情勢の特徴 - 2020年7月前半
●「雇用情勢の悪化による個人消費への懸念が高まっている。政府が7日発表した5月の統計によると、雇用は残業時間の削減が進み、給与が減る傾向が鮮明となった。消費支出も前年同月比16%減と過去最大の落ち込みを記録。正社員雇用を維持できれば、残業減による働き方改革の進展も期待できるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が長引けば、経済を一段と下押ししかねない。厚生労働省が7日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、残業代などを示す所定外給与は1万4601円と前年同月比で25.8%減った。下げ幅は比較可能な2013年1月以来で最も大きかった4月からさらに悪化した。…所定内の給与も含めた現金給与総額は26万9341円で2.1%減だった。消費税率の引き上げ後に景気が低迷していた15年6月以来の大きい下げ幅だった。所定内の給与は前年と同水準になっており、所定外の給与の引き下げの影響が色濃く出ている。残業など所定外の労働時間は労働者1人平均で7.3時間と29.7%減った。所定内労働時間も7.4%減っており、合計の総実労働時間は122.3時間で9%の減少となった。特に厳しいのはパートタイム労働者だ。パートタイム労働者の現金給与総額は9万2929円で、4.1%減った。一般労働者(2.8%減)より下げ幅は大きい。」(『日本経済新聞』2020.07.07)
●「個人の景況感が急速に冷え込んでいる。日銀が7日発表した6月の生活意識に関するアンケート調査で、前回の3月調査と比べた景況感の悪化幅が過去最大となった。新型コロナウイルスによる経済の停滞が雇用・賃金の不安を招いており、個人消費の本格回復の妨げになる懸念もある。日銀の調査は四半期に1度、全国の20歳以上の個人を対象に実施する。今回の有効回答者数は2423人(回答率60.6%)だった。調査期間は5月8日~6月3日で、緊急事態宣言を受けた外出や営業の自粛の影響が色濃く表れた。景気が1年前より『良くなった』と答えた割合から『悪くなった』を引いた景況感判断指数(DI)は前回から34.9ポイント下がり、マイナス71.2になった。リーマン・ショック後の2009年9月以来約11年ぶりの低水準に沈んだ。落ち込み幅は06年に今の調査方法になってから最大だ。背景にあるのが所得面での不安の高まりだ。収入DI(1年前より『増えた』から『減った』を引いた値)はマイナス30.2と5年半ぶりの低水準。落ち込み幅は7.2ポイントとやはり最大だ。実際に個人の賃金は減少が目立つ。厚生労働省が7日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報)によると、現金給与総額は前年同月比2.1%減の26万9341円だった。残業時間の減少で所定外給与が25.8%減の1万4601円と大幅に減ったのが響いた。」(『日本経済新聞』2020.07.08)
●年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日本銀行を合わせた「公的マネー」が日本の株式時価総額に占める割合が急上昇し、11.9%に達したことが分かった。GPIFは3日、2019年度の業務概況書と合わせて、20年3月末時点の運用資産の銘柄別内訳を公表した。3月末時点の運用資産額150.6兆円のうち、「国内株式」は35.3兆円となっている。この金額の一部に含まれている不動産投資信託(J-REIT)や、株式の未収配当金分などを除いた純粋な株式価格分を計算すると、34.8兆円。これは1年前に比べて約3兆円減っている。しかし、新型コロナウイルス流行による株安で、日本全体の株式時価総額も1年前の621兆円から548兆円へと大きく減少した。この結果、GPIFの保有株式が時価総額に占める割合は、6.1%から6.3%に上昇した。一方、日銀は、株価対策のために株価指数連動型上場投資信託(ETF)の大量購入を続け、特に3月には1カ月で過去最高の1.5兆円を購入した。この結果、日銀が間接的に保有する株式の価格が時価総額に占める割合は、急上昇している。GPIFと日銀を合わせた「公的マネー」の割合は、最近の1年間で1.2ポイントも上昇し、11.9%に達している。(『しんぶん赤旗』2020.07.08より抜粋。)
●民間信用調査会社の東京商工リサーチが8日発表した6月の全国企業倒産状況によると、負債額1000万円以上の倒産件数は、前年同月比6.2%増の780件だった。1月の773件を上回り、今年最多を記録した。負債総額は前年同月比48.1%増の1288億1600万円だった。(『しんぶん赤旗』2020.07.09より抜粋。)
●「国土交通省は中央建設業審議会(中建審、柳正憲会長)が作成する工期に関する基準案をまとめた。適正な工期設定や見積もりに当たり、基準を受発注者双方が考慮すべき事項の集合体に位置付ける。工期が著しく短いと疑われる場合、基準を踏まえ過去の同種・類似工事と比較するなど、許可行政庁が工事ごとに個別に判断するとした。月内に開く中建審総会に報告する。…基準を用いて各主体間で公平公正に最適な工期を設定する必要があると明記。工期を最適化し長時間労働日是正など働き方改革が進むことで、建設業が安心して働ける魅力ある産業になる。発注者としても事業のパートナーが持続可能になることで質の高い建設サービスを享受できる。相互にとって有益な関係を構築するための基準でもあるとした。週休2日の定着に向け建設業界一丸で意識改革を推進。価値観の転換には、多くの建設業団体が行っている『4週8閉所』の取り組みが有効な手段。維持工事や復興工事など工事の特性や状況によっては、交代勤務制により担い手一人一人が週休2日(4週8休)を確保することも有効な手段の一つとした。著しく短い工期と疑われる場合の対応を明記。著しく短い工期で請負契約を結んだと判断された場合、建設業法に基づき許可行政庁は発注者に勧告できる。発注者が従わない時は公表も可能とした。」(『建設工業新聞』2020.07.01)
●「政府は国や自治体が公共インフラの運営権を民間企業に売却するコンセケション方式で、建設や改修を新たに認める方針だ。施設の新設で運営効率を高めたり、大がかりな改修で寿命を延ばしたりすることができるようになる。新型コロナウイルスへの対応で国と地方の財政は厳しさを増す。民間の創意や資金の一段の活用を図る。近く決定する政府の成長戦略に盛り込む。2021年の通常国会に民間資金を活用した社会資本整備法(PFI法)の改正案を提出する。」(『日本経済新聞』2020.07.02)
●「国土交通省の調査によると、建設キャリアアップシステムに登録している企業に対して、31都道府県が入札契約制度などでの加点評価の導入に向けた検討を進めていることが分かった。既に導入を決めている8県を加えると、8割超の39団体が評価導入へ動き出したことになる。2019年度末までの調査では導入・導入予定・検討中を合わせても13県にとどまっていたが、同省と建設業4団体による官民施策パッケージで示された23年度からの直轄・自治体・民間すべての工事での原則活用に向け、自治体でも活用に向けた検討が活発化している。」(『建設通信新聞』2020.07.13)
●「雇用が一段と悪化してきた。5月の完全失業率(季節調整値)は2.9%と前月比0.3ポイント悪化し、完全失業者数は197万人と同19万人増えた。総務省によると、4月に600万人近くまで膨らんだ休業者の約7%が5月に職を失った。潜在的な失業リスクを抱えた休業者は423万人となお高水準で、今後も失業者や労働市場から退出する人が増える恐れがある。5月の就業者数は全体で前年同月に比べて76万人減った。業種別にみると、『宿泊業、飲食サービス業』(38万人減)、『卸売業、小売業』(29万人減)、『生活関連サービス、娯楽』(29万人減)で大きく減少した。新型コロナウイルスの感染防止対策による外出や営業の自粛で大きな打撃を受けた業種で雇用の吸収力が落ちている。特に影響が大きいのは非正規労働の雇用者で、前年同月比61万人減と3カ月連続で減少した。雇用形態でみると、パート(37万人減)やアルバイト(31万人減)で働く人の減り方が大きい。企業は契約更新の見送りなどで非正規から雇用調整を始めている。職についておらず、職探しもしていない非労働力人口は前年同月から37万人増えた。このうち半分が女性だ。子供の休校に合わせてパートの仕事などを見合わせた可能性がある。非労働力人口は65歳以上でも20万人増えた。経済活動停滞で仕事を失ったケースのほか、コロナ感染で重症化するリスクを警戒して自ら働くのを控えた高齢者も少なくないとみられる。」(『日本経済新聞』2020.07.01)
●「勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部(建退共、稗田昭人本部長)は、建退共制度の掛け金日額を現行の310円から『320円』に引き上げる。3.0%に設定している予定運用利回りは『1.3%以上1.5%以下』にする。6月30日に東京都内で開いた運営委員会・評議員会で了承した。労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の中小企業退職金共済部会の議論を経て正式決定する。2021年10月1日からの適用を目指す。」(『建設工業新聞』2020.07.02)
●厚生労働省は2日、新型コロナウイルスの影響で解雇や雇い止め(見込みを含む)にあった人が1日時点で3万1710人となったことを明らかにした。6月4日に2万人を超え、約1カ月で1万人増加した。厚労省の6月26日時点集計では、解雇や雇い止めが最も多い業種は宿泊業5613人で、飲食業4194人、製造業4133人の順。…一方、解雇や雇い止めを受けた非正規労働者は、9009人(5月25日以降の集計)で、1週間で増えた人数の65%を占めた。(『しんぶん赤旗』2020.07.04より抜粋。)
●「国土交通省は建設キャリアアップシステム(CCUS)の料金体系見直しで新しいイメージを示した。業界団体の意見を反映し、コスト縮減を前提に技能者登録料や事業者登録料の値上げ幅を抑えつつ、現場利用料やID利用料を引き上げる。技能者登録で必要最低限の項目に限る『簡略型』と、全項目を必要とする『詳細型』の2段階登録方式を導入。登録作業の負担軽減策も提示した。」(『建設工業新聞』2020.07.09)
●「海外建設協会(蓮輪賢治会長)の会員企業51社の海外建設受注実績(受注総額)が2019年度に初めて2兆円を超えた。…同協会の『2019年度海外建設受注実績』によると、受注総額は前年度比6.4%増の2兆0608億8900万円。内訳は、本邦法人が9.7%増の7718億1700万円と安定的に推移し、現地法人は4.5%増の1兆2890億7200万円で、過去最高を更新した。構成比は本邦法人が37.5%、現地法人が62.5%と、ともに横ばいとなっている。地域別では、アジア(3.4%増の1兆1883億1400万円)と北米(15.4%増の5463億3200万円)で全体の8割以上を占め、両地域の堅調さが受注総額を押し上げている。また、アフリカは2.5倍増の917億2600万円で、ケニア、マダガスカルのODA(政府開発援助)案件が要因だ。中東・北アフリカは59.6%増の189億1000万円、中南米は3.5%増の274億3900万円だった。一方、欧州は49.9%減の125億9600万円、東欧が32.9%減の558億2100万円、大洋州が9.0%減の1197億5100万円と落ち込んだ。資金源・発注者別では、民間・現地企業からの受注が26.1%増の9703億円、ODAの円借款案件が15.3%増の3709億円と大きく伸びた。民間・日系企業は24.2%減の3987億円、現地の公共工事が2.4%減の2308億円となった。」(『建設通信新聞』2020.07.01)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は8日、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令されて以降の建設現場の運営状況を発表した。全会員142社(国内約1万4000現場)を対象に4~6月の計3回調査を実施。宣言下でも8割以上の現場が稼働を維持していた。解除後はほとんどの現場が再開。現在は3密(密閉・密集・密接)対策を徹底しながら、100%に近い現場が稼働している実態が明らかになった。」(『建設工業新聞』2020.07.09)
●「東京商工リサーチは、2020年上期(1-6月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)状況をまとめた。上期倒産件数は前年同期比6.6%減の648件で、12年連続で前年同期を下回った。ただ、業種別では20業種中、10業種が増加。10業種はいずれも、『鉄骨・鉄筋工事業』や『とび・土工・コンクリート工事業』『塗装工事業』『床・内装工事業』といった躯体、仕上げの専門工事業となっている。」(『建設通信新聞』2020.07.13)
●「経済産業省は二酸化炭素(CO₂)を多く排出する低効率な石炭火力発電所の休廃止を促す。2030年度までに段階的に進める方針だ。電力会社ごとに発電量の上限を定めて徐々に引き下げる仕組みを想定する。国際的な批判の高まりも受けて環境重視の姿勢を打ち出し、再生可能エネルギーの普及につなげる。近年の石炭火力発電は高効率化し、CO₂の排出量も以前より減っている。こうした低炭素化などの技術の進展が反映されていない老朽化施設を休廃止する。国内の計140基の石炭火力で非効率なのは110基程度。うち9割にあたる約100基が対象になるとみられる。高効率の新型発電所は維持・拡充する。」(『日本経済新聞』2020.07.02)
●「内閣府は、6月に公布された改正都市再生特別措置法に基づく都市再生基本方針の変更案をまとめた。安全で魅力的なまちづくりの推進を位置付けるとともに、スーパーシティーの具体化に取り組むことを明記した。13日まで変更案のパブリックコメントを実施している。8月下旬にも閣議決定される予定だ。改正都市再生特別措置法は、安全なまちづくりと魅力的なまちづくりの2つの視点を追加し、災害ハザードエリアの新規立地を抑制する開発許可制度の厳格化や、新たなまちづくりの方向性である『居心地がよく歩きたくなるまちなか』を官民一体で形成する制度の創設などを規定した。これらを基本方針に落とし込む。AI(人工知能)やビッグデータなどの先端技術を活用して未来の暮らしを先行導入する『スーパーシティー構想』の実現に向けた手続きが、6月公布の改正国家戦略特別区域法で規定されたことから、基本方針でスーパーシティーの具体化に政府が取り組むことも明記する。合わせて、新技術や官民データを活用し、都市や地域の課題を解決するスマートシティーの推進を位置付ける。このほか、シェアオフィスやコワーキングスペースなどテレワーク環境の充実、グリーンインフラを勘案した都市外縁部の自然再生推進を新たに盛り込む。」(『建設通信新聞』2020.07.06)
●「4日未明から九州南部を襲った豪雨によって球磨川が氾濫した災害で、建設産業界が一丸となって応急対応に当たっている。熊本県建設業協会は、本支部の連携体制を整えながら被災地域の支部が応急復旧を進めているほか、建設コンサルタンツ協会九州支部も現地調査に入った。国土交通省のTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)も参集して調査に当たっている。7日以降も雨が続くとみられており、2次災害に警戒しながら懸命の作業が続いている。…インフラの被害状況は、5日午後2時時点の国交省まとめによると、直轄区間の球磨川水系球磨川で約30メートルにわたって1カ所が決壊し、11カ所で越水・溢水(いっすい)が発生した。都道府県管理河川は、鹿児島県が管理する川内川水系の百次川と勝目川の計2カ所で決壊を確認。川内川水系山野川は1カ所で温水が起きた。ダムは、直轄が管理する6ダム(天竜川水系小渋ダム、天竜川水系新豊根ダム、肱川水系鹿野川ダム、渡川水系横瀬川ダム、川内川水系鶴田ダム、緑川水系緑川ダム)と、都道府県管理の32ダムで、洪水調節を実施した。事前放流は、長野県管理の信濃川水系奈良井ダムと、愛知県内にある2つの利水ダム(矢作川水系羽布ダム、豊川水系大島ダム)の3ダムで行った。土砂災害は38件(静岡県2件、熊本県30件、鹿児島県6件)で発生を確認している。道路で被害があったのは、直轄国道が3号熊本県八代市~芦北町の1路線1区間、補助国道が静岡県、熊本県、鹿児島県、長野県、宮崎県の計4路線7区間となっている。鉄道は、JR九州の肥薩線で球磨川第1橋梁と球磨川第2橋梁が流失するとともに、複数駅の線路が冠水した。肥薩おれんじ鉄道とくま川鉄道も、線路の冠水や土砂流入、橋梁流出などが確認されている。港湾は、重要港湾2港(熊本港、三角港)と地方港湾23港で被害なし。」(『建設通信新聞』2020.07.07)
●「新型コロナウイルス感染拡大を契機にオフィスのあり方が変わってきた。在宅勤務の普及が進み、企業がコスト削減も見込んで都心のオフィス面積を減らす一方、郊外や地方に分散する動きも出てきた。感染防止対策で社員同士の距離をオフィスで確保する工夫も見られる。コロナは働き方だけでなく、働く場所のニューノーマル(新常態)も企業に迫る。」(『日本経済新聞』2020.07.10)
●「国が浸水の危険があると警告している地域に住民を居住させている都市が、全体の約9割を占めることが国土交通省の調べでわかった。都市機能を集約するコンパクトシティーの整備を進める中、危険回避が後回しになっているケースがある。被害を防ぐための移住が進まないなど課題が多い。多くの自治体は都市部のなかで住宅の立地を促す『居住誘導区域』を設けている。人口減が進む中で特定の地域に居住者を集め、住民サービスを維持するためだ。一方、国や自治体は浸水や土砂災害など自然災害の危険性がある地域を調べ公表している。国交省はコンパクトシティー整備のための立地適正化計画を公表している275都市について、居住誘導区域と危険地域が重なっていないかを2019年12月時点で調査した。その結果、河川が氾濫した場合に浸水する恐れがある『浸水想定区域』と居住誘導区域が重なる場所がある都市は242と全体の88%を占めた。『土砂災害警戒区域』と重なる都市は93で34%、『津波浸水想定区域』と重なる都市は74で27%あった。山梨大学の秦康範准教授の試算によると、浸水想定区域に住む人は2015年時点で3539万人と日本の全人口の3割近くにのぼる。危険な地域に住む人は1995年よりも4%増えた。」(『日本経済新聞』2020.07.15)