情勢の特徴 - 2020年6月後半
●「新型コロナウイルスの影響で在宅勤務を導入する企業が増えるなか、生産性の向上が焦点となってきた。日本生産性本部の調査では7割弱の人が効率が下がったと答えた。在宅勤務は柔軟な働き方が可能になるなど利点が多い半面、対話が生む創造力の維持や、成果のはかり方など課題もある。…在宅勤務を巡っては、導入の是非が焦点だったが、コロナで多くの企業が採用に踏み切っており、在宅の生産性をいかに高めていくかに議論が移りつつある。日本生産性本部が雇用者1100人を対象にした5月の調査によると、29%が在宅勤務を実施。そのうち66%が仕事の効率が下がったと答えた。課題(複数回答)は『職場に行かないと資料を見られない』が49%と最多。次いで『通信環境の整備』(45%)、『机など働く環境の整備』(44%)だった。社員向けにVPN(仮想私設網)を増強したり、在宅勤務の希望者にパソコン用ディスプレーを配布したりする企業も多いが、インフラを整えるだけでは不十分だ。職場環境が一変するなか、生産性を高めるには働き方そのものの変革が求められるからだ。…最大の課題は社員を時間で管理しにくくなるなかで、個人の仕事をどう評価するかだ。緊急事態宣言の解除後も在宅勤務を続ける日立製作所は職務に応じて仕事の内容を決め、成果で処遇する『ジョブ型』制度の導入を進めている。ただ、現状では個人の役割が明確になっておらず、始業と終業時に同じ部署のメンバー間で仕事の進捗をテレビ会議で報告し合う程度だ。最終的には賃金や昇進に影響を与える人事考課の仕組みも再考を迫られる。ある大手商社は部門によって営業数字が出やすい場合とそうでない例があり、結果に差がつきやすい。在宅で個人の仕事のプロセスの把握や、時間管理が難しくなり『評価制度を見直すべきだ』との声が社員からあがっている。」(『日本経済新聞』2020.06.21)
●「国土交通省は、法定福利費の内訳明示の取り組みを加速するため、公共工事を対象に導入目標を設定した。2021年度末までに、受発注者間では請負代金内訳書での内訳明示について、国と都道府県では100%、市区町村では50%以上の導入を図る。元下間や下下間の建設企業間での取り組みも促進し、こちらは21年度末までに見積書・請負代金内訳書のいずれも80%以上の活用を目指す。」(『建設通信新聞』2020.06.17)
●「国土交通省は、建設業の働き方改革に向け、建設業許可、経営事項審査の申請や請負契約など事務手続きの電子化のための環境整備を推進する。許可・経審の電子申請システムは、他省庁が保有するシステムとの連携を図り、電子申請システム単一での作業の完結を実現する。請負契約については、普及が進んでいるクラウド型の電子契約を利用する場合に、法的に求められる水準を整理し、活用できるサービスなどをガイドラインとしてまとめる。新型コロナウイルス感染症を踏まえたテレワークなどの観点からも電子化に対するニーズは高まっており、同省は積極的に取り組みを進めていく。」(『建設通信新聞』2020.06.23)
●「国土交通省は、労働者単位での社会保険の加入を徹底するため、一人親方も含めた加入確認手続きの運用強化策をまとめた。労働者については、建設業法改正で提出が義務づけられた作業員名簿を活用して加入状況を確認する一方で、加入逃れを目的とした“社員の一人親方化”を防ぐため、一人親方を施工体系図に位置づけることを改めて明確化する。今夏に行う『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』の改訂に反映し、10月1日から改訂ガイドラインの適用を開始する予定だ。」(『建設通信新聞』2020.06.16)
●「国土交通省は建設業退職金共済(建退共)制度の履行徹底に向け、建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した電子申請方式へのシフトを制度利用者に促す。導入が整った工事の建退共事務を効率化する。CCUS活用電子申請方式を完全実施する場合、元請が発注者に誓約書を提出すると事前の掛け金納付が不要。元請が指導してもCCUSや電子申請方式を採用しない下請に対し、掛け金一括納付など代行義務を免除する。」(『建設工業新聞』2020.06.16)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステムと連動して技能者の能力評価を自動的に行う『レベル判定システム』の申請状況をまとめた。5月末時点で累計3260人がレベル判定が完了し、キャリアアップカードが発行されている。職種別にみると、鉄筋技能者が最多の870人。次いで、機械土工技能者が743人、内装仕上技能者が520人、とび技能者が362人、型枠技能者が268人となっている。5月単月のレベル判定完了件数は、『ゴールド(レベル4)』が40人、『シルバー(レベル3)』が227人、『ブルー(レベル2)』が329人の計596人だった。」(『建設通信新聞』2020.06.19)
●新型コロナウイルスの感染拡大に伴う雇用の悪化が深刻だ。低賃金の非正規で働く女性労働者で失業や休業に追い込まれる人が急増している。総務省は5月末、4月分の労働力調査を公表した。パートやアルバイト、派遣などで働く非正規労働者は2019万人で、1年前と比べて97万人も減少した。比較可能な2014年以降で最大の減少。97万人のうち女性が71万人と7割を占めた。(『しんぶん赤旗』2020.06.22より抜粋。)
●全労連は、時間外労働の上限規制を見直した改定労基法が施行されたことを受け、時間外労働の上限や残業の36協定などを調査した結果をまとめた。2019年6月末時点で1160組織から回答を得た。36協定を締結しているのは96.7%。厚労省調査(13年度)で締結は55.2%にとどまっていることから、「労働組合の規制力が大きく発揮されている」とみている。(『しんぶん赤旗』2020.06.23より抜粋。)
●「ネット経由で企業や個人から単発の仕事を請け負う『ギグワーク』が、新型コロナウイルスの感染問題を機に日本で増えている。専用仲介サイトの新規登録者数は今年上半期で延べ100万人となる見通しだ。スキルを持ち時間や場所に縛られないギグワーカーだが、社会保険や休業補償などの安全網整備が課題になっている。…企業に所属しないフリーランスのギグワーカーを労働者として保護する制度づくりは始まったばかりだ。日本の労働者保護は会社員ら組織に属して働く人を前提とする。フリーランスは労働基準法や、企業も保険料を支払う雇用保険の対象外だ。新型コロナウイルスの影響で仕事が減ったり、仕事を失ったりした人も多い。会社員とは異なり、雇用保険による休業手当や失業手当を受け取ることはできない。ギグワーカー増加を受け保護の対象に加えようとする動きも出てきた。労働災害保険は会社に雇われない形で働く人にも一部で適用されている。個人タクシーの運転手などが『特別加入』として対象に含まれる。政府は実態として雇われた働き手に近いフリーランスにも対象を広げることを検討している。新型コロナを受けた経済対策では、ギグワーカーを含む個人事業主に最大100万円を支給している。保育園や小学校が休みになり、休業しなければならないフリーランスの保護者には1日7500円を配る。」(『日本経済新聞』2020.06.24)
●「国土交通省は24日、建設キャリアアップシステム運営協議会の運営委員会を開催し、建設キャリアアップシステムの利用料金の引き上げを提案した。運営経費や開発経費が当初想定を大きく上回ったことから、実態のコストに見合った費用負担に見直したい考えだ。今回提示した財源対策案をベースに検討を進め、7月中に新料金体系を決定し、10月1日からの適用を目指す。…建設キャリアアップシステムの収支状況は、2019年度末時点で追加開発費を含み累積で56億7000万円の赤字となっている。利用料金の見直しなどを行わなかった場合、20年度末には累積赤字が100億円超となる危機的な状況にある。赤字となった要因を分析すると、加入促進を重視し、初期設定で料金を抑えすぎたため、加入者が増えるほど赤字が膨らむといった構造的な課題を抱えている。加えて、登録情報の真正性を確保するための厳格な審査実施や申請書類の不備の多さなどから、審査・登録に想定を上回る時間と費用がかかっていることも分かった。19年度までの利用料金の累積収入が12億6000万円だったのに対し、登録経費は32億6000万円かかっており、収入で運営費を賄えていない状況にある。また、システムにも追加開発費用が発生し、合計で20億円が不足している事態となっている。国交省は不足する資金をカバーする新たな料金体系として、技能者登録料を2500円から4000円に、事業者登録料を5倍に、現場利用料を3円から6円にそれぞれ引き上げる財源対策案を提示した。不足するシステム開発経費20億円は業界による追加支出を求めた。」(『建設通信新聞』2020.06.25)
●「雇用情勢が一段と厳しさを増している。厚生労働省が30日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.20倍と前月から0.12ポイント低下した。下げ幅は1974年1月以来、46年4カ月ぶりの大きさ。総務省が同日発表した5月の完全失業者(原数値)は198万人と前年同月から33万人増えた。休業者は423万人で4月から減ったもののなお高水準にある。」(『日本経済新聞』2020.06.30)
●「全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)は、2020年度の事業計画を固めた。働き方改革や担い手の確保、育成を課題として列挙。建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及に向け前年度から取り組むモデル現場のフォローアップを実施する。効果や課題を把握し、要望活動などに反映させる。」(『建設工業新聞』2020.06.24)
●「経営後継者不足を背景とした企業の第3者承継(M&A)が全産業で増加する中、建設業も専門機関を活用した事業引き継ぎが本格化している。職種を問わず、商圏拡大の観点から本社所在地以外の同業・異業他社に目を打ける傾向は顕著だが、地方の中小建設企業を対象としたM&Aは有事対応を始めとする地域の守り手としての体制維持、公共工事の入札参加要件に設定される地域要件の取得などが見込まれ、売り手・買い手双方の利点は少なくない。一方、一部地域の建設事業量の減少に加え、新型コロナウイルス感染症で経営面の先行きは不透明さが増しており、廃業選択による国内経済への影響が懸念される。」(『建設通信新聞』2020.06.29)
●「ゼネコン各社は2021年4月入社の新卒採用計画で、新型コロナウイルス感染拡大以前に設定した採用計画数を維持する方針だ。日刊建設工業新聞社の調べによると、コロナ禍で採用数を減らすのは1社にとどまり、大多数は採用計画を変更しないことが分かった。ただ、『22年4月入社以降で採用数の増減を検討する』という企業もあり、新型コロナの影響は徐々に出てくる可能性がありそうだ。」(『建設工業新聞』2020.06.29)
●「建設経済研究所は、売上高上位40社の全国ゼネコンを対象とした『2020年3月期(19年度)主要建設会社決算分析』を発表した。受注高は、好調だった前年度に比べて大手、準大手、中堅の全階層で減少。売上総利益はすべての階層で増加となり、直近5年間で最も高い水準だったが利益率は減少した。営業利益は準大手と中堅で減少したものの、全40社が営業黒字を確保している。調査は、直近3年間の連結売上高の平均が上位の40社(大手5社、準大手11社、中堅24社)を対象に実施した。各社の決算短信などから判明する20年3月期決算(一部19年12月期)の財務指標を分析している。分析結果によると、受注高(単体)は、前年同期比10.4%減の12兆6677億3200万円。建築(12.5%減、8兆6369億6300万円)、土木(5.6%減、3兆6955億1500万円)ともに減少となった。企業別でみると、増加は、大手が5社中3社、準大手は11社中1社、中堅は24社中6社だった。20年度の受注額は、予想を発表した15社中9社が減少を見込んでいる。売上高(連結)は、2.8%増の16兆3993億4500万円。大手は5社中4社、準大手は11社中8社、中堅は24社中17社で増加するなど、最近5年間で最も高い水準となっている。一方、20年度の売上高は、予想を発表した22社中14社が減収見込み。大手が8.6%減とするなど全階層で減少予想となっている。…本業のもうけを示す営業利益(連結)は、1.4%減の1兆1451億2900万円。営業利益率は7.0%で前年同期から0.3ポイントの低下となった。大手は5社中2社、準大手は11社中5社、中堅は24社中12社が営業利益を増加させている。20年度は総計で22.9%の減益予想。すべての階層で減益を見込む。」(『建設通信新聞』2020.06.30)
●「鹿島は来年度から、建築現場を対象に作業員用スマートフォンを導入する。現場来場時に1人ずつ貸与し、顔認証で本人確認して活用するイメージ。搬入資材に貼り付けたQRコードを読み取って品質や進捗の管理に役立てる。作業内容の連絡や危険予知訓練での利用も想定している。モデル現場に試行導入済み。必要な機能などを精査し本格活用に備える。将来的には5万台規模の導入を見込む。」(『建設工業新聞』2020.06.30)
●「国土交通省の社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会(部会長・石田東生筑波大名誉教授)は、国交省への提言書となる道路政策ビジョンをまとめた。道路政策を通じて2040年に実現を目指すべき3つの社会と、10項目にわたる政策の方向性を打ち出した。幹線道路ネットワークと高度な交通マネジメントによる国土のフル稼働や、道路ネットワークの長寿命化などを方向性に挙げている。」(『建設通信新聞』2020.06.19)
●不動産経済研究所が18日発表した5月の首都圏(東京都、神奈川、埼玉、千葉各県)の新築マンション発売戸数は前年同月比82.2%減の393戸だった。4月の686戸を下回り、単月の戸数として過去最少を更新した。…発売されたマンションの平均価格は6.4%上昇の6485万円。価格が高い都心部の物件の割合が高く、平均を押し上げた。(『しんぶん赤旗』2020.06.23より抜粋。)
●「住宅デベロッパーが在宅勤務に集中して取り組めるスペースの提供に注力している。居室内に作業スペースを設けたり音漏れを遮断したりと、自宅でも仕事に集中できる環境を整える。新型コロナウイルスの流行でテレワークへの関心が高まっている中、各社は開発物件の新たなオプションとして提案していく。」(『建設工業新聞』2020.06.29)
●「国土交通省は昨年成立した改正建築物省エネルギー法に基づき、省エネ住宅の流通を後押しする。住宅ごとの省エネ性能を光熱費で表す『光熱費換算値』を住宅情報提供サイトなどに掲載。消費者の理解や関心を高め、省エネ住宅の普及を狙う。29日に換算や表示の方法、燃料単価の設定の在り方などで議論を開始した。当面は新築住宅を対象に検討し、10月中旬ころに方向性を固める。2022年の実装を目指す。」(『建設工業新聞』2020.06.30)
●「米ジョンズ・ホプキンス大によると、世界の新型コロナウイルスの累計死者数は29日、50万人を超えた。欧米各国に加え、ブラジルやメキシコなど新興国でも増加している。経済活動の再開を急ぐあまり再び感染が広がる国もあり、依然として感染者・死者数ともに拡大が続いている。国・地域別の累計者数では米国が12万5千人超と最も多く、世界全体の4分の1を占める。ブラジル(約5万7千人)や英国(約4万4千人)、イタリア(約3万5千人)が続く。先進国ではフランスでも累計死者数が3万人に近づいている。一方でメキシコで2万6千人、インドが1万6千人、イランで1万人を超えるなど新興国でも死者数は拡大している。1日あたりの新規死者数は3月下旬から急増し、4月には5千~9千人弱が続いた。感染拡大を防ぐため各国で厳しい行動制限が実施された結果、6月に入って3千~5千人程度にやや減少したが、下旬にかけて5千人超や7千人弱に達するケースが再び目立ってきた。世界保健機関(WHO)によると、累計死者数全体のうちおよそ半数を米州、4割を欧州が占めている。ほかの感染症と比較すると、2018年の死者数が40万5千人と推定されているマラリアを超える規模となる。関連死者数では02年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の813人、12年の中東呼吸器症候群(MERS)の858人を大きく上回る。」(『日本経済新聞』2020.06.29)