情勢の特徴 - 2021年5月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「高齢者が持ち家を担保に住み続けて資金を借りる『リバースモーゲージ』の利用が増えている。亡くなるまで返済が原則、一切不要の商品が登場するなど多様化も進み、推定融資残高は1600億円前後と過去3年で500億円ほど増加。新型コロナウイルス下でも老後資金の需要は旺盛だ。」(『日本経済新聞』2021.05.19)
●「世界の主要な国・地域の1~3月期の国内総生産(GDP)速報値が出そろった。中国や米国の景気回復が加速した一方、日本や欧州の遅れが鮮明になった。新型コロナウイルス対策の巧拙を映しており、4~6月期には中国に加えて米国のGDPもコロナ禍前の水準を上回る見通しだ。春以降にワクチン接種が進んだ欧州も4~6月期以降の回復期待が強まっており、日本が取り残されるリスクがある。内閣府が18日発表した日本の1~3月期の実質国内総生産(GDP)の速報値は3四半期ぶりのマイナス成長となり、前期比年率で5.1%減だった。1月8日に始まった首都圏4都県の2度目の緊急事態宣言を受けた外出自粛や飲食店での時短営業などで、個人消費は前期比1.4%減少した。設備投資も1.4%減と落ち込み、2四半期ぶりに減少した。輸出の伸びも前の期から鈍化した。主要国・地域ごとの1~3月期の経済成長率を比べると、コロナ対策が明暗を分けた。米国は前期比年率6.4%増と3四半期連続で増えた。ワクチン接種が普及し、バイデン政権の経済対策による現金給付も始まったことで、個人消費が10.7%増と大きく伸びた。今後も財政出動の押し上げ効果などから景気回復は続く見通しだ。中国は前期比0.6%増。内閣府によると年率換算では2.4%増となった。プラスとなるのは4四半期連続だ。新型コロナのまん延を食い止めつつ、企業活動が堅調に推移している。一方でユーロ圏は前期比年率2.5%減と2四半期連続のマイナスになった。変異ウイルスの拡大で各国が都市封鎖(ロックダウン)し、経済活動が低迷した。落ち込み幅は日本よりも小幅だった。遅れていたワクチン接種も春以降ドイツなどで進んでおり、4~6月期以降は回復に向かうとの期待が大きい。」(『日本経済新聞』2021.05.19) 
●「2023年10月からの導入が決まっている消費税の仕入税額控除の新方式『適格請求書等保存方式(インボイス制度)』に関し、国土交通省が建設業界へのアンケー卜を始めた。課税売上高が年1000万円以下で、納税義務が原則免除される『免税事業者』が、新方式の導入で不利益を被る懸念が出ていることが背景にある。国交省は調査を通じ新方式の周知に努めるとともに、今後の施策展開の参考となる意見を収集する考えだ。」(『建設工業新聞』2021.05.20)
●「政府は、経済財政諮問会議(議長・管義偉首相)を首相官邸で25日に開き、2022年度予算の編成方針など示す『経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)』骨子案を議論した。新型コロナウイルス対策や防災・減災、国土強靭化に注力する。ポストコロナ時代を見据え、グリーン社会やデジタル化の実現策に重点投資し経済成長の原動力にする。社会資本整備を巡っては予防保全型メンテナンスへの転換や民間資金の活用に積極的に取り組む方針だ。」(『建設工業新聞』2021.05.27)

行政・公共事業・民営化

●「与党は18日、外国人の入管施設での長期収容を防ぐ出入国管理法改正案を巡り今国会での成立を断念した。新型コロナウイルスのワクチン接種の遅れや緊急事態宣言の延長で内閣支持率が低下傾向にある。採決を強行すれば7月の東京都議選や秋までにある衆院選に影響しかねないと判断した。…改正案は国外退去処分を受けたにもかかわらず入管施設に長期間にわたって収容される外国人を減らす狙いがあった。柱のひとつがこれまで制限がなかった難民申請の回数に例外を設ける規定だった。申請すると申請中は理由に関係なく母国へ送還できない。帰国を拒むため乱発する事例があり、3回目以降は強制送還の対象にした。」(『日本経済新聞』2021.05.19)
●「国土交通省と総務省は21日、地方自治体における施工時期の平準化の進捗・取り組み状況をまとめ、公表した。前年度に約30団体あった平準化のための取り組みが未実施の人口10万人以上の市区がゼロになったことを始め、多くの項目で進捗が確認できた。一方、柔軟な工期設定など一部で導入が広がっていない項目があるほか、人口10万人未満の自治体では未実施が大部分を占めている。両省は連名で自治体に対して、今回の結果を踏まえさらなる取り組みの推進を図るよう要請した。」(『建設通信新聞』2021.05.24)
●「国土交通省は、公共工事発注者の入札・契約に関する実施状況を示す『入契調査』の結果を公表した。ダンピング(過度な安値受注)対策では、低入札価格調査制度や最低制限価格制度の算定式を最新モデルに改めた市区町村が231団体増加するなど進捗が確認できた。一方、低入札価格調査基準価格を下回って落札した場合に実施すべき監督・検査の強化、配置技術者の増員など適正な施工確保のための措置の導入が、市区町村で遅れていることも明らかになった。」(『建設通信新聞』2021.05.25)

労働・福祉

●建設資材に含まれたアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を受けたとして各地の元建設作業員や遺族が国と建材メーカーを訴えた「建設アスベスト訴訟」の上告審判決が17日、最高裁であり、第1小法廷(深山卓也裁判長)は国とメーカーの責任を認めた。弁護士らは「基本的に勝利した」「13年にわたるたたかいで大きな前進を勝ち取った」と評価した。アスベスト建材をめぐっては2008年以降、全国で1200人以上の原告が33件の訴訟を提起した。このうち東京、神奈川、京都、大阪の4訴訟についてこの日、アスベスト訴訟に関する最高裁として初の判断を示した。判決は、国が「昭和50(1975)年にはアスベストを含む建材について肺がんや中皮腫などの重篤な疾患を発症する危険があることを示すよう(事業者に)指導監督すべきだった」「防じんマスクなどの保護具を使用させることを事業者に義務付けるべきだった」などと判断。違法な状態は「75年から04年まで継続した」(神奈川訴訟)とした。建材メーカーについては、発症の危険があることを建材に表示する義務があったのに怠ったと指摘。「複数の企業が個別にどの程度の影響を与えたかは不明」としつつ、シェアの高いメーカーの製品は現場に届いた可能性が高いなどとして各社の共同不法行為を認め、「各社は連帯して損害賠償責任を負う」と述べた。これまで各地の地裁・高裁判決では、国と建材メーカーの責任をより幅広く認める判決が相次いだ。国は同種訴訟として異例の10以上の敗訴を重ねてきた。 当初、「労働者ではない」とされた個人事業主の「一人親方」の救済も一部訴訟ですでに確定。最高裁は判決でその理由について「危険にさらされるのは労働者に限られない」と述べ、一人親方を救済しないことは「合理性を欠き、違法」だと結論付けた。一方でこの日の判決は、屋根工などとして屋外作業に従事した原告について救済を否定。弁護士は「今後の訴訟もある。すべての被害者の救済に向けて引き続きたたかう」などと語った。(『しんぶん赤旗』2021.05.18より抜粋。)
●「建設現場でのアスベスト(石綿)による健康被害を巡り、最高裁が国と建材メーカーの責任を認める統一判断を示したことを受け、政府は18日、原告1人あたり最大1300万円の和解金を支払うことなどで原告側と基本合意した。今後も長期的に被害者の発生が想定される大規模な労働災害は、救済に向けて前進した。…基本合意書によると、国は被害者と遺族に深くおわびするとしたうえで、原告1人当たり病状などに応じて550万~1300万円の和解金を支払う。和解金のほかに、長期間の訴訟対応の負担などに配慮し、国は30億円の解決金も支払う。与党は議員立法で、末提訴の被害者にも同額の給付金を支払う救済法を制定する方針。基本合意書には、国が与党による法案化作業に積極的に協力するといった内容も盛り込まれた。石綿関連の対策や補償について、継続的に協議することでも合意した。」(『日本経済新聞』2021.05.19)
●「ネット経由で単発の仕事を請け負う自営の労働者『ギグワーカー』を、社会保障などの面で保護する動きが出てきた。日本政府が労災保険の対象を広げるほか、スペインは雇用契約を結んだ労働者と同等に扱うことを決めた。新型コロナウイルスの影響による失業もあってギグワーカーは急増している。報酬水準が低いケースが多く所得格差の拡大につながりかねないとみて、各国が対応を急ぐ。ギグワーカーは料理宅配サービス『ウーバーイーツ』の配達員やライドシェアの運転手が代表例だ。日本ではアルバイトなど非正規雇用者にも通用される、最低賃金などの規定の対象外だ。労働法は原則として雇用者に適用されるからだ。厚生労働省は料理宅配員やフリーランスのIT(情報技術)エンジニアに対し、労災保険への特別加入を認める方針。年内に省令を改正する。料理宅配員は交通事故のリスクがあり、ITエンジニアは長時間作業による腰痛などが問題になっている。国内でもギグワーカーが急増するなか、安全網整備が必要と判断した。日本のギグワーカーは、兼業も含め数百万人とみられる。日本はギグワーカーと雇用者を区別し、保護策は報酬の支払い遅延防止といった独占禁止法などに基づくものが中心だった。労災保険の適用は新たな対応といえる。ただ雇用保険や最低賃金を適用する動きはない。…国際労働機関(ILO)によれば、ギグワーカーの時間当たりの報酬は世界平均で3.4ドル(約370円)にとどまる。IT系などでは、雇用者に比べて6~8割安いとの統計もある。ギグワーカーの急増は、社会不安や経済格差の拡大につながりかねない。一方で、ギグワーカーの中には高度な技能を持つ技術者やクリエーターもいる。一律で雇用者と同等に扱うと働き方の自由度がそがれ、新たなビジネスも生まれにくくなる。多様な働き方に合わせた、きめ細かなルールづくりが必要だ。」(『日本経済新聞』2021.05.21)
●「専門工事業団体や国土交通省で構成する『建設技能者能力評価制度推進協議会』は、建設キャリアアップシステム(CCUS)に基づく技能者の能力評価に関して、利便性向上に向けた改善を図ることを決めた。現状、技能者の能力評価を行うレベル判定システムはCCUSとは独立して運用されているが、申請手続きの負担を解消するため、CCUS上でレベル判定の受け付けやカード発行をワンストップで実施できる仕組みを検討する。ワンストップ化に向けた検討・準備を進めるため、現行のレベル判定システは6月16日をもって停止する。」(『建設通信新聞』2021.05.21)
●「厚生労働省は26日、労働災害統計の死亡災害発生状況には含まれない建設業での『一人親方』の死亡者数が、2020年(1-12月)は前年比3人減の57人だったと明らかにした。労働者扱いとはならない中小事業主や役員、家族従事者も含めた『一人親方など』の20年死亡者数は5人増の97人だった。中小事業主の死亡者数が前年の27人から7人増の34人となった。」(『建設通信新聞』2021.05.27)
●「新型コロナウイルス禍が賃金に影を落としている。厚生労働省によると2020年度の1人当たり現金給与総額(月平均)は前年度比1.5%減の31万8081円となり8年ぶりに減少した。経団連の集計では21年の春季労使交渉の賃上げ率も8年ぶりに2%を割り込んだ。足元では緊急事態宣言が延長され、雇用環境の改善は遅れている。賃金の下押し圧力は長引く懸念がある。厚労省が28日発表した20年度の毎月勤労統計調査(確報値)にはコロナの打撃が鮮明に表れた。賃金の落ち込みが目立ったのは、飲食サービス業(7.0%減)や運輸・郵便業(5.4%減)など。外出の自粛などの影響を受けやすい業種だ。パートタイム労働者の数は1593万5000人で0.9%減った。減少は調査を始めた1990年以来初めて。不安定な就労環境で雇い止めが広がった可能性がある。月間の総実労働時間も3.0%減り、134.6時間となった。休業や営業時間の短縮で残業時間が少なくなった。残業代などの所定外給与は1万7028円で、13.3%の大幅減だった。」(『日本経済新聞』2021.05.29)

建設産業・経営

●「国土交通省は、建設工事受注動態統計調査の2020年度の集計結果をまとめた。全体の受注高は前年度比3.4%減の79兆5988億円。国直轄を中心に公共受注が2年連続で増加したものの、製造業など民間受注のマイナスが大きく、全体として減少となった。一方、足元(3月単月)では、建築工事の受注が1年ぶりに増加に転じるなど持ち直しの動きもみられる。内訳は元請受注高が0.8%減の54兆1136億円、下請受注高が8.6%減の25兆4852億円となっている。…元請受注高のうち、公共機関からの受注は7.3%増の17兆8680億円だった。1件500万円以上の工事に絞った20年度の公共機関からの受注額は8.1%増の17兆2674億円。発注機関別では、独立行政法人や政府関連企業等を含む『国の機関』が22.7%増の6兆7260億円、都道府県や市区町村、公営企業などで構成する『地方の機関』が0.6%増の10兆5414億円となった。民間等からの受注は4.3%減の36兆2456億円。1件5億円以上の建築工事や建築設備工事に絞った受注額は0.4%減の9兆7113億円となった。不動産業からの受注は9.4%増の3兆9614億円と前年度の減少から増加に転じたものの、製造業は15.8%減の1兆6008億円と減少が続いている。1件500万円以上の工事を対象にした民間の土木工事および機械装置等工事の受注額は1.6%減の6兆8619億円となった。」(『建設通信新聞』2021.05.17)
●「大手・準大手ゼネコン26社の2021年3月期連結決算が出そろった。東京五輪関連工事の一服やコロナ禍による海外工事の停止、国内建築工事の延期・中止などが重なり、16社が連結で減収減益となったものの、当初の想定よりは低下幅を縮小できた企業が多い。22年3月期も、競争激化による完成工事総利益(粗利)率の低下の顕在化など厳しい環境にあるものの、コロナ禍からの回復によって建設需要は底堅いとの見方が大勢を占めている。21年3月期の連結売上高は、23社が前期を下回った。国内では、東京五輪関連工事の一服などによって着工したばかりの大型工事が多く、売上や利益の増加につなげにくかったほか、海外比率が高い大手ゼネコンを中心にコロナ禍による東南アジアでの工事の一時中止とその後の生産活動の制約によって売上高を伸ばせなかった。利益面は、売上高の減少とともに、単体の粗利で9社が前期を下回るなど競争激化の影響が少しずつ顕在化し始めている。土木の粗利も10社が前期を下回り、さらに建築も11社が前期比減で15社が1桁台となった。22年3月期は一転、18社の連結売上高が前期比増と見込むなど、大型工事の進捗によって売上高が回復する見通しだ。『コロナ禍で延期となっていた案件が動き出す』との見方が広がっており、受注面でも16社が前期比増を見込み、特に建築では16社が前期を上回る見通しとした。」(『建設通信新聞』2021.05.17)
●「国土交通省は17日、2020年度末(21年3月末)時点の建設業許可業者数を発表した。総数は47万3952業者。前年度末に比べて0.3%、1479業者打増加だった。1994年に許可の有効期限が5年に延長されて以降、許可更新が多い年度と少ない年度には周期性があり、今回のように3年連続で増加した例は無かった。ピーク時から減少し続けていた業者数がようやく底を打ったとの見方ができそうだ。」(『建設工業新聞』2021.05.18)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省らは『脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会』 (座長・田辺新一早稲田大学創造理工学部教授)の第3回会合を19日にウェブで開いた。住宅・建築物の省エネ基準を段階的に引き上げ、適合を義務化する方針で委員らの意見が一致。太陽光発電設備の設置義務化に関しては意見が分かれた。議論のとりまとめは6月下旬を予定。以降に国は詳細な制度設計に取りかかる。省エネ基準の適合義務化を見据えた誘導措置を設ける。新築で補助金などの支援を受ける際、基準への適合を必須条件にする。主に施工を担う中小の建設会社に対し、断熱技術の講習会なども開催。延べ300平方メートル以下の住宅に対する義務化は段階的に実施し、個人への過度な負担を避ける方針だ。」(『建設工業新聞』2021.05.20)
●「国土審議会(国土審、国土交通相の諮問機関)計画推進部会国土の長期展望専門委員会(委員長・増田寛也東京大学公共政策大学院客員教授)は、20日にウェブで会合を開いた。今後の国土政策の方向性を定める『国土の長期展望』の最終取りまとめ案を議論。防災力の強化や交通ネットワークの拡充などを通じ、持続可能な国土の形成を目指す方針を確認した。」(『建設工業新聞』2021.05.21)
●「国土交通省は21日、熊本県内を流れる球磨川で計画していた川辺川ダムに代わるダムとして、2021年度から調査・検討を進めている流水型ダムについて、環境影響評価法と同等の環境影響評価(環境アセスメント)を実施する方針を発表した。社会資本整備審議会の河川整備基本方針検討小委員会に球磨川水系河川整備基木方針の見直し検討を今後諮り、見直し後に環境アセスメントの手続きを始める。新たな流水型ダムは、20年7月の豪雨により、球磨川で甚大な水害が発生したことを受け、『ダムによらない治水対策の追求』を掲げていた蒲島郁夫熊本県知事が同11月に方針を転換し、貯留型で計画されていた川辺川ダムに代わって環境に配慮できるダムとして、赤羽一嘉国土交通相に建設を求めていた。環境影響評価法に基づく環境アセスメントは、大規模で環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業を対象に、環境影響の調査・予測・評価などを行う環境影響評価を事業者が事業着手前に実施する。」(『建設通信新聞』2021.05.24)
●「災害で住宅が半壊した世帯を救済するため、昨年12月に施行された改正被災者生活再建支援法の効果が乏しい実態が明らかになった。昨年の7月豪雨に遭い、改正法の適用第1号となった自治体では、半壊した計約4千世帯のうち、最大100万円の支援金の対象となったのは約3割にとどまる。残る約7割は支給要件を満たさず対象外となった。半壊した住宅の修理費は平均約350万円とされる。今後の災害でも同様の傾向が続けば、要件緩和を求める声が強まりそうだ。これまでの支援法は、全壊や大規模半壊などが対象で、半壊は対象外だった。改正法は、家屋の損害割合が20%以上40%未満と定める半壊を2つに分割。被害程度の大きい30%以上40%未満を新たに『中規模半壊』と規定した。該当する世帯は再建方法に応じ、25万~100万円の支援金が受け取れる。支援対象の拡大は約20年ぶり。改正法は、昨年の7月豪雨で多数の住宅被害が出た熊本など6県の54市町村にさかのぼって適用した。各自治体によると、法改正前に半壊と認定されたのは計4012世帯。このうち法改正後の追加調査により、事後的に中規模半壊と認定され、支援金の支給対象となったのは今年3月末時点で約3割の1378世帯だった。内閣府の担当者は、3割にとどまったことについて『災害救助法など半壊世帯を対象とした他の支援制度もあり、被災者に活用を促してサポートに努めたい』としている。」(『日本経済新聞』2021.05.25)
●「米国の活発な住宅着工に伴う木材相場高『ウッドショック』の影響が、日本の住宅用木材の流通価格に一段と及んできた。梁や柱に使う集成材が最高値を更新した。欧州から米国への木材供給が増えたあおりで、日本で欧州産原料の不足感が強まったためだ。同じく梁や柱に使う米松製材品も上昇し、住宅業界のコスト負担が増している。」(『日本経済新聞』2021.05.25)
●「東京電力福島第1原子力発電所事故の除染を巡り、会計検査院が福島県の11市町村(帰還困難区域を除く除染特別地域)の空間線量の測定記録のうち約56万地点を調べたところ、約2%に当たる約1万3千地点で除染後の数値が前より下回らず、効果の有無を確認できないことが27日までに分かった。検査院は作業から測定までの間隔が長期にわたったり、均一でなかったりした点を問題視し、環境省に改善を求めた。」(『日本経済新聞』2021.05.27)
●「2050年の温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を明記した改正地球温暖化対策推進法が26日、成立した。脱炭素の実現には日米欧と中国の4地域だけでも21~50年に必要な投資が8500兆円に及ぶとの試算がある。巨大市場を取り込んで成長につなげるか、海外の技術や製品への依存に甘んじるか。世界経済の勢力図を左右する技術競争が正念場を迎える。改正法は22年4月の施行をめざす。50年までに温暖化ガスの排出量と森林などによる吸収量を均衡させる『実質ゼロ』を実現するとの政府目標を基本理念として条文に明記した。政権が代わっても将来にわたって政策を継続させることを約束し、企業の中長期にわたる投資を促す。」(『日本経済新聞』2021.05.27)
●「政府は、第5次『社会資本整備重点計画』(2021~25年度)と第2次『交通政策基本計画』(同)を28日に閣議決定した。グリーン社会実現への国際的機運の高まりやデジタル化の進展といった社会情勢の変化を踏まえ、両計画とも脱炭素化対応やインフラ、運輸両分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を重点項目に追加。『インフラ経営』など新たな視点の導入や数値目標の設定といった手法を駆使し、効果的に施策を展開する。」(『建設工業新聞』2021.05.31)

その他

●「新型コロナウイルスの感染拡大で、ベトナムから海外への人材派遣が大幅に減少している。派遣人数の過半を占める日本のほか、19日から台湾も外国人の新規受け入れを停止した。ベトナム政府は2025年までの5年間で50万人を派遣する方針だが、実現を危ぶむ声が強まっている。ベトナム労働・傷病軍人・社会事業省によると21年は20年比で1万人強多い9万人の人材を海外に派遣する計画だ。しかし、3年連続で派遣先のトップだった日本に加え、感染者が急拡大した台湾も19日から在留資格がない外国人の入境を原則的に禁止した。21年1~3月の派遣先は日本が約1万8000人で、台湾は約1万人。それ以外の国でも往来制限が続く。ベトナムは21~25年の5年間に50万人を海外に派遣する方針を打ち出している。世界銀行によると、ベトナムの海外出稼ぎ労働者らが20年に自国に送金した金額は約170億ドル(約1兆9千億円)。送金額が国内総生産(GDP)に占める割合は5%だった。」(『日本経済新聞』2021.05.24)
●「S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが25日発表した3月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(全米)は前年同日比13.2%上昇した。上昇率は2005年12月以来、約15年ぶりの大きさとなった。経済対策や株高で家計の懐が潤う一方、木材などの不足も相まって価格上昇が加速している。」(『日本経済新聞』2021.05.26)