情勢の特徴 - 2021年7月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国の2020年度の税収が60.8兆円程度と過去最高を更新する見通しになった。懸念された新型コロナウイルスの影響は限定的で、法人税収や消費税収が見積もりを大幅に上回った。景気回復が進む外需の取り辺みや通信機器関連など巣ごもり需要が税収増をけん引した。政府は20年12月時点で55.1兆円と見込んでいた。財務省は過去最高だった18年度の60.4兆円を超えるとみて精査している。想定より5兆円超上振れする。各年度の税収は3月期決算企業の法人税収などが固まる5月分までを合算する。20年度は法人税が前年度比4000億円増の11.2兆円、消費税が同2.6兆円増の21兆円だった。所得税はほぼ前年度なみの19.2兆円で推移した。」(『日本経済新聞』2021.07.01)
●「住宅ローン返済世帯が抱える負債が貯蓄を上回る『負債超過』の額が、過去20年ほどで4割増えたことがわかった。日銀の低金利政策と住宅価格上昇によって住宅ローン借入額が膨らんでおり、家計が長期的に抱えるリスクが増している。住宅ローンが老後の生活を圧迫する恐れもありそうだ。総務省の家計調査をもとに勤労者世帯で住宅ローンを返済している世帯の『負債超過』の額を計算したところ、2020年は746万円と02年(518万円)より44%増えた。この間、貯蓄の増加は30万円にとどまった一方、負債は258万円増えた。負債超過が膨らんだ背景には不動産価格の上昇がある。家計の負債のうち95%前後を住宅ローンが占めるのは02年から変わらない傾向だが、住宅ローンの額が20年は1677万円と02年より242万円増えた。不動産経済研究所によるとこの間、新築マンションの平均価格は全国平均で41%上昇し、20年は4971万円になった。中でも首都圏は平均6000万円を超え、家計の負債を押し上げる主因となった。住宅ローン返済世帯の給料などの収入は月平均約66万円(20年)で、02年から約5%の増加にとどまっており、収入と比べても住宅ローンの負担増の割合が高い。世帯主の収入は4%減る一方、配偶者の収入が51%増え、共働きで住宅購入資金を準備する傾向が強まっている。」(『日本経済新聞』2021.07.05)
●東京商エリサーチが8日発表した2021年上半期(1~6月)の企業倒産件数(負債1000万円以上)は、前年同期比23.9%減の3044件だった。過去50年間で1990年に次ぐ2番目の低水準。ただ、新型コロナウイルス感染再拡大と緊急事態宣言発令などで夏以降、コロナ禍の打撃を受ける業種で息切れ倒産が増える恐れがあるという。負債総額は6.9%減の6116億円と4番目の低さだった。倒産件数の9割は従業員10人未満の企業が占め、全体の4分の3は総額1億円未満の小規模倒産だった。(『しんぶん赤旗』2021.07.10より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、公共建築の発注者が果たすべき役割や責務を明確化した解説書『公共建築工事の発注者の役割』を改定した。新・担い手3法の制定を受けて、改正・整備した各種ガイドラインや技術基準を反映。建築設計業務における働き方改革や、中央建設業審議会が作成・勧告した『工期に関する基準』を踏まえた工期設定、施工時期の平準化といった取り組みを追記した。都道府県・政令市にも改定を周知し、市町村を含むすべての公共建築の発注者に実務レベルでの対応を促していく。」(『建設通信新聞』2021.07.08)
●「国土交通省は13日、『発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会』(座長・小澤一雅東大大学院特任教授)を開き、建設分野におけるデータマネジメントのあり方に関する議論に着手した。同省は建設生産・管理プロセス全体や関係者間でのデータの共有・連携を目指すべき将来像に掲げ、それを可能とするソフト・ハードの整備を提起。契約ルールや作業環境の整備、オープンデータ化の検討も進める。」(『建設通信新聞』2021.07.14)

労働・福祉

●「勤労者退職金共済機構(水野正望理事長)・建設業退職金共済事業本部(本部長・稗田昭人理事長代理)は、建退共委託運用資産に関して、他の退職金共済との合同運用の検討を始める。6月30日に東京都千代田区の経団連会館で開いた第45回運営委員会・評議員会で承認された。」(『建設通信新聞』2021.07.01)
●「厚生労働省が6日発表した毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、5月の1人当たりの現金給与総額は前年同月比1.9%増の27万3777円だった。前年同月を上回るのは3カ月連続。このうち残業代など所定外給与は1万7486円と同20.7%増加した。増加幅は比較可能な2013年1月以降で最大だった。20年5月は新型コロナウイルスの初の緊急事態宣言が発令されている時期で、その反動が大きく出た。」(『日本経済新聞』2021.07.06)
●「国土交通省は、公共工事の予定価格の積算に使用する『公共工事設計労務単価』設定の基礎資料となる公共事業労務費調査について、今年度の実施方針を決めた。例年どおり10月に調査を実施し、2022年1-3月に新単価を決定する。20年10月調査では全体の地域・職種の42%が前年度比でマイナスとなり、下落単価を前年度と同額に据え置く特別措置の導入につながった。技能者の賃上げを目指す中、今回の調査結果が今後の処遇改善の分岐点になる可能性は高い。」(『建設通信新聞』2021.07.12)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(鈴木誠一議長)は、2021年の賃金交渉の中間報告(7月12日時点、回答数30組合)をまとめた。これまで妥結の報告があった30組合のうち、10組合が月例賃金のベースアップ(ベア)を獲得した。一時金も妥結した28組合の半数に当たる14組合で昨年実績を上回った。全体感としてコロナ禍にあっても賃上げの流れは継続している。」(『建設通信新聞』2021.07.14)
●「中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は14日、2021年度の最低賃金を全国平均で28円を目安に引き上げ、時給930円とすると決めた。28円の引き上げ額は02年度に時給で示す現在の方式となってから過去最大で、上げ幅は3.1%だった。ただ主要先進国ではなお低い水準にとどまる。デジタル化などで生産性向上を進める必要がある。」(『日本経済新聞』2021.07.15)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及に向けた新たな推進方策をまとめた。事業者・技能者登録、カードタッチの促進・徹底に関する要請を現場内で展開。会員企業の現場社員から1次下請業者、そこから2次、3次下請業者といった数珠つなぎの形で周知していく。次数を問わず、建設技能者一人ひとりにCCUSの活用行動を直接働き掛けることで、日建連が3月に決定した新たな数値目標と、CCUSの早期標準化の達成を目指す。」(『建設通信新聞』2021.07.15)
●厚生労働省は13日、新型コロナウイルス感染拡大の影響による解雇・雇い止め(見込みを含む)の人数が累計11万人を超えたと発表した。9日時点の集計で11万326人。…業種別に見ると、製造業が2万4967人で最多だった。小売り、飲食、宿泊が1万人を超え、卸売りとサービスは6000人を上回っている。(『しんぶん赤旗』2021.07.15より抜粋。)

建設産業・経営

●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、各地の建設業協会員が受注した建設キャリアアップシステム(CCUS)モデル工事のフォローアップ調査を通じて、同モデル工事の中で混在するインセンティブ(優遇措置)の有効性や優先度を確認する。受注者側の実態に即した支援策を明確化し、発注機関に改善を働き掛けることで、地域建設業へのシステム普及を加速させるのが狙い。調査結果は10月初めまでにまとめ、2021年度地域懇談会・ブロック会議の議題にも反映する。」(『建設通信新聞』2021.07.01)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)が2021年度に新設したSDGs推進委員会(中村義人委員長)の初会合が6日に開かれ、本格的な議論が始まった。地域建設業が全うしてきた社会的使命とSDGs(持続可能な開発目標)で掲げる17の開発目標、169のターゲットは共通する部分が多いものの、SDGsの基本理念である『変革』を企業行動に落とし込み、持続的経営にまで昇華しているケースは少ない。また、若い世代ほど企業側のSDGsに対する姿勢をシビアに評価する傾向が強く、担い手対策の観点からもその必要性が増している。」(『建設通信新聞』2021.07.07)
●「鹿島が重層下請構造改革に本腰を入れている。協力会社の理解を得ながら、2023年4月から下請を原則2次までに限定する形に移行する。安全管理の徹底と技能者の処遇改善につなげる狙いだ。建設キャリアアップシステム(CCUS)やDX(デジタルトランスフォーメーンヨン)などを生かしつつ、持続可能な施工体制の構築を目指す。背景にあるのは多重層化によるデメリットの顕在化だ。施工の役割分担や責任の所在が不明鮮になるのに加え、管理が行き届きにくくなることによる安全や品質への悪影響が懸念される。中間段階に介在する企業が増えることで、実際に作業を担う技能者への対価も目減りする。それは産業の魅力が低下し、担い手確保がより困難になることを意味する。鹿島は01年に社長通達を出して、下請を2次以内にする目標を掲げてきたが、改善が十分と言えない状況だった。押昧至一代表取締役会長が社長時代に、産業の魅力を高める上で重層化の改善は避けられないと判断。21年度からの3カ年計画で重層下請構造改革を主要施策の一つに位置付けた。」(『建設工業新聞』2021.07.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「住宅に使う国産木材の出荷が伸び悩んでいる。米国の住宅需要に起因する輸入木材の相場高『ウッドショック』の影響で、国産材に注目か集まった。しかし国産材の出荷量は木材問屋やハウスメーカーの期待を下回り、逼迫感から価格も上昇した。山からの丸太の出荷が少なく、多くの製材所は増産に踏み切れない。長年の林業の課題がのしかかる。農林水産省の製材統計によると、国産の製材用丸太の工場への入荷量は、5月に102万立方メートル。前年同月比では7万8千立方メートル(8.3%)増えたが、コロナ禍前の19年5月と比べると、8.9%少ない。ウッドショック下での国産材の増産期待が高まっても、実際の出材量はコロナ禍前の水準に戻ったにすぎない。国産材の増産が急には進まない要因は3つある。まずは、丸太を出材する山の整備が進まない点だ。日本では平地に植える北米などと違い、険しい山から出材する。山に入って伐採しトラックなどで搬出するための山道が必須だが、整備は進んでこなかった。2つ目が、製材価格が上がっても、山の所有者には売り上げが還元されにくい仕組みだ。丸太の売り上げから伐採や搬出などの経費を差し引いた『立木価格』が、流通経費の増加などを背景に下落している。…3つ目が、住宅の建て方の変化だ。『乾燥材が主流になったことが国産材には逆風だった』と協和木材の佐川社長は話す。1985年ごろから、木材を住宅建築現場ではなく事前に工場で加工するプレカットが普及し始めると、より品質の均一化が求められるようになり、人工的に乾燥させた材の需要が高まった。しかし、海外に比べ規模の小さい国内の製材会社は乾燥用設備が導入しづらい。乾燥された輸入材へのシフトが進んだ。一部では国産材増産の動きもある。米松製材最大手の中国木材(広島県呉市)は、秋田県に国産材を使用する製材工場を新設する。24年の稼働を計画しており、地元企業などと協力して丸太を確保する。しかし多くの製材会社にとって後に続くのは難しい。『最大手だからできること』(製材会社)と見る。」(『日本経済新聞』2021.07.02)
●「国士交通省はこのほど、建築物リフォーム・リニューアル調査の令和2年度計(第1から第4四半期までの受注分)を公表した。令和2年度の建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高の合計は10兆6355億円で、対前年度比で16.5%減少した。そのうち、住宅に係る工事は3兆1898億円で同8.7%減少した。オフィスビル、学校、工場などの非住宅建築物に係る工事の受注高は7兆4457億円で同19.5%の減少となった。」(『日本住宅新聞』2021.07.05)
●「静岡県熱海市伊豆山地区での大規模土石流を巡り、静岡県の難波喬司副知事は7日午後の記者会見で、起点周辺にあった盛り土を搬入した神奈川県小田原市の不動産会社(清算)が行政への届け出を超える量を置いていた可能性があると明らかにした。盛り土に産業廃棄物が混入していたことも判明。県などは開発や造成経緯の解明を急ぐ。県が公表した経緯によると、同社が2007年、県土採取等規制条例に基づき、市に提出した届け出では盛り土の総量は約3.6万立方メートル、高さ15メートルだった。しかし、土石流発生後の分析では、約1.5倍の約5.4万立方メートルの盛り土があり、このうち少なくとも5万立方メートルが崩落したと推定。高さも約50メートルあった可能性があるという。難波副知事は『(届け出を)超えた量が入れられた可能性がある』との認識を示した。」(『日本経済新聞』2021.07.08)
●「静岡県熱海市で3日に発生した大規模な土石流災害を受け、国土交通省は作成時期の異なる地形図データを基に盛り土の可能性がある箇所を抽出する作業を始める。宅地造成地などに限らず5メートル以上の標高差が生じた箇所をすべて洗い出し、今後の安全性点検の参考にする。1カ月後をめどに関係省庁や地方自治体に抽出箇所を情報提供し、両者と連携する方向で点検方法の枠組みも固める。」(『建設工業新聞』2021.07.12)
●「国土交通省は地方版『社会資本整備重点計画』(2021~25年度)の原案をまとめた。全国を10ブロックに分け重点的に取り組む内容を示している。分野ごとに重要業績指標(KPI)を設定し取り組みの達成目標を数値で明確化。防災力の向上や道路ネットワークの拡充は特に力を入れる。整備中の高規格道路の開通予定時期なども盛り込んだ。同計画は8月にも決定する予定だ。」(『建設工業新聞』2021.07.13)
●「野村総合研究所がまとめた2021~40年度の住宅着工戸数予測によると、40年度の新設住宅着工戸数は46万戸に減少する見込み。国土交通省がまとめている住宅着工統計では20年度に81万戸あったが、今後約20年間で4割程度減少する。リフォーム市場予測では40年度まで年間6兆~7兆円台で推移し、横ばいが続く見通しだ。」(『建設工業新聞』2021.07.14)

その他