情勢の特徴 - 2021年2月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「都道府県の2021年度予算案が19日、出そろった。新型コロナウイルス対策経費が膨らみ、4割にあたる19府県が過去最大の予算を組んだ。企業業績の悪化で税収が落ち込み、地方債の発行額を25%増やして財源を確保。貯金も21年度中に4割取り崩す予定で、財政運営は厳しさを増す。」(『日本経済新聞』2021.02.20)
●「経済産業省は二酸化炭素(CO₂)を回収して地下に貯留する海外事業を資金面で支援する。これまで油田やガス田の開発としてきた出資や債務保証の対象にCO₂の回収・貯留事業を加える。温暖化ガス排出を実質ゼロにする手段として注目度が高まっており日本企業の参画を後押しする。」(『日本経済新聞』2021.02.21)
●「国土交通省は街中の混雑緩和や、災害時の人の安全な誘導方法を調査するために人の移動情報を収集する実験を始める。人の密集度などを調査し、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための方策や災害時の情報発僑といった方策につなげる。実験は2021年度に全国約5カ所のモデル都市を選定し実施する。取得した人流データは個人が特定できないように数値化し、人数や移動方向といった情報を一般にも公開する。感染拡大の防止や防災のためだけでなく、例えば商業施設を調査することで効率的な商品の配置を検討するなど、販売促進につなげることも可能になる。近年は民間でも人の流れのデータを使った取り組みが広がっている。国交省は、データの取得方法、個人情報の取り扱い方といった注意事項や、データの加工、処理方法を記した指針を21年度中に作成する方針だ。国や自治体が提供する人流データの活用方法を示すことで民間などの利用を促す狙いがある。」(『日本経済新聞』2021.02.26)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、地方自治体での施工時期の平準化を促進するため、市区町村単位での取り組みを強化する。これまで人口10万人以上の市を対象としてきた個別の働き掛けを2021年度かす10万人未満の市にも拡大。22年度には各自治体の具体的な取り組みや発注・執行状況の基本データを整理した『平準化カルテ』を全国の市町村で整備する。」(『建設通信新聞』2021.02.17)
●「地方自治体の入札・契約制度で電子入札の導入が広がりつつある。日本電子認証(東京都中央区、石田幸雄社長)の調査によると、2020年11月末時点で電子入札を導入していたのは732市区町村と、全国の約4割の自治体で電子入札が導入されていることが明らかになった。非接触で効率的に入札手続きが進められることから、新型コロナウイルスの感染防止対策として電子入札のニーズが高まっている。電子入札は、入札に参加するために発注機関へ行く移動時間がなくなる。入札関係書類の郵送作業にかかる経費が縮減できるのもメリットの一つだ。入札1件当たりにかかる手間が減ることにより、入札参加機会を増やせる。発注機関にとっては、入札参加者が増え、競争性の向上が高まると期待している。」(『建設工業新聞』2021.02.25)
●「市区町村レベルで、低入札価格調査の基準価格や最低制限価格の設定範囲の引き上げが進んでいる。国土交通省の調査によると、2020年10月1日時点で、全国の約半数の市区町村が最新の算定モデルに準拠していることが分かった。他方、一部の自治体では最新モデルを大きく下回る基準が設定されていることから、同省は今後、算定方式や設定範囲の公表を念頭に、自治体に自発的な改善を求めている。」(『建設通信新聞』2021.02.26)

労働・福祉

●「新型コロナウイルス感染症拡大でテレワークが広がり、新しい働き方に合わせた雇用制度として『ジョブ型雇用』の採用を模索する企業が出始めている中、建設産業界でも同様の動きが広がる兆しがでている。日刊建設通信新聞社が大手・準大手ゼネコン、建築設計事務所、建設コンサルタント、道路舗装会社、設備会社、メーカーの計130社を対象に実施した『人材採用調査』によると、4割に上る48社がジョブ型雇用(独自制度含む)について『検討中』『導入済み』『導入決定』『一部部門・役職で導入(検討中含む)』と回答した。調査は、1月上旬から2月初旬にかけて130社にアンケートを送付。『ジョブ型雇用』の質問では、建築設計18社、コンサル16社、ゼネコン31社、道路舗装9社、設備29社、メーカー17社の計120社が回答した。…業種ごとに占める割合でみると、コンサルの87.5%に上る14社が検討中・導入済みとなり、前向きな企業が突出して多かった。ゼネコンでは29.0%に当たる9社が導入を検討しているほか、建築設計は38.9%に当たる7社、設備は37.9%に当たる11杜が検討中・導入決定・導入済みとした。…導入を検討する企業からは、『職務内容・業務の洗い出し・切り分けが難しい』『ジョブディスクリプション(職務記述書)の作成負荷が大きい』いった課題が挙がったほか、『既存制度との整合性や折り合いが難しい』『コミュニケーション不足から共有業務の役割が不明確・おろそかになる』といった不安の声も上がる。…建設産業界ではジョブ型雇用はまだ検討段階で導入が広がるとは言えない状況だが、仮に広がれば、新しい雇用形態にあわせた建設関連法令・制度の総点検が求められることになりそうだ。」(『建設通信新聞』2021.02.18)
●「国土交通省は、標準見積書改定ワーキンググループ(WG)の第2回会合を開き、見積書の改定素案を示した。同省は改定する標準見積書に、労務費の算定根拠となる人員配置計画を添付することを提案。人員配置計画には各団体が職種ごとに定める賃金(年収)目安に基づいて、能力レベルに応じた単価を設定し、それに歩掛かり(人工)を乗じた労務費総額の内訳を明示する。3月に開催する次回会合を経て、年度内の改定を目指す。」(『建設通信新聞』2021.02.18)
●「ゼネコン各社がテレワークの定着に本腰を入れている。日本建設業連合会(日建連)建築生産委員会(蔦田守弘委員長)のIT推進部会が行った調査によると、昨春の緊急事態宣言期間中に現場を除くテレワークの実施率が50%を超えている企業が大半を占めた。テレワーク実施時に最も多い課題を聞いたところ、『自宅の作業環境』が一番に挙がった。テレワークに対応したICT(情報通信技術)環境の整備が急務となっている実態が浮き彫りとなった。」(『建設工業新聞』2021.02.18)
●「時間外労働の上限規制と関連して問題となっていた現場までの移動時間の取り扱いで、国土交通省は新たな対策を打ち出した。18日に『土木工事工事費積算要領及び基準の運用』を改定し、資機材などの日々の回送で作業時間が減少する場合に別途、積算で考慮することを明記した。働き方改革への対応と作業時間の確保のはざまに立たされていた中小建設企業に、両立する糸口が示された。…改定内容のうち、工事費の積算の直接工事費の注意事項に、『常時作業帯の設置が困難な地域での路上工事において、現場条件により資機材等の日々回送が発生することで作業時間に影響を及ぼす恐れがある場合の積算については、別途考慮すること』という記載を追記した。実際に作業時間が確保できないと認められる場合の対応として同省が想定するのは、労務費の補正だ。直轄の基準では、移動時間を考慮した作業時間に応じた労務費の設計変更が規定されている。1日の作業時間が7時間から7.5時間以下の場合は1.06、4時間から7時間以下の場合は1.14の補正割増し係数を設計労務単価の基準額に乗じることとしている。」(『建設通信新聞』2021.02.19)
●「全国建設労働組合総連合東京都連合会(全建総連都連、菅原良和執行委員長)は17日、東京都産業労働局と東京建設業協会に前年同様、『標準賃金日額2万9000円』を求める申入書を提出した。新たな公共工事設計労務単価による賃金の実現や、週休2日の推進に伴って現行の賃金を減らさないための措置も要望した。『標準賃金』は1日8時間、週40時間労働を仮定し、一般的な技能を習得した30歳前後の労働者が1人の収入で家族が一般的な生活を送れる賃金として設定した。申し入れでは、年収720方円(諸経費、法定福利費などは別枠)の実現を目指し、野丁場(大手ゼネコンなどが手掛ける大規模な工事)で『新設計労務単価』の賃金実現、町場(住宅メーカーやパワービルダー以外の戸建て住宅関連の工事)では、日額5000円の賃金引き上げに理解を求めた。全建総連都連が2020年5月に実施した賃金調査によると、常用の日額賃金は1万7202円と07年以降で最も高くなったものの、12年度比の賃金上昇率は約7%にとどまり、設計労務単価の全国平均上昇率(51.7%)とは大きな開きがある。」(『建設通信新聞』2021.02.19)
●「国土交通省は19日、3月から適用する『公共工事設計労務単価』を発表した。今回の単価は新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、前年度を下回った単価を据え置きとする特別措置を実施。その結果、全国の全職種平均(単純平均値)は1.2%(2020年3月比)の伸び率を維持し、9年連続での上昇となった。全職種の平均金額(加重平均値)は2万0409円で、前年度に引き続き、単価の公表を開始した1997年度以降で最高値を更新した。」(『建設通信新聞』2021.02.22)

建設産業・経営

●「大成建設は、製造過程でのCO₂収支をマイナスにすることができるカーボンリサイクル・コンクリート『T-eConcrete/Carbon-Recycle』を開発した。製造過程で発生するCO₂から製造する炭酸カルシウムを用いる点が特長。蓄積してきた技術・ノウハウを駆使して、独自の環境配慮コンクリート『T-eConcrete』を進化させた。CO₂とカルシウム成分を反応させて製造する炭酸カルシサムを活用。炭酸カルシウムを産業副産物である高炉スラグ主体の結合材(砂利や砂などの骨材を接着する粉体材料)に固化させることで、コンクリートの内部にCO₂を固定するカーボンリサイクル・コンクリートとなる。普通セメントの代わりに産業副産物である高炉スラグやフライアッシュなどを混合した独白の環境配慮コンクリート『T-eConcrete』で培ってきたCO₂排出量を削減するコンクリート技術やノウハウを駆使・発展させて『セメント・ゼロ+炭酸カルシウム活用』によるカーボンリサイクル対応に踏み出す。」(『建設通信新聞』2021.02.17)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)が担い手対策の中核となる働き方改革をより一層推進する。休日の取得促進とともに、長時間労働の是正を加速させる『目指せ週休2日+360時間(2+360・ツ-プラスサンロクマル)運動』を2021年度から始める。社会経済情勢の変化に伴って地域建設業が果たすべき責務も多様化していることから、SDGs(持続可能な開発目標)を念頭に置いた経営方針を検討・整理する。」(『建設通信新聞』2021.02.24)
●「前田建設工業と前田道路、前田製作所の3社は、共同株式移転により共同持株会社を設立し経営統合する。24日に開いた各社の取締役会で経営統合に関する基本合意書の締結を決議し、締結した。3社は共同持株会社の完全子会社となり、上場廃止となる。共同持株会社に総合インフラサービス戦略機能を置くことでグループ全体の一体感を創出し、『総合インフラサービス企業』の早期実現を目指す。共同持株会社は建設業許可を取得しない予定で、機関設計は指名委員会等設置会社とする。取締役は8人とし、うち4人は社外取締役とする。6月下旬の各社株主総会での株式移転計画承認などを経て、10月1日の共同持株会社設立を予定している。」(『建設通信新聞』2021.02.25)
●「日刊建設工業新聞社が主要ゼネコン34社を対象に実施した人材採用アンケートによると、今春入社予定の新卒社員は計3589人になる見通しだ。技術系が3005人で全体の83.7%を占める。採用の計画と実績を比較した充足率は上昇傾向にあり、17社が採用予定数を達成した。22年春入社の採用活動は、24日時点で計画が決定している27社を見ると横ばいあるいは微減の傾向が強い。ここ数年は積極採用が続いてきたが、ここに来て潮目が変わりつつあるようだ。」(『建設工業新聞』2021.02.26)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省12日、国土審議会計画推進部会の国土管理専門委員会の第19回会合を開催し、今春にまとめる『国土の管理構想』の具体的な内容について議論した。人口減少下の国土管理の課題について、『人口減少や財政制約が継続する中ではすべての土地にこれまでと同様に労力や費用を投下し、管理することは困難になる』と指摘。『場合によっては集落に住民がいなくなる可能性も考慮に入れ、将来像を見据えて、管理方法の転換や管理の縮小の検討を行う必要がある』と結論付けた。」(『建設通信新聞』2021.02.16)
●「東京23区の賃貸マンションで広さによる家賃の騰落が鮮朋になっている。新型コロナウイルス感染拡大で在宅勤務が定着。より広い住戸を求める動きが広がり、家族向け物件の賃料は上昇の勢いを増した。一方、単身向けは下落が目立つ。不動産情報サイト『アットホーム』に掲載された賃貸マンションのうち、東京23区の平均募集家賃を面積別でみると、2020年12月は70平方メートル超の『大型ファミリー』向け物件が34万3725円。19年12月から4.9%(1万6094円)上がった。30平方メートル以下の『シングル』向けは8万9055円。同1.l%(991円)下がった。15年1月を100とした指数で見ると二分化が鮮明だ。20年12月の大型ファミリー向けは118.7。同年.9月には119.7に達した。50~70平方メートルの『ファミリー』向けも20年12月は117.3で高水準が続く。一方、30~50平方メートルの『カップル』向けは20年12月が111.7、シングル向けは109.3。いずれも足元でやや戻したが、同年4月から下落傾向が続く。」(『日本経済新聞』2021.02.18)
●「不動産経済研究所が24日発表した2020年の全国の新築マンション発売戸数は前年比15.2%減の5万9907戸だった。2年連続で前年実績を下回り、1976年以来44年ぶりに6万戸を割り込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大で不動産各社が営業活動を一時停止したことなどが響いた。一方、平均価格は建築費の上昇などで4年連続で最高値を更新した。」(『日本経済新聞』2021.02.25)
●「河野太郎行政改革担当相のタスクフォース(TF)は24日、第5回会合を開き、2050年カーボンニュートラル(CN)の実現に向け、すべての住宅・建築物を対象に省エネルギー基準適合を義務化する内容で、建築物省エネ法の21年内改正に取り組むよう国土交通省に求めた。拙速な義務化は市場に混乱を招くなどとして慎重な姿勢を崩さない国交省に対し、河野行革担当相はCNが政府全体の目標になったことで従来の前提が根本的に変わったことを認識するよう迫り、規制省庁を変更する可能性にも言及した。」(『建設通信新聞』2021.02.26)

その他