情勢の特徴 - 2020年9月後半
●東京商工リサーチが14日発表した1~8月累計の飲食業の倒産件数(負債額1000万円以上)は前年同期比13.2%増の583件で、2011年を抜き過去最多となった。新型コロナウイルスの流行で、特に居酒屋やすし店、そば店などの倒産が急増した。1、2月は人手不足の深刻化、それ以降は新型コロナに伴う夜間の営業自粛や訪日外国人旅行者(インバウンド)の消失が経営を直撃した。同社は年間の倒産件数も過去最多となる可能性が高いとみており、「飲食業は小規模・零細企業が多く、廃業の動きも注目される」としている。(『しんぶん赤旗』2020.09.16より抜粋。)
●「日銀が18日発表した4~6月期の資金循環統計(速報)によると、6月末時点で家計が持つ現預金の残高は前年同月比4%増の1031兆円だった。伸び率・残高ともに、統計をさかのぼれる2005年以降で最高だった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で消費を抑制されたことや政府による1人あたり10万円の特別定額給付金が寄与した。現預金が1000兆円を超えたのは19年12月(1008兆円)以来。内訳を見ると、現金が4.8%増の97兆円、預金は4%増の933兆円とそれぞれ大きく増えた。その他の金融資産の内訳を見ると株式等の残高は4.3%減の173兆円。4月以降の株価回復で3月末時点(15.6%減の158兆円)からは増えた。金融資産の総額は1.8%増の1883兆円と、19年12月末(1893兆円)に次ぐ2番目の大きさとなった。6月末時点の市場全体での国債の保有者内訳を見ると、日銀の保有残高は前年同月比5.4%増の521兆円で、市場全体の44.5%を占めた。残高・市場占有率ともに過去最大となった。政府の経済対策で増発された国債の購入が増えた。銀行など預金取扱機関の残高は8.9%増の164兆円で、市場全体の14%を占めた。海外の残高は2.9%増の150兆円で保有比率は12.8%だった。」(『日本経済新聞』2020.09.18)
●公正取引委員会(公取委)は2日、「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査」結果を公表。コンビニ本部が加盟店に24時間営業を強制することは独占禁止法(独禁法)違反に当たる恐れがあるとする見解を示した。本部8社に対して、独禁法上の問題点等を指摘し、自主的点検および改善を要請。11月末までに点検結果と改善内容の公表を求めている。公取委は、24時間営業について、時短営業を求める加盟店との協議を本部側が一方的に拒み、不利益を与えた場合には、独禁法上の「優越的地位の乱用」に当たる恐れがあると指摘している。調査では加盟店の77.1%の店舗が深夜帯は赤字、66.8%が「時短営業に切り替えたい」と回答。本部が時短の「交渉に応じない」との回答は8.7%あった。加盟店の近隣に新規出店する、いわゆる「ドミナント出店」についても言及。加盟者にテリトリー権が設定されているにもかかわらず、これをほごにし、同圏内に「同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が営業させ不利益を与えた場合」、公取委は独禁法違反に当たる可能性があるとした。(『全国商工新聞』2020.09.21より抜粋。)
●「国土交通省は25日、2021年度予算の概算要求を発表した。一般会計の国費総額は前年度と比べ0.5%増の5兆9617億円。うち公共事業関係費は0.0%増の5兆2579億円を要求する。新型コロナウイルス対応など緊急的に必要な経費(緊要な経費)を別途要望。『防災・減災、国土強靭化3か年緊急対策』(18~20年度)後の災害対応を、緊要な経費の事項に挙げ『これまでの実績を上回る必要かつ十分な規模』を予算の編成過程で検討する。財務相方針で要求額は、基本的に20年度当初予算(臨時・特別の措置を除く通常分)と同額とし、緊要な経費を別途要望する。国交省は現時点で積算できた緊要な経費として、非公共事業に523億円を計上。要求額が確定していない緊要な経費は▽3か年緊急対策後の激甚化・頻発化する自然災害への対応▽新型コロナウイルス感染症やその影響への対応として行う公共事業▽今後の経済情勢を踏まえた住宅対策▽整備新幹線の着実な整備―などの事項を要求する。…公共事業関係費のうち、一般公共事業費は5兆2027億円(0.0%増)、災害復旧等は552億円(0.0%増)。非公共事業として、その他施設費に497億円(11.2%増)、行政経費に6541億円(3.9%増)を計上した。一般会計とは別枠の東日本大震災復興特別会計には402億円(89.0%減)を計上した。財政投融資は、62.9%減の9100億円となった。地方自治体向けの防災・安全交付金には7847億円(0.0%増)を計上し、頻発する風水害・土砂災害や大規模地震・津波に対する防災・減災対策などを集中的に後押しする。社会資本整備総合交付金には7277億円(0.0%増)を充て、民間投資・需要を喚起する道路整備やPPP/PFIを活用した下水道事業など成長基盤の整備を重点的に支援していく。」(『建設工業新聞』2020.09.28)
●「16日の臨時国会で菅義偉自民党総裁を新首相に指名、菅内閣が発足した。菅内閣は、安倍政権の路線を継承し、新型コロナウイルス対策と経済立て直しの両立を図るとともに、外交・安全保障などの課題に取り組む。菅首相は過去、総務相時代から災害対応する地元企業の貢献を認めるべきという持論を展開していたほか、直近では従来規制を打ち破って利水ダムを活用した新洪水対策の枠組みも主導。成長戦略の実行と地方創生に加え、防災・減災、国土強靭化への継続的な取り組み実現に期待が集まる。」(『建設通信新聞』2020.09.17)
●「国土交通省は18日までに、2014~18年度の5年間に老朽化などで修繕が必要と判定された道路橋約6万9千カ所のうち、64%が19年度末時点で未着手だったと明らかにした。都道府県や市町村が管理する道路が、国などの管理道路に比べて遅れが目立つ。財源や人手が不足している自治体も多く、国は財政支援を行うなどして対応を促す。中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故を受け、国や自治体は14年度から全国の道路を順次点検し、18年度に1巡目を終了。落橋や壁の崩落などが起きる恐れがある『緊急措置段階』や『早期措置段階』と判定されれば、5年以内の修繕が必要とされている。19年度末時点で橋6万8838カ所のうち、修繕を始めていないのは4万3901カ所。トンネルは4417カ所のうち1936カ所(44%)、歩道橋など道路付属物は6084カ所のうち3744カ所(62%)が未着手だった。14年度に点検し、危険と判定された橋は18年度までに修繕に着手するよう求められていた。19年度末時点で国が管理する国道や高速道路はほぼ着手済みだが、自治体管理では52%にとどまっている。2巡目の点検を始めた19年度末時点で『緊急措置段階』とされた橋は812カ所。このうち699カ所は架け替えや撤去、廃止などの措置を取っている。」(『日本経済新聞』2020.09.18)
●オンラインで開かれている全労働の定期大会は18日、討論が行われた。労働行政の現状について「雇用調整助成金の業務は、さまざまな部門が応援に入っているが対応が追いつかない。現場は混乱している」(愛知)と報告。「助成金などの業務が急増し定員の少なさが浮き彫りになった。大幅増員しかあり得ない」(福岡)、「超過勤務は過労死ラインを超える状態が続いている。大幅増員が必要だ」(京都)、「超過勤務削減策の一方で『かくれ残業』が広がっている。労働行政を支える職員を増やす以外にない」(東京)と強調した。「専門的知識を持つ技官がいなくなり、負担が増大している」(福岡)、「採用再開と専門性の維持・向上は喫緊の課題だ」(神奈川)と技官の採用再開を訴えた。非常勤職員の待遇改善について、「非常勤職員が次年度以贋どうなるか見えず、現場に不安を与えている。非常勤職員の無期化など処遇改善すべきだ」(北海道)、再任用職員制度について「処遇があまりにも低く経験・知識に見合ったものではない」(鹿児島)と求めた。貸金改善では、「高卒初任給を時給換算すると最賃を割る水準だ。民間の最賃引き上げと連動し賃上げに取り組む」(神奈川)と述べた。(『しんぶん赤旗』2020.09.19より抜粋。)
●「総務省が敬老の日を前にまとめた15日時点の人口推計によると65歳以上の高齢者人口は前年比30万人増の3617万人だった。総人口に占める割合は0.3ポイント上昇の28.7%でともに過去最多を更新した。2019年の65歳以上の就業者数は18年より30万人増の892万人で過去最高だった。『団塊の世代』と呼ばれる1947~49年生まれを含む70歳以上の人口は78万人増の2791万人となった。後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上人口は24万人増の1871万人に上った。日本の総人口は前年に比べて29万人減の1億2586万人となる一方、高齢者人口は増え続けている。国立社会保障・人口問題研究所の推計で、高齢者の割合は今後も上昇が続く。第2次ベビーブーム世代(1971~74年生まれ)が65歳以上になる2040年には35.3%になる見込みだ。一方で19年の65歳以上の就業者数は16年連続の増加となった。15歳以上の就業者総数に占める割合も18年に比べて0.4ポイント増の13.3%と過去最高だった。65歳以上の高齢者の就業率は24.9%だ。13年に20.1%と2割を超え、6年でさらに4.8ポイント上昇した。男女別で見ると、男性は34.1%、女性は17.8%となった。いずれも8年連続で増えた。」(『日本経済新聞』2020.09.21)
●「新型コロナウイルスの感染拡大に関連した解雇や雇い止めの人数(見込みを含む)が初めて6万人を超えた。厚生労働省によると23日時点で6万439人に達した。8月31日時点で5万人を超えてから、1カ月弱で1万人増えた。厚労省が2月から全国の労働局やハローワークを通じて日々の最新状況を集計している。厚労省が把握できていない事例もあるため、実際の人数はもっと多いとみられる。4万人から5万人に達したのも約1カ月で、毎月1万人ペースで増えている。新型コロナ関連の解雇・雇い止めのうち2万5千人超が非正規労働者という。」(『日本経済新聞』2020.09.24)
●自治労連は、コロナ禍の保健所の職場実態に関する調査(中間報告)を発表した。4月段階の人員体制について約8割が不足し、通常時でも6割が人員不足になっていたと回答。慢性的な人員不足になっていたことがコロナ禍での住民対応の遅れなどを招いたことが浮き彫りとなった。人員が「全く足りなかった」64.5%、「少し足りなかった」19.4%で、「十分足りていた」はわずか6.5%だった。通常時でも「全く足りない」22.6%、「少し足りない」38.7%で、「十分足りている」6.5%、「まあまあ足りている」29.0%を大きく上回った。(『しんぶん赤旗』2020.09.25より抜粋。)
●「雇用政策の軸足が、これまで働いてきた企業での雇用維持から、人手不足の産業への移動支援に移り始める。政府は2021年1月から雇用調整助成金の特例措置を段階的に縮小するのに合わせ、業種を超えた出向や新たなスキルの習得を後押ししていく。『失業なき労働移動』に成功するかどうかが経済回復のカギを握る。新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の収縮で、企業が内部に抱える休業者は一時600万人近くに膨らんだ。このため、厚生労働省は25日に決めた21年度予算の概算要求に労働力移動を支援するメニューを盛り込んだ。国と都道府県の職業能力開発施設や、NPOが運営する教育訓練機関の教育費用を負担する。職を一時的に失った人が無料で職業スキルを学び、すぐに再就職できるように後押しする。要求額は990億円超とし、政府が予算案を決める年末の段階で積み増すこともできるようにした。経営が厳しく雇用が過剰になった企業から人手不足の企業に向け、人材が在籍出向の形で移るのを支援する予算も求める。公益財団法人の産業雇用安定センターが人手の過剰業種と不足業種の両方から情報を集め、無料でマッチングする。同センターは47都道府県に事務所をおき、地域の業界団体と協力していく。経済産業省は若い世代を中心に、ものづくりを担う地方の中小企業などに人材が移るのを後押しする。概算要求で30億円を計上し、人材の確保やデジタル技術の活用に積極的な企業を支援する。同省も社会人の学び直しを支える予算を盛り込んだ。問題解決の能力を高め、新規事業を生み出せるようにするプログラムを始めるという。」(『日本経済新聞』2020.09.26)
●「民間企業で働く人が2019年の1年間で得た給与は平均436万円で、18年に比べ約1%(4万3千円)減り、7年ぶりにマイナスとなったことが29日、国税庁の民間給与実態統計調査で分かった。従業員100人未満の中小企業の平均給与が減少し、全体を押し下げる形となった。19年分のため新型コロナウイルスによる経済活動の停滞影響は反映されていない。」(『日本経済新聞』2020.09.30)
●「国際建設技術協会(国建協、橋場克司理事長)がまとめた2019年度海外コンサルティング業務等受注実績調査の結果によると、受注総額は前年度比14.1%増の1433億7000万円で、調査を始めてから過去最高を記録した。一方、受注件数は5.8%減の676件で最少となる。1件当たりの受注額(単純平均)は21.1%増の2億1200万円と年々拡大している。国建協の担当者は堅調な要因を『鉄道分野を中心とする大型案件がけん引した』と分析する。ただ、『今回の調査結果でコロナ禍の影響は表面化していないとみられるが、20年度以降は不透明。引き続き動向を注視する必要がある』との考えを示す。」(『建設通信新聞』2020.09.16)
●「内閣府と財務省が四半期ごとに実施している企業の景気予測調査の最新結果(7~9月期)を公表した。景気に関するBSI値(景況判断指数=「上昇」と「下降」の回答差)は、『建設業・大企業』が前回(4~6月期)を40.4ポイント上回る1.7となった。一方で10~12月期の見通しはマイナス8.1と再びマイナスに転じるなど、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済の先行きの不透明さが、景況感にも表れている。…『建設業・中堅企業』のBSI値は、前回を26.2ポイント上回るマイナス12.4。10~12月期はマイナス3.6を見込む。『建設業・中小企業』は前回より25.7ポイント上昇しマイナス30.0で、10~12月期見通しはマイナス12.9。中堅、中小はマイナス幅が縮小していく傾向となった。」(『建設工業新聞』2020.09.16)
●「日本建設業連合会の井上和幸週休二日推進本部長は、10月1日の改正建設業法施行に伴う、著しく短い工期での請負契約の禁止を、“建設業界が変わる大事な転換点”と位置付け、商習慣の見直しや4週8閉所の実現に向けた取り組みを一層推進する決意を改めて表明した。『各企業のトップが業界のリーダー役だという矜持をもって状況を変えていくことが何としても必要になる』と強調し、改正法の施行を追い風に建設業界の働き方改革を引き続き先導する。」(『建設通信新聞』2020.09.25)
●「2020年1-8月に全国で休廃業・解散した企業が、前年同期比23.9%増の3万5816件に上ったことが、東京商工リサーチの調査で分かった。同社では年間で初めて5万件を突破する可能性があると指摘した。このうち総合工事業、設備工事業、職別工事業を合わせた『建設業』も平均を上回る27.9%増となった。一方で建設業の倒産は同じ8月累計で21.6%の減少となっている。コロナ禍でも倒産統計では苦境が目立たない建設業も、負債を抱え破たんする前に市場から撤退する、休廃業・解散を選択する企業が急増していることを示した形だ。20年8月累計で休廃業・解散した産業別内訳は、トップが『サービス業他』の1万1144件で全体の3割を占めた。次いで『建設業』が6327件で全体の17.7%と2割近くを占めた。『建設業』の内訳は、総合工事業が3030件、設備工事業1453件、職別工事業1844件。一方、産業・業種ごとの経営環境を示す倒産統計から建設業を見ると、8月単月の倒産件数は30年間で過去最小、累計でも2割以上の減少となっており、コロナ禍の影響は出ていない。建設工事の場合、公共・民間発注ともに、工事着手前に締結する請負契約で請負金額が決まり、前払金もしくは着手金、中間払を除けば完成後に支払われる。そのため、発注者が支払い不能に陥らない限り、途中段階の景気動向が施工中の工事に大きな影響を与えることは少ないからだ。ただ、余力を残して建設市場から撤退する休廃業・解散が建設業でも急増していることは、『産業の新陳代謝』なのか、地域経済の雇用・消費減退につながるのか、見極めていく必要が今後ありそうだ。」(『建設通信新聞』2020.09.28)
●「建設業の完工高上位30社の“稼ぐ力=1人当たり営業利益高”が高止まりから低下に転じる瀬戸際にきている。2019年度(19年4月-20年3月単体決算業績)は30社中20社が前年を下回っており、17年度をピークに減少傾向を示し始めた。階層別で見ると、13年度から17年度にかけて大幅な上昇を見せていた大手5社も、18年以降は減少を続けている。建設需要の一服感と新型コロナウイルスの影響で競争が激化すると見られる中で、生産性向上による利益確保が求められている。」(『建設通信新聞』2020.09.30)
●「国土交通省の有識者会議は15日、管理組合によるマンションの適正管理を促進するため、国交省が策定する基本方針の概要案を議論した。概要案では国、地方自治体、管理組合や区分所有者、専門家の役割分担を明確化するとともに、適正な管理を実現するための留意点を明示。経年マンションの修繕や建て替えを促進する制度の説明のほか、自治体が管理組合に助言・指導する場合の判断の目安なども提示した。2021年3月にも基本方針など施策の方向性を打ち出す予定だ。」(『建設工業新聞』2020.09.16)
●「日立製作所は16日、英国での原子力発電所の新設計画から撤退すると発表した。東京電力福島第1原発の事故以降、原発の安全対策費は膨らみ、民間事業者だけで採算を確保するのが難しくなっている。脱炭素の観点から原発を推す声がある一方、再生可能エネルギーが普及しコストの優位性は揺らぐ。世界の原発市場では国主導で建設を進める中国・ロシアの存在感が高まっている。」(『日本経済新聞』2020.09.17)
●「相次ぐ災害を受け、国土交通省は住宅政策を軌道修正する。2021年度にも、災害の危険が高い地域を改修費用の補助などの対象から外す方針だ。現在は立地にかかわらず省エネルギー化や長寿命化の助成、税制優遇といった公的支援を受けられる。支援の線引きによって、より危険の少ない場所に住まいを誘導する。支援の見直しは、たとえば土砂災害防止法に基づく特別警戒区域を念頭に置いている。この区域は崖崩れなどの危険が高く『災害レッドゾーン』とも呼ぶ。既に学校や商業施設の開発は規制している。個人が自分で住む家屋の建設は禁じておらず、現在は国内の0.4%にあたる約20万世帯がある。全世帯の23%は津波や浸水などを含め何らかの災害の危険がある地域に住んでいるという。一方で気候変動などの影響で災害の規模は大きくなっている。1時間に50ミリ以上の雨が降る回数は、この10年で1.4倍に増えた。住宅災害のリスクは着実に高まっているといえる。…国交省は住宅政策の基本として5年ごとにまとめる『住生活基本計画』を20年度末に改定し、対応を急ぐ。新計画には安全な立地への住宅誘導を進める方針を盛り込む。現在、耐震や省エネの性能が高い住宅は『長期優良住宅』と認定し、新築や改築の際に税制優遇や補助金を受けられるようにしている。太陽光発電の有無や窓の断熱性を基準にした助成制度などもある。21年度以降、一連の支援策の対象は安全な立地の住宅に絞る方針だ。レッドゾーンなどの具体的な線引きは今後つめる。」(『日本経済新聞』2020.09.24)
●「(株)矢野経済研究所(東京都中野区)は、住宅リフォーム市場の短期的な市場トレンド調査を実施し、2020年第1四半期及び2019年度の市場規模(速報値)を公表した。2020年第1四半期(1~3月)の住宅リフォーム市場規模は1兆3329億円で、前年同期比4.8%増と推計した。これは消費税増税の特例措置による大型リフォームの駆け込み需要のあった前年同期を上回る結果となった。今回、事前に①消費税増税後の反動減、②新型コロナウイルス感染症の影響で中国に生産拠点のある日本の住宅設備機器メーカーの一部製品に納品遅れ、③日本国内での新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う需要の低迷――といったマイナス要因も予測されていたが、結果的に前年同期を上回ったことで底堅い需要がみてとれた。住宅リフォーム市場規模を年度ベースで算出すると、2019年度(2019年4月~2020年3月)は、6兆5565億円(速報値)、前年度比で4.3%増と推計した。上期(4~9月)は、夏場に消費税増税前の駆け込み需要があり前年度同期比9.4%増となったが、下期(10~3月)は同0.7%減と反動減は軽微にとどまった。一方、2020年度はスタート時の4月からコロナ対策による緊急事態宣言が発出され、対面での営業活動ができないなどの制限があった。一般消費者においては消費活動を控える傾向にあり、2020年度は大幅な市場規模の縮小という局面になる可能性が高いと考えられる。調査を行なった矢野経済研究所は2020年度の見通しについて『リーマンショック時と同等、もしくはそれ以上の影響を想定すると、5.5兆円~6兆円になる』と予測した。」(『日本住宅新聞』2020.09.25)