情勢の特徴 - 2020年12月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「菅義偉首相は1日、2021年度から25年度までの5年間を対象とした新たな国士強靱化対策計画をとりまとめるよう、関係閣僚に指示した。激甚化する災害への対策や予防保全に向けた老朽化対策の加速、デジタル化の推進が計画の柱となる。事業規模は15兆円程度とし、初年度については20年度第3次補正予算で措置する。政府が近くまとめる追加経済対策と合わせ、新たな計画を閣議決定する。」(『建設通信新聞』2020.12.02)
●「政府は8月に閣議決定する追加経済対策の事業規模を73.6兆円程度とする方向で調整に入った。2020年度第3次補正予算案と21年度予算案を合わせた国費は30.6兆円を計上する見通し。新型コロナウイルスの再拡大を踏まえ財政支出を膨らませる。追加対策は①コロナ対策②コロナ後を見据えた経済構造の転換③国土強靭化の3本柱で構成する。民間の支出分も含めた事業規模ベースでコロナ感染拡大防止に6兆円、コロナ後の対策に51.7兆円、防災・減災と国土強靭化に5.9兆円をあてる。」(『日本経済新聞』2020.12.08)
●「菅義偉首相は4日、臨時国会が同日閉会したことを受けて記者会見した。2050年カーボンニュートラルという新たな政府目標の達成に向け、2兆円の基金を創設して世界最先端のイノベーションを生み出し、脱炭素化に有効な革新的技術の開発に挑戦する企業を10年間にわたって継続支援する方針を打ち出した。政府が8日に閣議決定する経済対策に盛り込む。」(『建設通信新聞』2020.12.08)
●「政府は10日に開く経協インフラ会議(議長・菅義偉首相)で、2021年から5カ年の新たなインフラ輸出戦略を決定する。25年までに年間の受注総額を34兆円にする目標を設定。菅政権が重点施策に掲げる脱炭素化やデジタル化にも対応していく。現行の『売り切り』型を脱却し、インフラ導入後の運営・維持管理や人材育成も継続的に支援する『包括パッケージ』型への転換を目指す。新戦略では▽カーボンニュートラル・デジタル変革への対応を通じた経済成長の実現▽展開国の社会課題解決・SDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献▽自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現―の三つの柱を設定。5年間で受注総額を18年実績(25兆円)からのさらなる拡大を目指す。」(『建設工業新聞』2020.12.10)
●「政府は2020年度の新規国債発行額を112兆円超とする調整に入った。15日に閣議決定する第3次補正予算案で増額する。これまで最大だった09年度の52兆円の2倍超に膨らむ。新型コロナウイルス禍で打撃を受ける経済の下支えに財政出動は欠かせない半面、赤字国債への依存が強まれば財政健全化の道のりは一段と険しくなる。」(『日本経済新聞』2020.12.13)

行政・公共事業・民営化

●「政府は水道など地域住民の生活に密接にかかわるインフラのデジタル化を促す。いずれも地域ごとに事業運営しており、人口減少と老朽インフラの更新という2つの大きな課題に直面している。新たな投資の際に保守管理の自動化や需要データを使った効率的な運用を可能にする仕組みの導入を後押しし、長期的に上昇が懸念される料金やコストの抑制をめざす。まず、自治体が運営する水道事業を対象に、都道府県に対して2022年度までにシステムの標準化を通じたコスト削減効果や今後の推進方針を示すように要請する。地方自治法に基づいて都道府県が策定する『水道広域化推進プラン』に試算などを盛るよう求める。政府は地方交付税の優遇措置も活用して自治体の取り組みを支援する。20年度中に検討状況を聞き取って公表する。」(『日本経済新聞』2020.12.01)
●「国土交通省は1日、建設業許可や経営事項審査の申請手続きの電子化に向けた実務者会議の初会合を開き、電子申請システムの基本構想を明らかにした。許可行政の実務を担当する地方整備局や都道府県の意見を会議を通じて反映し、2020年度内にシステムの仕様を決定。21年度から開発に着手し、基本的な申請機能は22年度からの運用開始を目指す。閲覧などの追加機能は23年度から利用可能となる予定だ。実務者会議では、電子化の対象となる手続きの範囲や申請者または許可行政庁による利用の流れなど電子申請システムの基本的な開発構想が説明された。電子申請システムは、現在、書面で行われている建設業許可・経営事項審査の申請手続きについて、オンライン上での申請や結果通知、手数料支払いなどを行える機能を実装する。大臣、知事許可いずれも対象としており、許可申請や変更届、決算報告、経営事項審査の申請などを電子的に行えるようにする。」(『建設通信新聞』2020.12.02)
●「地方創生の施策方針を示す第2期『まち・ひと・しごと創生総合戦略』(2020~24年度)について、政府は改定内容の方向性を確認した。新型コロナウイルスの感染拡大で人々の地方移住に対する機運が高まる中、テレワーク拠点の整備などを促進。最先端技術を結集し未来都市をつくる『スーパーシティー構想』といった地方のDX(デジタルトランスフォーメーシヨン)化も加速させる。政府は2日に東京都内で『まち・ひと・しごと創生会議』(議長・坂本哲志まち・ひと・しごと創生担当相)を開き、総合戦略の改定に盛り込む重点施策で意見交換した。議論の内容を踏まえ、政府は月内に改定版の総合戦略を閣議決定する。」(『建設工業新聞』2020.12.04)
●「国土交通省は改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)など『新・担い手3法』の浸透に向けた取り組みの推進を全都道府県と申し合わせた。全8地域で開いた2020年度下期ブロック監理課長等会議で、施工時期の平準化の推進や、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及推進に向けたインセンティブの導入・検討などについて議論。国交省と都道府県は発注機関として今後の取り組みを確認した。ブロック監理課長等会議(入札契約担当課長会議)は、国交省と都道府県の担当者が入札契約制度や建設業行政の課題について議論する場。20年度下期の会議は11月4日の中国ブロックから始まり、12月9日の北海道・東北ブロックで終了。全都道府県との間で、新・担い手3法のさらなる浸透に向けた取り組みについて申し合わせが完了した。」(『建設工業新聞』2020.12.10)
●「国土交通省が2020年度から全国展開を開始した遠隔臨場の試行活用が拡大している。9月末時点で各地方整備局などでの実施件数の合計は560件(実施予定含む)に上る。当初は各整備局10件程度ずつの試行を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により非接触・リモート化のニーズが高まったことを受け、受発注者ともに積極的な取り組みが広がった。建設現場での監督・検査の立会などをカメラを使った映像配信で行う遠隔臨場は、東北地方整備局や中部地方整備局での先行的な試行の結果を踏まえ、3月に試行要領(案)などを作成。5月に試行方針をまとめ、全国で計100件程度実施することを決めた。試行対象は、段階確認・材料確認または立会を映像によって確認できる工種で、試行実施のための通信環境を確保できる現場。施工現場が遠隔地にあり、発注者が施工現場との往復に多くの時間がかかる工事や、構造物などの立会頻度が多い工事での活用が望ましいとする。遠隔臨場は発注者にとっては移動時間が削減でき、受注者にとっても立会のための調整に伴う時間が減らせることから、受発注者双方の生産性向上につながる。立会がなくなり接触機会が削減できることから、国交省は新型コロナ対策としても有効であると判断。新型コロナ対策として実施する場合には発注者が費用を負担する発注者指定方式として取り扱っている。」(『建設通信新聞』2020.12.11)

労働・福祉

●「国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及・活用のための官民施策パッケージに基づき、2021年度に取り組みを発展させる。国直轄工事での対象拡大のほか、都市再生機構や水資源機構、高速道路会社などの独立行政法人・特殊会社での活用工事の実施に向けた検討を進める。11月30日に開催した建設業4団体との意見交換で赤羽一嘉国交相が表明した。官民施策パッケージは、ことし4月の国交省と日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会の建設業4団体との意見交換でまとめられた。23年度からの直轄・自治体・民間のすべての工事での原則活用に向け、建設業退職金共済制度でのCCUSと連携した電子申請方式への移行を軸に、直轄工事などでの活用拡大を掲げている。建退共制度については、11月から電子申請方式の試行を開始した。電子ファイルでの就労実績の報告やオンライン上の掛け金支払いが可能となった。」(『建設通信新聞』2020.12.01)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)などを巡って国土交通省が11月30日に開いた建設業団体との意見交換会で、日本建設業連合会(日建連)の山内隆司会長らが対応状況を説明した。山内会長は『地方自治体が発注するレベルまで広げてもらえれば(中小の事業者にとって)切実感が沸いてくるはずだ』とCCUS活用工事の拡大を要請。赤羽一嘉国交省は『国交省としてちゃんとコミットしなければならない』と応じ、『47都道府県にアプローチする』と明言した。」(『建設工業新聞』2020.12.02)
●「国土交通省は、オンライン上で行政機関などが保有する個人の情報を確認できるマイナポータルを通じた、建設キャリアアップシステム(CCUS)と他省庁・団体所管の情報の連携に向けたプロセスを明らかにした。マイナポータルを軸とした連携が実現することによって、携行が義務付けられている技能講習修了証や安全衛生関係の各種免許などをキャリアアップカードで代替可能とし、カード保有のメリットを向上させる。また、CCUSへの情報登録・更新の自動入力化によって、登録作業の負担軽減効果も期待できる。2021年度は、マイナポータルと既に連携しているe-Tax(国税庁)、ねんきんネット(日本年金機構)などとの情報連携に向けた調査を開始する。他省庁・団体のデータベース(DB)で保有する情報のうち、CCUSで登録が必要な社会保険の加入状況などの本人情報の項目について、最新情報への更新が可能となる仕組みの構築を進める。建設キャリアアップシステムと並行してマイナポータルとの連携作業を進めている厚生労働省による技能講習修了者のDBとの連携を前提とした検討も進める。」(『建設通信新聞』2020.12.04)
●「建設政策研究所(理事長・浅見和彦専修大学教授)は、定期総会をオンライン方式で5日に開き、役員改選で浅見理事長を再任した。2021年度の活動方針も決めた。冒頭、浅見理事長は『新型コロナウイルスの影響で活動にも障害が出たが、調査受託活動など順調に進めることができた。外国人労働者受け入れ拡大や頻発する自然災害対策の提言など課題に対応した取り組みを進めていきたい』とあいさつした。21年度は外国人労働者政策への提言、全建総連を中心とする賃金調査受託・分析などの事業を進める。建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入を踏まえ『職種別・レベル別の適正賃金』の調査も計画している。」(『建設工業新聞』2020.12.09)
●「日本経済新聞社は9日、2020年冬のボーナス調査(12月1日時点)をまとめた。1人あたり支給額(加重平均)は前年比8.55%減の76万1786円。減少率はデ一夕のある1978年以降でリーマン・ショック後の09年(14.93%減)に次ぐ過去2番目の大きさとなった。新型コロナウイルス禍の影響が深刻化し、5.37%減だった夏より減少率が広がった。」(『日本経済新聞』2020.12.10)
●「新型コロナウイルス感染症の流行で受け入れ数が伸び悩んでいる特定技能外国人で、国土交通省の独自基準をクリアする件数が増えてきた。12月11日時点で、建設分野への受け入れ計画に基づく認定外国人数が累計で2000人を突破。国内試験の合格者3人も初めて認定された。出入国在留管理庁の入国審査で在留許可が認められたのは9月末時点で、建設分野に642人。国交省の認定数の増加に伴い今後、在留外国人数も着実に伸びていく。」(『建設工業新聞』2020.12.15)

建設産業・経営

●「積水ハウスが7日発表した2020年2~10月期の連結決算は、純利益が前年同期比24%減の889億円だった。新型コロナウイルス感染拡大による営業自粛で戸建て住宅などの販売が減少した。19年10月に中堅ゼネコンを連結子会社にした結果、建築・土木事業が大きく伸びたが、全体の落ち込みを補えなかった。売上高は2%増の1兆7688億円。事業別では、主力の戸建て住宅事業が20%減収だった。販売促進イベントの自粛などで受注が減った。都市再開発事業は、市況低迷などで開発したホテルやオフィスなどの売却が売上高ベースで前年同期比ほぼ半減し、45%の大幅減収となった。一方、鴻池組を子会社化したことで建築・土木事業の売上高は6.3倍と大きく増え、利益を押し上げた。賃貸住宅借り上げなどの不動産フィー事業も増収増益だった。21年1月期通期は売上高が前期比横ばいの2兆4150億円、純利益が19%減の1140億円とする従来予想を据え置いた。」(『日本経済新聞』2020.12.08)
●宮城県石巻市の『公営住宅買い取り制度』を使った災害公営住宅の建設をめぐって、工事代金が支払われない下請け業者が起こした裁判で、元請け責任を認定する画期的な判決が確定した。下請け業者と支援した東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターが11日に記者会見で明らかにした。民間が整備した住宅を自治体が買い取る公営住宅買い取り制度に基づき石巻市が災害公営住宅を公募し、選ばれたパナソニックホームズ(大阪府)と売買契約を締結。パナソニックホームズは通路・公園などの外構工事を梅本工務店に発注。同工務店は、その後、失踪・倒産したため工事代金が支払われない4次下請けの高木勝博氏が、同社を相手取り元請け責任を求めて提訴していた。(『しんぶん赤旗』2020.12.13より抜粋。)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省が発表した2020年10月の建築着工統計調査報告によると、新設住宅着工戸数は前年同月比8.3%減の7万685戸となり、16カ月連続で減少した。リーマン・ショック直後の連続減少(08年12月から10年3月までの16カ月間)に並び、低迷が長期化している。」(『建設通信新聞』2020.12.01)
●「住宅ローンコンサルティングのMFS(東京・千代田)の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、首都圏の住宅購入希望者のうち戸建てを希望する割合が18ポイント増えたことがわかった。新築の希望者の割合も6ポイント増えた。経済情勢が不安定な中、将来の住居に対して安心感を求める人が増えているようだ。MFSが運営する住宅ローン借り入れ可能額判定サービス『モゲパス』の利用者のうち、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の物件の希望者を対象に調査を実施した。新型コロナの感染拡大前(2020年2月まで)とコロナ禍以後(20年3月以降)の調査結果を比較した。希望する物件の種類を聞いたところ、戸建てを希望する人の割合はコロナ禍前は26%で、コロナ後は44%と大幅に増えている。」(『日本経済新聞』2020.12.11)
●「国土交通省は省エネルギー住宅の新しい基準をつくる検討に入る。現在は4等級ある断熱の性能表示制度を改め、より高性能の5段階目を設ける。2021年春から、省エネ性能が高いほど家電などと交換できるポイントを多く付与する制度も始める。日本の二酸化炭素(CO²)排出量の約15%を占める家庭部門の排出削減に向けて省エネ住宅の普及を促す。」(『日本経済新聞』2020.12.13)
●「政府は11日、2021年度から25年度を計画期間とする『防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策』を閣議決定した。インフラ老朽化対策や高規格道路のミッシングリンクの改善、流域治水の推進など3か年緊急対策にはなかった新たな事業メニューを盛り込んだ。事業規模は民間資金や財政投融資の活用を含め、15兆円程度。中期的な予算の裏付けをもった抜本的な防災・減災、国土強靱化対策が始動する。」(『建設通信新聞』2020.12.14)
●「国土交通省は14日、社会資本整備審議会の住宅宅地分科会と建築分科会の下に設置している小委員会を開き、既存住宅流通市場を活性化させる観点から、長期優良住宅制度などの見直しに関する意見の取りまとめ案を議論した。共同住宅の新築に占める認定割合が0.2%にとどまり、十分に活用されていない長期優良住宅制度は、分譲マンションを対象に管理組合が住棟単位で認定を受けることができるように見直すべきとしている。『既存住宅流通市場活性化のための優良な住宅ストックの形成及び消費者保護の充実に関する小委員会』の第2回会合で議論した。取りまとめ案のパブリックコメント手続きを近く開始し、2021年1月28日の第3回会合で小委員会としての意見を集約する。」(『建設通信新聞』2020.12.15)

その他