情勢の特徴 - 2021年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「経団連(中西宏明会長)は16日、インフラシステムの戦略的な海外展開に向けた2020年度版の提言を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大や気候変動問題への危機感が高まる中、インフラシステムの海外展開も新たな局面を迎えていると指摘。工期延長を巡る相手国との交渉といった直近の課題対応に加え、グリーン分野やデジタル分野などに対する取り組み強化も求めた。」(『建設工業新聞』2021.03.17)
●「政府は18日、新型コロナウイルスの緊急事態宣言を21日の期限をもって全面解除すると決めた。感染が再び広がらないよう変異ウイルスの有無を調べる検査の拡充など5つの対策に乗り出す。宣言を先行解除した地域には新規感染者が増えた自治体もある。再拡大防止策は決め手を欠く。新型コロナ対策本部で東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県の解除を決めた。同地域は7日だった期限を21日まで再延長していた。これにより1月7日に決めた2度目の宣言は全国で終わる。…解除決定には病床の使用率を重視した。1都3県はいずれも最も深刻な『ステージ4』から脱した。直近1週間の新規感染者数は『ステージ2』の水準になった。」(『日本経済新聞』2021.03.19)
●「政労使の3者が協力し、仕事を発注する親事業者に対して作成を働き掛けるパートナーシップ構築宣言の公表企業数が、1000社を超え、政府の成長戦略実行計画で掲げた目標を達成した。このうち建設業は117社に上っている。中小企業庁が公表企業数を前回発表した2020年10月30日以降に、竹中工務店が公表し、大手ゼネコン5社が出そろった。政府は、21年度内に2000社を目指す新たな目標を打ち出している。パートナーシップ構築宣言は、▽サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携▽親事業者と下請事業者の望ましい取引環境を規定する振興基準の順守――などに、重点的に取り組むことを親事業者が代表権を有する個人名で宣言する取り組み。17日時点で1012社が公表している。業種別で見ると、建設業は製造業(340社)に次いで2番目に多い。」(『建設通信新聞』2021.03.19)
●「新型コロナウイルスの感染拡大で上場企業が手元資金を増やしている。昨年12月末の上場企業(3月期決算)の手元資金は前年同月末比19%増え、計101兆円と過去最高になった。収益環境の先行きが見通せず、借入金などを増やし、設備投資や株主還元も絞っている。財務の安定性を示す自己資本比率は一定水準を維持しており、今後は積み上がった資金の活用法が焦点となる。」(『日本経済新聞』2021.03.23)
●「企業の温暖化ガス排出量に上限を設け、その過不足分を取引する市場が過熱している。欧州では排出削減目標の引き上げを受け、取引価格が昨年末より約3割高い水準で推移する。日本も排出量取引を導入すると企業の負担が年2.6兆円に達し、今後も膨らむとの試算がある。導入しなくても欧米が検討する国境課税が実現すれば同様の負担が生じる。脱炭素を進める技術革新を急ぐ必要がある。」(『日本経済新聞』2021.03.26)
●「建設経済研究所は、2035年度までの建設投資の中長期予測を『建設経済レポートNo.73』で公表した。新型コロナウイルス感染症の影響による投資減少が21年度に底打ちすれば、現在稼働中の大規模工事が終わる23-24年度に好況を迎え、早期に成長軌道に回復すると推定。他方、新型コロナの影響による投資減少が23-24年度まで続いていると、民間建築を中心に大きく伸び悩むおそれがある。」(『建設通信新聞』2021.03.26)

行政・公共事業・民営化

●「2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催に向け、経済産業省は日本政府が出展する『日本館』の基本構想案をまとめた。国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)達成といった社会課題の解決を目指し、最先端技術などを試験的に導入。資材調達から建物解体までの建設サイクル全体を通じた環境配慮も徹底する。21年度から基本設計に入り、23年度に建設工事を始める予定だ。」(『建設工業新聞』2021.03.16)
●「東京・中野区は、公契約条例の本年度の制定と来年度の施行を見送る方針を固めた。労働台帳の作成などによる事務負担の増加を懸念し、建設会社や業界団体から制定に反対する意見が寄せられたため。区は業界の声や新型コロナウイルスの流行による景気悪化などを踏まえ対応を今後検討する。区は条例制定に向けた事業者や労働者の意向を探るため、昨年8月~9月に意見聴取を実施した。区と契約実績のある区内外の建設会社や委託事業者、労働者団体など153者にメールや書面で意見を求めたところ、100着から回答があった。建設会社は39者中17者が制定に反対と意思表示した。反対理由は『数十者から百者以上にのぼる下請事業者に従事する労働者一人一人の賃金すべてを管理することができない』など。同様の理由で業界団体も5者中4者が反対した。制定に賛同する意見が多かったのは委託事業者と労働者団体。委託事業者は40者中34者が賛成あるいは条件付きで賛成と回答した。業務品質の向上などが理由に挙がった。一方、事務負担の増加や労働報酬下限額の上昇に合わせ、コスト増を懸念する声もあった。」(『建設工業新聞』2021.03.16)
●「総務省は地方自治体の2020年度第3四半期(20年12月末)時点の公共事業予算執行状況をまとめた。19年度から繰り越された予算と20年度当初予算の合算額(25兆0449億円)を対象にした契約率は、前年同期を0.7ポイント下回る71.6%。支出済み額の割合は0.9ポイント下回る30.5%だった。」(『建設工業新聞』2021.03.23)
●「国土交通省は、現実の都市をサイバー空間に再現してオープンデータ化する事業で、1年目の2020年度に56都市の3次元都市モデルを整備し、このうち東京都23区のオープンデータを先行公開した。誰でも無償でダウンロードできる。スマートシティーなどまちづくり分野でのデジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤として、利活用が今後進められる。『Project PLATEAU(プラトー)』として、3次元都市モデルを整備・活用・オープンデータ化する事業に20年度着手した。2次元の地図と、建物・地形の高さや建物の形状などを掛け合わせて作成した3次元の地図に、建築物の名称、用途、建設年などの属性情報を加え、3次元都市モデルとして都市空間そのものをデジタル上に再現。人口流動、環境やエネルギーのデータなどと統合することで、都市計画立案の高度化、都市活動のシミュレーション・分析などが可能になる。3次元都市モデルのオープンデータは、社会基盤情報流通推進協議会が運用するG空間情報センターで公開している。23区以外の都市は4月にアップロードする。3次元都市モデルを整備した都市数は56だが、23区を1つとしてカウントしているため、地方自治体数では78に上る。」(『建設通信新聞』2021.03.30)

労働・福祉

●「官民で作る建設キャリアアップシステム(CCUS)運営協議会(会長=青木由行国土交通省不動産・建設経済局長)の総会が16日に東京都内で開かれ、2021年度事業計画・収支計画を了承した。技能者や事業者の登録数など21年度目標の達成に向け官民一体で取り組むとともに、目標の下振れリスクに備え厳格に計画を管理。システム更新時により良いシステムとするため検討に入り、適切な更新費を積み立てる。」(『建設工業新聞』2021.03.17)
●「国土交通省は地域の建設業者を対象に、建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用を後押しする。行政・発注者と元請団体、専門工事業団体が意見交換する枠組みを検討するよう各地域に呼び掛ける。市町村を含め公共発注者への周知活動、元請団体に対するCCUS推進の要請も継続。専門工事業団体との意見交換会で県担当者のオブザーバー参加も呼び掛ける。」(『建設工業新聞』2021.03.19)
●「厚生労働省が22日にまとめた2020年(1-12月)の労働災害発生状況(速報、3月8日時点)によると、建設業での死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)2.7%減(7人減)の253人となった。建設業での労災による死亡者数は3年連続して減少することがほぼ固まった。近年の確定値までの推移からは、5月にまとめる確定値段階では260-270人程度になる見通し。過去最少だった19年の269人(確定値)を下回る可能性が高まっている。」(『建設通信新聞』2021.03.23)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)を起点とした技能者の処遇改善へ新たな1歩を踏み出す。29日に『専門工事企業の施工能力等の見える化評価制度』に基づいて、各団体が策定した評価基準を初めて認定する。初弾の対象は鉄筋、切断穿孔、基礎ぐい、とび・土工、建築大工、機械土工の6職種。2019年度のCCUSの本格運用、20年度のCCUSに連動した技能者の能力評価(レベル判定)に続き、21年度から所属する技能者のレベルなどに応じた専門工事企業の評価が始まる。」(『建設通信新聞』2021.03.29)
●「政府が30日発表した雇用関連統計によると、2月の完全失業率(季節調整値)は2.9%と前月から横ばいだった。2月の有効求人倍率(同)は1.09倍と5カ月ぶりに下がったが、低下幅は0.01ポイントと小幅だった。1月に発令された緊急事態宣言の雇用への影響は2月時点では限定的だったが、完全失業者数は194万人と13カ月連続で前年同月を上回っており、今後の行方は不透明だ。…地域によってばらつきは大きい。就業地別の有効求人倍率は最高の福井県が1.64倍で、最低の沖縄県は0.75倍だった。東京都や大阪府は昨夏以降、1倍を切った状態が続いている。地域によって感染の度合いが異なり、雇用情勢に影響を与えている。」(『日本経済新聞』2021.03.30)
●「自由業者などの国内のフリーランス人口が約1670万人になったとの調査を人材仲介のランサーズがまとめた。1年間で57%増えた。新型コロナウイルス禍による失業の増加や雇用不安の高まりで、インターネット経由で単発の仕事を請け負う『ギグワーカー』になった人が多い。フリーランスは①特定企業との雇用関係を持たない『自由業者(個人事業主含む)』②1社のみと雇用関係にありながら他社の仕事も常務委託などで請け負う『副業者』③複数企業と雇用関係を結ぶ『復業者』――からなる。2021年1~2月、国内約3千人を対象に実施したオンライン調査を基に推計した。従来ピークだった18年(1151万人)を大きく上回り、15年の調査開始以降、初めて労働力人口に占める比率が2割を超えた。)(『日本経済新聞』2021.03.31)
●「国土交通省と日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会の建設業4団体は、30日に開いた意見交換で技能者の賃金水準について、年間でおおむね2%以上の上昇を目指すことで一致した。今後の担い手の確保に向けて、技能者の賃金上昇を起点とした好循環が不可欠であるとの認識の下、具体的な数値目標を目指してすべての関係者が取り組みを進める。」(『建設通信新聞』2021.03.31)

建設産業・経営

●「除雪のオペレーターの高齢化や厳しい作業環境の現状が、群馬県建設業協会(青柳剛会長)が15日に公表したアンケート結果で浮き彫りになった。山間部の会員企業ほどオペレ一タ―が高齢化している。地域によって出動機会に差があり若い担い手の確保が難しい社が少なくない。人員不足から日中の工事と深夜の除雪の両立が困難な社もある。国土交通省や群馬県に現状を説明し対応を要請する。」(『建設工業新聞』2021.03.16)
●「主要ゼネコン27社の2020年4~12月期決算が12日に出そろい、連結ベースで21社が減収となった。本業のもうけを示す営業利益も16社が減少。単体の完成工事総利益(粗利益)率は公表している24社のうち10社が前年同期の実績を下回った。新型コロナウイルスの流行で民間工事を中心に受注環境が厳しく、単体受注高は19社が前年同期を割り込んだ。21年3月期の受注高は16社が減少を見込む。」(『建設工業新聞』2021.03.16)
●「国土交通省は19日、2020年度下請取引等実態調査の結果を発表した。法定福利費が内訳明示された見積書の活用状況は元請け、下請けともに上昇し、それぞれ約7割に上った。技能者の賃上げの状況は、引き上げが約8割と大勢を占める状況は変わらないものの、この調査項目を追加した17年度以降で初めて前年度比で減少に転じた。」(『建設通信新聞』2021.03.22)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は、2015年度に策定した『建設業の長期ビジョン』のフォローアップ結果をまとめた。25年度までの目標地点の折り返しとなる20年度末時点で、13テーマのうち10テーマは順調に実績が上がっている。中でも生産性向上による省人化は前倒しで目標を達成した。一方、技能者の世代交代や賃金水準の改善は遅れていた。…日建連は、25年度時点に必要な労働力を推定した上で、10%の生産性向上によって35万人相当の省人化と90万人の新規入職者の確保が必要とし、処遇改善などの対策に業界を挙げ取り組んできた。労働災害統計の延べ労働時間から技術者・技能者の1日8時間当たりの施工高を算出し、生産性の指標としている。25年度に10%の省人化を目標に設定している。15年比で10.9%の省人化を達成。土木・建築の平均で12.3%上昇した。34歳以下の若者を中心に90万人を確保する目標は、技能者306万人の確保はほぼ見込める状況となったものの、当初想定していたほど高齢層が離職しなかったことから世代交代が進んでいない。」(『建設工業新聞』2021.03.23)
●「国土交通省は26日、4月1日から施行する経営事項審査の改正内容を公布する。技術者・技能者の継続的な能力研さんを促す観点から、『知識および技術または技能の向上に関する建設工事に従事する者の取組の状況(W10)』を新設。所属する技術者のCPD(継続能力開発)の取得状況と技能者の建設キャリアアップシステム(CCUS)に基づく能力評価基準における取り組み状況に応じて加点評価する。」(『建設通信新聞』2021.03.26)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省の有識者会議は15日、住まい探しに当たって多くの消費者がアクセスする仕宅情報提供サイトで、事業者が住宅の省エネルギー性能を表示する取り組みについて、議論をおおむねまとめた。新築の分譲住宅と賃貸住宅を対象に、省エネ性能から算出した『目安光熱費』を表示する。2022年4月にマンションと戸建て住宅、10月に賃貸住宅で始める。」(『建設通信新聞』2021.03.16)
●「政府は19日、2021-30年度を計画期間とする新たな住生活基本計画(全国計画)を閣議決定した。省エネルギー基準の適合義務化や省エネ性能表示に関する規制など、50年カーボンニュートラル(CN)の実現に向けた住宅の規制強化に国土交通省が取り組む。環境省と経済産業省が連携して検討を進めている地球温暖化対策計画とエネルギー基本計画の見直しに合わせて、CN実現までの住宅分野の道筋を示すロードマップを策定する。」(『建設通信新聞』2021.03.22)
●「国土交通省が23日発表した2021年1月1日時点の公示地価は、商業・工業・住宅の全用途平均(全国)が前年比0.5%のマイナスと6年ぶりに下落に転じた。新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きく、三大都市圏はそろって下落。外出自粛や訪日客急減に伴う飲食店や小売店などの不振が地価を押し下げた。在宅勤務の浸透などで新たな住宅需要もあるが、回復には早期の感染抑止が欠かせない。」(『日本経済新聞』2021.03.24)
●東京電力福島第1原発事故をめぐり、避難指示区域外の福島県いわき市に居住する住民約1500人が国と東電に対し計約27億円の損害賠償を求めた「いわき市民訴訟」の判決が26日、福島地方裁判所いわき支部(名島亨卓裁判長)であった。名島裁判長は、国と東電に計約2億円の支払いを命じた。全国で約30ある同種の集団訴訟で国の責任を認めたのは一審では今回で8例目、二審では仙台高裁と東京高裁の2例ある。(『しんぶん赤旗』2021.03.027より抜粋。)
●「国土交通省は、第2次交通政策基本計画の素案をまとめた。10項目の政策目標を設け、それに基づく各施策の数値目標に120項目を設定する。主な数値目標として、港湾の温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルポート(CNP)に関して、2025年に20港で形成計画の策定を目指すことなどを掲げる。5月以降に閣議決定する。」(『建設通信新聞』2021.03.30)

その他