情勢の特徴 - 2020年4月前半
●「日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はマイナス8になった。7年ぶりにマイナスに転落し、悪化幅も7年3カ月ぶりの大きさだった。2019年12月のゼロから8ポイント悪化した。非製造業や中小企業の景況感も急速に落ち込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞が影を落としている。…悪化は5四半期連続になる。もともと米中貿易摩擦や大型台風の影響で悪化が続いていたが、新型コロナの問題でさらに落ち込んだ。悪化幅は12年12月調査(9ポイント)以来の大きさになった。主要16業種のうち15業種で悪化した。新型コロナの世界的な感染拡大で需要が急激に落ち込んだうえ、サプライチェーン(供給網)の寸断による部品の調達難が生産活動の停滞を招き、造船・重機や生産用機械、鉄鋼などの悪化が目立った。これまで比較的堅調だったサービス業の景況感も急速に落ち込んだ。大企業非製造業の業況判断DIはプラス8と12ポイントも悪化した。3四半期連続で下がり、悪化幅はリーマン・ショック後の09年3月調査(22ポイント)以来11年ぶりの大きさだった。宿泊・飲食サービスは70ポイント悪化のマイナス59、レジャー施設などを含む対個人サービスも31ポイント悪化のマイナス6と厳しい落ち込みになった。インバウンド(訪日客)の急減や外出の自粛などが響き、いずれも悪化幅は04年3月の調査開始以来最大だった。19年10月の消費増税の影響が残る小売りも振るわなかった。中小企業の景況感も一段と悪化した。製造業の業況判断DIは6ポイント悪化のマイナス15と、13年3月調査以来の低水準となった。非製造業も8ポイント悪化のマイナス1と14年12月調査以来の低水準になり、悪化幅は09年3月調査(13ポイント)以来の大きさだった。」(『日本経済新聞』2020.04.01)
●「新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、日本が検査で後れをとっている。検査数は1日2千件を切っており、100万人あたりの検査数はドイツの17分の1だ。感染の実態を正確につかみ、きちんとした対応策を打ち出すには、検査の拡充が欠かせない。そのために軽症者は自宅で療養させるなど重度に応じた医療の仕組みをつくることが急務だ。英オックスフォード大学の研究者らでつくるグループが3月20日までの各国の検査件数をまとめた。人口100万人あたりでは韓国やオーストラリア、ドイツなどが多く、ドイツは2023人(15日時点)と日本の117人(19日時点)を大きく上回った。安倍晋三首相は3月中に国内の検査能力を1日あたり8千件に高める考えを示していたが、実際の検査数(PCR検査)は1日2千件を超えることはなく、29日時点で合計5万4千件だ。一方、ドイツは15日時点で16万7千件に達していた。両国とも検査を受けるかどうかは医師が判断しているが、ドイツは感染していても無症状なら自宅待機とする対応をすでに取っている。一方、日本では検査で感染が確認されれば無症状や軽症でも原則入院させている。感染症法の規定によるもので、患者を事実上隔離し感染拡大を防ぐ意味がある。厚生労働省は検査の網を広げすぎると、誤判定も含めて入院患者が急増して病院が機能不全に陥り、医療崩壊につながると警戒していた。厚労省は3月1日、都道府県などに対し、感染拡大で入院患者が増え重症者の受け入れが難しくなる場合、検査で陽性でも軽症なら自宅療養を原則とする方針を示した。その後1カ月経過したが、厚労省はそうした状況に達したとの判断や具体的な基準は示しておらず、入院を原則としてきた現場の対応は進んでいない。この結果、東京都ではすでにベッド数は逼迫し、『状況はぎりぎり』(小池百合子知事)と危機感を強めている。」(『日本経済新聞』2020.04.02)
●「安倍晋三首相は7月、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令した。感染が急拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象で実施期間は7日から5月6日まで。米欧では強制力がある外出禁止令を出す例がある。イタリアも罰金付きの外出制限を出したが感染者の増加が鈍化するまで時間がかかった。日本の外出自粛要請は強制力がないため住民の自発的な対応が不可欠になる。今回の宣言で感染爆発を防げるかは未知数だ。…いまのペースで感染拡大が続けば感染者が2週間後に1万人、1カ月後には8万人を超えるとの見通しを示した。『緊急事態を1カ月で脱出するには人と人との接触を7割、8割減らすことが前提だ』と協力を求めた。…発令を受け7都府県の知事は住民に外出自粛などを求める。知事は娯楽施設など人が集まる施設の使用を制限するよう求めたり、学校の休校を要請したりできる。強制力はないが、事業者が正当な理由なく応じなければ『要請』より強い『指示』を出して事業者の名前も出せる。発令後も鉄道やバスなど公共交通機関は運行を続ける。食料品や医薬品などの生活必需品を扱うスーパーマーケットやドラッグストアも営業する。最低限の生活を維持した上で人と人が接触する機会を減らす狙いだ。」(『日本経済新聞』2020.04.08)
●「政府は7日夕の臨時閣議で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策を決定した。事業規模は過去最大の108兆円。このうち企業の資金繰り対策は45兆円規模となる。政府系金融機関による無利子融資や減収企業に対する給付金などで急速に深刻化する企業の財務基盤を支える。家計向け現金給付は月収減などの要件を満たした世帯に30万円を支給する。対策を盛り込んだ補正予算案は4月中の成立を目指す。2020年度本予算で対応する分を含めた財政支出の総額は39.5兆円でこちらも過去最大となる。このうち今回の補正予算に対応する16.8兆円を国債発行でまかなう。14.4兆円が赤字国債になる。資金繰り対象では中小企業や個人事業主向けの『持続化給付金』と呼ぶ現金給付や減収になった世帯向けの『生活支援臨時給付金』に合計6兆円を投じる。世帯向けは約1300万世帯分の予算を確保。政府は5月からの支給を目指すとしているが、手続きが煩雑で自治体によっては支給が夏ごろになる可能性もある。このほか税金や社会保険料の支払いを原則1年間猶予したり、民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子で融資する仕組みを設けたりする。制度融資を受け付ける自治体の窓口が人手不足に陥っていることなどに対応する。経済対策は新型コロナの感染防止を最優先に掲げた。需要が低迷を続けるなかでも企業や家計が破綻しないように手当てする一方、新型コロナへの効果が期待される抗インフルエンザ薬『アビガン』の備蓄や人工呼吸器、マスクの生産支援にも予算を付けた。新型コロナの感染拡大収束後は観光業などの需要喚起策に乗り出す。旅行商品やイベントのチケットを購入した人などにクーポン券などを出す。サプライチェーン(供給網)の再構築のために海外拠点を国内に回帰させる企業にも補助を出す。」(『日本経済新聞』2020.04.08)
●「新型コロナウイルスの感染拡大で景況感が急速に悪化している。内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査によると、街角景気の現状判断指数(DI)は前月から13.2ポイント下がり14.2となった。2008年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災の直後を下回り、比較可能な02年以降で最悪となった。先行きの指数も18.8まで落ち込み過去最悪を更新した。」(『日本経済新聞』2020.04.09)
●「東京商工リサーチが8日発表した3月の企業倒産件数は前年同月比12%増の740件だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う倒産は12件だった。全体の件数の増加は7カ月連続で、2月(11%増)と比べでも極端に増えているわけではない。ただ7日の政府による緊急事態宣言を受けて経済活動の制約が強まれば今後、息切れする企業が増える懸念がある。」(『日本経済新聞』2020.04.09)
●「出入国在留管理庁が14日公表した出入国管理統計(速報値)によると、3月の外国人新規入国者数は15万2千人と前年同月の250万4千人から9割超減った。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国規制措置が影響し、中国や韓国を中心に大きく減少した。」(『日本経済新聞』2020.04.14)
●「新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が縮小の危機にある。移動制限などに伴う経済損失は500兆円を超す可能性もある。国際通貨基金(IMF)は14日公表した世界経済見通しで、2020年の世界経済の成長率予測をマイナス3.0%へ下げた。各国は800兆円超の財政出動で応戦するが、感染を早期に封じ込められるかば予断を許さない。感染抑制に力を尽くしつつ、将来の経済回復へ確かな手を打てるか。成否はここ数カ月にかかっている。」(『日本経済新聞』2020.04.15)
●「総務省は14日、2019年10月1日時点の人口推計を発表した。外国人を含む総人口は18年10月より27万6千人少ない1億2616万7千人だった。9年連続の前年割れになる。総人口の減少率は0.22%で統計を始めた1950年以来、最大になった。少子高齢化による人口減は社会保障財政の悪化や、経済成長の鈍化を招く懸念がある。労働の担い手となる15~64歳の『生産年齢人口』は7507万2千人だった。総人口に占める割合は18年の59.7%から59.5%に減り、過去最低を更新した。労働力の減少は経済成長のマイナス要因になる。年金や医療、介護など社会保障の財政基盤も弱体化する。65歳以上の高齢者は3588万5千人だった。総人口に占める割合は18年の28.1%を上回り、過去最高の28.4%になった。高齢者の増加は医療費など社会保障給付の拡大につながる。政府は企業に70歳までの就業環境を整備するよう求め、外国人労働者の受け入れも拡大してきた。働き手を増やす狙いだが対応が遅れれば成長や財政の改善は難しくなる。出生児数は89万6千人と18年より4万8千人減った。死亡者数は1万2千人増の138万1千人だった。出生児数が死亡者数を48万5千人下回ったため、総人口の自然減は13年連続になった。外国人数に関しては、入国者が出国者を20万9千人上回り、7年連続の増加になった。」(『日本経済新聞』2020.04.15)
●「国土交通省は、4月1日に施行する改正民法や10月以降に施工予定の改正建設業法に対応した『公共工事標準請負契約約款』の改正内容などに沿って、直轄事業の各種契約書を改正した。10月1日から適用となる建設業法に関連する一部規定を除き、4月1日からの契約に適用する。直轄契約書のうち、『工事請負契約書』は改正民法に対応し、契約した工事の材料費や下請代金の支払いに充てる場合に工事請負代金債権の譲渡を認める規定や担保責任の追及方法として代金減額請求ができる規定を追加。担保責任の追及期間、約定解除権、損害賠償請求権の要件なども整理した。建設業法関連では、工事を施行しない日・時間帯を契約書に明記する規定や監理技術者補佐に関する規定を整備。両規定は10月1日から適用開始となるが、『著しく短い工期の禁止』規定は4月1日から適用する。」(『建設通信新聞』2020.04.01)
●「国土交通省は円滑な施工確保策の一環として、交通誘導警備員の円滑な確保に向けた方策を講じる。遠隔地から確保する場合の必要経費を計上するとともに、工事用信号機の活用も検討する。建設業や警備業など関係者による交通誘導警備員対策協議会を都道府県ごとに設置し、警備員の過不足状況などをきめ細かく把握。地域ごとの課題を踏まえた対策を講じ、公共事業の執行に万全を期す。交通誘導警備員を遠隔地から確保する場合、入札公告時に労務管理費や交通費などを設計変更の対象に明示し、適切に実施する。施工箇所が山間地などで1日8時間の作業時間の確保が難しい場合は労務費を適切に設計変更する。交通量が少ない場合などで交通の安全と円滑が確保されると認められる時には、工事用信号機の活用を検討する。」(『建設工業新聞』2020.04.03)
●「国土交通省は、労務賃金の適正な支払いを促進するため関東地方整備局で先行して試行していた『「労務費見積り尊重宣言」促進モデル工事』について、2020年度は全国に展開する。労務単価の引き上げを現場の技能者の賃金水準の上昇という好循環につなげることを目的に、労務費を内訳明示した見積書を尊重する元請企業に対して、対象の直轄工事でインセンティブを付与する。モデル工事の全国展開を契機として、引き上げの効果が全国の技能者一人ひとりまで着実に行きわたる環境を整える。」(『建設通信新聞』2020.04.06)
●「国土交通省は激甚災害の頻発を踏まえ、地方自治体の管理道路に適用する災害復旧の直轄権限代行制度を拡充する。対象を補助国道全線と地方道の重要物流道路に限定していたが、道路法を改正し地方道全線に適用できるようにする。管理者を務める地方自治体への支援をより手厚くし、災害時も安全で円滑な道路交通の確保を目指す。改正道路法案は開会中の通常国会で成立する予定。成立後を見据え、関係施行令の変更手続きにも着手した。」(『建設工業新聞』2020.04.14)
●「国土交通省は14日、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の発令後の直轄工事・業務における、受注者からの一時中止などの申出状況を公表した。緊急事態宣言の対象地域では、10日時点で、工事は80件(全体約1000件)、業務は230件(同約700件)の申し出があった。業務は全体の3分の1が一時中止などを申し出ている。工事は全体の8%だが、今後の感染拡大の状況によっては、さらに一時中止の申し出が増加する可能性もある。全国の一時中止などの申し出状況(10日時点)は、工事が100件(全体的6000件)、業務は600件(同約4000件)。工事、業務ともに緊急事態宣言の対象地域内での申し出件数が大部分を占めている。」(『建設通信新聞』2020.04.15)
●「新型コロナウイルスの感染拡大の影響が経済統計にも表れ始めた。31日に公表された2月の景気指標をみると、雇用は新規求人数が主要産業で軒並み前年比マイナスとなり、特に製造業は24.7%減と落ち込みが目立つ。鉱工業生産指数は上昇したものの、昨秋の急落からの回復は鈍い。小売業販売額も訪日客の減少を映し、百貨店が11.8%減となった。コロナとの戦いは長期戦となる恐れも強まっている。総務省が31日発表した2月の完全失業率は2.4%(季節調整値)で横ばいだった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で失業が急増する米国に比べれば、今のところ落ち着いている。ただ自動車工場など製造現場で働く契約社員は大幅に減った。その姿は危機をいち早く察知する『炭鉱のカナリア』と重なる。2月の労働力調査によると、契約社員は278万人で前年同月から8%減った。減少した3分の1を製造業が占める。厚生労働省は製造業派遣でも新規求人が大幅に減っているという。」(『日本経済新聞』2020.04.01)
●「国土交通省は3月31月、専門工事会社の施工能力を見える化し評価する制度に関する告示とガイドラインを公表した。制度の大枠を告示に、詳細をガイドラインに明記。告示では見える化評価を『建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録・蓄積された情報などを用いて、国交大臣認定の評価基準に基づき企業の施工能力、基礎情報、コンプライアンスを4段階で評価する』と定義。1日に施行する。」(『建設工業新聞』2020.04.01)
●「新型コロナウイルスの感染拡大が、フリーランスや副業の働き方に影響を与えている。苦しい状況に置かれるのが、面会が必要な通訳ガイドやインストラクターらだ。政府が打ち出した休業補償もフリーランスらには使い勝手が悪い。一方で在宅勤務や休業で空いた時間を活用し、オンラインで新たな収入源を確保する人も増える。新しい働き方が定着する過渡期で明暗が分かれている。…政府は3月10日に決めた第2弾の緊急対応策で、一定の要件をみたすフリーランスヘの日額4100円の支給を盛り込んだ。支給金を受けるには仕事の有無や本来得るべき収入などの証明を求められる。契約書があれば証明できるが、日本では旅行業界などで仕事の発注者がフリーランスに対して契約書を発行しない習慣が根強い。フリーランスにとっては受給に必要な条件を証明しにくいことが、支援を受けるのに支障になっている。…クラウドソーシング大手のランサーズによれば国内の広義のフリーランス人口は19年で1087万人に上る。15年に比べ約2割増えて労働力人口の16%に達していた。このうち雇用契約のない人は推計約370万人。個人事業主として仕事を請け負う人や、出産をきっかけに退職して在宅でオンラインの仕事をする主婦らが中心だ。残りは副業をしたり複数の会社で雇用契約を結んだりする『副業・復業系』で約716万人いる。」(『日本経済新聞』2020.04.05)
●「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、厚生労働省が雇用を維持するための支援策を急ピッチで拡充している。訪日客の受け入れ停止や外出の自粛で観光やサービス業を中心に売り上げが急減している。雇用をつなぎとめるために、従業員を休ませながら雇用を維持した企業に支給する雇用調整助成金を拡充する。助成率を上げたほか、非正規社員も対象にした。景気が落ち込むと、企業が雇用を維持するために従業員を休ませることがある。企業は休業手当として賃金の6割以上を支払う必要があるが、この費用を一部補助するのが雇用調整助成金だ。政府は4月1日から6月30日までを『緊急対応期間』とし、助成金に特例措置を導入した。柱の一つが助成率の引き上げだ。通常の助成率は中小企業で3分の2、大企業で2分の1。今回は従業員を解雇しない場合、中小で10分の9、大企業で4分の3まで高めた。売上高の減少など適用する条件も緩和した。雇用調整助成金は08年のリーマン・ショック時にも特例を設けた。助成金が対象とするのは雇用保険に6カ月以上加入している労働者とするのが大原則だが、今回は雇用保険に入っていないパートや新入社員も対象に含めた。正社員や非正規を問わず対象にし、雇用の維持を優先する。さらに、休業中に従業員のスキルアップ研修を実施した場合の上乗せ部分も拡充する。助成金の支給額は従業員1人あたり日額8330円が上限だが、オンライン講座を受講することなど条件を満たせば総額で1万円超を支給する方向で厚労省が調整している。外出自粛が広がる中でも、業務に関連する知識や技能の習得に充ててもらう。ただ、雇用調整助成金は申請してから支給までの手続きに数カ月かかる。そのため企業は支給開始までの期間、休業手当の支払い負担などが発生する。労働局には相談が殺到し、相談したくても電話もつながりにくい状況だ。感染者数が一時期全国最多となり、いち早く緊急事態宣言を出した北海道。観光客の減少で観光バス会社が運転手を解雇する動きが出ている。北海道労働局には1日200~300件のペースで助成金の相談が寄せられ、3月の相談は5000件超にのぼった。3月19日時点で厚労省が把握している相談件数は全国約2万9000件だ。」(『日本経済新聞』2020.04.06)
●「土木鉄筋協同組合北星会(大港成人理事長)は、技能者の処遇改善に向け、建設キャリアアップシステムの能力評価に準じて、単価を設定する取り組みを試行的に開始した。現状の単価基準で元請けと契約済みの現場でモデル的に試行しているため、同会が考える処遇目標よりも低い設定単価としている。国の能力評価は4段階だが、同会は5段階(2級鉄筋施工技能士の資格などを持つ者や鉄筋工として10年以上の就業日数を有する技能者を能力評価に加える)とし、能力評価ごとに日額単価を設定し、技能者への支払い実現を後押ししている。」(『建設通信新聞』2020.04.07)
●「国際労働機関(ILO)は7日、新型コロナウイルスの影響で、世界の労働人口の約38%にあたる12億5千万人がレイオフ(一時解雇)や給与削減のリスクに直面しているとの報告書をまとめた。放置すれば感染が収束期を迎えても経済回復の好機を失いかねない。ILOは大規模な『即時の支援策』を打ち出すよう警告。各国・地域は企業の給与支払いを肩代わりしたり、借金返済を一時猶予したりするなど公的支援を急いでいる。世界の労働人口の約81%に相当する約27億人が感染拡大防止のためのロックダウン(都市封鎖)の影響を受けていると試算する。世界の雇用のうち、小売りや宿泊・飲食のほか、製造業、不動産が新型コロナによる雇用リスクが高いと分析。低賃金・低技能の職が多く、突然の収入減による打撃が大きいとした。地域別でリスクの高い業種のシェアが大きいのは、南北アメリカや欧州・中央アジアで、それぞれ4割を超す。」(『日本経済新聞』2020.04.08)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)と連携して技能水準を評価する『レベル判定システム』が始動した。登録機関技能者制度のある35職種を対象に、建設技能者のレベルを4段階に分ける。インターネット申請(https://noryoku-hyoka.keg.jp/level_1.0.0/portal)を活用し、1~2週間で判定結果を通知。判定確定後1カ月程度でレベルに応じた色のキャリアアップカードが技能者に届く。…国交省が開発したレベル判定システムを共同で運営し維持管理などを行うため、能力評価実施機関(35職種・50団体)と建設産業専門団体連合会(建専連)で構成する『建設技能者能力評価制度推進協議会』(会長・才賀清二郎建専連会長)が1日に発足。レベル判定システムを稼働させた。レベル判定の申請は当面、CCUSに事業登録した所属事業者に限定。CCUS利用開始前の経験は所属事業者が『経歴証明』する必要がある。このため技能者本人の申請ではなく所属事業者など(元請事業者、上位下請事業者、能力評価実施機関)が代行申請する。申請時は技能者がどのレベルに該当するのか指定するため、あらかじめ申請する職種の能力評価基準を確認しておく必要がある。1人当たりの手数料はレベル判定費用3000円、キャリアアップカード更新費用1000円の計4000円。レベル判定が完了すると、申請時に登録した住所に請求書が届く。支払いの確認がとれない場合はCCUSのIDが取り消される場合もあるので注意が必要だ。国交省は登録基幹技能者に対し、CCUSに登録申請するだけでレベル4のゴールドカードを交付する特例措置を9月末まで講じている。10月以降は登録申請、更新申請の2段階(それぞれ手数料が必要)を経てゴールドカードを交付。この場合、登録基幹技能者の資格に加え、レベル2、レベル3に求められる各種資格の保有も必要となる。」(『建設工業新聞』2020.04.10)
●「勤労者退職金共済機構(水野正望理事長)・建設業退職金共済事業本部(本部長・稗田昭人理事長代理)は、運営委員会・評議員会から2020年度事業計画などについて承認を得た。19年度から議論してきた建退共の財務状況の見直しは、掛金日額を310円から『320円』に引き上げるとともに、予定運用利回りを3.0%から引き下げ、『1.6%以上1.8%以下』の範囲に改定して対応する考えを報告した。実施時期は21年10月1日を予定している。」(『建設通信新聞』2020.04.13)
●「国土交通省は、適正な就労や社会保険加入の促進を目的に、いわゆる一人親方として働く人に向けたリーフレットを作成した。実際の仕事内容を基に、自身で一人親方(事業主)または社員(労働者)のどちらの属性で働いているのかを確認できるチェックリストを設けている。一人親方として働いた場合には、社員として働く場合に比べて将来もらえる年金給付額が少なくなる可能性が高いことも周知し、自身の適切な働き方を認識できるきっかけとする。働き方確認のチェックリストでは、仕事の依頼に対する諾否や日々の仕事の裁量の有無、就業時間の拘束の有無、自身の代替性、報酬額の決定方法について選択することで、どちらの働き方に近いか判定できる。リーフレットは全国建設労働組合総連合を通じて、一人親方として働く人に送付する。同省はこうした普及啓発に加えて、社会保険の加入の徹底に伴い懸念される、労働者として働いている人を一人親方として独立させる“社員の一人親方化”について、2020年度に対策検討会を立ち上げる。偽装請負の疑いがある一人親方の基準を明確化した上で、抑制対策を検討する。21年2-3月に具体的な施策としてとりまとめる。『規制逃れを目的とした一人親方化抑制対策に関する検討会(仮称)』は、建設業社会保険推進・処遇改善連絡協議会の下に設置する。構成員は、学識経験者、元請建設業団体、専門工事業団体(躯体系、仕上系、設備系、土木系など)、全国建設労働組合総連合、厚生労働省とし、事務局は国交省土地・建設産業局市場整備課が担う。」(『建設通信新聞』2020.04.14)
●「全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)は1日、政府から災害対策基本法に基づく『指定公共機関』に指定された。傘下団体、会員と連携し、大規模災害などが発生した際の体制を一段と強化。社会に貢献する力強い地場産業として、応急・復旧要請に応えていく。建設業団体では日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)に続く指定公共機関となる。」(『建設工業新聞』2020.04.02)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は2020年度事業計画を決めた。『建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及推進』と『週休2日の定着促進を中心とした長時間労働の是正』を前年度に続き2大事業とした。▽CCUSの普及促進▽働き方改革の推進▽建設技能者の処遇改善▽生産性の向上▽国土強靭化への対応と新たな財政政策の必要性の訴え▽広報活動の充実▽適切な企業行動の確保▽インフラシステム輸出戦略への貢献-の8項目に重点的に取り組む。」(『建設工業新聞』2020.04.03)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、台風15、19号を始め、2019年に発生した自然災害などの傘下団体の対応状況をまとめた。局地的、広域的な被害に見舞われた中で、受発注者間や建設業協会間で確立されている連携体制を生かし、実効性の高い応急復旧活動などを被災地で展開した。調査結果によると、台風19号では関東・東北地方を中心に、各地で土砂災害や河川の氾濫による浸水被害が発生した。災害協定を締結する国土交通省の各地方整備局などからの要請に基づいて被災地に向かったのは18協会、2710社。複数の発注機関と協定を結んでいる会員企業は協定締結数が2つであれば、企業数も2社としてカウントしている。」(『建設通信新聞』2020.04.08)
●「新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府による緊急事態宣言の発令から一夜明けた8日、ゼネコン各社が現場の対応方針を相次ぎ固めた。西松建設は同日、宣言の発令を受けて現場の中止に向けて発注者との協議に入ると発表した。鴻池組は発注者と協議の上、工事の続行や中止を判断すると決めた。管理部門などでの在宅勤務を一層強化する動きも出ており、東鉄工業は本社と支社に出勤する社員を2割以下にまで減らす方針を打ち出した。工事の中止を発注者に申し入れるゼネコンが出てくる一方、『発注者からの要請がない限り工事は継続する』(大手ゼネコン)というスタンスの会社も少なくない。感染拡大防止を目的に工事を中断した場合、追加経費などの請求を認めるかどうかは発注者によって対応が分かれる。」(『建設工業新聞』2020.04.09)
●「マンションなどの鉄筋コンクリート造(RC造)の建物に使う資材の市況がさえない。鉄筋に使う棒鋼や建物の基礎工事に用いる型枠用合板侶値下がりが続く。RC造から鉄骨造(S造)へのシフトが進む長期構造が下地にある中で、マンション着工の低迷や都心の大型再開発の進捗遅れなど短期的なマイナス要素が市況を下押しする。政府の緊急事態宣言の発令で住宅市場がさらに冷える不安もあり、市場関係者の警戒が増している。」(『日本経済新聞』2020.04.11)
●「帝国データバンクの調べによると、2019年度の建設業の倒産件数は1452件だった。過去20年で2番目に低い水準だが、最低だった18年度を5.6%上回った。減少基調から反転した格好で、同社は、引き続き厳しい状況が続くと見ている。負債総額は1392億9900万円で前年度比16.2%減だった。」(『建設工業新聞』2020.04.13)
●「他産業と比較して、新型コロナウイルス感染拡大に伴う企業活動への影響度合いが小さいとみられていた建設企業でも、影響が深刻化しつつあることが東京商工リサーチ調査で分かった。建設企業は、外出自粛といった行動抑制による影響を直接受けている宿泊や飲食といったサービス業と比較すると、事業活動への直接的影響は少ないとみられていた。ただ現状の状態が続いた場合、1年以内で決済(仕入れや給与支払いなど)に不安がある企業は回答した中小建設企業の23%、462社に上った。…『既に影響が出ている』と答えた企業の産業別では、サービス業が7割超だったのに対し、建設業は38%と10業種中、最も割合が小さかった。ただ『今後出る可能性』も合わせると、他産業同様9割起となった。」(『建設通信新聞』2020.04.15)
●「新型コロナウイルスの緊急事態宣言から1週間。建設工事の最前線に立ち現場を支える専門工事会社が対応に苦慮している。現場勤務に不安が募る一方で、現場が止まると日給月給制度で働く技能労働者に大きな痛手となりかねない。『人の命を守ることが一番だが、補償してくれないと難しい』(専門工事会社社長)と十分な休業補償を訴える声も出ている。…各現場では手洗いやうがいの徹底、入場前の体温確認、朝礼の分散といった対策が講じられているという。現場の稼働に対しては『現場が止まると職人は明日から食べるのに困ってしまう。動かし続けてほしい』という声と、『休憩所などでの感染が心配』との不安の声が混在している。各専門工事会社は、元請ゼネコンも難しい対応を迫られていると見る。特に民間建築工事では、工期の遅れが発注者の事業計画に大きく影響するため、決断が難しい。専門工事会社幹部は『ゼネコンも発注者との話がある。工期が厳しい現場もあり、止めたくても止められないのだろう』と理解を示す。専門工事会社にとって最大の問題は休業補償だ。1次下請の専門工事会社トップは『職員の休業手当1カ月分くらいは持っても良いが2次、3次(下請)の賃金は補償してほしい』と訴える。既に元請ゼネコンに要望したという。」(『建設工業新聞』2020.04.15)
●「新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動の制約が続く中、帝国データバンクは全国約2万3000社を対象に2020年度の業績見通しを調査した。1万1330社の回答を集計したところ、『増収増益(見込み)』とする企業は13.5%にとどまり、44.4%が『減収減益(同)』と答えた。減収減益の回答割合が4割を超えたのはリーマンショック直後の09年度見通し以来11年ぶり。減収減益が増収増益を上回ったのは東日本大震災があった11年見通し以来9年ぶりとなる。業種別で見た20年度の業績見通しは軒並み『減収』を見込む。建設業で減収を見通す企業の割合は51.4%だった。業績見通しの上振れ・下振れ材料は、いずれも『新型コロナウイルス関連』がトップ。感染症が収束すれば経済活動が活発になり、公共事業の増加といった経済対策と相まって、業績に好影響が出ると見る。ただ感染症の収束が長引けば個人消費が一段と低迷し、中国や米国の景気悪化、インバウンド(訪日外国人旅行者)の減少も加わり、業績悪化につながるとした。緊急事態宣言の影響もあり経済活動の制約がどこまで続くのか不確実で、企業の業績は先の見えない状況になっている。」(『建設工業新聞』2020.04.15)
●「東京都内で広さが50坪(165平方メートル)以下の小規模オフィスビルの賃料の上昇が急だ。不動産情報サービスのアットホーム(東京・大田)によると、2019年7~12月の都内主要地域の平均募集賃料は12年下期の調査開始以来、最高となった。空室消化が進み賃料を押し上げている。年明け以降も基調は変わらないが、新型コロナウイルスの影響を注視する不動産関係者も増えている。」(『日本経済新聞』2020.04.10)
●「建物の断熱材などに広く使われてきたアスベスト(石綿)の対策が課題となっている。古い建物を解体したり改修したりするときに対策を怠ると石綿が飛散し、吸い込むと肺のがんなどを引き起こす恐れがあるからだ。特にこれまで飛散しにくいとされてきた建材の一部からも、わずかな量飛散することが分かってきた。政府は石綿を少しでも使ったすべての建材に対策を義務付ける方針だ。新たな規制では石綿を少しでも使ったすべての建材に対策を義務付ける方針だ。…新たな規制では石綿を少しでも使ったすべての建材に対策を義務付ける。これまでの規制は壁の表面に石綿が吹き付けられていたりボイラーや配管などの周りに断熱材として貼り付けられていたりする場合に限っていた。新たな規制ではセメントやゴムなどほかの材質と混ぜた建材が対象となる。こうした建材はこれまで飛散は起きにくいとされていたが、解体時にそのまま取り外さずに重機で破砕したり折ったりすると飛散することが分かってきたからだ。こうした建材の出荷量は4300万トンに上る。具体的には石綿をセメントなどに混ぜ合わせて波状に加工した『スレート波材』などが対象となる。環境省の調査ではこうした建材を除去した38カ所の作業現場のうち、15カ所において作業場の近くでの飛散が確認された。石綿は非常に軽いため、作業従事者だけでなく近隣住民も吸い込む恐れがあるとしている。また娘が通っていた保育園などの解体作業で意図せず石綿を吸引したと不安を訴える母親もいるという。政府は3月、建物の解体時に石綿を使ったすべての建材に飛散防止を義務付けるよう大気汚染防止法の改正案を閣議決定した。今国会で可決・成立すれば、21年4月ごろに施行する見通しだ。同省によると、規制が始まれば、解体工事などで対策が必要な建物の数は現在の年間約2万件から、最大で20倍の約40万件まで増える見通しだという。強化策では石綿が入った建材をあらかじめ調査して確認することで、やみくもな解体を防ぐ。作業の手順を決めて飛散しないように水を散布したり、破砕せずそのまま取り外したりすることなども求める。改善命令に従わない場合は、6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金を科す。」(『日本経済新聞』2020.04.10)
●「国土交通省は15日までに、空き家対策特別措置法に基づいて解体、修繕された危険な空き家は7552件だったとの集計を発表した。特措法が施行された2015年5月~昨年10月1日の累計をまとめた。国交省は自治体の対応で一定の効果が表れているとして、残る物件への対策を促す方針だ。市区町村は、放置すれば倒壊の恐れがあったり、景観を損なったりしている物件を特定空き家として、所有者に助言・指導する。改善されない場合は、勧告、命令に進み、従わなければ代執行で強制的に取り壊す場合もある。国交省によると、管理が行き届いていない空き家のうち、条例に基づく助言で解体、修繕した物件などを除き、所有者が分かった特定空き家は2万4千件。特措法に基づく指導や勧告で解体、修繕が進んだが、1万6333件が残っている。国は解体費用の補助を拡充するなどして、自治体の取り組みを後押しする。」(『日本経済新聞』2020.04.15)