情勢の特徴 - 2020年11月後半
●「内閣府が16日発表した2020年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で4~6月期から5.0%、年率換算で21.4%増えた。新型コロナウイルス禍で4~6月期に戦後最大の落ち込み(28.8%減)となった反動で高い伸びを記録した。プラス成長は4四半期ぶりだが、コロナ前の水準は遠い。」(『日本経済新聞』2020.11.16)
●「新型コロナ禍の経営危機 売上・利益 両DI値が急落」―。全商連付属・中小商工業研究所はこのほど、2020年下期(9月)営業動向調査の結果を公表した。緊急事態宣言解除(5月25日)から3ヵ月が経過してもなお、消費は回復せず、売り上げ・利益の両DI値は▲68.5、▲70.6に急落。…これまで上昇基調にあった単価・マージンDI値と原材料・商品の仕入値DI値も下降し、経済活動の縮小を示している。…モニターから寄せられた「ひとこと欄」には、「持続化給付金は、売り上げの3割減や4割減も対象にしてもらいたい」「持続化給付金で一時的にしのいでいる。この状況が長引けば経営継続が難しい。第2、第3の給付金が必要だ」など、持続化給付金の対象拡充や給付の継続を求める記述が目立つ。コロナ禍が収束しないまま、有効な対策が取られなければ、年末にかけての倒産・廃業の急増が危倶される事態だ。消費が極端に減少している経済危機時の最も効果的な支援策は、減収を補填する直接支援と事業継続を支える固定費補助だ。…政府に求められているのは、格差を広げる、「GO TOトラベル」延長などではなく、持続化給付金と家賃支援給付金を支援が必要な業者に直ちに届けること、さらに雇用調整助成金特例を含む支援の継続だ。加えて、消費税減税による景気回復に向けた経済対象を講じるべきである。(『全国商工新聞』2020.11.16より抜粋。)
●「政府・与党は防災・減災のための『国土強靭化』について、2021年度からは事業規模で12兆円程度の5カ年計画とする調整に入った。現在は18~20年度の3カ年で7兆円の計画で進めており、来年度以降も年平均でほぼ同じ規模を維持する。」(『日本経済新聞』2020.11.18)
●「世界の主要金融機関が加盟する国際金融協会(IIF)は18日、2020年末の世界の債務残高が過去最大の277兆ドル(約2京9千兆円)になるとの見通しを示した。国内総生産(GDP)比では365%と、19年末から40ポイント以上拡大する。新型コロナウイルスの感染拡大で各国政府が財政出動を進めたことが背景にある。IIFは『経済活動に重大な悪影響を与えることなく、世界経済が将来(債務問題を)解消できるかには不確実性がある』と指摘した。20年9月末時点の世界の債務残高は1年前から8%増の272兆ドルに達し、20年に入り15兆ドル増加した。年末に向けても減速する兆しはほとんどないとしており、さらなる増加を見込む。」(『日本経済新聞』2020.11.20)
●「日本企業が持つインフラシステムの海外展開を促進するため、経済産業省の有識者会議は新たな施策の方向性を取りまとめた。産業競争力の向上を図るべき分野として『デジタル』と『エネルギー』の2分野を選定。持続可能性や強靭性といった視点を踏まえ、企業や政府が果たすべき役割などを掲げた。取りまとめ内容は年内に政府が策定する『インフラシステム輸出新戦略』に反映させる。」(『建設工業新聞』2020.11.25)
●「自民党国土交通部会(部会長・平口洋衆院議員)は東京・永田町の党本部で25日に会合を開き、政府が来月にもまとめる新型コロナウイルスの追加経済対策に関連する重点事項案を議論した。▽感染拡大防止と経済活動の両立▽ポストコロナに向けた日本経済の再生▽防災・減災、国土強靭化の推進など安全・安心の確保―の3項目が柱。会合で出た意見を踏まえ、週内にも重点事項を政務調査会に提出する方針だ。」(『建設工業新聞』2020.11.26)
●「総務省は地方自治体の2020年度第1四半期(20年6月末時点)の公共事業予算執行状況を公表した。19年度から繰り越された予算と20年度当初予算の合算額24兆564億円に対し、契約率は前年度同期を1.3ポイント上回る44.6%。支出済み額の割合は0.7ポイント上回る7.9%となった。全体的に前年度同期を上回る傾向となった。総務省は『18~19年度に発生した自然災害からの復旧事業が落ち着き、通常の公共事業の執行が進んだ』(自治財政局財務調査課)と見ている。」(『建設工業新聞』2020.11.16)
●「衆院国土交通委員会(あかま二郎委員長)は20日、議員立法の交通政策基本法と国土強靭化基本法の一括改正案を可決した。地域社会の維持・発展を図るため、必要な施策として基幹的な高速交通網の形成などを追加する。可決に当たり、政府に求める対応措置を決議として採択。赤羽一嘉国土交通相は、これらの決議の趣旨を十分に尊重し努力するとした。改正案は24日の衆院本会議に上程される。採決を経て参院に送られる。公布と同日に施行する。激甚な災害が頻発する中、国土強靭化の観点から大規模災害が発生した場合でも交通機能を維持し、社会・経済活動の持続可能性を確保するため、二つの基本法を一括して改正する。交通政策基本法の改正案は、地域活力の向上に必要な施策の規定に、地域社会の維持および発展を図ると明記。このために必要な施策として基幹的な高速交通網の形成および輸送サービスの確保を加える。」(『建設工業新聞』2020.11.24)
●「国土交通省は16日、標準見積書改定ワーキンググループ(WG)の初会合を開き、職長などマネジメントクラスの経験・能力に応じた賃金支払いの実現に向け具体策の検討に着手した。機器・材料の調達、下位下請けのまとめや他工種との調整などマネジメント能力に着目した賃金(マネジメントフィー)を標準見積書に内訳明示する手法を具体化する。算定根拠を示した見積書を提出することで、元請けが取り組みを始めた見積尊重を促進し、不当な値引き要求や指値発注などダンピング(過度な安値受注)のしわ寄せが労働者の賃金に及ぶことを防ぐ狙いがある。今回の標準見積書改定は、建設キャリアアップシステム(CCUS)による就業履歴の蓄積を起点とした技能者の処遇改善策の一環。CCUSをベースとした4段階の能力評価のレベルに応じた報酬が受け取れるよう、標準見積書でマネジメントフィーを含めた適正な労務費を計上できるようにする。見積書を確実に賃金支払いにつなげることができるよう、WGには各元請団体も参加する。現状の見積書は数量単価の記載が一般的であり、元請けなどはマネジメントフィーを尊重すべき費用として認識できていないケースが多い。支払い側(元請け、上位下請け)が合意・理解できる算定方法を結論として得ることで建設産業界一体となった賃金上昇の好循環を構築する。WGでは、レベル2-4の賃金目安(年収)を先行的に示している、▽型枠▽機械土工▽内装仕上▽建築大工▽トンネル▽圧接▽基礎ぐい工事――の7職種(計11団体)の標準見積書の検討を進める。国交省は事務局案として、標準的な見積額の原価計算の労務費部分に、職長と一般労働者の目標賃金の比率を当てはめることで、マネジメントフィー率の算出を提案。工事規模・難易度や職種によって職長の割合や職長に求められる能力が異なることから、柔軟にマネジメントフィー率を設定できるようにするイメージを示した。2021年1月に開く次回会合で、職種ごとの標準見積書改定案を議論し、3月の第3回会合で先行7職種の標準見積書を改定する。」(『建設通信新聞』2020.11.17)
●「出入国在留管理庁のまとめによると、9月末時点の建設分野での特定技能による在留外国人数は642人となった。前期(6月末時点)から268人増加した。全分野合計の受入総数8769人の7.3%を占めている。業務区分別では、建設機械施工が165人と前期に引き続き最多となった。鉄筋施工は134人、型枠施工が105人、左官が70人、内装仕上げが55人、とびが38人、コンクリート圧送が32人、配管が13人、建築大工が12人、屋根ふきと表装、保温保冷はそれぞれ6人だった。国籍別にみると、ベトナム482人、中国71人、フィリピン29人、インドネシア19人、タイ18人、カンボジア8人、ミャンマー7人、ネパール4人などとなっている。」(『建設通信新聞』2020.11.25)
●「田村憲久厚生労働相は27日の閣議後の記者会見で、雇用調整助成金の現行の特例措置の期限を12月末から2021年2月末まで延長すると表明した。延長は3回目。田村氏は延長の理由について『雇用情勢は急激に悪化していないが、新型コロナウイルスの感染者が急激に増えている』と述べた。3月以降は雇用情勢を踏まえ、段階的な縮小を検討する。」(『日本経済新聞』2020.11.27)
●「新型コロナウイルス禍が雇用保険制度の財政に影を落としている。雇用維持を支える雇用調整助成金の財源が底をつき、本来は失業保険の給付などのために集めたお金を融通する状況が続く。この結果、労使が折半してきた雇用保険料の積立金は急速に減っている。資金不足を補う手を打たなければ労使の負担は2022年度に単純計算で年1兆円規模で増える。…雇調金のコロナ後の支給決定額は20日までに2.2兆円に達した。感染再拡大で企業活動の制約が強まれば、支給額はさらに膨らむ。支援額を上積みする特例措置の延長もある。雇調金は企業が拠出する『雇用安定資金』でまかなうのが本来の姿だ。しかし、この財源は既に枯渇し、雇用保険本体の積立金を活用してしのいでいる。雇用保険からは既に5千億円を融通し、さらに数千億~1兆円超の追加も見込まれる。資金の融通は返済が前提だ。過去にはリーマン危機の際に雇用保険本体から、雇調金のために500億円程度を貸し出したことがある。今回の貸し出しは桁違いに巨額で、雇用保険の積立金そのものが急減している。20年度末の残高は前年度比1.7兆円減の2.7兆円の見込み。過去最高だった15年度末(6.4兆円)の4割程度まで落ち込む。本来の目的である失業保険や育児休業給付のお金が足りなくなりかねない。積立金不足を解消する単純な手立ては労使折半の保険料の引き上げだ。近年はコロナ前までは雇用情勢改善で失業保険の給付も少なく、保険料率を低く抑えてきた経絡がある。改めての引き上げの時期は22年度になるとみられる。まず21年度末で0.2%分引き下げる時限措置が終わる。さらに一定以上の積立金があれば弾力的に保険料を下げられる規定も22年度から適用できなくなり、0.4%分上がる。料率は計0.6%上がる計算だ。保険料率は2年前の決算を基準に決める原則がある。21年度分はコロナ禍の前で積立金が潤沢だった19年度のデータで判断するので、まだ現状のまま据え置くことが可能だ。22年度分は急速に積立金が減る20年度の決算で判断するため、法改正などをしない限りはほぼ自動的に引き上がる。今の料率は0.6%。2倍の1.2%となれば会社員が給与から天引きされる額も2倍になる。給与が月30万円の場合で保険料は月900円から1800円に上がる。雇用保険の財政難を放置はできない。足元では雇用保険の主要な機能である失業保険の給付も増え始めている。9月の支給決定件数は約11万件で前年比11.8%増。9月の失業率は3.0%と、なお低水準にとどまるものの、今後は上昇が予想される。積立金をきちんと確保する必要性は一段と高まる。」(『日本経済新聞』2020.11.29)
●「主要ゼネコン27社の2020年4~9月期決算が13日に出そろった。民間建築を中心に売り上げが伸び悩み、連結べ-スで18社が減収となった。減収に伴い本業のもうけを示す営業利益も20社が減少した。工事の端境期で好採算の案件が少なく、利益改善が進まなかったたことで単体の完成工事総利益(粗利益)率は公表している24社のうち12社が低下。21年3月期の業績予想は新型コロナウイルスの影響が当初想定と乖離していることを理由に修正が相次いだ。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によって、海外で多くの現場が工事の中断を余儀なくされた。中断期間中も再開に備えて施工体制を維持していたことが利益率悪化の一因になった。海外のプロジェクトを抱える企業の減収や減益が目立つ。五輪関連工事が終息し端境期にあったため、各社とも期首の手持ち工事が減ったことも減収要因になった。単体の粗利益率で2桁台を維持したのは前年同期から1社減の15社となった。」(『建設工業新聞』2020.11.16)
●「鹿島と竹中工務店、清水建設が進めているロボット・IoT(モノのインターネット)分野の技術連携に準大手ゼネコン3社が加わり、コンソーシアムを立ち上げる方向で検討していることが分かった。…技術連携は、19年12月に鹿島と竹中工務店が発表。20年8月には清水建設が参画した。働き方改革と生産性の向上に向け、個社ごとに進めてきた技術開発で連携することにより、大きな差別化ができていなかったロボット施工やIoT分野での新たな技術開発の推進、開発済み技術の相互利用を進めてきた。今回、さらに準大手ゼネコン3社からの参画意向が寄せられ、コンソーシアムを立ち上げることにした。各社と共同開発している機械・レンタルメーカーやロボット開発会社にも参画を呼び掛ける。参加企業数が増えることで、開発したロボットなどの活用現場数が増え、価格の低減などにもつながるとみている。外販する際には、コンソーシアムに参画するメーカーを通じて展開する見込み。」(『建設通信新聞』2020.11.18)
●「日本建設業連合会の山内隆司会長、宮本洋一副会長、押昧至一副会長は20日、理事会後の会見で、競争の激化による技能者へのしわ寄せを起こさないため、建設キャリアアップシステム(CCUS)の早期普及・確立が必要との一致した認識を示した。山内会長は『(過度な価格競争が建設業の魅力低下を招いた)過去の再現にならないための装置としてCCUSが機能を発揮できるようにしたい』とした。現在と2021年の市況について山内会長は『コロナ禍による民間投資減少という“高波”はまだ建設業に届いているとは言えず、これからボディブローのように効いてくる。民間の設備投資はかなり厳しくなると思わざるを得ない』との認識を示した。そうした中で、民間建築を中心として競争が激化し始めており、かつてのような技能者へのしわ寄せが起きるという懸念について山内会長は『(過度な価格競争が)まったく起きないという甘い考えは持っていない』とした上で、『(技能者へのしわ寄せを)少しでもやわらげるには、(技能と実績に応じて技能者の処遇が決まる)CCUSの利用を早く本格化して十分に機能を発揮できるようにしたい』とCCUSの役割を説明。『経済が悪化した中でも適正に経済活動できるようにするシステムがCCUSだ。CCUSによって以前よりは状況が改善されると思っており、長期的に考える必要がある』と強調した。宮本副会長は『価格・工期のダンピングはしないことで業界は一致している』とした上で、『もし(過度な価格競争を)した会社があれば、その会社の工事を請けないよう専門工事業者が選べるようにするのがCCUSだ。こういう時だからこそCCUSを推進しなければならない』とした。押昧副会長も『元請けが協力会社を選ぶのではなく、元請けが選ばれる時代になっている。優秀な技能者がいなくなっている状況で(過度な価格競争を)できる状態ではない。協力会社が大切であり、CCUSをきちんと整えなければ本当に大変なことになる』との見解を示した。」(『建設通信新聞』2020.11.24)
●「海外建設協会(蓮輪賢治会長)は、2020年度上期(4-9月累計)の海外建設工事受注実績の速報値をまとめた。受注総額は前年同期比38.9%減の5059億8800万円となった。新型コロナウイルス感染症が影響し、リーマン・ショックが直撃した09年度上期(2992億円)に次ぐ水準まで落ち込んだ。地域別にみると、総額に対して構成比率の大きいアジア、北米を中心に軒並み減少、中東・北アフリカ、アフリカは特に顕著となっている。」(『建設通信新聞』2020.11.26)
●「経済産業省は17日、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の基本政策分科会を開き、温室効果ガス排出量の8割を占めるエネルギー分野を対象に、2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた道筋の議論を本格的に始めた。電力部門は、脱炭素技術として確立している再生可能ヰネルギーと原子力を最大限活用するとともに、次世代技術の水素発電などを選択肢として追求する。」(『建設通信新聞』2020.11.18)
●「熊本県の蒲島郁夫知事は19日、県議会全員協議会で、2020年7月豪雨で甚大な被害を受けた球磨川流域の今後の治水の方向性について、川辺川へのダム建設の容認を表明した。民意を『命と環境の両立』と受け止め、特定多目的ダム法に基づく現行の貯留型の川辺川ダム計画の完全な廃止と、環境に配慮した新たな流水型のダム建設を国に要望する。」(『建設通信新聞』2020.11.20)
●東京都調布市の東京外かく環状道路(外環道)トンネル工事ルート上で新たな地下空洞が見つかった。道路陥没が発生(10月18日)した同工事のルート上で見つかった地下空洞は二つ目。道路陥没の発生から1ヵ月以上たっているにもかかわらず、事業者である東日本高速(以下ネクスコ)はいまだに原因を明らかにしていない。(『しんぶん赤旗(日曜版)』2020.11.29より抜粋。)