情勢の特徴 - 2020年6月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「社会インフラの途上国向け輸出に関する政府の新戦略が分かった。新型コロナウイルス対応を機にデジタル技術を生かした都市づくりが進むと分析した。エネルギーなど従来分野だけでなくスマートシティー(次世代都市)関連の輸出支援を強化する。次世代交通サービス『MaaS(マース)』などが対象になる。政府は6月中にも経協インフラ戦略会議を開き2021年以降のインフラ輸出拡大に向けた新戦略を取りまとめる。民間企業が途上国で受注を得やすくするための対応策を打ち出す。従来型の鉄道やエネルギーの輸出だけでなく新分野に軸足を置く。」(『日本経済新聞』2020.06.01)
●帝国データバンクによると新型コロナウイルスの影響による企業倒産が、全国で200件を突破した。政府の緊急事態宣言は先月25日までに解除されたが、国内外での移動制限から業種別では「ホテル・旅館」が39件で最多。…1日夕現在の新型コロナ関連倒産202件のうち、宿泊業に続き「飲食店」が25件、「アパレル・雑貨・靴小売店」は16件を占めた。倒産は39都道府県に広がり、東京が45件、北海道・大阪はいずれも17件と目立つ。(『しんぶん赤旗』2020.06.03より抜粋。)
●「新型コロナウイルスの感染拡大で4月の国内消費が大きく落ち込んだ。総務省が5日発表した家計調査で2人以上の世帯の消費支出は26万7922円と、物価変動の影響を除く実質で前年同月比11.1%減った。減少率は比較可能な2001年以降で最大。外出自粛でパック旅行費が97.1%減、外食が67.0%減などサービス分野を中心に壊滅的な数字となった。00年に調査対象の世帯の範囲を変えたため単純比較できないが、総務省によると『確認できる1986年まで遡ってもここまでの落ち込みはない』。前年を下回るのは消費税率を10%に上げた19年10月から7カ月連続。支出の水準を示す季節調整済みの指数も前月比6.2%低い86.9と00年以降で最低となった。」(『日本経済新聞』2020.06.05)
●「政府は10日、仕事を発注する親事業者が下請中小企業振興法に基づく振興基準を順守し、受注する下請事業者との取引適正化などに取り組むことを表明する『パートナーシップ構築宣言』の受け付けを始めた。業所管省庁や業界団体、労使団体を通じて、8月までの提出を働き掛ける。国土交通省は建設業界に呼び掛けることにしている。全国中小企業振興機関協会が運営するポータルサイトに宣言を6月下旬以降に掲載し、宣言企業の取り組みを『見える化』する。パートナーシップ構築宣言は、経済情勢の悪化に伴って下請事業者にしわ寄せが生じることを防ぐため、『未来を拓くパートナーシップ構築推進会議』で政府、経済界、労働界が5月に合意した仕組み。個社の代表者名で作成・提出する自主行動宣言となる。」(『建設通信新聞』2020.06.11)
●「新型コロナウイルス対策を盛る2020年度第2次補正予算が12日、参院本会議で自民、公明両党や立憲民主党など野党共同会派などの賛成多数で可決、成立した。当初予算、第1次補正予算と合わせた20年度の歳出は160兆円を超える。成立後は迅速な予算執行が課題になる。…2次補正の一般会計からの歳出は31兆9114億円で補正で過去最大だ。財源は全額を国債の追加発行で賄う。当初予算の歳出は102兆6580億円、1次補正は25兆6914億円だった。緊急事態宣言による外出自粛で影響を受けた企業への支援に重点を置いた。雇用調整助成金の日額上限1万5千円への引き上げや最大600方円のテナントの家賃支援が柱。従業員が企業を介さずに申請・受給できる給付金制度も設ける。自治体が新型コロナ対策に活用できる地方創生臨時交付金は2兆円増額する。使い道を事前に定めない予備費を10兆円積み増した。立民など野党からの批判を受け、5兆円については大まかな使途を説明した。①雇用維持や生活支援に約1兆円②中小企業の事業継続に約2兆円③医療体制強化に約2兆円――を充てる。」(『日本経済新聞』2020.06.13)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は4日、中央建設業審議会に設置した『工期に関する基準の作成に関するワーキンググループ(WG)』の第4回会合を開き、『適正な工期に関する基準』の骨子案を提示した。基準の趣旨や受発注者双方の責務を明らかにした上で、工事全般、工程別、分野別で工期設定において考慮すべき事項をまとめている。骨子案を基に次回会合以降、詳細な検討に移り、6月をめどにWGとしての基準案を作成し、7-8月の中建審総会で基準をまとめる。」(『建設通信新聞』2020.06.05)
●「復興庁設置法や東日本大震災復興特別区域法(復興特区法)など、東日本大震災の復興事業に関連する五つの改正法が5日、参院本会議で可決、成立した。復興庁の設置期限を2020年度末から30年度末に延ばす。財政面では東日本大震災復興特別会計(復興特会)を継続する一方、被災自治体に配分する復興交付金は廃止する。一部規定を除いて21年4月の施行を予定している。改正法は復興庁設置法と復興特区法のほか、福島復興再生特別措置法、復興財源確保法、特別会計法の五つ。昨年12月に閣議決定した『復興・創生期間』(16~20年度)後の復興基本方針に基づき、関連施策の推進に必要な規定を改正した。原発事故の影響で復興が遅れている福島の復興と生活環境の整備に向け、改正福島復興再生特措法では住民の帰還環境整備に関する交付金の対象に、住民の移住や定住の促進施策などを追加。営農再開の加速化に当たり、福島県が農地計画を作成・公示し、所有者不明の農地も含めて一体的に権利設定できる仕組みも作る。」(『建設工業新聞』2020.06.08)
●「国土交通省は9日、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的に実施してきた直轄工事の一時中止措置について、すべての工事で再開の見込みとなったと発表した。国内での感染者数がピークだったゴールデンウィーク前後には最大で約280件の工事で一時中止していたが、緊急事態宣言の解除後、工事再開の動きが本格化し、5日時点で約10件まで減少。7月上旬には全工事で一時中止が解消する見通しが立った。公共工事については、政府の新型コロナウイルスの対処方針で、緊急事態措置の期間中も事業継続の要請対象となっていたことから、直轄工事においても大部分の工事を継続してきた。一方で、感染拡大防止の観点から、受注者からの申し出がある場合には、一時中止などの対応をとってきた。7都府県を対象に緊急事態宣言が発令された4月7日以降、一時中止の件数が増加し、4月30日には直轄工事全体の4%に当たる約280件で一時中止を実施。その後、感染拡大防止対策の徹底を図りながら工事の再開を進め、5日時点では全体の0.1%程度の約10件まで減少した。5日時点で一時中止している工事については、稼働が止まっていた工場からの必要な資材の納入時期の調整や一度解散した作業員を確保している段階で、いずれも調整や人員の確保が整い次第、再開を見込む。」(『建設通信新聞』2020.06.10)

労働・福祉

●「国土交通省は、東京五輪の開催など一時的な建設需要への対応などを目的に2015年4月にスタートさせた外国人建設就労者受入事業(特定活動)による新規受け入れの申請受付を7月末で終了する。特定活動での受け入れには遅くとも21年3月31日までに入国して就労を開始する必要があることから、手続き期間を勘案し、適正監理計画の新規申請と人数増加の変更申請について、7月31日までに受け付けた分までで締め切る。」(『建設通信新聞』2020.06.02)
●「国土交通省がまとめた2020年4月の建設労働需給調査結果によると、全国における6職種の過不足率は前月比で0.1ポイントの減少となる0.1%(プラス数値が大きいほど技能労働者が不足)だった。19年12月に『不足』から『過剰』に転じた鉄筋工(建築)に加え、今月は型枠工(土木)と左官も過剰となっている。職種別の過不足率は、型枠工(土木)がマイナス0.1%(前月比0.7ポイント減)、同(建築)が0.9%(1.5ポイント増)、左官がマイナス0.9%(1.9ポイント減)、とび工が0.4%(0.5ポイント減)、鉄筋工(土木)が0.1%(0.1ポイント増)、同(建築)がマイナス0.9%(0.2ポイント減)だった。」(『建設通信新聞』2020.06.02)
●「最低賃金の引き上げが2020年度は足踏みしそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大で中小企業の経営が悪化しているためだ。厚生労働省では全国平均で901円の19年度から大きく変わらない水準になるとの見方が強まっている。今月下旬から議論を始め、今夏に決める。第2次安倍政権では16年度から毎年20円を超える引き上げが続いていた。…デフレ脱却を目指す安倍政権は15年、年3%程度引き上げ、全国平均で1000円を目指すと表明。これまでは毎年、高い引き上げを実現してきた。個人の消費意欲を高める効果がある一方で、企業の負担は増える。景気後退局面では解雇を増やす恐れもある。…厚労省では3つのシナリオが浮上している。一つが現行水準の維持を基本として、国として引き上げ額の目安を示さないという案。IT(情報技術)不況やリーマン危機を受けた02年度や09年度に例がある。国としては賃上げを求めず、各都道府県の判断に委ねる。2つ目は引き上げ額の目安として『0円』と明示するシナリオだ。国として賃上げを凍結する方針を明確にする形だ。3月から4月にかけ、休業者数は348万人増え、過去最大になり、非正規雇用者数は131万人減った。5月もさらに雇用環境が悪化すれば、凍結を求める声が一段と強まる可能性が高い。コロナ危機で景気の悪化基調は鮮明となっており、省内には最低賃金の論議でさらに打撃を与えるのは望ましくないとの見方も出始めている。この2案に対し、厚労省内には賃上げが続いてきた勢いを完全に消さないようにするため、数円でも上げるシナリオもある。」(『日本経済新聞』2020.06.05)
●「国土交通省の2019年度の直轄工事における週休2日工事の速報値が判明した。直轄工事(港湾空港関係を除く)の全工事件数約9000件のうち、9割に当たる約8000件を週休2日対象として公告し、全工事の半分の約4500件で週休2日を実施した。19年度に試行した交代制モデル工事の結果を踏まえ、20年度からは現場閉所が困難な維持工事を含む全工事で週休2日が確保できる環境を整備。建設業に罰則付き時間外労働規制が適用される24年度までに、計画的な取り組みを進めていく。」(『建設通信新聞』2020.06.08)
●「厚生労働省が9日発表した4月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、残業代などを示す所定外給与は1万7984円と前年同月比で12.2%減った。比較可能な2013年1月以来、最も大きな減少だった。所定内の給与は前年と同水準で、現金給与総額は0.6%減の27万5022円。物価変動の影響を除いた実質賃金は0.7%減だった。残業など所定外の労働時間は9時間と18.9%減った。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、働く時間が少なくなり給与が減る傾向が浮き彫りになった。賃金の減少は今後の個人消費に影響を与える可能性がある。パートタイム労働者が全体に占める比率は30.54%と前年同月に比べ0.55ポイント低下した。パートタイム労働者の1人当たりの総実労働時間は76.6時間で9.9%減った。比較可能な13年1月以来で、最大の減少幅だ。一般労働者の総実労働時間が2.6%減少したのに比べ減り幅が大きい。」(『日本経済新聞』2020.06.09)
●「民間調査会社の帝国データバンクの調査で、建設業の人材不足感が急激に低下していることが分かった。従業員の過不足で『不足』と回答した割合は4月調査で48.2%となり、2019年4月調査(66.3%)や18年4月調査(64.0%)と比べて大きく落ち込んだ。新型コロナウイルスの影響が大きいと見られる。同社は『景気が悪化すると設備投資が回りにくくなる。これからさらに(不足感が)減少する可能性がある』(データソリューション企画部)と指摘している。企業規模別で比較すると、大企業は19年4月時点に71.0%だったのが20年4月時点には52.0%に、中小企業は72.2%から54.1%に減少。小規模企業は特に落ち込みが大きく、67.9%から44.3%に下がっている。」(『建設工業新聞』2020.06.09)
●「国土交通省は、技能者の経験・能力に応じた賃金支払いを実現するため、職長手当などマネジメントフィーを含めた適切な労務費の計上を可能とする新たな方策の検討に乗り出した。標準見積書を改訂し、能力に応じたマネジメントフィーを請負代金に反映できるようにする。『標準見積書改訂ワーキンググループ(WG)』を立ち上げ、先行的に年収目標の設定・公表を行った7職種で年度内をめどに標準見積書を改訂する。」(『建設通信新聞』2020.06.15)

建設産業・経営

●「大手・準大手ゼネコン25社の2020年3月期連結決算が出そろった。各社とも、豊富な手持ち工事を背景に好調さを維持し、25社中5社の連結売上高が過去最高となった。利益面は一時の高水準から低下傾向にあるものの底堅く推移し、連結営業利益は4社、経常利益は3社、純利益は2社がそれぞれ過去最高を記録した。21年3月期は、新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響が見通せず特に受注面で不透明さが漂い、10社が通期業績見通しの発表を見送ったものの、国内での影響は限定的との見方が広がっている。」(『建設通信新聞』2020.06.01)
●「2019年(1-12月)に新しく設立された新設法人のうち、建設業は前年比7.0%増の1万4624社、産業別比較で増加率がトップとなった。東京商工リサーチが5月29日に公表した『2019年全国新設法人動向調査』で分かった。同社が行っている19年の企業倒産統計と休廃業・解散企業動向調査で市場からの退出企業数を引いた値は、6153社。建設業許可取得有無は分からないものの、6000社超の企業が建設市場へ新たに参入する可能性がある。新設法人の産業別増加率は、トップの建設業に次いで、小売業が5.4%増の1万0901社、運輸業が5.3%増の2444社だった。15年以降毎年1万4000社台の増加を維持していた不動産業は11.9%減の1万3853社に減少した。企業の市場参入と市場退出の動向を把握する1つが、産業・業種別ごとで新たに法人登記された新設法人の動向と、企業破たん(東京商工リサーチの場合は負債総額1000万円以上)に加え破たん前に市場から退出する休廃業・解散企業を合わせた企業数で市場参入・退出動向が判断できる。具体的には建設業の19年倒産件数は0.9%増の1444件と11年ぶりに増加に転じた。また休廃業・解散企業数は22.6%減の7027件と大きく減少した。倒産件数の大半は零細企業。一方これまで8000件台で推移してきた休廃業・解散企業が大幅に減少したのは、市場規模と受注単価含め取り巻く環境が好転しつつあったことと、事業継続で大きな重荷になっていた承継の税負担が一定期間大幅に軽くなったことが背景にありそうだ。」(『建設通信新聞』2020.06.03)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は、2015年度に策定した『建設業の長期ビジョン』のフォローアップに乗り打出す。25年度時点に必要な労働力を推定した上で、10%の生産性向上によって35万人相当の省人化と90万人の新規入職者の確保が必要とし、処遇改善などの対策に業界を挙げ取り組んできた。建設投資が想定以上に伸び、目標を順調にクリアしつつあるが、新型コロナウイルスの影響で先行きは不透明だ。中間時点で施策の有効性を検証し、今後の取り組みに生かす。」(『建設工業新聞』2020.06.09)
●「2020年3月期決算では大手上場ゼネコン4社が海外受注高を伸ばした。東南アジアのインフラプロジェクトなどで大型工事を相次いで受注。大手以外でも政府開発援助(ODA)案件などを中心に海外工事の受注は堅調に推移した。ただ新型コロナウイルスで経済に打撃を受けた海外では建設投資の冷え込みが懸念されており、今後の海外での受注活動の見通しは不透明感が漂う。」(『建設工業新聞』2020.06.10)
●「サービス業などと比べると新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻化していなかった建設業でも、建築市場や雇用の側面で影響が広がりつつある。また、新たなコロナ対応は生産性低下にもつながりかねないほか、建設市場の大きな柱である民間企業発注の建築・土木工事でもコロナ禍に伴う景気低迷によって、設備投資意欲が大きく減退する懸念が否定できない局面を迎えた。建設市場規模を支える柱の1つ、民間非居住建築は4月の建築着工統計で前年同月比10.8%減と先月の増加から一転して2桁の落ち込みとなった。また雇用も他産業ほどの悪化ではないものの、全国の建設企業がハローワークを通じて求人する新規求人数は前年同月比15.8%減にとどまった。産業平均は31.9%減、製造業の40.3%減、宿泊・飲食サービス業47.9%減など急激に悪化している。現状の建設市場動向が端的に表れる統計として、建築着工統計調査がある。5月末に公表された4月の建築着工で全建築物の着工床面積は前年同月比11.0%減の999万平方メートルにとどまった。公共建築物が3カ月ぶりの増加に転じたものの建築市場の大半を占める民間建築物が11.7%減の939万平方メートルと2桁の落ち込みとなったことが影響した。またこれまで産業間の人材確保競争激化を示していた雇用統計でも異変が起きつつある。4月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.07ポイント減の1.32倍。ことし1月から4カ月連続の減少となった。この雇用環境悪化の傾向は建設業に及び始めている。東京労働局の4月『求人・求職バランスシート』で建築・土木技術者(一般常用)の求人倍率は前年同月比2.28ポイント減の5.92倍まで低下した。企業が求める求人数が2000人以上少なくなったのが理由だ。技能労働者も同様の傾向で、例えば建設躯体も求職者数が増え求人数が230人減少した結果、求人倍率は2.78ポイント下落した。建設企業が抱く今後の不安は大きく分けて2つある。1点目は、これから本格化する熱中症対策に加え新型コロナ対応が必要不可欠な現場の生産効率低下が現場や企業に与える影響だ。業務効率を向上させ週休2日や4週8休・閉所などを発注者の理解を得ながら進める建設産業の働き方改革が、生産性低下というブレーキで遅れかねない。2点目は、2008年のリーマン・ショックを乗り越え、グローバル化、デジタル革新、地域とのかかわり重視などさまざまな経営戦略に基づいて経営基盤強化が進みつつある個社の経営悪化懸念だ。建設企業の経営基盤強化が進んでいる最大の理由は、公共事業量と旺盛な民間企業の設備投資という市場規模増加・維持に加え、適正な利益を確保できる環境にあるからだ。公共事業については実勢にあった単価改定が、民間建築工事でも着工床面積そのものはリーマン・ショック前まで水準が戻らなくても、過去最高の利益額を生み出せるまでに環境は改善した。しかしリーマン・ショックを経験した元請け、下請け各社はいま、バブル崩壊後やリーマン・ショック後に起きた、採算を度外視した職烈な価格競争(ダンピング)に強い警戒感を示している。」(『建設通信新聞』2020.06.12)
●「国土交通省は、専門工事企業の施工能力の『見える化』評価制度に関する今後の検討スケジュールを提示した。今年度は、昨年度末に策定した見える化評価制度に関するガイドラインに規定された具体的な評価基準をベースに、各職種で行う基準づくりに活用できる『見える化評価基準策定支援ソフト』を開発する。並行して今秋から、鉄筋や型枠、機械土工など先行して検討を進めてきた職種で実際の基準づくりに着手し、年度内をめどに基準を策定する。2021年度以降は、基準策定支援ソフトや先行職種で策定された基準を参考に、その他の各職種で順次基準づくりを進めていく。基準の策定が完了した職種においては、基準策定支援ソフトを評価実施に転用し、21年度から見える化評価制度の運用を開始する。」(『建設通信新聞』2020.06.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「都市再生特別措置法(都市再生特措法)など街づくりに関連する三つの改正法が3日、参院本会議で可決、成立した。都市の防災・減災につながる開発規制や『立地適正化計画制度』の厳格化、魅力あふれる街並みの創出が柱。安全で魅力的な街づくりを推進する。いずれも、公布から3カ月以内(一部は2年以内)に施行する。改正法が成立したのは▽都市再生特措法▽都市計画法▽建築基準法―の3法。近年の災害の激甚化・頻発化や急激に進む気候変動の影響などを考慮。主に▽危険エリアの新規立地抑制(都市計画法)▽立地適正化計画の強化(都市再生特措法)▽移転促進(同)―の3施策で安全な街づくりの実現を目指す。」(『建設工業新聞』2020.06.04)
●「政府は4日、台風などによる洪水への対処能力を倍増させる対策案をとりまとめた。菅義偉官房長官が既存の利水ダムの活用などによって新たなダムをつくらずに八ツ場ダム50個に相当する有効貯水容量を確保したと公表した。巨額の費用と時間を投じてきた治水対策を転換する契機となる。…急激な豪雨が降った際、一時的にダムにため込む洪水調節容量を全国でこれまでの46億立方メートルから91億立方メートルに増やす。群馬県の八ツ場ダムの有効貯水容量は0.9億立方メートルだ。新たに生まれる容量は八ツ場ダム50個分に相当する。神奈川県の武蔵小杉などの浸水被害が生じた多摩川水系で新たに3600万立方メートルの容量を確保した。昨年の台風19号と同程度の台風なら浸水の被害を防ぐことができるという。利根川水系のダムの貯水容量も3.6億立方メートルから6.3億立方メートルに増える。利根川は都心部を流れる江戸川や荒川などを支流に持ち、都市部の被害軽減につながる。大阪を流れる淀川や愛知などの木曽川なども従来の2倍程度の能力の確保にメドをつけた。…今回はこれまでの治水対策を転換し、短期間・低コストで対処した。精緻化した天気予報を元に大雨が予想される1~3日前にダムの水位を下げる事前放流を活用する。ダム自体の工事はしなくとも、豪雨時に活用できる容量を増やし、ダムの決壊や緊急放流を防ぎやすくする。縦割り行政を排し、治水に使ってこなかった利水ダムも活用する。洪水対策は国土交通省の所管ダムが中心だった。経済産業省や農水省が所管する水力発電や農業、上下水道などに使う利水ダムは発電や農業用水の目的にしか使われなかった。首相官邸が関係省庁に指示し、これまでに109の1級水系のうちダムのある全ての水系で電力や農業などの管理者と治水協定を結んだ。今月から事前放流などの運用を始め、今年の梅雨や台風に備える。」(『日本経済新聞』2020.06.05)
●「復興庁の有識者会議は、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故で被災し、避難指示などが出された福島県12市町村の将来像に関する提言を年度内に見直す。震災から30-40年後の目指すべき地域の姿に、新たな住民の移住・定住促進と交流・関係人口拡大の視点を盛り込む。提言を踏まえ、福島県が福島復興再生計画を作成する。」(『建設通信新聞』2020.06.09)
●「国土交通省がまとめた2019年度の建築物リフォーム・リニューアル工事の受注額は、前年度比5.5%増の12兆7394億円となった。内訳は住宅が3兆4943億円(10.7%減)、非住宅が9兆2451億円(13.3%増)だった。受注件数は960万4670件で前年度に比べ1.9%増加した。」(『建設工業新聞』2020.06.11)

その他