。MaaS(マース、次世代移動サービス)や人工知能(AI)の開発も促進する。いずれも高速通信技術は不可欠な分野で、NTTなどとの提携を生かしたい考えだ。一方、NTTはデータを使い、都市生活の質を高める『スマートシティー』構想をグループの成長戦略の柱の一つとして進めている。米ではラスベガス市と組み、監視カメラや音響センサーを組み合わせて通行車両や通行人の状況を検知するシステムを開発。交通事故の減少などに効果を発揮している。国内では札幌市や千葉市などと進めている。札幌市では購買履歴と位置情報を掛け合わせて観光業に生かす。千葉市とは自動運転の実証などを進めている。NTTがスマートシティー構想を推進するのは伸び悩む通信事業に変わる収益源としての期待が大きいからだ。スマートシティーでは各種センサーを連携させるため、5GなどNTTグループが保有する技術を生かしつつ、グループの収益を高められる利点がある。」(『日本経済新聞』2020.03.24)
●「政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、5月にも所得が大幅に減少した世帯に現金を給付する検討に入った。条件が当てはまる1世帯に20万~30万円程度とする案がある。売り上げの急減が予想される飲食業や観光業は割引券や商品券を発行して支える。経済対策の事業規模は名目国内総生産(GDP)の1割にあたる56兆円超をめざす。海外でも米国やオーストラリアなどは新型コロナを巡る経済対策でGDPの1割近い財政出動に踏み切る構えで、日本も足並みをそろえる。リーマンショック後の事業規模56兆8000億円を上回る過去最大とする方針だ。海外では事業規模を先に表明することが多いが、日本が目標値を先行させるのは異例となる。日本は個別の政策を積み上げ、積算した規模を公表してきたためだ。新型コロナに伴う株安をにらみ、市場の動揺を抑える狙いがある。安倍晋三首相は2020年度予算案が成立する27日にも経済対策の編成を指示する。裏付けとなる補正予算案を4月上旬にも閣議決定し、下旬の成立を見込む。5月にも給付を始める。事業規模は国による直接支出に加え、融資に伴う金融機関の貸し出し分などを含めた額だ。」(『日本経済新聞』2020.03.26)

行政・公共事業・民営化

●「総務省がまとめた地方公共団体定員管理調査の結果によると、2019年4月1日現在、土木・建築部門に所属する職員数は、都道府県が2年ぶり、市区町村(政令市を除く)が3年ぶりにそれぞれ減少した。同部門の職員数がゼロの市区町村は前年同月に比べて2団体増えた。防災・減災、国土強靭化の推進や復旧・復興などを担う土木・建築部門の職員は、気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化によって重要性が増している。職員数が減少する事態を重く見た総務省は20年度から支援に乗り出す。土木・建築部門の職員数は、都道府県が前年同月比0.4%減の4万8127人、市区町村は0.1%減の6万9271人だった。唯一伸びた政令市は2万1048人で、0.2%増だった。…問題は小規模な市区町村が職員を確保できていないことだ。土木・建築部門の職員数がゼロだった市区町村は、山梨県道志村、山梨県丹波山村、鳥取県日吉津村、沖縄県渡名喜村の4団体で、いずれも村となっている。総務省は、大量採用世代の退職や公共事業の減少、景気拡大に伴う採用難などによって技術職員が特に不足しているとし、『技術職員の不足が深刻化し、行政運営に支障になることが懸念される』(公務員部)と指摘。また、被災した地方自治体からは復旧・復興事業に従事する技術職員の派遣ニーズが高いものの、実際の派遣数が必要数を充足していないことを課題に挙げる。そのため、技術職員の確保に対する支援に乗り出すことにした。小規模な市区町村で確保が難しい技術職員を都道府県などで増員し、『新たな技術職員群』としてまとめて確保する。『新たな技術職員群』は、平時に市町村支援業務のための技術職員として配置され、大規模災害が発生した際は中長期にわたって被災地に派遣される。確保した技術職員の人件費に地方財政措置を講じる。」(『建設通信新聞』2020.03.17)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用する建設会社を公共工事の入札で優遇する検討が自治体で広がっている。事業者や技能者がCCUS登録している場合に評価点を加点するケースが多い。13日時点で山梨県が加点措置を導入しているほか、4月から福島、長野両県が導入を予定している。静岡県が6月、栃木県も10月の導入に向け準備している。各自治体とも技能労働者への適正な賃金支払いにつながることが期待されるCCUSの普及促進が目的。福岡県は2020年度の入札参加資格者名簿にCCUSの導入状況を反映する。名簿に記載される建設会社がCCUSの事業者登録を済ませている場合、主観点数に5点を加点する。宮城県や三重県、熊本県も総合評価方式などで加点を検討している。」(『建設工業新聞』2020.03.19)
●「国土交通省は直轄工事に用いる『工事請負契約書』を改正する。4月1日に施行される改正民法や、10月1日施行の改正建設業法などに対応。事務次官名で契約書改正に関する文書を、各地方整備局など発注部局に17日付で通知した。4月1日以降に契約を締結する工事から適用する。改正民法では、特約条項があっても債権が譲渡できるようになる。契約書では譲渡制限特約を維持。受注者が前払いや部分払いを行っても工事の施工に必要な資金が不足する場合、発注者の請負代金債権の譲渡について承諾することを想定する。併せて譲渡制限特約に違反した場合や、資金調達目的で譲渡した時に資金を他の工事に使用した場合に契約を解除できるとした。改正民法で『瑕疵』が『契約不適合』という文言に改められる。これを踏まえ、発注者は契約不適合(引き渡された工事目的物の品質などが契約内容に適さない)の時、受注者に対し、履行の追完と代金の減額を請求できると規定した。発注者による契約解除で、催告解除と無催告解除の事項を整理し規定した。木造や石造、RC造といった材質の違いによる担保期間が民法上廃止されたことを踏まえ、契約不適合責任期間として引き渡し日から2年と規定。設備機器などの期間は1年とした。期間内に発注者が2年以内に行う『請求』と『通知』を分けて規定。通知した場合には1年以内に請求を行う。故意または重過失の場合の担保期間については2年の特則を適用せず、民法の原則を適用する。』(『建設工業新聞』2020.03.19)
●「国土交通省は、直轄工事における働き方改革を推進するため、2020年度から原則すべての工事を週休2日対象工事とする。現場閉所が困難な維持工事には交代制で対応し、全工事で週休2日が確保できる環境を整える。建設業に罰則付き時間外労働規則が適用される24年度までに、全工事で週休2日が実施されるよう、計画的に取り組みを進める。」(『建設通信新聞』2020.03.25)
●「国土交通省は、適正な工期設定のために発注者が取り組むべき一連の手続きを示す『直轄土木工事における適正な工期設定指針』を策定した。公共工事品質確保促進法(品確法)の改正により『適正な工期設定』が発注者の責務と規定されたことや、2024年度から建設業に対しても罰則付き時間外労働規制が適用開始となることを見据え、直轄土木工事で率先して適正な工期設定に向けた取り組みを開始する。指針の対象は直轄土木工事。通年維持工事、応急復旧工事、港湾・空港工事は対象外とする。20年度に発注する工事から適用する。指針では、工期設定の前提となる余裕期間や施工に必要な実日数、不稼働日、準備・後片付け期間などを具体的・定量的に示す。」(『建設通信新聞』2020.03.31)

労働・福祉

●「主要ゼネコンが採用した新卒社員の離職率が減少傾向にある。日刊建設工業新聞社のアンケートに回答した31社の2016年度新卒社員の3年以内離職率の平均値は12.8%。過去3年で最も低かった。内訳を見ると、『10%以上20%未満』が13社で最も多く、『10%未満』が11社、『20%以上30%未満』が7社だった。新入社員研修の充実などで離職率の低下につなげたケースもあった。14~16年度入社の新卒社員を対象に、3年以内の離職割合を聞いた。34社が対象で31社から回答を得た。調査時期は1月14~27日。16年度新卒と15年度新卒との比較では、離職率が減少して改善したのは19社で、増加が12社だった。離職率5%未満は、竹中工務店、大林組、鹿島、ピーエス三菱、清水建設、佐藤工業の6社だった。年度別の離職率平均値は14年度14.1%、15年度13.8%だった。」(『建設工業新聞』2020.03.16)
●「ヒューマンホールディングスの子会社で人材紹介事業を行うヒューマンタッチ(東京都新宿区、髙本和幸社長)が運営するヒューマンタッチ総研は、最新の人材市場に関する公的データをまとめた『ヒューマンタッチ総研―Monthly Report2020年3月』を発表した。今国会で審議中の高年齢者雇用安定法改正案で70歳までの就業機会確保が企業の努力目標に位置付けられるなど、70歳現役社会に向けての法整備が進み始める中、雇用環境の変化を建設技術者はどのように感じているのか、『建設技術者の仕事への満足度と転職意識に関するアンケート』から紹介している。アンケートはヒューマンタッチに登録している建設技術者を対象にインターネットにより1月に実施した。回収数は411人。70歳定年制について、『歓迎する』とした回答は36.6%で、『歓迎できない』の19.8%を16.8ポイント上回った。全体としては70歳定年制について肯定的に考える建設技術者が多いものの、『どちらともいえない』とする回答も40%を超えており、態度を決めかねている人が多いとみている。年齢層別にみると、『歓迎する』と回答した中で最も多いのは50代の51.9%で半数が肯定的に捉えている。一方で、20代は16.7%と最も少なく、30代も25.8%となり、若い世代ほど肯定的に捉えている回答が少ない。」(『建設通信新聞』2020.03.23)
●「国土交通省は23日、建設業4団体との意見交換を実施し、建設キャリアアップシステムの普及・活用に向けた官民施策パッケージを打ち出した。2023年度からの直轄・自治体・民間のすべての工事での原則活用に向け、建設業退職金共済制度での建設キャリアアップシステムと連携した電子申請方式への移行を軸に、直轄工事での建設キャリアアップシステム活用を拡大。19年度内に業界団体や自治体、許可行政庁に対して、『業界共通の制度インフラ』としての活用を要請し、20年度から段階的に具体策を展開する。」(『建設通信新聞』2020.03.24)
●「国土交通省は23日、建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した技能者の能力評価制度について、登録基幹技能者への特例的な取り扱いを9月末まで継続することを能力評価実施団体に通知した。3月末までとしていた、登録基幹技能者に能力評価の判定手続きなしでゴールドカード(レベル4)を交付する措置を6か月間延長する。同省は能力評価実施団体に対して、『期間中にすべての登録基幹技能者が登録申請を行うよう一層の周知徹底』を要請している。」(『建設通信新聞』2020.03.24)
●「新型コロナウイルスの感染拡大で雇用や生産に影響が出始めた。厚生労働省が31日発表した2月の有効求人倍率は1.45倍(季節調整値)で前月から0.04ポイント下がった。2年11か月ぶりの低い水準となった。足元では解雇や一時休業が出ている。経済産業省が発表した2月の鉱工業生産指数は前月比0.4%上昇だが、3月は5.3%低下と大幅な低下を見込んでいる。有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。有効求人倍率は1月に0.08ポイント下げた。2ヵ月で0.1ポイント超える下げ幅になるのは、2008~09年の金融危機以来となる。雇用の先行指標となる新規求人は主要産業全てで前年同月比で減った。製造業は24.7%減で業種別で最も減少幅が大きかった。生活関連サービス・娯楽業の減り幅も大きく、18%減だった。新型コロナウイルスの感染拡大により、解雇などが見込まれている人数は厚労省が30日時点で把握しているだけで1021人にのぼる。一時休業など雇用調整を検討する事業所は3825ある。厚労省は雇用情勢判断について前月までの『改善している』との表現をやめた。『改善』の文字が入らないのは13年5月以来6年9ヵ月ぶりとなる。新たに『新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響に十分注意する必要がある』との表現を加えた。」(『日本経済新聞』2020.03.31)
●「建設キャリアアップシステムと連携した技能者の能力評価制度について、統括的な運営や意思決定を担う『建設技能者能力評価制度推進協議会』が、4月1日に立ち上がる。31日に協議会の主体となる各能力評価実施団体が設立に向けて、規約や事業計画、予算などを決議する。協議会の会長には建設産業専門団体連合会の才賀清二郎会長が就任する。建設キャリアアップシステムを活用した能力評価制度は、専門工事業団体などが務める各能力評価実施団体が策定する能力評価基準を基に4段階のレベル分けを行うもの。建設キャリアアップシステムに蓄積された就業日数や保有資格などの経験・技能から客観的に評価される。2019年3月に国土交通省が能力評価制度に関する告示とガイドラインを策定した後、19年度内を目標に登録基幹技能者制度がある全35職種での基準作成・申請が進められてきた。30日に残る4職種から申請があり、31日付で35職種のすべての基準が国交大臣認定を受ける見通しだ。新たに立ち上げる能力評価制度推進協議会は、効率的なレベル判定システムの運営や各団体における事務負担の軽減の観点から、建設企業(技能者)からの評価手数料徴収やシステム保守費用など必要経費の支払いといった能力評価の実施のための事業運営を統括して担う。レベル判定手数料については、登録者数の実績ベースでの試算結果と、レベル判定システムの保守費用や建設キャリアアップシステムとの連携費用、事務手数料などを総合的に勘案し、全職種・全レベル一律で3000円に設定する。カードの更新料1000円とあわせて能力評価制度推進協議会が徴収し、各種運営経費に充てる。」(『建設通信新聞』2020.03.31)

建設産業・経営

●「前田建設が前田総合インフラを公開買付者として実施していた前田道路に対するTOB(株式公開買付)の結果、買付予定数を超える応募があり、19日の決済日をもって前田道路を連結子会社化することが決まった。12日までを期限としていた前田建設によるTOBには、買付予定数2181万1300株に対し、3621万9738株の応募があった。前田建設は、TOBの開始時に、完全子会社化を意図したTOBでないことから買付上限を前田道路の株式の51%に当たる2181万1300株に設定していた。このため、上限を超える部分は買い付けない。この結果、TOB前は24.68%だった株式保有割合が51.29%にまでに引き上がる。前田建設はTOB開始時に、買付後の経営方針として、前田道路との協議で示される経営人の意向を考慮した上で、取締役の派遣や、独立社外取締役の比率を引き上げる提案を検討しているとしていた。前田道路の上場についても、『上場廃止を企図したものではない』とし、上場を維持する考え。前田総合インフラを公開買付者としたのは、将来的な組織再編の際の機動性と柔軟性確保を理由としていた。前田建設は、舗装工事の受発注での協業強化やインフラ運営事業での連携、共同技術開発・ICI総合センターの共同利用、コーポレート・ガバナンスの強化などを目指し、1月20日に前田道路へのTOBを開始。これに対し前田道路は、TOBに反対する意見を表明し、総額約535億円にのぼる特別配当の実施、NIPPOとの資本業務提携の協議開始などの対抗策を打ち出していた。」(『建設通信新聞』2020.03.16)
●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、建築本部内の各委員会に参加している58社を対象に2018年度の設計施工一貫方式の受注額を調査、単独と共同(他社と共同設計)を合わせ5兆3859億2900万円に達した。建築工事全体の受注額に占める割合は前年度比0.6ポイント減の50.7%、若干下落したものの、3年連続で5割を超えた。『建築設計部門年次アンケート2019』として調査、19年7月1日現在の18年度建築工事受注額から算出した。設計施工率(建築工事全体の受注額に占める設計施工一貫受注額の割合)は、単独が前年度比1.3ポイント増の45.3%(受注額4兆8161億9800万円)となり、率の内訳区分を始めた2009年以降の最高値を更新した。共同は1.9ポイント減の5.4%(5697億3100万円)だった。」(『建設通信新聞』2020.03.17)
●「ゼネコン各社が研究開発投資に積極的な姿勢を維持している。日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)が63社を対象に実施した2019年度アンケートによると、研究開発費を回答した41社の78%に当たる32社が、前年度と同額以上の研究開発費を投じていた。研究開発費の増額は14年度から6年連続。研究開発費の内訳は基礎研究が12%、応用研究は22%、開発は66%でここ数年大きな変化はない。19年度は18年度よりも中長期のテーマの比率が増加していることも分かった。」(『建設工業新聞』2020.03.24)
●「全国中小建設業協会(土志田領司会長)が、23日の意見交換会で赤羽一嘉国土交通相に建設キャリアアップシステム(CCUS)のモデル現場の試行を表明したことで、既に同様の取り組みを始めている日本建設業連合会(山内隆司会長)、全国建設業協会(近藤晴貞会長)を含め、建設業全体でシステムを普及・活用する動きが加速している。全中建は同システムの『モデル現場ちゃれんじ工事』を開始する。会員企業から対象案件を募集しており、一定の件数が集まった段階で公表する方針だ。あえて『ちゃれんじ』とひらがな表記するのは、システム自体へ親しみを感じてもらうための工夫となっている。日建連や全建も国土交通省や自治体など発注者の協力を得ながら、モデル工事現場を展開している。」(『建設通信新聞』2020.03.25)
●「中小企業庁は27日、2020年1-3月期の中小企業景況調査結果を発表した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、全産業の業況判断DI(『好転』したと回答した企業の割合と『悪化』したと回答した企業の割合の差)はマイナス24.4となり、前期から3.3ポイント悪化した。5期連続でマイナス幅が拡大している。建設業はマイナス8.3で、2.8ポイント悪化した。中小企業1万8930社に対し、3月1日時点の状況を調査した。有効回答率は96.5%。建設業の業況判断DIは、総合工事業が1.2ポイント悪化のマイナス8.4、職別・設備工事業が4.5ポイント悪化のマイナス8.2だった。売上額DI(『増加』したと回答した企業の割合と『減少』したと回答した企業の割合の差)は全産業で0.8ポイント改善のマイナス21.4となり、5期ぶりにマイナス幅が縮小した。建設業は0.7ポイント改善のマイナス7.2で、3期ぶりに回復した。売上額に新型コロナウイルス感染症の大きな影響が出ていない一方で、資金繰りは悪化している。資金繰りDI(『好転』したと回答した企業の割合と『悪化』した回答した企業の割合の差)は、全産業が2.6ポイント悪化のマイナス16.6で、4期連続でマイナス幅が拡大している。建設業はマイナス4.1で、1.1ポイント悪化。2期連続でマイナス幅が広がった。自由意見で建設業からは、『ボイラー関係の部品が中国で生産されているため、供給がストップしてしまい、納期が間に合わなくなりそうな現場をいくつか抱えている。受注を制限せざるを得ない』(群馬県)と、現場に影響が出ているとの声が寄せられた。『商材が入らなくなり、工事が延期になってしまった。先行きが不透明のため、別の工事での受注を模索している』(静岡県)と、今後の事業活動を不安視する意見もあった。」(『建設通信新聞』2020.03.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「昨秋以降に全国各地で相次いだ大規模災害を踏まえ、国土強靭化地域計画の策定を急ぐ市区町村が増えてきた。2019年7月時点で『策定済み』または『策定中』の団体は全体の約1割にとどまっていたものの、20年3月時点で約8割に上昇した。政府が計画策定に向けた支援策を強化したことに加え、『多発する災害によって強靭化が喫緊の課題と認識されるようになってきた』(内閣官房国土強靭化推進室)としている。地域計画の策定は13年12月施行の国土強靭化基本法に基づき、全自治体に求めている。政府は市区町村に対して、地域計画の策定に必要なノウハウをまとめたガイドラインを作成するなど、策定率向上に向けた取り組みを続けている。市区町村による地域計画の策定状況は、3月1日時点で、全国1741団体のうち『策定済み』184団体(19年7月1日時点115団体)、『策定中』1171団体(88団体)。策定済みと策定中を合わせると全体の77.8%(11.7%)に相当する1355団体(203団体)となった。策定作業に入った団体が急増する一方、386団体が策定に着手できていない。自治体職員の人手不足や、ノウハウ不足などが主因。政府は都道府県とも連携しながら、全市区町村での早期策定を目指して『より良い事例や新しい事例を横展開させながら計画策定に向けた支援を引き続き取り組む』(国土強靭化推進室)方針だ。」(『建設工業新聞』2020.03.17)
●「国土交通省は17日、『気候変動を踏まえた水災害対策小委員会』(委員長=小池俊雄土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長)の第3回会合を開き、今後のハード対策を中心に議論した。国交省は、治水計画や設計の考え方を見直した上で治水施設整備を加速化・重点化するとともに、利水ダムを活用した洪水調節機能の向上や、民間による流出抑制対策の強化に取り組むことで、気候変動に伴って増大する外力の制御に当たる考えを示した。小委員会は、社会資本整備審議会河川分科会の下に設置している。国交省は、これまでは主に外力を制御する水災害対策を実施してきたものの、近年の災害で施設の能力を超える降雨や洪水が発生し、気候変動によって降雨強度のさらなる増加と降雨パターンの変化が見込まれると説明。今後は、外力を制御する対策の強化に加え、氾濫水を減らす堤防強化や被害範囲を減少させる二線堤の整備により、少しでも被害を低減する減災対策を講じる必要があるとした。これらの取り組みに当たっては、財政、税制、金融、法制などさまざまな分野の施策を総動員し、流域全体で激甚化・頻発化する水災害に立ち向かう姿勢を提示した。施設整備で外力制御対策を強化する具体の取り組みには、治水計画に基づく施設整備の着実な進捗や、ダム、調節池、放水路の整備推進、ダム再生、遊水地の改造による洪水調節機能強化などを列挙した。」(『建設通信新聞』2020.03.18)
●「環境省は、石綿飛散防止対策を強化する大気汚染防止法改正案の技術的事項を検討するため、有識者検討会を立ち上げた。7月ごろに検討結果をまとめ、同法の政令、省令、告示などの改正につなげる。『石綿飛散防止に係る技術的事項検討会』(座長・大塚直早稲田大大学院法務研究科教授)を設置、19日から書面での検討を始めた。法改正の方向性を検討した中央環境審議会の議論を基に、環境省が技術的事項の案を示しており、月内に委員から意見を集める。国会に提出済みの改正法案は、レベル3(成形板などその他の石綿含有建材)を規制対象の特定建築材料に追加し、従来のレベル1(石綿含有吹付け材)、レベル2(石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材)と合わせて、すべての石綿含有建材を規制することを柱としている。これに伴い、作業基準にレベル3建材の石綿飛散防止措置を追加する。石綿含有成形板は建材を原形のまま取り外すことを原則としつつ、困難な場合は湿潤化の措置を講じることを規定。石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、破砕などによって除去する場合、湿潤化に加えて作業場周辺の養生を義務付ける。事前調査は、一定の知見を有する者を元請業者が活用して実施することを定める。…元請業者に対し、石綿含有建材の有無にかかわらず、都道府県などに事前調査結果の報告を義務化することも改正法案の柱の1つ。報告対象とする工事の範囲は、労働安全衛生法の石綿障害予防規則を改正する観点から議論する厚労省の検討会で示された基準に合わせ、80平方メートル以上の解体作業と請負代金100万円以上の改造・補修作業と定める。」(『建設通信新聞』2020.03.24)
●「安倍晋三首相は24日夜、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話で協議し、今夏の東京五輪・パラリンピックを1年程度延期することで合意した。遅くても2021年夏までに開催すると確認した。『東京2020』の大会名称は維持する。新型コロナウイルス感染の収束が見通せず、選手らの準備期間も踏まえ判断した。」(『日本経済新聞』2020.03.25)
●「富士山の大規模噴火に伴う首都圏への影響や対策を議論する政府の中央防災会議の作業部会は31日、報告書案をまとめた。最悪の場合、対象とした7都県で地上を走る鉄道の運行が停止し、首都圏で大規模な交通網のまひや停電などによる『社会的混乱が発生する』と指摘。市民生活や経済活動への深刻な影響が懸念され、政府は今後、具体的な対策を検討する。富士山は過去に噴火を繰り返し、直近では1707年の『宝永噴火』が知られる。同年12月16日に発生し、小康状態を挟んで16日間続いたとされる。報告書案で作業部会はまず、宝永噴火と同規模の噴火が起きた場合、風向きによって降灰の分布や量にどのような違いが出るかを推計した。その結果、風向きが西南西で雨が降った場合に首都圏で降灰量が多くなり、最も影響が大きかった。東京都新宿区では噴火15日目までに灰が10センチ積もるなどとしている。処理が必要な火山灰の総量は計約4億9千万立方メートルに上り、東日本大震災で発生した災害廃棄物の約10倍に当たる。過去の火山噴火による被害状況や実験結果などを基に、降灰によるインフラなどへの影響も分析。事前対策や復旧作業をしなかった場合、最悪のケースでは、噴火の3時間後に東京都心でも停電や鉄道の運休が発生。15日後には降灰のため、7都県の広範囲で鉄道が運休、四輪駆動車以外の車が道路を通行できなくなる区域も出るとした。」(『日本経済新聞』2020.03.31)

その他