情勢の特徴 - 2020年12月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は、15日の臨時閣議で、2020年度第3次補正予算案を決定した。一般会計歳出を21兆8353億円追加し、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策やその収束後を見据えた経済構造の転換などに充てる。内訳は感染拡大防止策に4兆3581億円、経済構造の転換は11兆6766億円、防災・減災は3兆1414億円など。3次補正と21日の閣議決定を予定する21年度当初予算案を『15カ月予算』として一体編成。3次補正については年明けの通常国会の冒頭に提出し、早期の成立を目指す。3次補正のうち国土交通省関係は、公共事業に1兆9342億円、非公共事業に1兆3569億円の合計3兆2912億円を措置する。公共事業は防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策に1兆3611億円を計上。非公共事業として整理された73億円を加えた1兆3684億円が5か年加速化対策の初年度分の予算額となる。」(『建設通信新聞』2020.12.16)
●英ロンドン大学の研究者らは16日、米国や日本などの過去50年間の経済データを分析した結果、富裕層減税は収入面の不平等を深刻化させ、経済全体への利点にはならないことが明らかになったとする報告書を発表した。「富裕層への税率を低く保つ経済的根拠は弱い」と強調している。報告書は、米国、英国、ドイツ、フランス、日本など経済協力開発機構(OECD)加盟18カ国について1965年から2015年の期間を調査。「多くの国で1980年代後半に富裕層に対して減税が行われた」と指摘した。富裕層減税を行うたびに、国全体の収入のうち最も豊かな層が占める割合が増加していったと分析している。一方で富裕層減税は、経済成長や失業率の改善に「大きな影響を与えることはなかった」と強調。研究結果は、富裕層減税を行えばめぐりめぐって雇用増や経済活性化につながるとした理論に対する「反証となっている」とした。(『しんぶん赤旗』2020.12.19より抜粋。)
●「政府は21月の閣議で一般会計総額106兆6097億円の2021年度予算案を決定した。長引く新型コロナウイルス禍で国民の不安が消えないなか、積極的な財政出動で支える姿勢を示した。コロナ禍を抜け出すには成長を促す戦略が必要だ。支出ありきではなく、予算の無駄づかいを防ぎ、実効性を高めることが重要になる。」(『日本経済新聞』2020.12.22)
●「政府は21日、2021年度予算案を決定した。一般会計の総額は106兆6097億円となった。当初予算では9年連続で過去最大を更新。財源として建設国債を6兆3410億円発行する。公共事業関係費は前年度比11.5%減の6兆0695億円を計上。だが『臨時・特別の措置』を除く通常分で比較すると、前年度を26億円上回る額で、0.04%増となり前年度と同水準を確保した。国土交通省分は一般会計の総額が5兆8981億円(前年度〈通常分〉比0.6%減)。うち公共事業関係費は災害復旧を含め20億円上回る5兆2587億円(0.04%増)となった。一体で編成した20年度第3次補正予算案を含めると、公共事業関係費は7兆1929億円となる。同日の閣議後の記者会見で赤羽一嘉国交相は『自然災害はいつ起きてもおかしくない。補正と当初を合わせて切れ目なく施策を進め、効果が早期発現できるよう全力で取り組む』と述べた。東日本大震災復興特別会計の国交省所管分は398億(89.1%減)、独立行政法人などに充てる財政投融資には総額で2兆0087億円(18.2%減)を計上した。地方自治体向けの防災・安全交付金は8.8%増の8540億円を充て、頻発する自然災害に対応した地域の総合的な取り組みを集中支援する。社会資本整備総合交付金には13.3%減の6311億円を計上した。」(『建設工業新聞』2020.12.22)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、道路の除雪体制の継続的な維持を目的に、人件費や機械経費など最低限必要となる費用を積算で計上できる仕組みを試行的に導入する。2019年度の記録的な少雪で全国的に除雪出来高が上がらない状況となり、固定的にかかる経費を積算できる仕組みを求める声が相次いだことから新たな対応を検討。過去実績などから少雪時でも支払う水準を算出し、2021年度の直轄工事から試行を開始する。」(『建設通信新聞』2020.12.21)
●「国土交通省は、市町村でのダンピング(過度な安値受注)対策、施工時期の平準化といった入札契約の適正化や建設キャリアアップシステムの活用を促進するため、総務省との連携体制を強化する。自治体の契約担当者が集まる都道府県の公共工事契約業務連絡協議会(公契連)に総務省と共同で参画する。施工時期の平準化を進める上で協力が不可欠な財政部局などへのアプローチを総務省が担うことで、より実効性を高めて自治体に働き掛ける。」(『建設通信新聞』2020.12.24)

労働・福祉

●「建設現場でアスベスト(石綿)を吸い健康被害を受けたとする首都圏の元建設作業員や遺族らの集団訴訟で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は16日までに、二審で国の賠償対象となった原告側と国双方の国家賠償請求に関する上告を退ける決定をした。同種訴訟で『一人親方』などを含む作業員への国の賠償責任が初めて確定した。決定は14日付。裁判官5人全員一致の意見。建材メーカーへの賠償請求に関する上告の一部は受理し、2021年2月に当事者の意見を聞く弁論期日を指定した。メーカー側の責任を否定した二審・東京高裁判決を見直す可能性がある。18年3月の東京高裁判決は、遅くとも1975年以降に『国は防じんマスクの着用や警告表示を義務付けるべきだった』と指摘。石綿を含む製品の製造・販売が原則禁止となった2004年までに規制しなかったのは違法だと結論づけた。『有害物の規制や職場環境の保全という労働安全衛生法の趣旨・目的は労働者以外も保護するものだ』として、一人親方や個人事業主への国の賠償責任も幅広く認めた。救済対象の原告は一番・東京地裁の170人から327人に増え、国に約22億8千万円の支払いを命じた。一万で『原告らが働いた現場に被告企業の製品が到達したと証明されていない』と判断し、建材メーカーの賠償責任は否定した。」(『日本経済新聞』2020.12.17)
●「国土交通省は、2024年度からの建設業への時間外労働の上限規制適用を見据え、原則すべての直轄工事で発注者指定型により週休2日に取り組む方針を明らかにした。現場閉所が難しい維持工事などで適用している交代制週休2日工事も発注者指定型を導入する。21年度から段階的に対象を拡大し、24年4月には全工事での週休2日の確保を目指す。」(『建設通信新聞』2020.12.18)
●「政府はフリーランスとして働く人を独占禁止法などの法令で保護する指針を年内にもまとめる。組織に属さずスキルを生かすような多様な働き方を法的な安全網の整備によって後押しする。取引する企業側が契約内容を書面で残さなければ独禁法違反につながる恐れがあることなどを明記する方向だ。内閣府や厚生労働省などの試算では、国内のフリーランスは300万~400万人台に達する。裾野が広がっているが、法的な位置づけが曖昧なため、不利な立場に陥りやすい。内閣官房の2~3月の調査では、企業から業務を受託するフリーランスの約4割がトラブルを経験したと答えた。うち6割超は取引条件が書面やメールで交付されていないか、条件の記載が不十分だった。新たな指針は公正取引委員会、中小企業庁、厚労省が連名で出す。企業とフリーランスの取引全般が独禁法の対象になるとの考え方を示す。発注者が資本金1000万円超の企業の場合は下請法も適用する。取引の実態が雇用関係に近い場合には労働法の網もかける。」(『日本経済新聞』2020.12.19)
●「日本建設業連合会の週休二日推進本部(井上和幸本部長)は、週休2日実現行動計画に基づく2020年度上期フォローアップ報告書をまとめた。『4週8閉所以上』が約40%、『4週6閉所以上』が70%超に達し、18年度上期と比べてそれぞれ10ポイント以上増加、着実に成果を上げている。20年度通期でみると、コロナ禍が閉所状況にどのように影響するかは不透明だが、『21年度末までに4週8閉所の実現を目指す』とする同計画の最終目標の達成に向け、今後も取り組みを加速させる方針だ。」(『建設通信新聞』2020.12.24)
●「国土交通省は24日、規制逃れを目的とした一人親方化対策、一人親方の処遇改善対策に関する中間取りまとめ(素案)を示した。働き方の自己診断チェックリストを活用するなどし適正な一人親方について技能者、事業者に気付きを与え、雇用契約の締結や社会保険への加入を促す。処遇改善策では適正取引を推進するとともに、専門性を高め適切な報酬が確保できるような措置を講じる。年度内に中間まとめを公表する。産学官で構成する『建設業の一人親方問題に関する検討会』(座長・蟹澤宏剛芝浦工業大学教授)の第3回会合を同日に東京都内で開き、中間取りまとめ(素案)を提示した。社会保険加入や長時間労働規制などの回避を目的に本来、雇用すべき技能者を一人親方化する『偽装一人親方』が一定数存在する。国交省は実態調査などを踏まえ、論点と対策を整理した。適正と考えられる一人親方は請け負った仕事を自らの責任で完成できる技術力と責任感を持ち、現場作業に従事する個人事業主と定義。これに基づき整理した一人親方の状況を踏まえ、働き方の自己診断チェックリスト(素案)を作成した。一人親方が現場入場する際にチェックリストを活用。雇用すべき技能者に当てはまる場合、元請が下請に対し、一人親方と下請との間で雇用契約を締結するよう指導する。現場入場の規制などの対策も例示した。」(『建設工業新聞』2020.12.25)

建設産業・経営

●「建設経済研究所は16日、売上高上位40社の全国ゼネコンを対象とした『2021年3月期(20年度)第2四半期主要建設会社決算分析』を発表した。受注高は建築部門が大幅に減少し、直近5年間で最低水準となった。売上高は大手全社が減収となるなど全階層で減少に転じ、営業利益、経常利益ともに約2割減少している。調査は、直近3年間の連結売上高の平均が上位の40社(大手5社、準大手11社、中堅24社)を対象に実施した。各社の決算短信などから判明する21年3月期(一部20年12月期)第2四半期決算の財務指標を分析している。分析結果によると、受注高(単体)は、前年同期比14.4%減の4兆4132億7900万円。建築(19.2%減、2兆9202億2100万円)、土木(3.9%減、1兆3522億7200万円)ともに減少となった。企業別でみると、増加したのは、大手が5社中1社、準大手は11社中3社、中堅は24社中6社だった。通期予想に対する達成度は33.4%だった。売上高(連結)は、8.7%減の7兆0286億6000万円。大手は5社すべてが減少に転じ、準大手の7社、中堅の13社が減少となった。20年度通期の売上高予想は全40社中28社が減収を見込んでいる。売上総利益(連結)は10.0%減の8596億2900万円だった。利益率は0.2ポイント低下し、直近5年間で最低の12.2%となった。大手は前年同期と同水準の利益率を維持したが、準大手と中堅で低下した。本業のもうけを示す営業利益(連結)は、20.1%減の4142億4100万円。営業利益率は5.9%で前年同期から0.8ポイントの低下となった。40社中39社が営業黒字を確保したものの、営業利益が増加したのは、大手1社、準大手2社、中堅10社だった。経常利益は19.9%減の4368億2600万円。経常利益率は0.9ポイント低下して6.2%だった。」(『建設通信新聞』2020.12.17)
●リニア中央新幹線工事をめぐる談合事件で、公正取引委員会は22日、独禁法違反(不当な取引制限)で、大成建設(東京都新宿区)、鹿島(港区)、大林組(同区)、清水建設(中央区)のゼネコン4社に再発防止を求める排除措置命令を出した。談合で工事を受注した大林組と清水建設には、それぞれ約31億円、約12億円の課徴金納付命令も出した。両社は違反を自主申告していたため、課徴金は3割減額された。4社は2005年に「談合決別宣言」を出したが、宣言後のゼネコンの違反行為を公取委が認定するのは初めてという。公取委によると、4社は遅くとも15年2月以降、リニア中央新幹線の品川、名古屋両駅新設工事の3工区で事前に受注予定業者を決め、工事を発注したJR東海に提出する見積価格を調整するなどしていた。受注調整は強制調査を受ける17年12月まで続いたとされる。…事件をめぐっては、東京地検特捜部が18年3月、法人としての4社と、鹿島と大成建設の元幹部を起訴。大林組と清水建設は公判で起訴内容を認め、それぞれ罰金2億円、同1億8000万円が確定した。鹿島と大成建設は無罪を主張しており、来年3月に判決が言い渡される予定。(『しんぶん赤旗』2020.12.23より抜粋。)
●「国土交通省は24日、『発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会』(座長・小澤一雅東大大学院教授)を開いた。新型コロナウイルス感染症の流行を契機として、社会全体のデジタル化の加速を踏まえ、今後10年を見据えた建設生産・管理システムの将来像とその実現に向けた具体的な取り組みの検討に着手した。」(『建設通信新聞』2020.12.25)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京都調布市の東京外郭環状道路(外環道)トンネル工事現場付近で起きた道路陥没事故を巡り、東日本高速道路は18日、工事との因果関係を認めて謝罪した。補償の範囲や金額が次の焦点になる。今後は厳格な調査と対策が求められ、リニア中央新幹線など他の大深度地下工事に影響する可能性もある。東日本高速などが設置した有識者委員会が18日に中間報告をまとめ、事故後の現場付近の掘削調査などから『砂層が地表近くまで連続している特殊な地盤だった』とし、陥没は『トンネル施工が要因のひとつである可能性が高い』と認めた。それを受け、東日本高速の加藤健治・関東支社建設事業部長が『因果関係を認めざるを得ない。住民におわびする』と謝罪した。委員会は今年度内を目指す最終報告に向けて調査を継続するが、因果関係を認めたことで、今後は住宅にゆがみやひび割れなどが生じた住民に対する補償が議論となる。東日本高速は20、21日に住民向けの説明会を開く。地下40メートルより深い大深度地下の工事はこれまで地表に影響は出ないとされていた。想定外の事故の補償で焦点になりそうなのが範囲と金額の確定だ。」(『日本経済新聞』2020.12.19)
●「2020年7月豪雨で被災した球磨川流域の抜本的な治水対策を検討する協議会(国と熊本県、流域12市町村で構成)の場で、国土交通省は18日、治水対策メニューの1つとして川辺川での新たな流水型ダム建設を提示した。貯水容量は、現行の川辺川ダム計画の利水容量2200万立方メートルを洪水調節容量へ振り替えて有効活用することが可能とし、この場合、洪水調節容量は1億0600万立方メートルとした。実現すれば流水型ダムで国内最大規模となる。施設能力を最大限活用した洪水調節施設を検討するとし、今回の想定は現行計画の規模を維持した形だ。このほか、流水型ダムは堆砂容量が少なくて済むため、現行計画の2700万立方メートルも治水容量へ振り替えられる可能性があるとした。」(『建設通信新聞』2020.12.21)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)は21日、2021年の首都圏の新築マンションの発売戸数が20年見込み比31.1%増の3万2000戸になりそうだと発表した。新型コロナウイルスの流行で前の年に比べ20%程度減る20年に対し、回復を見込む。郊外物件の人気は続きそうな半面、所得減が購入の勢いを抑える可能性もある。前年比のプラスは3年ぶりだ。地域別にみると、東京23区は前年比30.8%増の1万4000戸となりそうだ。神奈川県(34.6%増)や埼玉県(48.1%増)を含め全エリアで発売が増える見通しだ。」(『日本経済新聞』2020.12.22)
●「国土交通省の集計(速報値)によると、熊本県など九州南部を中心に被害が発生した2020年7月豪雨による土砂災害の発生件数が961件になった。集計を開始した1982年以降、単一の豪雨災害で過去3番目の水準。被害を確認した都道府県数は過去最多の37府県だった。甚大な広域災害だったことが改めて浮き彫りになった。」(『建設工業新聞』2020.12.24)
●「政府は25日、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの2050年までの実現に向け、グリーン成長戦略をまとめた。物流・人流・土木インフラ産業や住宅・建築物産業を含む14分野を対象に、温室効果ガスの排出削減や脱炭素技術の需要拡大・コスト低減など高い目標を設定。予算、税制、金融、規制改革などあらゆる政策を総動員し、建設業を含む産業界の取り組みを後押しする。物流・人流・土木インフラ産業の50年目標には、建設施工のカーボンニュートラル実現を打ち出した。基本的な考え方として、電力部門は再生可能エネルギーの大量導入などによる脱炭素化、電力部門以外は電化を中心に取り組みを進め、経済成長につなげる。…14分野を『成長が期待できる産業』に選定し、分野別の実行計画を盛り込んだ。物流・人流・土木インフラ産業は、建設施工の50年カーボンニュートラルに向け、短期の取り組みとして中小建設業にICT施工を普及させ、30年のCO₂排出を3万2000トン削減する。中長期では、直轄事業で革新的建設機械(電動、水素、バイオなど)の使用を原則化するなど、導入拡大を目指す。住宅・建築物産業は、建築物省エネ法に基づく住宅トップランナー基準をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)相当に引き上げるなど、ZEHとZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の取り組みを強化する。30年に新築住宅・建築物の平均で1次エネルギー消費量の収支ゼロとし、21世紀後半の早期にはストックの平均でも実現を目指す。建設関連はこのほか、カーボンリサイクル産業のCO₂吸収型コンクリートについて、30年に既存コンクリートと同じ価格までコストを下げ、50年には防錆性能を有する新製品を開発して建築物やコンクリートブロックに用途を広げる。国と地方自治体の公共工事でCO₂吸収型コンクリートを積極的に活用し、需要を拡大する。」(『建設通信新聞』2020.12.28)

その他