情勢の特徴 - 2021年1月後半
●「政府が18日招集の通常国会に2021年度予算案を提出したことで、一般会計の『公共事業費』は、土木分野の『公共事業関係費』が6兆0694億円、船舶建造費なども含む建築分野の『その他施設費』が5756億円で、土木分野と建築分野を合わせた『公共事業費』の総額が6兆6450億円となることがわかった。また、同時に提出した20年度第3次補正予算案の公共事業費は、公共事業関係費2兆4121億円、その他施設費6045億円の計3兆0166億円となった。これにより、2つの予算成立後に執行する『15カ月予算』の公共事業費は、公共事業関係費の8兆4815億円、その他施設費の1兆1801億円を合わせた9兆6616億円になる。」(『建設通信新聞』2021.01.19)
●民間信用調査会社の東京商工リサーチが18日発表した「休廃業・解散企業」動向調査によると、2020年に休廃業・解散した企業は、前年比14.6%増の4万9698件だった。これまで最多の18年(4万6724件)を抜き、2000年の調査開始以降の最多となった。東京商工リサーチは、「2020年はコロナ禍が全国に広がり、休廃業・解散の決断を促す契機になったようだ」としている。産業別では、飲食や宿泊などのサービス業が1万5624件と最多で、全体の3割を占めた。次いで、建設業が8211件、小売業が6168件と続いた。(『しんぶん赤旗』2021.01.19より抜粋。)
●「政府は、中小企業・小規模事業者の取引適正化に向け、支払い条件のさらなる改善に取り組む。3年後の2024年をめどに、手形支払サイトを60日以内に改善するとともに、親事業者による割引料の負担を進める。3月末までに公正取引委員会と経済産業省中小企業庁の下請代金支払手段通知(手形通知)を改正し、実行する。改正通知に基づき、国土交通省の『建設業法令遵守ガイドライン』も改定する見通し。また、将来、約束手形の利用を廃止するため、今夏をめどに産業界と金融業界による『約束手形の利用の廃止等に向けた自主行動計画』を策定する。」(『建設通信新聞』2021.01.27)
●「国土交通省と総務省は、地方自治体工事での円滑な事業執行を後押しするため、自治体の契約担当者が集まる都道府県の公共工事契約業務連絡協議会(公契連)を通じた働き掛けを始める。18日の青森県を皮切りに、両省が共同で各都道府県公契連に参画していく。同日に開会する2021年通常国会では『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』を含む20年度第3次補正予算の成立が見込まれており、早期執行などの観点で発注者として万全を期すよう、具体的な施工確保策を示しながら取り組みを呼び掛ける。」(『建設通信新聞』2021.01.18)
●「国土交通省は、総合評価落札方式の運用改善に向けて、新たな試行を始める。技術提案評価型(S型)で、これまでの工事の品質確保に関する項目に加え、ICT活用など生産性向上に関する提案を求める。評価に差が付きにくいというS型の課題を解消するため、重要性が高まっている生産性向上を新たな評価軸として加える。2021年度以降に一部工事で試行する。試行結果を基に結果を分析し、総合評価ガイドラインへの反映などを検討する。」(『建設通信新聞』2021.01.19)
●「国土交通省など14府省庁は19日、『国土強靭化の推進に関する関係府省庁連絡会議』を書面開催し、国土強靭化地域計画の策定を市区町村に促すための支援措置に関し、新たな方針を決めた。2021年度末までに全市区町村で地域計画策定の完了を目指す目標を新たに設定。地域計画を策定した市区町村に対して交付金・補助金を重点化(重点配分・優先採択)するなどの措置を21年度に強化する。22年度には地域計画の内容充実を目的とした支援を始める。支援の取り組みを2段階で設定した。第1フェーズは地域計画策定を最優先に支援する段階とし、地域計画に基づいて実施される市区町村の事業に対して、21年度に57(新規13)の交付金・補助金で重点化などの支援を講じる。…22年度からの第2フェーズは、政府が20年12月にまとめた『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』を踏まえ、地域計画の内容を充実させるための支援を講じる段階と位置付けた。地域計画に明記された事業に限定し交付金・補助金を重点化する。この措置の実行により、個別事業の地域計画への反映を促す。」(『建設通信新聞』2021.01.21)
●「国土交通省は、『災害復旧における適切な入札契約方式の適用ガイドライン』を2021年度にも改正する。フレームワーク方式や技術提案・交渉方式、事業促進PPPといった、事業執行の円滑化に有効な入札契約方式の適用の考え方を新たに盛り込む。また、事業の上流段階に当たる測量、調査、建設コンサルタント業務での入札契約方式の適用条件も明確化することで、その後に実施する本復旧工事の早期着手につなげる。」(『建設通信新聞』2021.01.26)
●「建設業での労働災害による2020年(1-12月)の死亡者数は3年連続して減り、死傷者数も2年続けて減少する情勢であることがわかった。厚生労働省が19日にまとめた20年の労働災害発生状況(速報、1月7日時点)によると、建設業での死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)2.4%減(6人減)の240人と、3年連続して減少した。死亡者数が269人だった19年の確定値と比べ、現時点で29人少ないため、近年の確定値までの推移を踏まえると、20年の死亡者数(確定値)は260-270人程度になるとみられ、過去最少だった19年の269人を下回る可能性もでてきた。また、休業4日以上の死傷者数は、前年同時点比0.9%減(129人減)の1万3684人と2年連続して減少。死傷者数も近年の確定値までの推移から、20年の確定値は1万4950-1万5050人程度になると見込まれる。」(『建設通信新聞』2021.01.20)
●発がん物質アスベスト(石綿)を建投現場で吸い込み、重篤な肺の病気になった東京などの元作業員・遺族らが被害救済を訴えた建設アスベスト訴訟。最高裁判所は昨年末、国の上告を退け、全国の集団訴訟で初めて国の責任が確定した。各地の集団訴松の早期解決、国、建材メーカーによるすべての被害者救済のための基金の創設は待ったなしだ。…これまで国の責任を認める判決が14の地裁・高裁で連続して出されている。…今回の集団訴訟(東京訴訟第1陣)で原告は、国がアスベストの危険性を認識していたにもかかわらず、保護マスク着用の義務づけや、アスベストを使った建材の製造禁止などの対策を長年放置してきたとして、国の兼任を追及した。最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は、国側の上告を受理しないと決定(昨年12月14日付)。その結果、国の責任を認め、計約22億8千万円の支払いを命じた18年の東京高裁判決が確定した。東京高裁判決は個人事業主の一人親方や零細事業主に国の賠償責任を認めている。これも確定した。東京高裁判決は建材メーカーの責任については認めなかった。しかし、最高裁は建材メーカーの責任について、元作業員らの上告を受理し、双方の意見を聞く弁論を2月25日に開く。メーカー責任を認めなかった高裁の判断が見直される可能性がある。田村憲久厚生労働相は昨年12月23日、厚労省内で原告らと面会。「防じんマスクの着用の義務づけなど、国に規制権限がありながら適切に実行してこなかったことは大変重く受け止めている。深くおわびを申し上げる」と謝罪した。原告からの補償基金制度の創設の要望には、新たな協議の場で被害者救済のあり方を検討すると表明した。(『しんぶん赤旗(日曜版)』2021.01.24より抜粋。)
●「経団連は26日、賃金交捗の方針や働き方について講演する『労使フォーラム』を開いた。連合や産業別労働組合のトップが出席し、2021年の春季労使交渉が事実上スタートした。新型コロナウイルスによる打撃が深刻な企業と堅調な売り上げを維持する企業で業績の差が大きいことから、経団連は個社や各業界の実情に応じた脱・横並びの賃金決定を呼びかけた。…新型コロナの影響で観光・サービス業を中心に経営環境は厳しく、横並びで方向性を打ち出すのが難しいことを強調した。赤字の企業を念頭に『事業の継続と雇用の維持を最優先』とするよう求めた。連合側は雇用確保と賃上げを同時に実現するよう経団連に要望している。具体的には2%程度の賃上げを掲げる。苦境に陥った企業では従業員を解雇しないで済むよう、他社への出向や一時帰休などの動きも広がっている。雇用維持が焦点となるなかで、賃上げも実現できるかどうかは業種や企業によって分かれそうだ。」(『日本経済新聞』2021.01.26)
●「政府は今春から企業が給与を銀行口座を介さずに支払えるようにする。従業員のスマートフォンの決済アプリなどに振り込む方式を認める。利用者は銀行からお金を引き出す手間がなくなる。遅れていた日本のキャッシュレス化を進める契機になりそうだ。給与振込口座を起点に預金を集める従来の銀行のビジネスモデルに影響をもたらす可能性もある。」(『日本経済新聞』2021.01.27)
●「2020年の雇用情勢は大幅に悪化した。厚生労働省が29日発表した20年平均の有効求人倍率は1.18倍で前年比0.42ポイント低下した。下げ幅はオイルショックの影響があった1975年以来45年ぶりの大きさだ。総務省が同日発表した労働力調査によると20年平均の休業者数は過去最大。完全失業率は2.8%で11年ぶりに悪化した。12月までの雇用情勢は足踏み状態にあったが、1月の緊急事態宣言で先行きは不透明さを増している。 有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す指標。19年は1.60倍で過去3番目の高水準だったが、20年は14年(1.09倍)以来の水準に低下した。働く意欲のある有効求職者数は6.9%増え182万人に達したのに対し、企業からの有効求人数は21%も減り216万人になった。」(『日本経済新聞』2021.01.29)
●「建設現場でアスベスト(石綿)を吸い健康被害を受けたとする京都府の元建設労働者や遺族らの集団訴訟で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は29日までに、建材メーカーの責任を巡る原告、企業側双方の上告の大半を退ける決定をした。建材のシェアに基づく線引きで、企業の賠償責任を認めた司法判断が初めて確定した。決定は28日付。国家賠償請求に関する原告、国双方の上告も大部分を退け、東京地裁で起こされた同種訴訟に続き国の責任も確定した。一方、屋外作業に携わった労働者側の賠償請求については、3月22日に上告審弁論を開く。国、建材メーカーに賠償を命じた二審・大阪高裁判決を見直す可能性がある。2018年8月の二審・大阪高裁判決は、石綿粉じんへの暴露で中皮腫や肺がんを発症する医学的知見は1970年代初めごろに確立したと指摘。建材メーカーは▽吹きつけ石綿は72年▽屋内作業用の断熱材などは74年▽屋外作業向けの外壁材などは2002年――から製品の石綿含有量や危険性、対策などを表示する義務があったのに怠ったと判断した。その上で、用途別の建材のシェアがおよそ20~25%だった企業の賠償責任を認定。国の責任も認めており、国とメーカー側に計約3億円の支払いを命じていた。16年1月の一審・京都地裁判決は建材メーカーの責任を認めた初事例だった。」(『日本経済新聞』2021.01.30)
●「北海道、東日本、西日本の公共工事前払金保証事業会社3社は20日、四半期ごとに実施する建設業景況調査の結果を公表した。2020年10~12月の地元建設業界の景気に関するBSI値(景況判断指数=『良い』と『悪い』の回答差)はマイナス11.0。前期(7~9月、マイナス11.5)からマイナス幅は縮小したものの、依然として『悪い』と判断する傾向が続いている。調査は12月に3社と取引がある建設企業2559社に実施。有効回答率は89.9%だった。地元建設業界の景気のBSI値は2014年7~9月の0.0を境に25四半期連続でマイナスとなっている。来期(1~3月)はマイナス17.0と厳しさが一層増す見通し。18年1~3月以降、マイナス2.0~マイナス5.5で推移していたが、20年4~6月にマイナス12.0と大きく悪化。2桁のマイナスが続いており、先行きの見えない新型コロナウイルスの影響を危惧する傾向が表れている。」(『建設工業新聞』2021.01.21)
●「日本コンストラクション・マネジメント協会(川原秀仁会長)は、CM業務市場調査アンケートの結果をまとめた。CM業務(ピュアCM)の売上高が増加か同等とした会社が8割を超えるなど、全体としてCM市場は着実に伸長しており、特に官庁・公共団体発注のCM業務は倍増と顕著な伸びを示している。」(『建設通信新聞』2021.01.22)
●「建設経済研究所と経済調査会は27日、2021年度の建設投資見通し(名目)の最新予測を発表した。建設投資は前年度比2.4%減の61兆8000億円。20年度第3次補正予算案を踏まえ、20年10月に発表した予測から3兆6200億円上方修正した。補正予算による引き上げで政府建設投資は前年度と同水準を維持したが、民間は減少した20年度を住宅、非住宅ともにさらに下回る予測となっている。」(『建設通信新聞』2021.01.28)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)がまとめた会員企業95社の2020年度第1~3四半期(20年4~12月)の建設受注額は、前年同期比7.6%減の8兆9872億円だった。12年度以来7年ぶりに10兆円を割り込んだ前年をさらに下回った。新型コロナウイルスの流行によって民間工事で発注手続きの中止や延期が相次いだ年度当初の落ち込みや海外の低迷が響いた。前年割れが続いていた国内受注額は10~12月に増加となったものの、通期では前年度を下回る水準となる公算が大きい。建設受注額の内訳は、国内が前年同期比4.5%減の8兆8166億円、海外は65.3%減の1706億円だった。」(『建設工業新聞』2021.01.28)
●「国土交通省は、住生活基蛮に基づく新たな住生活基本計画(全国計画)の案をまとめた。新型コロナウイルス感染症に伴う新たな日常やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に対応した新しい住まい方の実現、安全な住宅・住宅地の形成、住宅循環システムの構築、住生活産業の発展などを目標に設定し、施策を展開する。住宅分野のDXは、設計から施工、維持・管理に至る全段階で推進する。18日に開いた社会資本整備審議会の住宅宅地分科会に提示した。今後パブリックコメントを実施し、3月の閣議決定を目指す。計画期間は2021-30年度の10年間。新しい住まい方の実現に向け、住宅内テレワークスペース、地域内のコワーキングスペース、サテライトオフィスなどを確保し、職住一体・近接、在宅学習の環境整備を推進する。推進するDXの取り組みには、AI(人工知能)による設計支援や劣化診断の自動化、BIMの導入、契約・取引プロセスのデジタル化などを盛り込む。安全な住宅・住宅地の形成に向けては、災害の危険性が高いエリアでの開発抑制、安全なエリアへの住宅立地と移転の誘導に取り組む。耐震性と耐風性を高めるための住宅改修も進める。マンションは、地方公共団体による管理計画認定制度を定着させるとともに、管理の適正化、長寿命化、再生を促す。脱炭素化に関しては、長期優良住宅やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のストックを拡充するとともに、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅の評価と普及を推進する。住生活産業の発展に向けては、設計、施工、維持管理の生産性と安全性を高める観点から新技術の開発や検証・活用を促進する。維持管理では、センサーやドローンを活用した遠隔検査の実施などを進める。成果目標には、18年に12兆円だった既存住宅流通とリフォームの市場規模を30年に14兆円とし、長期的には20兆円を目指すことなどを掲げる。耐震性がない住宅ストックは30年のおおむね解消を目指す。」(『建設通信新聞』2021.01.19)
●「国土交通省が開会中の通常国会に提出する流域治水関連法案の概要が明らかになった。あらゆる関係者が協働する流域治水の推進に向け計画や体制を強化する。氾濫を防ぐため、利水ダムを活用した事前放流や雨水貯留浸透対策、浸水対策も充実する。防災集団移転促進事業の要件を拡充し、危険エリアからの移転を促す。早期復旧に向け、権限代行制度の対象河川とメニューを拡充する。」(『建設工業新聞』2021.01.20)
●東京外かく環状道路(外環道)トンネル工事のルート上の東京都調布市で、三つめの地下空洞が見つかった。編集部の調べによると、新たに見つかった空洞は、専門家から技術的な助言を受けた後に大手ゼネコン・鹿島が施工していた区間。鹿島は専門家の助言とは異なる“安上がり”な歪で施工していた。…調布市では昨年10月18日、道路で陥没事故が発生。翌11月には現場周辺の地表面から約4~5メートルの地下に、①長さ約30メートル、幅約4メートル、厚さ約3メートルと、②長さ約27メートル、幅約3メートル、厚さ約4メートルの巨大な地下空洞が相次ぎ見つかっている。事業者である東日本高速道路は今月、最初の陥没現場から約120メートル北側にある公園をボーリング調査。地表面から約16メートルの地中に長さ約10メートル、幅約4メートル、厚さ約4メートルの空洞を確認したと15日、公表した。…ゼネコン関係者はいう。「三つめの地下空洞は、現在停止しているシールドマシン(掘削機)の近くで見つかった。ここは施工業者が専門家に相談し、アドバイスを受けた後に施工した区間だけに、事態はより深刻だ」。現場周辺では夜間の休止時、シールドマシン内で土砂が固まり、掘進再開時にカッターが回転不能になる事態がたびたび発生していた。関係者によると、鹿島を幹事社とする共同企業体(JV)は昨年9月下旬、この事態を専門家に伝え、対策を相談。専門家は「ベントナイト」という添加剤を使用するようアドバイスした。専門家への相談やアドバイスがあったことは、東日本高速の記者会見でも明らかになっている。東日本高速が公表した中間報告の資料によると、昨年9月22日から10月1日にかけ鹿島JVは、ベントナイトではなく高分子材の添加剤を使用。滑剤を高吸水性ポリマーや吸水性樹脂に変更するなどの試行錯誤を繰り返しながら掘進を続けていた。ベントナイトを使用して掘進を始めたのは、最初の陥没事故が発生する直前の昨年10月12日。専門家の助言から約2週間、事業者側は助言された方法を行っていなかったことになる。(『しんぶん赤旗(日曜版)』2021.01.24より抜粋。)
●「『既存住宅流通市場活性化のための優良な住宅ストックの形成及び消費者保護の充実に関する小委員会』が長期優良住宅制度、住宅性能表示制度、住宅瑕疵担保履行制度について見直しの方向性を示した。長期優良住宅制度は住棟単位で認定する仕組み導入のほか、一定の性能を有する良質な既存住宅を対象に増改築の建築行為を伴わなくても認定する制度の創設を求めた。2050年までのカーボンニュートラル実現に向け、省エネルギー性能の高い住宅ストックを形成するため、認定時に求める省エネ性能の基準引き上げも検討すべきとした。また、登録住宅性能評価機関による技術書査を法的に位置付けることで認定審査を合理化・迅速化するとともに、住宅性能評価制度との審査の重複を排除する必要性を示した。住宅瑕疵担保履行制度は、新築住宅を引き渡した建設業者や宅地建物取引業者、届け出を受ける所管行政庁にとって年2回の基準日届け出手続きが負担になっているとして、基準日を年1回とするなど、手続きの合理化や電子化の検討を進めるべきとした。2号保険に加入した既存住宅を住宅紛争処理の対象に追加する必要があるとの考え方も示している。政府は、小委員会の取りまとめ結果を反映させた『住宅の質の向上及び円滑な取引環境の整備のための長期優良住宅の普及の促進に関する法律等の一部を改正する法律案(仮称)』を2月上旬に閣議決定し、国会に提出する予定だ。」(『建設通信新聞』2021.01.29)
●「物流施設の需給が逼迫している。2020年12月末の首都圏の大型物流施設の空室率は0.5%と2四半期連続で過去最低となった。東京湾岸エリアなどでは空きがなくなった。宅配向けなど旺盛な需要を映し、賃料は10~12月に首都圏全体で7~9月比0.9%高く、17年7~9月以来14四半期連続で上昇した。不動産サービス大手シービーアールイー(CBRE、東京・千代田)が首都圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県を中心とする地域)の複数のテナントが使う延べ床面積3万3000平方メートル以上の物流施設182棟を対象に調査を実施。賃貸面積や募集賃料などを集計している。…物流施設の需要増は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた『巣ごもり消費』などに伴う電子商取引(EC)の拡大が拍車をかけている。不動産大手などによる物流施設の開発は今後も相次ぎ、海外の投資マネーも大量流入が続いている。21年は供給量が過去最高だった19年を超える64万坪(約211万2000平方メートル)の物流施設が竣工する予定だ。それでも今後半年で供給される面積の5割超は入居者が内定済みとみられる。CBREは『6月末まで空室率は1%未満で推移する』と予測する。」(『日本経済新聞』2021.01.30)
●「民主党のジョー・バイデン氏(78)は20日、第46代米大統領に就任する。新型コロナウイルスによる死者が40万人を超え、失業増大で米国の経済格差は第2次大戦後最悪だ。連邦議会議事堂の占拠事件という歴史的汚点も残した。国民に広がる分断の動きに歯止めをかけるには、巨額の財政出動で実体経済を立て直せるかが重要になる。」(『日本経済新聞』2021.01.21)
●「米国で住宅価格の高騰が止まらない。新型コロナウイルスの感染拡大前に比べ価格は13%上昇し、過去3年間での上げ幅は25%に達した。富裕層向けが活況な一方で低所得層の住宅難も顕在化しており、『住宅格差』がバイデン新政権の新たな火種となる恐れもある。…全米不動産協会(NAR)によると2020年通年の中古住宅販売件数は前年比6%増の564万戸で、06年以来14年ぶりの高水準だった。米商務省が発表する新築住宅の着工件数も138万戸と06年に次ぐ水準だ。人が密集する都心部から郊外に移住する人が増えているほか、外出制限や在宅勤務が増える中で住生活を充実させたいという需要が高まっている。…金融緩和で住宅ローン金利(30年固定)が12月に2.6%台と、統計を遡れる1971年以来で最低水準を更新しているのも住宅購入には追い風だ。…一方、熱狂のあおりを受けているのが低所得層だ。統計上、全米の失業率は6%台だが、米連邦準備理事会(FRB)は『低所得層の失業率は20%超』と分析する。飲食店の閉鎖やホテルの人員削減などコロナ危機は主に低所得層を直撃している。レッドフィンによると、低所得層向けの住宅(中央価格は9万4500ドル)の販売件数の伸びは4%にとどまり、6割増の高級住宅との格差は一目瞭然だ。低所得層の住宅難が深刻になれば社会不安を招きかねない。そこで米商務省は12月、カナダ産木材に課していた関税を20%から9%に引き下げることを決めた。全米住宅建設業協会(NAHB)によると住宅用の木材価格(20年9月)は半年で2.7倍に急騰した。住宅ブームに加え、値上がりを見込んだファンド勢が材木先物を競って購入しているためで、関税の引き下げで住宅価格高騰の一因となっている木材の価格安定を狙う。」(『日本経済新聞』2021.01.26)