情勢の特徴 - 2020年9月前半
●「財務省が1日発表した4~6月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の売上高は前年同期に比べ17.7%減の284兆6769億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大で約11年ぶりの大幅な落ち込みとなった。当面の運転資金を確保する動きが広がり、短期借入金は20.8%増と約25年ぶりの増加率となった。売上高の減少率は20.4%減ったリーマン・ショック後の2009年1~3月期以来となる。前年同期を下回るのは4四半期連続。1~3月期もコロナの影響で7.5%減り、政府の緊急事態宣言が出た4~6月期は減少幅が広がった。」(『日本経済新聞』2020.09.01)
●「公正取引委員会は2日、コンビニエンスストア本部がフランチャイズチェーン(FC)加盟店に24時間営業などを強制すれば独占禁止法違反になりうるとの見解を示した。FC店に対する本部の優越的地位の乱用をけん制する姿勢を明確に打ち出した。人手不足と人口減少に伴う市場縮小で、コンビニの成長を支えてきた日本のFC経営モデルが転換期を迎えている。コンビニのオーナーや従業員の長時間労働が社会問題となったため、2019年10月からセブン-イレブン・ジャパンなどFC本部8社と加盟店約1万2千店を調査していた。24時間営業については、時短営業を求める加盟店との協議を本部側が一方的に拒めば、独占禁止法の禁じる『優越的地位の乱用』にあたる恐れがあると指摘した。調査ではFC加盟店の66.8%が『時短営業に切り替えたい』『一度実験してみたい』と答え、本部が時短交渉を拒絶しているとの回答は8.7%あった。加盟店の近隣には出店しないという約束を本部が一方的に破る行為も、違反にあたる可能性があるとの見解を示した。公取委は大手8社に対し、自主的に点検をし、その結果と改善内容を11月末までに報告するよう要請した。」(『日本経済新聞』2020.09.03)
●「国土交通省は、2日の自民党・国土交通部会に2021年度予算概算要求の基本方針案を報告した。『新たな日常を実現することこそ、国の責務』と強調し、新型コロナウイルス感染症による甚大な影響や毎年発生する大規模な自然災害といった直面する危機を克服する姿勢を前面に押し出した。▽国民の安全・安心の確保▽持続的な経済成長の実現▽豊かで暮らしやすい多核連携型の地域づくり――の3つの主要課題に沿って、必要な予算の確保に取り組む。」(『日本経済新聞』2020.09.03)
●「内閣府が8日発表した2020年4~6月斯の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比7.9%減、年率換算で28.1%減だった。…マイナス成長は3四半期連続。4~6月期は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が緊急事態宣言を出すなど個人や企業の経済活動が制限された。GDPの落ち込み幅はリーマン・ショック後の09年1~3月期に記録した年率17.8%減を超え、統計を遡れる1955年以降で最大の落ち込みとなった。」(『日本経済新聞』2020.09.08)
●「国土交通省と総務省は、地方自治体における施工時期の平準化を促進するため、新たに農林水産省や文部科学省、環境省などの省庁と連携して、自治体の担当部局へ働きかけを開始した。自治体発注工事のうち、土木工事以外の病院や学校、農業土木施設などの担当部局に対して、各所管省庁から平準化の取り組みを行うよう要請。自治体発注工事の全体として施工時期の平準化を実現する狙いだ。」(『建設通信新聞』2020.09.07)
●「国土交通省は11日2019年度に実施した道路施設の近接目視点検の結果を公表した。同年度は、道路管理者に義務付けている5年に一度の道路施設の全面的な近接目視点検のサイクル2巡目(19~23年度)の初年度。点検実施率は上がっているものの、1巡目(14~18年度)で早期・緊急措置が必要と診断された橋梁への修繕で地方自治体の遅れが目立った。1巡目の初年度に『健全』などと判断された橋梁の5%で、予防保全策を講じなかったために状態が悪化。計画的な点検・修繕の必要性が改めて浮き彫りになった。国交省は19年度の点検結果を『道路メンテナンス年報』としてまとめた。年報によると、2巡目(19~23年度)初年度の実施率は▽橋梁(点検対象施設72万1160橋)=17%(点検対象施設数12万1547橋)▽トンネル(1万822カ所)=16%(1748カ所)▽大型カルバートや横断歩道橋といった道路付属物など(4万251カ所)=18%(7172カ所)。判定区分は『緊急に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅵ)』が橋梁0.1%、トンネル0.3%、道路付属物など0.03%。『早期に措置を講ずべき状態(同Ⅲ)』は橋梁が9%、トンネル30%、道路付属物など12%だった。1巡目の点検でⅢ、Ⅳと判定された橋梁のうち、19年度末までに修繕などに着手した割合を管理者別にみると、国交省69%、高速道路会社47%、自治体34%。」(『建設工業新聞』2020.09.14)
●「新型コロナウイルス感染拡大を受けた雇用情勢の厳しさが続いている。厚生労働省が1日発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍で前月から0.03ポイント低下した。6年3カ月ぶりの低水準となった。総務省が同日発表した7月の完全失業率(同)も2.9%と前月比で0.1ポイント悪化した。非正規労働者を中心に解雇や雇い止めが広がっている。」(『日本経済新聞』2020.09.01)
●「本格的な人口減少時代を迎えた現在、建築産業にとって技能者の確保と育成、定着につながる処遇改善は喫緊の課題といえる。官民を挙げて普及を目指す建設キャリアアップシステム(CCUS)は、処遇改善につながる方策として注目される。CCUSは英国のCSCS(建設技能証明制度)カードを参考に構築された。英国建設産業の視察調査(2月)に参加した齊藤顕全建総連埼玉土建一般労働組合中央執行委員長に英国の現状などを聞いた。…『中央段階でCIJC(建設産業合同労使協議会)が設けられている。ゼネコン、住宅産業など九つの使用者団体、二つの労働組合で構成する。ここで労働協約(CIJC協約)を結び熟練度に応じた週給(39時間労働の基本給)など、最低限の労働条件を定めている。熟練労働者の最低賃金は全国一律最低賃金の1.54倍程度だ。CIJC協約は業種別や職業別、地域別などの協約を結ぶ場合のベースとなる。それを上回る形でそれぞれの協約が結ばれている。協約の影響下にある労働者は50万~60万人と推定されている。』…『日本と異なるのは、労働協約に基づき、大型現場では労働組合が現場代表者を派遣し現場への立ち入りが可能なことだ。組合員の申告に基づき使用者と交渉もできる。現場からの信頼も厚いようだ。日本の建設産業は産業別労働協約に相当するものがなく、同様の取り組みをすぐに実施することは難しいとも感じた。労働組合が現場の安全衛生活動にもっと参画していくことが必要ではないか。建築業労働災害防止協会(建災防)の活動についても現状では労働組合はオブザーバー的な関わりになっているが、参加し行動を共にすることで信頼を高めていくことが当面必要だろう。視察では「現場への立ち入りは発注者の理解を得ることが鍵」と労使ともコメントしていたことも印象的だった』…『CSCSは1995年に導入され、大型現場を中心に時間をかけて普及してきた。約190万枚が発行されているという。しかし現状では、単なる「現場入場カード」に形骸化してしまっているという指摘があり、改革が模索されているという』…『ドイツなどと異なり、資格や能力をしっかりと定義付け、必要な訓練プログラムを設定し、それを業界全体で活用するという点を重視する運用が必ずしもなされていなかったことが背景にあるとの説明だった。日本としても教訓とすべき点だろう』」(『建設工業新聞』2020.09.02)
●建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けた首都圏の建設労働者ら121人が、国と建材メーカー18社に損害賠償を求めた建設アスベスト訴訟(東京2陣)で4日、東京地裁(前澤達朗裁判長)は、国に約8億4673万円を、建材メーカー5社に総額約4億7000万円の支払いを命じる判決を言い渡した。国の責任を認めた判決は14回目で、一人親方を含む原告112人への賠償を命令した。メーカーに対してはシェア20%以上の5社の責任を認定。東京訴訟でメーカー責任が認められたのは初めて。(『しんぶん赤旗』2020.09.05より抜粋。)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(鈴木誠一議長)は、ことし6月に実施した第4回『4週8閉所ステップアップ運動』の結果をまとめた。平均閉所日数は『5.57閉所』で、前回(2019年11月)の『4.86閉所』、1年前(19年6月)の『5.18閉所』から改善していることが分かった。開所日数別にみると、4閉所の作業所が最多で全体の23.3%を占め、6閉所の作業所が21.4%などと続いた。調査期間内のすべての土日を閉所したと思われる8閉所以上の作業所は23.2%あり、6閉所以上の作業所が53.8%と半数を超えた。」(『建設通信新聞』2020.09.07)
●「国土交通省、建設業団体などで構成する建設キャリアアップシステム運営協議会は8日の総会で、建設キャリアアップシステムの利用料金改定を決定した。新規加入にブレーキがかからないよう登録料の値上げ幅を抑えつつ、現場利用料でコストをカバーする体系に改める。新料金は10月から適用を開始する。料金改定とあわせて、技能者・事業者登録とカードタッチ数の総数について目標数値を設定し、各団体が利用促進のための取り組みを行うことで合意した。…見直し後の料金体系は、現場利用料を現行の3円から10円に、ID利用料(月額換算)を200円から950円にそれぞれ引き上げる。資本金額に応じて3000円から120万円としている事業者登録料は、当初、現行の5倍としていたが2倍に引き上げ幅を抑えた。技能者登録は、登録情報を本人情報などに限定する簡略型と、保有資格や表彰履歴を登録できる詳細型の『2段階登録方式』を2021年度から導入する。簡略型の登録料は現行の2500円で据え置き、詳細型に移行する場合は追加で2400円(計4900円)を負担する。コスト削減のための取り組みも行い、10年間で現在より70億円を削減する。インターネット申請と郵送・窓口申請でそれぞれ受け付けていたが、コスト削減の観点からインターネット申請に一本化する。コスト増加の一因となっていたコールセンターは廃止し、電子メールでの問い合わせ対応に特化。21年度からは2段階登録方式を導入することで技能者登録の審査の合理化を図る。」(『建設通信新聞』2020.09.09)
●「外国人の新在留資格『特定技能』について、国土交通省は建設分野への受け入れ計画の認定状況をまとめた。8月末時点で、国交省の独白基準をクリアしたのは累計518社・1189人となった。うち出入国在留管理庁の入国審査で在留許可が認められたのは6月末時点で、建設分野に374人。全員が試験を免除される技能実習と建設就労からの移行者となっている。」(『建設工業新聞』2020.09.11)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は、『建設業(建設現場)における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン』を改定した。国土交通省のガイドライン改定に伴い、現場管理で従業員や作業員に周知したり、要請したりする事項に参照資料を追記した。朝礼や職長ミーティング、新規入場者教育、安全衛生大会など各種機会を捉えて感染防止対策の重要性を理解してもらい、日常生活を含む行動変容を促す。国交省は8月25日の改定で、特に建築工事の現場やオフィス内で3密が生じやすく、感染防止対策の徹底が必要と指摘した。これを踏まえ、日建連のガイドライン改定では、厚生労働省が打ち出した▽室内ではこまめな換気▽席や更衣室で人と適切に距離を取る▽複数人での備品の共用はできる限り避ける▽体調が悪い場合は軽めの症状でも休む・休ませる―の四つの対策ポイントを周知することなどを盛り込んだ。」(『建設工業新聞』2020.09.02)
●「清水建設は、現場管理業務の本格的なデジタル化に踏み出す。国内で10月以降に新規着工する現場を対象に作業員の入退場管理と作業日報や工事日誌、作業指示書、安全環境日誌といった現場で日々大量に発生する帳票類の処理をデジタル化していく方針だ。より一層の業務の効率化と時間や場所を問わない“ウィズコロナ”時代の多様な働き方への対応が狙い。建設業向けのクラウド型プラットフォーム事業を展開するMCデータプラスのサービスを“フル活用”する。10月から労務・安全衛生に関する帳票管理サービス『グリーンサイト』の付属機能である通門管理システムを用いて、作業員の入退場(出面)管理を先行してデジタル化。登録されている作業員情報にひも付けされたQRコードを活用して、それぞれの作業員の入退場の時間や入場日数といった就労履歴を“デジタル管理”していく。あくまでもグリーンサイトへの作業員情報の登録が前提となるため、協力会社に未登録作業員の情報登録を要請。デジタル化への対応を促す。帳票類のデジタル化は2021年1月から順次実施。MCデータプラスが提供する作業間連絡調整サービス『ワークサイト』によって、既にデジタル化している帳票類の作成業務だけでなく、承認業務に至るまで一貫してデジタル化を推し進めていく方針だ。」(『建設通信新聞』2020.09.03)
●「全国中小建設業協会の土志田領司会長は、建設キャリアアップシステムの財源対策に関する全中建の方向性を固めるため、『料金改定と開発費用の追加負担を容認せざるを得ない』との趣旨を盛り込んだ、会長方針を次の理事会に提案する。コロナ禍の影響で理事会の議決手続きが書面表決となっていることから、3日にも同提案を全理事に送付する。10日を回答期限とし、全理事からの承認をもって、機関決定事項に位置付ける。」(『建設通信新聞』2020.09.03)
●「全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)は、国土交通省が業界に提案していた建設キャリアアップシステム(CCUS)の料金改定案を了承する方針を固めた。8日に開催予定のCCUS運営協議会の総会で、委員を務める中筋豊通労働委員会委員長(島根県建設業協会会長)が全建の総意として伝える。元請や下請、技能者の実質的なメリットを明確にすることなどを条件として提示する予定だ。」(『建設工業新聞』2020.09.04)
●「国土交通省は建設業法施行規則(省令)などの改正に伴い、大臣許可を対象とする許可事務ガイドラインを改定する。『組織』で経営管理責任体制を確保する場合に置く常勤役員を補佐する者の業務経験などを規定。事業承継や相続する際の審査が円滑に進むよう許可の手続きや審査要領などを示した。16日まで改定案への意見を募り、今月中旬以降に地方整備局へ通知。改正建設業法の施行と併せて10月1日に適用する。」(『建設工業新聞』2020.09.08)
●「国土交通省は大臣許可の建設業者の不正行為などに対する監督処分基準の改定案をまとめた。10月1日施行の改正建設業法に伴う規定を加えるほか、関連法令の改正内容やこれまで発出した通知文書などを踏まえ表現の適正化を図る。16日まで意見を募った後、各地方整備局に通知する。改正業法の施行と併せて10月1日に施行する。改正業法は▽著しく短い工期の禁止▽監理技術者の専任義務の緩和▽主任技術者の配置義務の合理化―など技術検定制度の見直し以外の規定が、10月1日に施行される。監督処分基準の改定案には、著しく短い工期で下請契約を締結した場合、特に必要がある時は建設業者に対し勧告を行うと規定。正当な理由がなく勧告に従わない場合は指示処分する。業法改正で1次下請が1年以上の指導監督的な実務経験を持つ主任技術者を専任配置する場合、2次下請の主任技術者の配置を不要にできる。主任技術者の配置が免除される特定専門工事で3次以下の下請を使うなど違反した場合、15日以上の営業停止処分とする。」(『建設工業新聞』2020.09.08)
●「不動産大手3社(三井不動産、三菱地所、住友不動産)が3月末で保有していた賃貸等不動産の含み益の総額が、データのある2010年3月以降初めて10兆円を超えた。東京一極集中などを背景に都心部の不動産に対する需要が高まったためだ。ただコロナ禍で市況に陰りも見られる。今後は保有不動産の有効活用による収益確保の力が問われそうだ。」(『日本経済新聞』2020.09.09)
●「国内経済が新型コロナウイルスによる落ち込みから持ち直し始めるなかで、建設資材の需要回復の遅れが目立ってきた。建設鋼材などは例年秋が需要期だが、今年は建設が延期・中止になるビルやホテルが相次ぐうえ、工事も遅れで出荷は滞りそうだ。原料高に苦しむメーカーでは値上げを打ち出す動きもあるが、流通市場の反応は鈍い。」(『日本経済新聞』2020.09.15)
●「国土交通省は8月31日、社会資本整備審議会の住宅宅地分科会を開き、2021年3月の閣議決定を予定する住生活基本計画(全国計画)の見直しに向け、これまでの議論を集約した中間とりまとめの案を示した。自然災害の激甚化・頻発化を踏まえ、災害に強い居住空間の実現が必要としている。良質な住宅ストックの形成・更新、既存ストックのリフォーム・リノベーションや建て替えの推進、住生活産業の発展などにも取り組むべきとの考えを盛り込んだ。住宅政策の課題について、▽居住者▽ストック▽まちづくり▽産業・新技術――の4つの視点から12項目の柱を設定し、具体的な施策と指標のイメージを提示した。」(『建設通信新聞』2020.09.01)
●「国土交通省は、新型コロナウイルスを踏まえた今後のまちづくりの方向性をまとめた。感染拡大を契機として職住近接のニーズが高まるなど国民の意識・行動に変化が生じているものの、人や機能を集める都市そのものの重要性に変わりはないとして、これまで進めてきた『集積』のメリットを生かしながら、感染拡大防止と経済社会活動を両立する新たなまちづくりが必要と整理している。今秋をめどに有識者会議を設置し、方向性に沿った具体的な施策を検討する。都市再生、都市交通、公園緑地、都市防災、医療、働き方などさまざまな分野の有識者61人に対しヒアリングした結果をまとめた。ヒアリングでは、▽働く場と居住の場の融合が起きる▽オフィス需要に変化が起きる▽老朽した中小ビルなどの余剰が発生する▽東京一極集中の是正が進みやすくなる――などの可能性が指摘された。これらの意見を踏まえ、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って生じた変化に対応しながら、都市の国際競争力強化やウォーカブルなまちづくり、コンパクトシティー、スマートシティーなど、従来の都市政策を引き続き推進することが重要と整理している。」(『建設通信新聞』2020.09.02)
●「国土交通省は1日、ウェブ会議で第8回国土の長期展望専門委員会(委員長・増田寛也東大公共政策大学院客員教授)を開き、2050年までに目指すべき国土の姿を示す『国土の長期展望』の中間とりまとめ骨子案について議論した。10月5日開催予定の次回会合で修正案を提示し、中間とりまとめを成案化したい考えだ。その後、具体的な方策を議論し、21年夏をめどに最終報告をまとめる。…骨子案では防災・減災の主流化や国土構造・国土利用のあり方、感染症に備えた過度に密とならない暮らし方・国土への移行、コロナ禍に伴うテレワーク・オンラインの浸透を生かした東京一極集中の是正、脱炭素化の推進、インフラ投資の選択と集中、DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れたインフラの予防保全、Society5.0の実現に向けた通信基盤などを想定している。50年までに目指す国土の姿には、▽時間・空間・生活でゆとりのある豊かな暮らしが可能な国土▽さまざまな働き方や暮らし方を選択できる、自由度の高い国土▽多様な価値観が認められ、かつ、それらが対流することで新たな価値を創造していく魅力ある国土▽デジタル化などの技術革新のメリットを享受した利便性の高い国土▽国際社会の中でも、特色のある魅力的な国土――を掲げた。」(『建設通信新聞』2020.09.02)
●「6日から7日にかけて九州地方に最接近した大型で非常に強い台風10号に対し、新たな洪水対策が九州と四国地方で始動。これまで治水という目的を持っていなかったため、水害対席に活用することが難しかった利水ダムの事前放流に踏み切った。政府が2018年の西日本豪雨、19年の台風19号を教訓に、緊急時には利水ダムでも多目的ダムと同じような治水対応ができる統一運用体制をことし6月にスタートさせていたことから実現した。…ダムは大きく分けて、治水や利水などさまざまな目的を持った『多目的ダム』と、発電や農業、上水、工業用水など治水目的以外の利水だけを目的にした『利水ダム』の2タイプがある。全国に109ある1級水系に立地するダム数は955。このうち『多目的ダム』は335、残り620は利水ダムだが、政府が洪水対策の統一運用を決めるまでは、利水ダムでの水害対策は事実上できなかった。2級水系を含めると全国には1460ダムある。政府は、昨年10月の台風19号後、『既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議』を設置。昨年末に緊急時には利水ダムを含めすべてのダムを水害対策に使えることを柱にした基本方針を決定した。ことし4月には国交省が『事前放流ガイドライン』を策定。6月から水害対策機能がある多目的ダムと、治水目的がない利水ダムを、水害が予想される緊急時に統一的に運用する新たな枠組みがスタートしていた。」(『建設通信新聞』2020.09.08)
●「国土交通省と東京都は水害対策を強化するため高台街づくりを推進する。土地区画整理事業と連動した高規格堤防の整備や公園の高台化、避難スペースを確保した建築物群の建設などを線的・面的に展開。効率的な事業制度や整備手法、民間の取り組みを誘導する仕組みを構築する。関係者が一体となって取り組む事業体の在り方も検討。モデル地区を設定し高台街づくりを実践することで、機運醸成や施策のブラッシュアップに役立てる方針だ。」(『建設工業新聞』2020.09.10)
●「7年近く上がり続けてきた東京都心のオフィスビルの賃貸料が下落に転じた。仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が10日発表した8月の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)平均募集賃料は3.3平方メートル2万2822円で前月比0.83%下がった。空室率は2018年2月以来の3%台に上昇。オフィス市況は転換局面に入った。調査対象(2606棟)のオフィス募集賃料は8月に前月から192円下がり、13年12月以来、80カ月ぶりのマイナスに転じた。7月には2万3014円まで上昇。08年8月にリーマン・ショック前の高値となった2万2901円を超え、単月のデータがある02年1月以降の最高値となっていた。8月の新築ビル(28棟)の賃料は3万3235円と0.85%上がったものの、竣工後1年が過ぎた既存ビル(2578棟)の賃料は2万2588円で0.83%下がった。地区別にみても、5区すべてで賃料が下落した。賃料の上昇が止まったのは、新型コロナウイルスの感染拡大で解約が目立つ中型や小型の物件などで賃料を下げて募集する大家が増えてきたためとみられる。また、新築ビルなどへの移転に伴う2次空室が増え始め、大規模なビルでテナントを募集する動きもある。需要の弱まりが賃料の下落圧力を強めつつある。」(『日本経済新聞』2020.09.11)