情勢の特徴 - 2021年4月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日本経済新聞社が都道府県の2021年度予算を調査したところ、知事選で骨格予算を組んだ秋田、千葉両県を除く45都道府県の一般会計の合計は54兆8532億円となった。新型コロナウイルス感染症対策に重点的に予算を投入する結果、20年度当初比8.3%増と、東日本大震災の復興費用を計上した12年度の3.4%増を大きく上回る突出した伸びとなった。」(『日本経済新聞』2021.04.19)
●「頻発・激甚化する自然災害を背景とした防災・減災、国土強靭化に対する国民意識の高まりを受け、公共投資予算は堅調に推移している。前払保証会社が発表している公共工事動向をみると、20年度累計の請負金額15兆3000億円超は、過去10年の最高値を更新。民主党政権下で、東日本大震災の発生直後だった11年度と比べ、約40%も上昇している。また、請負金額全体だけでなく、発注機関、工事場所(地域、自治体)別の一部でも最高値を記録している。」(『建設通信新聞』2021.04.19)
●「日本政策金融公庫(日本公庫)総合研究所は、中小企業を対象とした『自然災害の経営への影響に関するアンケート』の結果を公表した。東日本大震災や熊本地震など2010年代に発生した大規模災害によって、約2割の企業が被害を受けたことが分かった。急激に進む気候変動の影響で大規模災害が多発しているため、全体的に防災意識は高まっている。ただ、約6割の企業がBCP(事業継続計画)の策定など災害への備えが不十分と回答。今後、中小企業の防災対策を後押しする資金・人的支援やメリットの創出などが求められそうだ。」(『建設工業新聞』2021.04.19)
●「菅義偉首相は23日、新型コロナウイルスの緊急事態宣言を東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に発令した。期間は4月25日から5月11日までの17日間。酒類を出す飲食店や、生活必需品の売り場を除く1千平方メートル超の大型商業施設が休業要請の対象となる。大型連休中の人の流れを抑え込む対策を重視する。」(『日本経済新聞』2021.04.24)
●「国土交通省は高速道路の料金体系を見直す検討に入った。首都圏などの渋滞が発生しやすい区間で混雑時の料金を引き上げ、車の流入を減らす。今夏に曜日や時間帯で料金差をつける制度を試験的に始める。2021年度中の本格導入をめざす。将来は時間単位の料金設定を視野に入れる。需要に応じた料金変動で交通量を平準化する抜本的な改革となる。」(『日本経済新聞』2021.04.27)

行政・公共事業・民営化

●「北海道建設業信用保証、東日本建設業保証、西日本建設業保証の前払金保証実績に基づく2020年度累計(20年4月―21年3月)の公共工事動向がまとまった。請負金額は前年度比2.3%増の15兆3657億6000万円。2年連続で15兆円を超え、過去10年で最高値を更新した。国が大きく伸びている。東日本大震災発生後の11年度と比較すると約4兆1000億円拡大した。一方、件数は各発注機関とも落ち込み、全体では2.5%減の24万4277件にとどまった。年度当初はコロナ禍に伴って工事発注への影響が懸念されたが、件数・請負金額とも前年度並みとなった。」(『建設通信新聞』2021.04.16)
●「国土交通省は15日、官民が有する不動産関係データの連携を促進するため、土地と建物にひも付く共通コード(不動産ID)の仕組みを検討する方針を打ち出した。不動産関係のデータが連携することにより、不動産市場の透明性が増し、不動産取引が活発化するなどの効果を期待している。政府として5月ごろに見直す土地基本方針に、ルール整備の検討を位置付ける。…不動産IDは、▽土地▽建物(戸建て住宅)▽建物(区分所有建物ではない共同住宅)▽区分所有建物――の4種類の不動産を対象に、登記簿の不動産番号を用いたルールを整備する方向で検討する。土地、建物(戸建て住宅)、区分所有建物の3種類は、13桁の不動産番号をそのまま不動産IDとする。建物(区分所有建物ではない共同住宅)は、建物全体の不動産番号しかなく、賃貸のどの不動産取引で対象となる部屋ごとには存在しないため、不動産番号に枝番で階数や部屋番号を追加したIDにする考え。国交省によると、宅地建物取引業者やディベロッパーは不動産の仲介や開発などで、さまざまな主体が保有する不動産関係の情報を収集し、そのデータから同一の人物・企業などに1つのIDを付与してデータを統合する名寄せを独自に実施しているが、労力が大きいという。共通コードを整備して不動産関係データを連携することにより、不動産取引の活性化や、不動産業の生産性向上、消費者の利便性向上が期待できる。低未利用不動産の利活用が進み、所有者不明土地の所有者探索もしやすくなると見ている。」(『建設通信新聞』2021.04.16)
●「国土交通省は、直轄事業を対象とした災害発生時の入札や契約に関する対応をまとめたマニュアルを作成した。これまで大規模災害の発災時の都度、地方整備局などに対応を通知してきたが、近年の激甚災害の頻発化を背景に事前に統一的な内容を整備して記載している。緊急度に応じた随意契約や指名競争入札などの活用、一時中止措置、前払金の取り扱いといった事項を示し、災害時に必要となる対応を迅速に講じることができるようにする。同省が作成した『直轄事業における災害発生時の入札・契約等に関する対応マニュアル』は、22日付で各地方整備局などに送付した。大規模災害時には発注者間の連携が重要となることから、地域発注者協議会などの場を通じて、地方自治体にも直轄の取り組みを周知する。」(『建設通信新聞』2021.04.23)

労働・福祉

●「中小建設会社による働き方改革の取り組みが踊り場には入っている。全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)が会員に実施した時間外労働の実態調査によると、684社のうち452社が時間外労働は『減少傾向』と回答したものの、全体に占める割合は66.1%と前年調査から0.3ポイント低下している。109社は『大変多い』と回答。時間外労働の罰則付き上限規制が建設業に適用される2024年4月を見据え、対策の徹底がより必要になりそうだ。調査は昨年10~12月に2260社を対象に実施し、696社(回答率30.8%)が回答した。回答企業は従業員が10~50人未満(回答割合61.9%)、完成工事高が1億~10億円未満(62.5%)が多い。時間外労働の主な発生原因を複数回答で聞いた。『煩雑な書類作成』が416社で最も多い。『人手不足』が370社、『自然条件(雨天など)』が218社、『設計内容の不備』が179社、『適正な工期の発注でない』が140社で続いた。週休2日に取り組んでいると回答したのは270社で前年とほぼ同水準だった。」(『建設工業新聞』2021.04.16)
●「厚生労働省は19日、労働者の同意を前提にスマートフォンのアプリに給与を振り込めるデジタル払いに関する制度案を示した。キャッシュレス口座を手掛ける資金移動業者が破綻しても支払いが滞らないようにする保証の仕組みなど5つの要件を設ける。早期の制度化実現に向け安全性への懸念を示す労働組合の理解を得られるかが焦点になる。」(『日本経済新聞』2021.04.20)
●「中小建設企業の採用活動で苦戦が続いている。全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)が行った会員の実態調査によると、2020年度に新規に正社員を『採用していない』と回答した企業の割合は、技術者59.1%(前年60.2%)、技能者65.5%(69.5%)だった。『採用した』と回答した企業のうち、採用人数が『1人』の企業は技術者68.8%(68.7%)、技能者79.8%(75.2%)と多数を占め、採用できても若干名にとどまっている。」(『建設工業新聞』2021.04.20)
●「建設業の持続的発展への至上命題である『2021年でおおむね2%以上の建設技能者の賃金上昇』に向けた動きが、建設業団体で活発化している。日本建設業連合会(山内隆司会長)は、この目標の達成を前提とした下請契約の徹底を理事会の総意として決議した。全国建設業協会(奥村太加典会長)では、21年度事業計画に2%賃金上昇に関する項目を新たに追加。ダンピング(過度な安値受注)の根絶を含め、技能者の賃金水準向上がもたらす好循環は担い手の確保・育成に直結するだけに、業界内の推進、協調姿勢が明確化している。」(『建設通信新聞』2021.04.22)
●「厚生労働省が30日発表した2020年度平均の有効求人倍率は1.10倍となり、前年度を0.45ポイント下回った。下げ幅は石油危機の影響があり、0.76ポイント下がった1974年度以来46年ぶりの大きさで、比較可能な63年度以降では2番目になる。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、非正規の就業者数が減った。」(『日本経済新聞』2021.04.30)

建設産業・経営

●「大和ハウス工業は15日、2021年3月期の連結純利益が前の期比22%減の1820億円になったと発表した。44%減とする従来予想を520億円上回る。世界的な株高で年金資金の運用環境が改善したことで退職給付費用が減り、利益を押し上げる。配当を従来予想より6円多い年116円(前の期は115円)に増やす。」(『日本経済新聞』2021.04.16)
●「群馬県建設業協会(青柳剛会長)は20日、2021年度の始まりに当たり現状の課題などを把握するための会員アンケート結果を発表した。全体の半数以上が、公共工事の量が不足しているとの認識を示した。民間工事も含め、施工余力はあり、もっと工事量がほしいとの声が大勢を占めた。事業量不足などを背景に、約8割が売上高の減少を予想。災害時などに地域を守る建設業が存続するために、最低限必要として協会がかねてより訴えてきた『限界工事量』の確保が難局に直面している。また、処遇改善の切り札として国土交通省などが先導する建設キャリアアップシステム(CCUS)は、いまだ4割近くが『申請予定なし』の姿勢を崩さず、隅々までの普及・定着のハードルとなっている。」(『建設通信新聞』2021.04.21)
●「日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)の会員企業95社の2020年度受注総額は、前年度比0.7%減の15兆0403億円となった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い国内民間や海外の工事受注が減少したものの、国内官公庁工事の受注は堅調に推移した。7年連続で15兆円台を維持している。受注額の内訳は、国内14兆6849億円(前年度比2.6%増)、海外3554億円(56.8%減)。国内は民間10兆2179億円(4.6%減)、官公庁4兆4190億円(24.0%増)で、その他は479億円(23.4%増)。」(『建設工業新聞』2021.04.28)
●「建設経済研究所と経済調査会は28日、建設経済モデルによる建設投資の見通し(4月推計)を発表した。2021年度は名目建設投資を前年度比1.7%減の62兆1000億円と見込み、1月推計(2.4%減、61兆8000億円)から上方修正した。民間の住宅投資で3大都市圏を中心に下げ止まりの兆しがみられると分析している。21年度名目建設投資見通しの内訳は、政府建設投資が2.6%減の24兆9900億円、民間住宅投資が0.4%減の15兆0600億円、民間非住宅投資が2.2%減の16兆4600億円、民間建築補修投資が0.7%増の5兆5900億円となった。」(『建設通信新聞』2021.04.30)
●「日本建設業連合会(日建連)は、28日に東京都内で定時総会と理事会を開き、任期満了で山内隆司会長(大成建設代表取締役会長)が退任し、副会長土木本部長を務めていた宮本洋一清水建設代表取締役会長が新会長に就く人事を正式決定した。発足10年の節目に新体制へ移行。直面するコロナ禍の難局を乗り越え会員の総力を結集し事業活動を推進していく。」(『建設工業新聞』2021.04.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「不動産経済研究所が19日発表した1~3月の首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築マンションの発売戸数は前年同期比37.1%増の6671戸だった。新型コロナウイスル禍のなか、郊外物件の人気が加速した。一方、都心部の物件は土地代や人件費の上昇で販売価格が高止まりし、売れ行きが立地などに左右される傾向が強まっている。20年度上半期(20年4~9月)は新型コロナ禍で販売会社がモデルルームを相次ぎ閉鎖し、発売戸数が上半期として初めて1万戸を下回った。だが、その後の全体供給は回復傾向が強まり、下半期(20年10月~21年3月)は2万戸強に達した。20年10~12月は前年同期比15.5%増、21年1~3月は同37.1%増と伸び率は拡大している。」(『日本経済新聞』2021.04.20)
●「国土交通、経済産業、環境の3省は19日、2050年カーボンニュートラル(CN)を踏まえた住宅・建築物の省エネルギー対策と、住宅・建築物での再生可能エネルギーや未利用エネルギーの利用拡大について、具体的な検討を始めた。6月に検討結果をまとめる。小規模建築物と住宅の省エネ基準適合義務化や、新築住宅への太陽光パネル設置義務化などに踏み切るかが焦点となる。」(『建設通信新聞』2021.04.20)
●「所有者がわからない土地の問題を解決するための関連法が21日の参院本会議で可決、成立した。土地や建物について相続を知ってから3年以内の登記を義務付ける。2024年をめどに施行する。全国には所有者が分からず公共事業や再開発の妨げとなる土地が多い。有効活用するだけでなく、新たな所有者不明土地の発生も抑える。改正民法、相続土地国庫帰属法が成立した。民間の調査では登記上の所有者が確認できない土地は日本の総面積でみると九州本島より広いという。法整備の狙いの一つは、これまで所有者が不明だった土地を市場に流通させることだ。裁判所の判断で所有者が分からない土地の用途を変更したり売却したりできる制度にする。放置されて荒廃した所有者不明の土地は裁判所の許可を経て売却できる。代金は裁判所が管理する。今まで休眠状態だった土地が市場に出回ることになる。共有者がわからない共有地も利用しやすくする。裁判所が決めれば、所在不明の共有者を除外した共有地に宅地の造成などが可能だ。所在不明の共有者の持ち分については、相当する金銭を供託して取得・売却できるようにする。所有者が不明の土地は都市部より地方に多いとされる。そのため商業的な効果が大きい土地の取引が一気に進むわけではない。とはいえ市街地でも権利関係が込み入って開発が頓挫した場所の利用が促進される可能性がある。法整備のもう一つの狙いはさらに所有者不明の土地を増やさないことだ。相続を控えている人に関係してくる。相続が分かって3年以内に登記するよう義務付け、手続きも簡素にする。…土地を手放しやすくする制度も盛り込んだ。今回成立した相続土地国庫帰属法では、望まない土地や利用価値が乏しい土地を相続して手放したい人は不要な土地を国庫に納付できるようにした。23年をめどに導入する。…納付された土地は国が公共の用途に利用できるよう一般競争入札などを通じて売る。成立しなければ国が管理する。」(『日本経済新聞』2021.04.22)
●「住宅の梁や柱に使う木材の流通価格が一段と上昇した。住宅需要が旺盛な米国に世界から木材が集まり、日本で不足している。柱などの木材を工場で事前に加工処理するプレカットメーカーは、受注制限や値上げを始めた。住宅の着工が遅れる可能性があるほか、住宅メーカーの収益の圧迫要因になる。」(『日本経済新聞』2021.04.22)
●「米政府が主催する気候変動に関する首脳会議(サミット)が22日、オンラインで開幕した。会議に先立ち主要国は2030年に向けた温暖化ガスの排出削減目標を相次ぎ打ち出し、日本は13年度比で46%減、米国は05年比50~52%減らすと表明した。主要排出国が脱炭素で競い合うが、再生可能エネルギーの導入拡大など実効性をどう確保するかが課題となる。」(『日本経済新聞』2021.04.23)
●「政府は23日に東京都内で有識者会議を開き、2021年度『国土強靭化年次計画』の策定に向けた素案検討資料を公表した。20年7月豪雨や大雪など20年に発生した災害の教訓や、急激に進む気候変動の影響などを踏まえ、施策を拡充。あらゆる関係者が協働する『流域治水』の取り組みなど441施策を展開する。『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化計画』(21~25年度)の着実な推進に向け、進捗状況の把握・管理も行う。5月10日まで検討資料への意見を募集。さらに検討を深め、6月の計画決定を目指す。」(『建設工業新聞』2021.04.26)
●「運転開始から40年を超える福井県内の原子力発電所3基を巡り、同県の杉本達治知事は28日午前、再稼働に同意すると表明した。再稼働に必要とされる地元同意の手続きが完了した。東京電力福島第1原発の事故を受けて『原発の運転期間は原則40年、最長20年まで延長可能』とするルールができて以降、全国で初めて40年を超える原発が再稼働する。」(『日本経済新聞』2021.04.28)
●JR東海は27日、リニア中央新幹線の品川―名古屋間の総工事費が従来の計画に比べ約1.5兆円増え、7兆400億円になる見通しだと発表した。地震対策の充実などを理由としている。…約1.5兆円の主な増加要因は、地震対策の充実が6000億円。品川、名古屋両駅の複雑な工事などへの対応が5000億円。トンネル工事などで発生する土の活用先確保が3000億円としている。(『しんぶん赤旗』2021.04.29より抜粋。)
●「国土交通省が28日に公表した建築着工統計調査報告によると、2020年度の新設住宅着工戸数は前年度比8.1%減の81万2164戸だった。持家、貸家、分譲住宅の全区分が前年度を下回り、2年連続で減少。リーマン・ショック直後の09年度に次ぐ低水準に落ち込んだ。一方、足元では3月単月の着工戸数が21カ月ぶりに増加に転じるなど持ち直しの動きもみられる。利用関係別の着工戸数は、持家が7.1%減の26万3097戸で2年度連続の減少。1961年度以来、約60年ぶりの低水準となった。貸家は9.4%減の30万3018戸で、4年度連続の減少。分譲住宅は7.9%減の23万9141戸で、2年度連続の減少。分譲住宅のうち、マンションは3.1%減の10万8188戸、一戸建て住宅は11.5%減の12万9351戸となった。」(『建設通信新聞』2021.04.30)

その他