情勢の特徴 - 2021年1月前半
●「雇用の安全網である雇用調整助成金の制度の見直しが急務になっている。新型コロナウイルス禍で支給が急増し、企業の保険料を元手とする資金が枯渇した。財源不足は2020年末時点の試算で1兆7千億円になる。本来は想定していない雇用保険の積立金からの借り入れでしのいでいるが、この積立金も21年度に底をつく見通しで限界が近い。」(『日本経済新聞』2021.01.07)
●「菅義偉首相は7日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都と神奈川、埼玉、干葉の3県に緊急事態宣言を発令した。期間は8日から2月7日まで。宣言を受けて1都3県の知事は午後8時以降の住民の外出と飲食店の営業を自粛するよう求めた。通勤の7割削減も要請し、1カ月の集中的な対策で首都圏の感染拡大を抑える狙いだ。2020年春以来、2度目の宣言になる。」(『日本経済新聞』2021.01.08)
●「菅義偉首相は13日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、静岡、栃木の7府県に緊急事態宣言を発令した。期間は14日から2月7日まで。宣言の対象は7日に発令した東京、神奈川、埼玉、干葉とあわせ11都府県になった。中国や韓国など11カ国・地域とのビジネス往来も期間中はやめ、外国人の新規入国は原則として停止する。」(『日本経済新聞』2021.01.14)
●「三菱総合研究所は、新型コロナウイルス感染症への対応として、政府が7日に再発令した緊急事態宣言による日本経済への影響を試算した。1都3県を対象とした1カ月間の経済損失は約5300億円と予測。仮に対象地域が全国に拡大して、なおかつ宣言の期間が2カ月間に延長された場合の経済損失は約2兆7000億円に達すると推計した。」(『建設通信新聞』2021.01.14)
●「2001年の省庁再編で北海道開発庁、国土庁、運輸省、建設省の4省庁を統合した国土交通省は6日で発足から20年を迎えた。この20年間、建設投資の激減や東日本大震災を始めとする激甚災害、就業者の高齢化の進行など数多くの課題に直面する中で、所管する国土・社会資本・交通に関する総合的な政策を展開してきた。社会資本整備については、曲折を経ながらも着実に進展した。河川堤防(直轄管理区間)の整備状況は01年度の56%から19年度には69%まで進捗。三大都市圏環状道路の整備率は05年度の43%から19年度の82%と倍近く整備が進んだ。整備新幹線も九州新幹線や北陸新幹線、北海道新幹線など800キロ以上の延長で新たに開業した。…防災・減災対策では、本省だけでなく、国土技術政策総合研究所、地方整備局、地方運輸局、地方航空局、気象庁、国土地理院など幅広い部局がTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)として被災自治体への集中的な支援を担ってきた。インフラ整備だけでなく、入札契約制度も20年間で大きく変化した。国交省発足から1カ月後の01年2月に公共工事入札契約適正化法(入契法)が施行となった。公共工事の入札における不正行為の排除を目的とし、公平性や透明性が確保できる一般競争入札の採用が広がった。他方、建設投資額の減少と相まって、公共工事でも受注競争が激化した。品質確保の観点からダンピング(過度な安値受注)を防止するため、技術と価格による競争を規定した公共工事品質確保促進法(品確法)が議員立法により成立し、05年度から施行された。14年度は品確法と入契法、建設業法を一体的に改正し、担い手3法としてダンピング対策を強化。19年度には新・担い手3法と銘打ち、価格面だけでなく工期のダンピングや社会保険加入の義務化などを実現した。」(『建設通信新聞』2021.01.06)
●「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府は7日、首都圏の4都県を対象に緊急事態宣言の発令を決めた。期間は8日~2月7日の1カ月間。基本的対処方針を改定したが、緊急事態宣言時に事業継続が求められる事業者として『河川や道路などの公物管理』『公共工事』を引き続き明記した。国土交通省は昨年5月の宣言解除後も直轄工事・業務の対応策を継続中。感染拡大防止策を徹底し今後も事業を執行していく。」(『建設工業新聞』2021.01.08)
●「国土交通省は8日、改正公共工事品質確保促進法(品確法)に基づいて決定した『新・全国統一指標』について、全国10ブロックの目標値をまとめ、公表した。同法で発注者に求められる施工・履行時期の平準化やダンピング(過度な安値受注)対策の状況を数値化することで、進捗を客観的・相対的に確認できるようにし、実効性のある取り組みの推進に役立てる。…施工時期の平準化については、平準化率(4-6月期と年度の工事平均稼働件数の比率)を指標とし、ブロック単位では、中国、四国が0.90、北海道、関東、北陸、中部、九州、沖縄が0.80、近畿が0.78、東北が0.75を目指す。県域単位でも同程度の目標を設定した。適正な工期設定に向けては、国、全発注工事に占める週休2日工事の設定割合で進捗を指標で点検する。 対象は政令市までとし、それ以外の市区町村は含まない。近畿、中国、四国は100%を目指す。現状、設定割合が最も低い北陸は0.55を目標とし、その他のブロックは0.70-0.90の間でそれぞれ目標を定めた。ダンピング対策は、工事または業務件数に対する低入札調査基準価格または最低制限価格の設定割合を指標とする。工事は北海道と青森を除く東北各県、沖縄県で9割、それ以外の都道府県(青森含む)は100%を目標とする。業務は沖縄のみが9割で、ほかは100%とした。」(『建設通信新聞』2021.01.12)
●「総務省は地方自治体の2020年度上半期(20年4~9月)の公共事業予算執行状況を公表した。19年度から繰り越された予算と20年度当初予算の合算額24兆6110億円に対し、契約率は前年同期を0.3ポイント下回る60.5%だった。支出済み額の割合は0.3ポイント下回る18.2%。総務省は減少要因として、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部の自治体で契約事務が遅れたことを挙げている。」(『建設工業新聞』2021.01.12)
●「新型コロナウイルスの感染拡大に関連した解雇や雇い止めの人数(見込みを含む)が2020年末時点で7万9千人を超えた。厚生労働省によると同年12月28日時点の累計で7万9608人に達し、8万人に迫っている。厚労省が20年2月から全国の労働局やハローワークを通じて日々の最新状況を集計している。21年1月4日に20年を通じた累計数がまとまった。20年を通した動きをみると、11月初旬に7万人を超えてから約2カ月で1万人近く増えた。6月に累計で2万人を超えて以降、ほぼ1カ月で1万人増加した。増加ペースは鈍化していたものの、12月以降の感染拡大で改めて雇用情勢に悪影響がおよぶ可能性もある。厚労省が把握できていない事例もあり、実際の人数はもっと多い可能性がある。解雇後の状況を把握できていないため、すでに再就職できた人も集計に含まれる。」(『日本経済新聞』2021.01.04)
●「個人事業主など『フリーランス』で働く人を法令に基づき保護するため、政府は新たに策定するガイドラインの案を公表した。フリーランスと発注事業者の取引関係について、独占禁止法や下請法、労働関係法令が定める問題行為を整理。一覧性のある内容とし、保護ルールの適用範囲などを分かりやすく提示する。意見募集を25日まで行い、年度内のガイドライン策定を目指す。ガイドライン案では実店舗を持たず雇い人も不在の個人事業主で、自身のスキルを活用して収入を得る人をフリーランスと定義。建設業では『一人親方』が該当する。発注事業者がフリーランスに対する優越的地位を乱用し、正常な商慣習ではない手法で不利益を与える行為を規制する。発注時の取引条件を示す書面を交付しない場合は乱用行為を誘発する要因とし、独禁法上の不適切行為と見なす。」(『建設工業新聞』2021.01.06)
●「新型コロナウイルス禍で失業するにとどまらず、就労を諦める人が増えている。日米英など10カ国で働き手や働く意欲がある人の合計は2020年7~9月期に前年より少なくとも660万人減った。労働市場からの退出者の多くを占めるのは非正規雇用や若者など不安定な立場の人たちだ。株式市場の高騰で富裕層が潤う陰で民主主義や資本主義の足元を揺るがす貧富の格差が一段と拡大しかねない。20年春以降の感染拡大の影響は、まず失業の増加として表れた。米国はコロナ前まで3%台だった失業率が4月に14.8%に急上昇し、7月まで2桁台が続いた。日本は直近11月の失業者数が195万人で前年より44万人増え、10カ月連続の増加となった。特に打撃が大きいのは立場の弱い層だ。属性を分析できる就業者数のデータで、米国は4~9月期の減少率が全体の9.9%に対し、24歳以下は19.1%に達した。高卒以下は16.8%、短時間労働者は15.2%だった。日本は7~9月期に所得階層別で年収100万円未満の就業者が109万人減った。非正規雇用は125万人減ったのに対し、正社員は45万人増えるなど二極化が鮮明だ。…統計上、失業者としてカウントされていない『隠れ失業』も急増している。労働力人口は実際に働いている人と、今は職がないが失業を申請して働き口を探している人の合計。そもそも職探しすら諦める人が増えた結果、労働力人口も大きく減っている。その多くが若者を中心とするアルバイトやパートだった人とみられる。日米英のほかカナダ、フランス、韓国など比較可能な10カ国の労働力人口は感染拡大当初の4~6月期に4億3933万人と前年比1535万人減った。遡れる14年以降初の減少だった。7~9月期も660万人減。感染が再拡大する10~12月期以降は一段と落ち込んでいる懸念が強い。日本は11月の労働力人口が11万人減の6902万人。4月以降、前年割れが続く。日本総合研究所は国内である時点に働いていた人が翌月に職を失い、求職活動もしなくなる割合を試算している。18~19年はおおむね1.1%で推移していたのが、20年後半は1.3%に跳ね上がった。労働市場からの退出者は雇用の実態を捉えるためには見逃せない。その分を加味して失業率を計算し直すと米国は12月の6.7%が9.8%になる。英国は10月の4.9%が5.4%に高まる。」(『日本経済新聞』2021.01.10)
●「鹿島は、4月からスタートする次期中期経営計画(2022年3月期-24年3月期)中に、建築工事の設備業を含む協力会社の請負次数を2次までに限定する。既に協力会・鹿栄会と協議を進めており、4月からは3次が必要な場合、理由を明示して支店長許可制とする。押昧至一社長は『この3年で何としてでもやる』と実施に強い意志を示している。建設業界では、重層構造の改善の必要性が以前から指摘されており、鹿島の取り組みが業界全体での取り組みの呼び水となる可能性がある。押昧社長が、日刊建設通信新聞社などとの新春インタビューで明らかにした。下請次数を2次に限定する理由について、『建設キャリアアップシステム(CCUS)で技能者の処遇を改善する仕組みは、重層構造をやめない限り、絶対に成り立たない』と強調した。CCUSは、技能・実績が高い技能者ほど高い処遇を受けられるという制度設計になっているものの、下請次数が3次より多い状態になると労務費がどの程度技能者本人に行きわたっているか把握できない。本当にCCUS上の評価に応じた処遇になっているかが不明で、技能者がCCUSに登録する理由付けが薄れるという考え方だ。具体的には、『これまで、1次が材料などを手配して2次が施工する中で、足りない労務分を2次が3次を集めて契約していた。これを今後は、2次が連れてきた協力会社と1次が請負契約を結ぶ』。1次は、技能者を管理する職長を増やす必要があり、『そのための経費は当社で対応する』とした上で、『もし1次との契約が難しい特殊技能を持つ3次の場合は、当社が1次として契約する』という。労務費については『契約時に価格の内訳を明示してもらう』。CCUSで現場ごとの1日の技能者数が分かれば、『2次までであれば、元請けとして支払った労務費が十分だったのか、不十分なのかがある程度分かる』とした。元請けが支払った労務費が十分であれば、CCUSの能力評価に応じて処遇されていることが確認できるとの考えだ。」(『建設通信新聞』2021.01.04)
●「政府が東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言発令に向けた調整を進める中、建設各社が対応策の検討を急いでいる。現場では、国土交通省の新型コロナ感染予防対策ガイドラインなどを踏まえた対策が講じられており、引き続き最大限の注意を払って工事を進めることになりそうだ。緊急事態宣言の内容が公表された後、各社は具体的な対応を固める。内勤者のテレワーク拡大を図る動きも出てきている。」(『建設工業新聞』2021.01.07)
●「首都圏の4都県を対象に新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令されたのを受け、日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は8日付で、法人会員の指定代表者宛てに建設現場の対応を通知した。建設業は事業を継続し、現場を稼働させることに重点を置いて対応していく必要があるとした。国土交通省や日建連が定めたガイドラインを踏まえた感染予防対策をさらに徹底し、現場の適切な運営に努めるよう要請した。」(『建設工業新聞』2021.01.12)
●「新型コロナウイルスの感染拡大を境に、東京から人口が流出している。移住先として浮かぶのは主に東京都心から50~100キロメートル圏内だ。コロナ禍が東京一極集中に変化をもたらしつつある。…総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、20年11月に東京都から転出した人は約2.8万人で、前年同月比で19%増えた。転出した人から転入した人を差し引いた転出超過数も約4000人。コロナ下で転勤や通学で東京に引っ越せない人がいる一方、転居する人が一定数いることが主因だが、同年10月から増えた。東京から転出を考えている人は、どの市町村に移り住もうとしているのか。不動産物件を扱うネット情報サービス『SUUMO』の地域別閲覧数を分析した。サイトを運営するリクルートの協力を得て、物件数などの偏りが少ない中古の戸建て住宅と中古マンションを対象に、コロナ禍が深刻化する前の20年1~3月と、同年9~11月の平均で、閲覧数がどれだけ伸びたかを調べた。中古戸建てで最も閲覧数が伸びたのが千葉県館山市の2.4倍で、栃木県那須町も1.8倍増えた。SUUMOの池本洋一編集長は『郊外の広い家や、2拠点居住向きの東京近郊のリゾート地に住宅を購入しようと考える人が明らかに増えている』と指摘する。」(『日本経済新聞』2021.01.03)
●「国土交通省は6日、2050年の国土の姿を検討する『国土の長期展望専門委員会』の第11回会合を開いた。地方圏の中核市とそれより小規模な地域をイメージして、地方で安心して暮らし続けるための基礎的要素を洗い出すとともに、地方で就労機会を確保する取り組みの方向性を検討するなど、持続可能な地域のあり方をテーマに議論した。今夏にまとめる最終報告に反映する。地域生活に必要な基礎的要素を▽雇用▽医療・福祉▽買い物▽教育▽交通インフラ▽情報通信基盤▽電気・水道・ガスなど▽娯楽・コミュニティー▽防災・安全――に整理し、要素ごとに現状と近年の変化を確認した。」(『建設通信新聞』2021.01.07)
●「国土交通省は大規模災害からの早期の復旧・復興を実現するため、道路ネットワークの機能強化を加速する。高規格道路のミッシングリンク(約200区間)の解消や暫定2車線区間の4車線化、直轄国道とのダブルネットワークの強化などに力を注ぐ。2025年度末までの達成目標として、ミッシングリンクの約3割の改善を掲げた。4車線化は優先整備区間(約880キロ)のうち約5割での事業着手を目指す。」(『建設工業新聞』2021.01.14)
●「英国のジョンソン首相は4日夜(日本時間5日未明)にテレビ演説し、新型コロナウイルスの感染拡大で行動規制を強めると発表した。首都ロンドンのあるイングランドで5日から3度目のロックダウン(都市封鎖)に入る。…イングランド全域でのロックダウンは2020年3月と11月に続く措置で、12月上旬の解除から約1カ月で再導入を余儀なくされた。スーパーマーケットなどを除く大半の店舗や飲食店の店内営業が禁じられる。2度目と違って学校は閉鎖し、オンライン授業に切り替える。ロンドンなど一部ではすでに12月20日からロックダウンに入っていた。英国では、感染力がより高い変異種が猛威を振るっている。ジョンソン氏は『変異種を制御下に置くためにはより多くの協力が必要なのは明らかだ』と強調した。『もう一度、自宅にとどまるよう求める』と述べ、規制強化に理解を求めた。」(『日本経済新聞』2021.01.05)
●「ドイツのメルケル首相は5日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための規制を再び強化すると発表した。感染が深刻な地域の住民は居住地から15キロまでに移動が制限される。10日までとしていたレストランや商店、学校の閉鎖は少なくとも1月末まで続ける。英国で感染力の高い変異種が広がっており、メルケル首相は『我々はとりわけ慎重でなければならない』と語った。」(『日本経済新聞』2021.01.06)