情勢の特徴 - 2021年6月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「事業者側の物流施設の開発意欲が一段と高まっている。事業用総合不動産サービスを手掛けるCBRE(東京都千代田区、坂口英治社長兼最高経営責任者〈CEO〉)がまとめたリポートによると、国内で物流施設を利用する物流・荷主企業239社に3月実施した調査で、全体の74%が今後3年間の拠点戦略で『倉庫面積を拡大』と回答。前年の67%から7ポイント高く、開発需要は引き続き堅調に推移する見通しだ。開発エリアでは、郊外の巨大施設や住宅地に近い都心型などの従来タイプよりも、サプライチェーン(供給網)の川上にある生産工場に近い場所など、大都市圏から外れたエリアを希望する社が多かった。コロナ禍の2020年を経た今後3年間の事業環境の見通しについて、64%の社が『大幅に改善』『ある程度改善』と回答。インターネット利用の支出総額(20年12月時点)は前年同月比24%増となり、EC(電子商取引)関連の物流需要も増加傾向が続く。」(『建設工業新聞』2021.06.18)
●「日本経済新聞社がまとめた2021年度の設備投資動向調査で、全産業の計画額は前年度実績比10.8%増える見通しだ。2年ぶりに増加に転じ、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に並ぶ。需給が逼迫する電子部品への対応やデジタル投資を増やし、成長に備える動きが目立つ。コロナ後を見据えて運輸などでも投資を増やす動きが出てきた。ただ半導体不足や世界の感染状況次第の面もあり先行きは不透明感も残る。」(『日本経済新聞』2021.06.21)
●「新型コロナウイルス禍を受けて2020年春から積み増してきた国の予算73兆円のうち、約30兆円を使い残していることが判明した。家計や企業への支払いを確認できたのは約35兆円と名目国内総生産(GDP)の7%程度にとどまった。GDPの13%を支出した米国と比べ財政出動の効果が限られる展開となっている。危機脱却へ財政ニーズが強い時にもかかわらず予算枠の4割を使い残す異例の事態は、日本のコロナ対応の機能不全ぶりを映し出している。」(『日本経済新聞』2021.06.24)
●「国の2020年度の税収が新型コロナウイルス禍の直撃を受けたにもかかわらず、19年度を上回ることが分かった。20年12月時点で見込んでいた55.1兆円から3兆円以上の税収の上振れとなり、58兆円を超す。コロナ禍の影響が想定より軽微にとどまり、法人税収の従来の見積もりを上回る見通しだ。19年10月の消費増税の効果が本格的に表れたことも税収を押し上げた。」(『日本経済新聞』2021.06.25)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、技能者の賃金上昇に向け、地方自治体発注工事における環境整備を要請した。担い手の確保・育成に必要な適正利潤を担保するため、自治体に対して適正な予定価格の設定や契約変更の徹底、ダンピング(過度な安値受注)対策の強化などを働きかける。自治体においても中長期的な見通しの下で安定的・持続的な公共投資の確保を図ることも求めた。同省は15日に総務省と連名で、各都道府県、政令市に対して、『技能労働者の処遇改善に向けた環境整備のための適正な入札及び契約の実施』を通知した。3月30日に開催した国交省と建設業4団体の意見交換で合意した、年間でおおむね2%以上の技能者の賃金上昇を目指すという目標に向けた取り組みの一環だ。」(『建設通信新聞』2021.06.16)
●「東京都府中市で公契約条例の制定に向けた議論が進んでいる。他自治体の条例を基に規定内容や効果を調査中で、市内企業や市議会から制定を求める声が寄せられているという。9日の市議会総務委員会に日本労働組合総連合会東京都連合会(連合東京)の『府中市における公契約条例(仮称)の制定についての陳情』が付議され、賛成多数で採択された。陳情では公共工事の入札契約手続きで過度など価格競争が安全管理費や人件費の削減につながり、施工品質の低下や中小企業の疲弊をもたらすと指摘。契約の透明化や地元企業への配慮を定めた公契約条例で地域建設業の活性化、企業育成を促す必要があるとして早期制定を求めた。」(『建設工業新聞』2021.06.17)
●「総務省は2020年度の地方自治体による公共事業予算の執行状況をまとめた。19年度からの繰り越しと20年度予算分を合計した予算額は25兆8965億円。契約率は前年度を2.4ポイント下回る78.8%。支出済み額も1.8ポイント低い52.0%になった。都道府県や市町村別に見ても、契約率は低下基調だった。自治財政局財務調査課の担当者によると、『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』(21~25年度)初年度の予算を20年度第3次補正予算で措置したことが要因という。分母となる全体の予算規模が大きくなったものの、実際に5か年対策予算が執行されるのは21年度。同年度への繰越額が多いため、契約率が下がった。」(『建設工業新聞』2021.06.23)
●「既存インフラの維持管理を包括的な枠組みで発注する『地域維持型契約方式』の活用が、市区町村の1割程度にとどまっていることが分かった。国土交通省の調査によると、直近の活用状況は都道府県が47団体のうち23団体、市区町村は1721団体のうち251団体。関係者間の調整・連携や競争性の確保、受注者の負担増などに対する懸念が根強い。国交省は活用促進に向けた方策を検討する必要性を指摘している。」(『建設工業新聞』2021.06.25)

労働・福祉

●「国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録している技能者の賃金実態に課する分析結果を公表した。CCUS登録技能者の平均賃金は、全技能者平均より4%高いという結果となった。賃上げをした割合も未登録者よりCCUS登録技能者の方が高く、職長などより上位の職階ほどその割合が上昇した。分析結果は、16日の建設業社会保険推進・処遇改善連絡協議会の第5回会合で提示した。最新の公共事業労務費調査や、社会保険の加入および賃金の状況に関する調査の結果を基に算出した。全建設技能者の平均賃金を基準(100)とした時のCCUS登録技能者の賃金費率は104.06となった。サンプル数の関係で職種間でばらつきはあるものの、おおむねCCUS登録技能者の方が多く賃金が支給されている。賃上げの実施割合は、CCUS登録技能者のうち、職長級は53%、班長級は50%、一般の技能者が48%と、いずれも未登録者(44%)を上回った。職階が上位になるほど賃上げをした割合も高い。CCUS登録者のレベル別で比較すると、最上位のレベル4(ゴールド)は、レベル1-3の平均よりも11.2%賃金が高かった。各職種ともレベルアップに比例し賃金が上昇していることが分かった。」(『建設通信新聞』2021.06.17)
●「国土交通省は、建設分野における特定技能外国人の受け入れ促進に向け、帰国者を含む技能実習生と建設企業のマッチング支援に乗り出す。海外で送出機関と連携して元技能実習生を募集・確保し、受入企業とのマッチングイベントを開催。国内では技能実習修了後も日本での就労を希望する技能実習生と受け入れニーズのある企業の発掘調査を実施し、制度説明会やマッチングイベントを行う。」(『建設通信新聞』2021.06.18)
●「厚生労働省は22日の中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)で、2021年度の最低賃金の引き上げに向けた議論を始めた。労使の代表者と有識者らで協議し、7月中にも都道府県別に引き上げ額の目安を示す。新型コロナウイルス感染拡大前の引き上げペースに戻るかが焦点となる。…政府は18日に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、最低賃金について『より早期に全国平均1000円をめざす』と明記した。16~19年度には約3%ずつ上げてきた最低賃金の引き上げ幅が20年度は0.1%にとどまったことを受けて『感染症拡大前に引き上げてきた実績を踏まえる』と強調した。日本の最低賃金は欧州諸国と比べて低く、地域間格差を是正するには地方の水準引き上げが必要との意見もある。ただ足元では最低賃金が適用されることが多い飲食・宿泊業などを中心にコロナ禍で経営環境が悪化しており、急激な引き上げは雇用削減を招く恐れもある。影響を受けやすい中小企業の団体からは『現行水準の維持』を求める声がある。」(『日本経済新聞』2021.06.22)
●「厚生労働省は22日、脳・心臓疾患に対する労災認定の報告書案を示した。残業時間が『過労死ライン』とされる月80時間に達しない場合でも、休息時間や心理的負荷などを含めて総合的に労災にあたるかを判断するよう求める。同省が2001年に通達した基準を20年ぶりに見直し、労災を認定しやすい環境を整える。同省の『脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会』に提示した。7月にも開く次回の検討会でまとめる。過労死ラインは、残業時間が①病気の発症直前1カ月に100時間②発症前2~6カ月間の月平均が80時間――とされている。新たな評価方法では、これらに近い水準の残業をしていて、労働時間以外の負荷が認められる場合は『業務と(病気の)発症との関連性が強いと評価できる』と判断する。従来の基準でも『就労態様の諸要因も含めて総合的に評価されるべき』と定めていたが、残業時間のみで判断されやすいとの指摘があった。19年度に脳・心臓疾患で労災認定された事例のうち、残業時間が80時間未満だったのは全体の約1割の23件にとどまる。新たな評価方法では残業時間以外の要因が反映されやすいようにする。例えば、退社から次の出社までの『勤務間インターバル』が11時間未満かどうかを判断の補足として加える。睡眠時間の短さや疲労感、高血圧などが関連するとの見方を示した。休日の少なさや、ノルマといった心理的ストレスなども例示した。」(『日本経済新聞』2021.06.23)
●「総務省が29日発表した5月の完全失業率(季節調整値)は3.0%と先月から0.2ポイント上昇した。2カ月連続の悪化となった。厚生労働省が同日発表した5月の有効求人倍率(同)は前月から横ばいの1.09倍だった。4月下旬に発令された緊急事態宣言の影響もあり、雇用の回復にはなお時間がかかりそうだ。完全失業率が3%になるのは2020年12月以来。完全失業者(原数値)は211万人で前年同月比13万人増で、16カ月連続で増えた。就業者数(同)は6667万人で同11万人増加した。」(『日本経済新聞』2021.06.29)
●「厚生労働省は28日、会社員らが対象の厚生年金の加入者が2020年度末に4498万人(暫定値)と前年度から約10万人増えたと発表した。増加幅は5年間で計約370万人。パートなどへの適用拡大で、国民年金からの移行が進む。より給付が手厚い厚生年金の裾野が広がれば老後の生活の安定につながる半面、企業の保険料負担が膨らむ課題もある。」(『日本経済新聞』2021.06.29)
●「厚生労働省のまとめた2020年(1-12月)の労働災害発生状況(確定値)によると、建設業の死亡者数は前年比11人減の258人で3年連続して減り、過去最少となった。休業4日以上の死傷者数は206人減の1万4977人で、初めて1万4000人台となった。」(『建設通信新聞』2021.06.30)

建設産業・経営

●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、『建設業の環境自主行動計画』を改訂し、2021-25年度までを計画期間とする第7版を策定した。柱である環境経営や循環型社会、自然共生社会は第6版から踏襲するものの、低炭素社会は“脱”炭素社会に変更した。調達から解体廃棄までの建設事業全体のライフサイクルCO₂の削減に向け、設計・施工段階や運用段階で温暖化対策を進める。」(『建設通信新聞』2021.06.17)
●「ゼネコンの配当性向が上昇している。連結売上高1000億円以上の主要上場ゼネコン25社を対象に集計した結果、2021年3月期の配当性向は平均で35%を超えた。10年間で2倍以上の水準に上昇している。配当性向はさまざまな要因で上下するが、株主還元志向が高まっていると見ることもできる。投資ファンドを含め、株主の多様化が進んだことも背景にありそうだ。」(『建設通信新聞』2021.06.18)
●「全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)は18日、2021年度の定時総会を東京都内で開いた。社会に貢献する力強い地場産業を目指し、新3K(給与・休暇・希望)に向けた職場環境の整備、働き方改革の推進と生産性向上などに力を注ぐ。働き方改革では公共投資が高水準で推移している現状を踏まえ、『2%以上の労務費引き上げ』を目標に、実効性のある対応がとれるよう会員を後押しする。全中建は5月31日の理事会で『働き方改革宣言』を決定。『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』(21~25年度)の予算を背景に、労務費を当面2%以上引き上げると会員企業間で申し合わせた。総会で土志田会長は『処遇改善を図り社会貢献できるよう、一人でも多くの入職者を増やすような環境整備に適切に取り組む』と強調した。」(『建設工業新聞』2021.06.21)
●「ゼネコンのROE(自己資本利益率)が低下している。連結売上高1000億円以上の主要上場ゼネコン25社を対象に集計した結果、各社のROEの平均値は2017年3月期の18%をピークに減少を続け、21年3月期には10%を割り込んだ。その一方で、自己資本比率は年々増加を続け、21年3月期の平均は40%を超えた。資本効率の追求よりも財務体質の改善・強化を急ぎ、競争激化の揺り戻しなど有事に備えた安全志向が広がったためだ。」(『建設通信新聞』2021.06.23)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「安全保障上重要な施設周辺での土地取引を調査・規制する新法が16日未明、参院本会議で成立した。自民、公明両党や日本維新の会などが賛成した。外国資本が自衛隊基地の隣接地や離島の土地を購入して不適切に利用する事態を防ぐ。2022年度に運用を始める。…新法は自衛隊基地や海上保安庁の施設、原子力発電所などから1キロメートルの周辺を『注視区域』に指定する。政府が不動産登記簿を使って所有者の名前や住所などを調査できるようにする。所有者が外国と関係が深い場合、利用目的の報告を求める。自衛隊の司令部機能や無人の離島など、安全保障上特に重要な施設周辺は『特別注視区域』と定める。200平方メートル以上の土地や建物の売買には、取引する人や団体の名前・住所、利用目的の事前届け出を義務付ける。政府は収集できる情報は『その他政令で定めるもの』とする。項目については国籍や生年月日、連絡先を想定する。電波妨害やライフラインの遮断は重要施設の『機能を阻害する行為』と定め、取り締まりの対象にする。利用中止を勧告・命令し、従わなければ懲役2年以下や罰金200万円以下を科す。『特別注視区域』の無届や虚偽報告には、6月以下の懲役や100万円以下の罰金を科す。機能を阻害する行為については、政府が基本方針を決定して例示する予定だ。」(『日本経済新聞』2021.06.16)
●「政府は17日、2021年度の『国土強靭化年次計画』を決定した。あらゆる関係者が協働する『流域治水』の取り組みなど441施策を展開する。官民が連携し『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』(21~25年度)の推進に注力。地域の強靭化対策も支援する。20年度末で終了した『防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策』(18~20年度)の事業実施結果を初めて公表した。」(『建設工業新聞』2021.06.18)
●「国土交通省は全国の土地や建物の情報を共通IDで一元的に把握できる仕組みをつくる。民間の売買データベースと国の登記簿などを照合しやすくする。事業者が消費者の求める情報を調べやすくなり、取引を円滑・透明にできる。人工知能(AI)による資産査定など新サービスの普及を促す。中古住宅市場を活性化できれば空き家対策にもつながる。」(『日本経済新聞』2021.06.22)
●「関西電力は23日、運転開始から44年たつ美浜原子力発電所(福井県美浜町)3号機を10年ぶりに再稼働させた。東京電力福島第1原発の事故後に『運転期間は原則40年、最長20年延長可能』とするルールができてから全国で初めての40年超原発の運転となる。脱炭素と電力の安定供給の両立に原発は重要だが、高齢化する原発にはより慎重な安全性の確認が求められる。」(『日本経済新聞』2021.06.23)
●「都市に土砂崩れのリスクが潜んでいる。日本経済新聞が全国の建物と災害関連データを調べたところ、市街地にある住宅92万戸が土砂災害を警戒すべき区域に建っていることが分かった。新たな宅地開発への歯止めは乏しく、今後も増加する可能性がある。長期的な視点で土地利用のあり方を見直していくことが求められる。」(『日本経済新聞』2021.06.23)
●「世界的な木材高騰『ウッドショック』の起点となった米国で、木材先物相場が急落している。5月の最高値から5割安い。投機マネーの売りが進んだほか、高騰を嫌気した需要家が調達を控えたとみられるためだ。一方、米国の住宅需要はなお強く、相場は高止まりするとの見方が多い。高値の木材が対日輸入されるのもこれからで、国内価格は当面上昇する見通しだ。米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の木材先物価格(期近)は、前週末25日の終値で1000ボードフィート(約2.36立方メートル)あたり779ドル。例年の4倍以上に上がっていた5月上旬の最高値から5割ほどになった。下落の理由のひとつは、投機筋の利益確定売りに伴う持ち高圧縮だ。米商品先物取引委員会(CFTC)によれば、海外ヘッジファンドなど投機筋(非商業部門)の材木の買い越し幅は6月22日時点で44枚と、1月の直近ピークから9割強減った。現地木材メーカーが設備増強を相次ぎ発表したことも、供給増加を見越した投機筋の売りを誘ったとみられる。ふたつめの理由は住宅着工の遅れだ。米国の木材価格が昨年夏から高騰したのは、在宅勤務に伴う郊外への住み替え需要が旺盛で、住宅着工が木材の供給能力を超えて増えたためだ。しかし住宅の壁に使う合板や水回り設備用の建材が不足し、住宅着工が遅れ始めた。このためハウスメーカーなど木材の需要家の一部が調達を控えたとみられる。…日本国内の流通価格はしばらく上昇が続きそうだ。7~9月期に最高値で決着した北米産のツーバイフォー製材品が日本に入ってくるのはこれから。欧州産の木材から作り梁や柱に使う集成材も、原料高を理由にメーカーが値上げする計画だ。コンテナ船物流の混乱に伴う輸送費の高止まりも解消していない。『年内は国内の木材相場の高値が続くだろう』(問屋)との見方が優勢だ。日本の住宅コストの上昇圧力は続く。」(『日本経済新聞』2021.06.29)

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