情勢の特徴 - 2020年5月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日本経済は4~6月期に戦後最悪のマイナス成長に陥るとの見方が強まった。民間エコノミスト16人の予測平均では、実質国内総生産(GDP)は年率換算で前期比21.7%減となる。1~3月期も5.2%減を見込み、2019年10月の消費増税後から3期連続で水面下に沈む。新型コロナウイルスの感染拡大による経済の停滞でかつてない危機に直面する。4~6月期の急減はリーマン・ショック後の09年1~3月期に記録した17.8%の減少を超える。3期連続のマイナスは東日本大震災を挟んだ10年10~12月期から11年4~6月期に続けて減少して以来となる。内閣府は5月18日に1~3月期のGDPの1次速報を発表する予定だ。」(『日本経済新聞』2020.05.01)
●「新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急経済対策の原資となる、総額25兆6914億円の2020年度補正予算が30日に成立した。補正予算の75%、19兆4905億円に上るのが『雇用の維持と事業継続』を目的としたさまざまな支援策だ。コロナ対応を進めながらの雇用維持と事業継続に不安が募っているのは他産業と同じだが、建設関連で公共建築を中心に466億円が補正で追加されたほか、国内投資促進として2200億円が盛り込まれるなど、コロナ後を見据え市場規模減少の緩和につながりそうだ。今回の補正予算は、▽感染拡大防止策と医療体制の整備および治療薬の開発(1兆8097億円)▽雇用の維持と事業の継続(19兆4905億円)▽次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復(1兆8482億円)▽強靭な経済構造の構築(9171億円)▽新型コロナウイルス感染症対策予備費(1兆5000億円)――などで構成。これを公共事業費で見ると、土木分野の公共事業関係費は補正計上されていないが、公共建築分野の『その他施設費』は特定財源分も合わせ466億円が計上された。その結果、土木と建築を合わせた今年度公共事業費(貸付金などを除いた投資部門)は7兆6295億円となった。」(『建設通信新聞』2020.05.01)
●「政府は3日、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言について6日の期限を31日まで延長する方針を固めた。重点的な対策が必要な『特別警戒都道府県』以外の地域は行動制限を一部緩和する。特定警戒地域は引き続き他人との8割接触減を求めつつ、屋外の公園や博物館は開放を認める。政府は4日の新型コロナウイルス感染症対策本部で延長を正式に決める。あわせて新型コロナに関する指針となる基本的対処方針を改定する。」(『日本経済新聞』2020.05.04)
●「総務省が8日発表した3月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり29万2214円だった。物価変動の影響を除いた実質で前年同月から6.0%減った。新型コロナウイルスの感染拡大で旅行や交通関連の支出が減り、5年ぶりの大幅な落ち込みとなった。パック旅行費は83.2%減、鉄道運賃も65.2%に減った。消費税を10%に挙げた2019年10月以降、6ヵ月連続で前年水準を下回った。減少が半年続くのは、16年3月から17年5月までの15ヵ月連続減少以来の長さとなる。単月の減少幅としては、前の年の消費増税前の駆け込み需要の反動減で10.6%減となった15年3月以来の落ち込みだ。」(『日本経済新聞』2020.05.08)
●「政府は、インフラに関連する技術やノウハウを武器にした日本企業の海外展開をさらに後押しするため、新たな『インフラシステム輸出戦略』を検討している。2020年末に期限を迎える現行計画の進展状況や、メンテナンス需要の拡大といった社会情勢の変化などを踏まえ、既存施策の深化や新施策の立案、新たな重要業績指標(KPI)の設定などに取り組む。6月上旬にも骨子をまとめ、12月の策定を目指す。」(『建設工業新聞』2020.05.13)
●「政府は14日夜の新型コロナウイルスに関する対策本部で、緊急事態宣言を39県で解除すると決定した。新型コロナに重点的に対応する『特定警戒都道府県』に指定していた茨城、石川、岐阜、愛知、福岡の5県と、特定警戒ではなかった34県を宣言の対象から外した。…決定は同日、官報に公示され、効力が発生した。政府が4月7日に7都府県に宣言を出してから解除をするのは初めて。政府が39県の解除を決めたことを受け、40を超える道府県が事業者への休業要請を緩和する方針を決めた。愛知県や福岡県のほか、特定警戒を維持する大阪府も段階的に休業要請を解除する。首相は対策本部に先立つ記者会見で、39県を解除した理由として『新規感染者が直近1週間の合計で10万人当たり0.5人以下に抑えられている』などを挙げた。感染者の増加傾向があれば、再び宣言の対象にする可能性もあると話した。愛媛県はクラスター(感染者集団)が発生したため条件付きで解除した。北海道と千葉、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫の8都道府県は特定警戒を維持。感染者数が減っている地域が多いが首相は『まだリスクが残っている』と指摘した。首相は特定警戒を続ける8都道府県に関して、21日をメドに専門家の評価を受けて『可能であれば31日を待つことなく解除する』と強調した。」(『日本経済新聞』2020.05.15)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は新型コロナウイルスの感染拡大防止措置を前提に、直轄事業で円滑な発注と施工体制の確保に向けた対策を強化する。新型コロナの影響で競争参加者が限られてしまうことを想定し、比較的難易度の低い工事で指名競争入札を行う。総合評価方式で技術提案のテーマ数や提案数を最小限にするなど手続きも柔軟にし、入札契約事務が着実に進むよう努める。新規と既存の対策を推進し公共事業の発注と施工に万全を期す。」(『建設工業新聞』2020.05.11)
●「北海道建設業信用保証、東日本建設業保証、西日本建設業保証の前払金保証実績に基づく2019年度累計(19年4-20年3月)公共工事動向がまとまった。全体の請負額が17年ぶりに15兆円を超え、自治体別でみても19道県で過去10年の最高値となった。また、前年度と比べて2割以上の増加は11県に上った。1割以上の減少は3県だった。」(『建設通信新聞』2020.05.13)
●「国土交通省は、改正建設業法の施行に向け、同法施行規則の改正案をまとめた。経営業務管理責任者の配置に関する合理化や経営事項審査の見直し内容の詳細を定めている。13日から同法施行規則の改正省令案に対するパブリックコメントを開始。6月に公布し、10月1日に施行する。技術検定に関係する規定のみ2021年4月1日の施行となる。経営業務管理責任者については、法改正で事業者全体として適切な経営管理責任体制を有しているかどうかを判断すると見直したことを踏まえ、適切と認められる体制を規定した。その会社で5年以上の財務管理、労務管理、業務運営のいずれか(兼務可)に携わっている者を補佐として配置することで、経営を担う常勤役員に求める経験を緩和する。…建設業許可で必須となった社会保険加入については、すべての適用事業所で届出を行うことを要件として規定する。新たに創設した事業承継制度では、譲渡や合併、分割の際に必要となる書類を明記した。施工体制台帳の書類の1つとして、いわゆる『作業員名簿』が位置付けられたことから、施工体制台帳に記載を求める事項を追加した。工事従事者の氏名などの基本情報や社会保険の加入状況、中退共または建退共への加入状況、安全衛生教育の内容のほか、任意で保有資格などを記載する。…施工体系図の記載事項には、下請業者の代表者氏名や許可番号などを追加する。現場での下請業者の建設業許可証の掲示廃止を受けた措置。監理技術者講習の有効期間の見直しも行う。現行、講習を受けた日から5年間としているが、これを受講日の翌年の1月1日を起算点として5年間として統一する。経営事項審査に関する見直しでは、所属する技術者・技能者が継続的に能力向上に取り組んでいる建設企業を評価する項目を新たに設ける。また、企業会計基準などが頻繁に大きく変更されていることから、講習などを受講して登録を受けている公認会計士、税理士、登録経理試験の合格者の数を評価対象とする。評価基準の変更に伴い、登録経理講習を実施する機関に関する規定も設けた。」(『建設通信新聞』2020.05.14)

労働・福祉

●「日本建設業連合会(山内隆司会長)は、建設技能者の処遇改善に向けた取り組みを加速させる。建設キャリアアップシステムと建退共制度の電子申請方式との連携を契機に、官民のすべての工事で同制度掛け金の納付と協力業者への充当を徹底、2022年度の完全実施を目指す。同システムの普及・活用では現場登録やカードリーダーの設置を促進する。国土交通省が打ち出した『建設キャリアアップシステムの普及・活用に向けた官民施策パッケージ』を受けて、それぞれの方策を決定した。建退協制度は現行、元請業者が証紙を購入し、下請業者への直接交付(証紙貼付方式)としているが、十分に行き渡っていないケースや就業実績報告(証紙請求)の不徹底などが問題となっている。そのため、今秋をめどに試行される電子申請方式(就業実績報告作成ツールの利用が前提)と、12月ごろを予定している建設キャリアアップシステムとの連携に合わせ、電子申請方式を採用する会員企業はカードリーダーにカードタッチした技能者の建退共掛け金の完全支払いを開始(試行)する。同方式の本格運用後(21年4月以降)には公共、民間を問わず、新規工事(ことし9月以降に契約する案件)で完全支払いを推進、22年度の完全実施を目標に掲げている。特に公共工事では早期実現を図る。掛け金の支払いにかかる費用は官民発注者に原価扱いとすることを要請する。」(『建設通信新聞』2020.05.07)
●「厚生労働省がまとめた2019年度の平均有効求人倍率によると、『建設・採掘の職業』は前年度に比べ0.34ポイント高い5.21倍となった。平均の新規求人倍率も同0.74ポイント高い6.91倍で、依然として高い水準にある。ただ、20年3月分の有効求人倍率(実数)では前年同月に比べ0.21ポイント低い4.84倍となり、新型コロナウイルス感染拡大の影響が徐々に求人にも現れてきている。」(『建設工業新聞』2020.05.07)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)と連携して技能者のレベルを4段階に分ける『レベル判定システム』。4月1日に稼働し1ヵ月間で2739人が申請、うち2148人に対しレベルに応じた色のキャリアアップカードが発行された。技能者のレベルに応じた処遇の実現につなげてもらい、レベルの高い技能者を雇用する企業は経営事項審査(経審)で加点評価されることになる。今後レベル判定の申請件数が増えそうだ。…国土交通省が開発したレベル判定システムを共同で運営し維持管理などを行うため、能力評価実施機関(35職種・50団体)と建設産業専門団体連合会(建専連)で構成する『建設技能者能力評価制度推進協議会』(会長・才賀清二郎建専連会長)が4月1日に発足。レベル判定システムを稼働させた。4月末時点で、2148人の技能者にキャリアアップカードが発行された。内訳は▽ブルー=1184人▽シルバー=816人▽ゴールド=148人。ゴールドカードはこのほか、登録基幹技能者約7万人のうち、3万人弱が取得している。国交省は登録基幹技能者に対し、CCUSに登録申請するだけでゴールドカードを交付する特例措置を9月末まで講じる。レベル3、2の職長・中堅クラスの技能者へのレベル判定も後押し。CCUS運営主体の建設業振興基金(振興基金、佐々木基理事長)などが2019年11月~20年2月に実施した特別講習の受講者を対象に、レベル判定費用3000円、カード更新費用1000円の計4000円を全額免除。カード(ホワイト)を取得し、レベル判定申請していない場合、7月末までに『特別講習受講済』の登録を済ませ、レベル判定システムの申請を行うと、手数料が無料となる。CCUSは技能者の能力評価を適正に行い、その結果を賃金上昇の好循環につなげていくのが最大の狙い。レベルに応じて立場や賃金が上昇することで若い技能者に対し、キャリアパスを明確に提示。入職者の増加や離職者の減少が期待できるという。国交省は4月に経審を改正し、CCUSの登録技能者を雇用する企業に対してもメリットを付与。技術職員数(Z1)の評価対象に、CCUSの能力評価制度でレベル4、3の技能者を位置付けた。それぞれ3点、2点が加点される。」(『建設工業新聞』2020.05.13)
●「厚生労働省は13日、休業者に月額賃金の8割程度を直接給付する方針を固めた。上限額は月33万円程度で調整する。雇用調整助成金を申請していない中小企業の従業員を対象とする。企業が申請する手続きの煩雑な雇用調整助成金を通してよりも、休業者を迅速に支援できるようにする。関連法案を今国会に提出し、成立次第、給付を始める。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた雇用保険の特例制度として設ける。2011年の東日本大震災の際に被災地で導入した『みなし失業』と呼ぶ仕組みを参考にする。休業者は企業から休業証明を受け取り、自らオンラインなどでハローワークに申請する。失業手当と同様に従業員に給付金が支払われる。企業の雇用維持を前提としつつ、国が従業員を直接支援する仕組みとなる。従業員を休ませている企業に月額賃金の80%を給付する英国の制度を参考とし、休業者本人の直近の平均賃金の8割程度を給付する方針だ。政府は雇用調整助成金の上限額を世界最高水準とされる英国並み(月額33万円程度)まで引き上げる方針で、新制度の上限額も同水準とする見通し。雇用保険の積立金に加え、一般財源も活用する。政府は企業に雇用調整助成金を給付し、従業員に休業手当を支払うのを支える仕組みを雇用維持のために採用してきた。新型コロナの感染拡大により、企業の経営環境が急速に悪化するなかで、手続きの煩雑さが問題となっていた。…新制度の支給は企業を介さず、個人が直接、ハローワークとやりとりする。申請書類も雇用調整助成金に比べて少なく、申請から1週間程度で支給できる可能性がある。中小・小規模事業者が雇用を維持しやすくするメリットもある。雇用調整助成金は企業が休業手当を従業員に先に支払い、後から助成を受ける。休業手当を支払うための一時的な手元資金がない中小・小規模事業者では、やむなく解雇してしまうケースもある。新制度は企業の一時的な費用負担は発生しない。」(『日本経済新聞』2020.05.14)
●「公共工事で現場の週休2日の取り組みが前進している。日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)が会員企業を対象に実施したアンケートで、工事開始時に4週6閉所以上を設定した現場が増加傾向にあることが分かった。特に国の河川・道路工事は顕著で、4週8閉所を設定した現場は前年度の18%から35%に倍増した。…工事開始時に、4週8閉所で休日を設定した現場は、国交省の河川・道路工事以外でも着実に増加している。同省の港湾・空港工事は前年度の35%から45%、道路関係会社は4%から14%、機構・事業団は4%から8%、地方自治体は9%から19%に増加した。4週6閉所以上の現場は全体で46%から79%に増加した。一方、4週5閉所以下の現場は54%から21%に減ったものの、依然として残っている。完成時または施工中の休日取得状況は工事開始時に比べ低下している実態もある。週休2日実現には初期条件の設定だけでなく、施工段階の環境整備が課題として、工期変更に伴うルールの改善などを求めていく。」(『建設工業新聞』2020.05.15)

建設産業・経営

●「国土交通省は1日、2019年度末(20年3月末)時点の建設業許可業者数を発表した。総数は47万2473業者で前年度末に比べて0.9%、4162業者増加した。2年連続で増加し、5年ぶりに47万台となった。ピークの60万0980業者(1999年度末)と比べ21.4%減となった。新たな許可業種区分として16年6月に申請受け付けを始めた『解体工事』は5万5842業者が取得した。新規の許可取得は1万6915業者で前年度末に比べて4.1%、670業者増加した。許可更新期を迎えた業者が少なく、廃業や期限切れの許可失効は1万2753業者(前年度比0.5%減)。内訳は、廃業を届け出たのが8298業者(8.2%増)、更新手続きを行わず許可切れとなったのが4455業者(13.5%減)だった。許可業者数のうち、大臣許可は1万0259業者(0.2%増)、知事許可は46万2214業者(0.9%増)。一般・特定許可別では、一般許可が44万9015業者(0.8%増)、特定許可が4万6451業者(1.5%増)。一般許可業者数はピークだった1999年度末に比べ22.3%減、特定許可業者数はピークの2004年度末比で9.2%減となっている。」(『建設工業新聞』2020.05.07)
●「新型コロナウイルスの緊急事態宣言が延長された中で、ゼネコン各社の対応が分かれている。清水建設や鹿島、戸田建設らは感染防止対策を強化した上で工事を再開。大林組やフジタ、東急建設らは発注者と協議し合意を得た工事を対象に、宣言期間中は施工中断を継続する。再開、中断延長とも課題があり、各社は難しい選択を迫られている。清水建設は、社内の安全ルールなどを満たす管理体制が整った現場を対象に、関係者と協議した上で工事を順次再開する。再開に当たっては、現場作業員の入場前検温などを行うとともに、消毒専門作業員を全現場に配置する。同社は全国の現場の約85%に当たる500現場で工事を中断しており、月内の全現場再開を目指す。鹿島は発注者と協議した上で現場を再開する方針だ。同社は当初から閉所期間を6日までとしていた。通勤時からのマスク常時着用や、入場前検温で37度以上の場合は現場入場を断るなど対策を強化する。現場への資機材納入会社にも感染予防の徹底を要請する。戸田建設は3密(密閉・密集・密接)を避けた作業環境確保などを盛り込んだ対応指針を策定。対策が完了した現場から再開を発注者らと協議する。きめ細かな感染対策などにつなげるため『新型コロナウイルス対策室』も早期に設置するという。西松建設と奥村組も工事再開の方向だ。閉所が長期化すれば、発注者の事業計画や現場作業員の雇用・収入に大きな影響を与えかねない。清水建設は『感染拡大防止対策を一層強化・徹底するとともに、雇用確保など経済活動の維持のために工事を進めることも重要』と判断理由を説明。鹿島や戸田建設も、建設産業の社会的使命や関係者への影響を勘案し再開にかじを切った。一方で感染拡大への不安も依然としてある。あるゼネコンの担当者は『感染防止と現場作業員の生活維持などを両立するという重い課題を背負っての再開になる』と苦しい胸の内を明かす。」(『建設工業新聞』2020.05.08)
●「民間調査会社の帝国データバンクの調査で、建設業の景況感が急速に悪化している現状が浮き彫りになった。建設業を対象にした4月の景気指標DI(50を境に上が「良い」、下が「悪い」)は、前月に比べ7.6ポイント減の33.9だった。5ヵ月連続して前月を割り込んだだけでなく、過去最大の下落幅を記録した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が企業活動に大きな影響を及ぼし、設備投資の減速懸念も高まっている。同社は5月以降、景況感がさらに落ち込む可能性があると分析している。住宅着工戸数が減少傾向な上に、新型コロナの影響で住宅設備機器といった資材納入の遅れが顕在化し、施工に悪影響が出ている。政府の緊急事態宣言を受けてゼネコン各社が工事中断に踏み切り、下請企業にも影響を及ぼしていると同社は見ている。景気指標DIは他産業に比べ高いものの、4月の実績は8年3ヵ月ぶり低水準だった。」(『建設工業新聞』2020.05.11)
●「大成建設は13日、2021年3月期の連結純利益が前期比54%減の560億円になる見通しだと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大による影響が当面続くことを前提とし、発注者の様子見姿勢が強まるとみる。この影響で受注が遅れたり建設計画が見送りになったりして、工事の完成度合いに応じて計上する売上高が減るとみている。売上高は前期比17%減の1兆4500億円の見通し。減少率17%は東日本大震災が発生した11年3月期の16%減を上回る。上振れがなければ過去最大の減少率となる可能性がある。」(『日本経済新聞』2020.05.14)
●「大和ハウス工業は14日、2021年3月期の連結純利益が前期比55%減の1050億円になる見通しだと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、住宅展示場の閉鎖など営業自粛の影響が上期は続くと想定。施工現場の休止もあり、コロナ影響が売上高で8300億円、営業利益にして1900億円の下押し要因になるとみている。1株当たりの年間配当は25円減らし90円とする。」(『日本経済新聞』2020.05.15)
●「民間調査会社の帝国データバンクが4月に行った新型コロナウイルスに対する企業の意識調査で、悪影響を見込む建設会社の割合が高まっていることが分かった。新型コロナの業績への影響について『今後マイナスの影響がある』との回答は44.6%、『既にマイナスの影響がある』との回答は43.2%。合計すると87.8%が業績の押し下げ要因になるとした。合計の割合は2月の前々回調査では50.0%、3月の前回調査は73.8%だった。同社は『時間がたつにつれ先行きへの懸念が高まっている様子がうかがえる』と指摘している。回答企業からは『官公庁工事が中心であるため、現在のところ直接の被害は感じていない。しかし、大手ゼネコンのように、いつ工事が中止になるかわからない』(土木工事、北海道)といった声が寄せられた。」(『建設工業新聞』2020.05.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省が4月30日公表した建築着工統計調査報告によると、2019年度の新設住宅着工戸数は前年度比7.3%減の88万3687戸で、前年度の増加から再びの減少となった。3年度連続で減少が続く貸家を筆頭に、持家と分譲住宅も減少に転じた。全建築物の着工床面積は、4.7%減の1億2494万平方メートル。工場と店舗が前年度比で2割ずつ減少し、全体として3年連続の減少となった。19年度の着工戸数は持家が1.5%減の28万3338戸、貸家が14.2%減の33万4509戸、分譲住宅が2.8%減の25万9732戸。分譲戸建てのうち、マンションは6.7%減の11万1615戸、一戸建て住宅は0.9%増の14万6154戸となった。19年度の着工床面積(民間建築主)は居住用が3.9%減の7608万平方メートル、非居住用が6.6%減の4302万平方メートルだった。非居住用を主な使途別でみると、事務所が2.3%増の544万平方メートルで3年度ぶりに増加。倉庫も昨年度の減少から再び増加に転じ、14.8%増の990万平方メートルとなった。一方、店舗は20.5%減の412万平方メートル(6年度連続の減少)、工場は22.8%減の764万平方メートル(3年度ぶりの減少)だった。インバウンド(訪日外国人客)需要を背景に大幅な増加を続けていた宿泊業は2年連続で減少し、14.2%減の248万平方メートル。新型コロナウイルス感染症の状況によってはさらなる落ち込みも危惧される。」(『建設通信新聞』2020.05.07)
●「国土交通省は、気候変動による水災害リスクの増大に備えるため、河川管理者などが対策を講じる従来の治水から、流域のあらゆる関係者が治水に取り組む『流域治水』に転換する。全国の1級水系を対象に、早急に実施すべき具体的な治水対策の全体像を『流域治水プロジェクト(仮称)』としてまとめ、ハード・ソフト一体となった事前防災対策を加速する考えだ。政府が7日に開いた経済財政諮問会議の国と地方のシステムワーキング・グループに示した。流域治水は、国、都道府県、市町村、企業、住民など、集水域から氾濫域にわたる流域の関係者が▽氾濫防止対策▽被害対象を減少させるための対策▽被害の軽減・早期復旧・復興のための対策――の3つの柱に沿った取り組みを行う考え方。関係者の取り組みを適切に組み合わせてスピードアップを図ることで、効率的・効果的な治水安全度の向上を実現する狙いがある。合わせて、自然環境が持つ多様な機能を活用したグリーンインフラを官民連携や分野横断で推進し、雨水の貯留・浸透を図る。流域治水の主体者と位置付ける企業や住民の具体的な取り組みは、雨水浸透施設の整備、被害範囲を減らす土地利用、高台まちづくり、リスクが高いエリアからの移転、被害を軽減する建築構造の工夫、BCP(業務継続計画)の策定などとしている。」(『建設通信新聞』2020.05.11)
●「人工知能(AI)など先端技術を活用した都市『スーパーシティ』構想を実現する国家戦略特区法改正案が今国会で成立する見通しとなった。遠隔医療の実現など新型コロナウイルスの感染拡大を機に重要性が高まる規制改革の追い風となる。他のビジネス関連法案は成立を先送りする懸念がある。…スーパーシティ構想はAIやビッグデータを使って、物流、医療、教育などあらゆる分野の先端技術を組み合わせ、その相乗効果で住みやすい都市作りをめざすものだ。自動運転や遠隔医療、遠隔教育などの活用を想定する。今回の法案は関連する規制の撤廃などでそれを後押しする内容となる。幅広い分野での規制改革は複数の省庁にまたがることが多く、手続きや交渉が煩雑になりかねない。希望する自治体が住民の同意を得た上で国に申請すれば、首相が担当省庁に特例を求めるトップダウンの手続きを導入する。…法案成立後、政府は早ければ6月に自治体を募って選定作業を始める。国の認可は夏以降を見込む。すでに大阪府・大阪市は2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の会場となる区域で、空飛ぶ車やドローンなどの活用を検討する。」(『日本経済新聞』2020.05.13)

その他