情勢の特徴 - 2021年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は、最低賃金の引き上げに向けて実施する取り組みをまとめた。最低賃金の引き上げを含む労務費や原材料費などの上昇分が下請価格へ適切に反映されるよう、9月を『価格交渉促進月間』に設定する。期間中は、仕事を発注する親事業者に対して下請事業者との価格交渉に応じるよう促すとともに、下請Gメンがヒアリングを重点的に実施して親事業者による価格交渉の対応状況を公表する。21日の経済財政諮問会議で、政府側が明らかにした。官公需の契約金額は、受注者からの申し出の有無にかかわらず、発注者が最低賃金引き上げに伴う契約金額見直しの必要性を自ら確認する。親事業者が下請取引の適正化に取り組むことを表明するパートナーシップ構築宣言は、15日現在で1250社が公表しており、2021年度内に2000社を目指して取り組みを引き続き推進する。」(『建設通信新聞』2021.07.27)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、ICT施工の適用を小規模工事に拡大する。ICTを活用した床掘工と小規模土工の技術基準を2021年度末に定め、22年度から実施できるようにする。小規模工事の技術基準策定により、宣轄より施工量が小さい地方自治体発注工事などでのICT施工拡大が期待される。」(『建設通信新聞』2021.07.19)
●「政府は19日、官公需法に基づく2021年度の『中小企業者に関する国等の契約の基本方針』で示す、国や独立行政法人などが中小企業・小規模事業者に発注する契約目標率を60%以上とする方針を固めた。8月末をめどに基本方針の閣議決定を目指す。同日、オンライン方式で『官公需に関する関係府省等副大臣会議』を開き、最低賃金額改定に伴う国などの対応を含み、21年度の『契約の基本方針』の方向性を長坂康正経済産業副大臣が説明した。この中で、過去最高となった20年度の中小企業契約目標60%に対し、実績も速報値で55.5%と過去最高になったことを明らかにした。この20年度実績などを踏まえ、21年度の中小企業契約目標値を60%以上とする方向だ。」(『建設通信新聞』2021.07.20)
●「静岡県熱海市で3日に発生した大規模な土石流災害をきっかけに、建設発生土の適正処理を模索する動きが出てきた。土石流の被害拡大の要因とされる盛り土で建戯発生土の不適切な処理が疑われていることを受け、全国知事会(会長・飯泉嘉門徳島県知事)は早期の法制化による全国統一の基準・規制整備を国に提案。国土交通省は不適切処理の抑止策になる可能性も念頭に建設発生土のトレーサビリティー(追跡可能性)システムを導入する方針。現在は試行段階にある。」(『建設工業新聞』2021.07.27)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、都道府県と政令市・県庁所在市の最低制限価格、低入札価格調査の運用状況(6月現在)に関する調査結果をまとめた。中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)の最新モデル、それと同等以上の自治体は、前回調査(2020年6月)から2団体増えて90団体に達した。全体の9割を占めるものの、旧モデルを維持する市が固定化されつつあり、改善が求められる。」(『建設通信新聞』2021.07.28)
●「国土技術研究センター(JICE)は28日、インフラに関する国民の意識調査の結果(速報)を公表した。災害に対する不安などを背景に、社会資本整備に対するニーズが高まっており、公共投資を増やすと選択した割合は前回(2017年)調査から約10ポイント増加して半数を超えた。一方、維持・更新費用の増大や欧米でのインフラ投資の加速に関する認知は広がっておらず、調査結果では『社会資本のあるべき姿の具体像の提示が必要』と結論付けている。」(『建設通信新聞』2021.07.29)

労働・福祉

●「厚生労働省は16日、新型コロナウイルスの影響をまとめた2021年版の労働経済の分析(労働経済白書)を公表した。雇用調整助成金などの支援で20年4~10月の失業率(平均2.9%)が2.6ポイント程度抑えられたと推計した。危機対応の政策が一定の効果を発揮した可能性を示した。一方で雇調金が成長分野への労働移動を妨げる問題も指摘した。 コロナ下で雇調金の支給決定額は7月上旬までに3兆9000億円を超えた。助成を手厚くする特例措置もあり、リーマン・ショック時を大きく上回るペースで伸びている。白書は雇調金の受給対象者を潜在的な失業者として推計した。助成金の効果がなかった場合に失業率は5.5%程度に達していた可能性がある。リーマン後のピークだった09年7月と同水準だ。雇調金に頼る状態が長引くことの問題もある。『成長分野への労働移動を遅らせる、雇用保険財政の逼迫といった影響をもたらしている』と指摘した。労働移動を促す支援策の充実も求めた。」(『日本経済新聞』2021.07.16)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)の週休二日推進本部(相川善郎本部長)は、週休二日実現行動計画に基づく2020年度通期フォローアップ報告書をまとめた。4週8閉所は前年度から増加し、実施割合は調査開始以来で初めて30%を超えた。着実に成果を上げているものの、同行動計画で掲げる『21年度末の4週8閉所100%』まで1年を切り、その達成は厳しさが増している。ただ、日建連としては目標達成のいかんにかかわらず、担い手対策の観点から4週8閉所の実現に引き続きまい進する方針だ。今回の調査結果によると、土木・建築を合わせた全体の4週8閉所以上の達成率は19年度比で7.0ポイント増の33.3%となった。そのうち、『土日閉所を基本とした作業所』と『土日閉所を基本としない作業所』別では、4週8閉所以上がそれぞれ36.1%、23.8%で、閉所に対する姿勢が閉所結果に直結している。工種別でみると、土木は4週8閉所以上が6.3ポイント増の40.3%、建築が7.2ポイント増の26.5%。いずれも堅調に伸びているものの、依然として民間工事主体の建築よりも、週休2日に関する取り組みが進む公共工事主体の土木の方が閉所率は高い傾向にある。回答者からは『4週8閉所の閉所率をいま以上に高めるには、民間発注者の理解が不可欠』のほか、民間発注者にも適用される『工期に関する基準』に基づいた『適正な工期による契約締結の実施を望む』との声が聞かれる。」(『建設通信新聞』2021.07.16)
●「厚生労働省は裁量労働制の運用実態を踏まえた制度改正に着手する。有識者会議を設置し対象業務の拡大や、労働者の裁量と健康の確保といった課題で解決策を立案する。19日に労働政策審議会(労政審、厚労相の諮問機関)労働条件分科会(分科会長・荒木尚志東京大学大学院法学政治学研究科教授)の会合を東京都内で開催。厚労省がまとめた実態調査の結果や有識者会議の議題などで意見交換した。」(『建設工業新聞』2021.07.20)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、建設キャリアアップシステム(CCUS)を積極的に推進する地方建設業協会をフロントランナーに位置付け、当該地域のうねりをさらに高め、他の協会にも波及させていく『地域ぐるみCCUS普及促進プロジェクト』を始める。初弾として、18の建協を登録。それぞれの取り組みを見える化して共有することで、地域建設業全体のシステム活用を底上げするのが狙いだ。」(『建設通信新聞』2021.07.21)
●「建設業の年間平均給与額が、産業別でトップだったことが東京商工リサーチの調査で分かった。上場する125社が公表している2020年度(21年3月期)の決算を基に算定。平均額は732.4万円(19年度は732万円)、直近10年間で最高額に達した。東京商工リサーチは『再開発事業など受注量が豊富な上、人材確保に向けて処遇改善した結果が給与額に表れている』と要因を分析する。調査は上場企業2459社を対象に実施した。うち建設業は125社で、前年度の平均額よりも0.06ポイント高い732.4万円。直近10年間で見ると、631.2万円だった11年度から順調に上昇。製造業など10産業の中で最も高かった。」(『建設工業新聞』2021.07.30)

建設産業・経営

●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)がまとめた会員企業の2020年度決算状況によると、回答した106社の完成工事高は合計14兆6430億円で、前年度に比べ8.8%減少した。完成工事総利益(粗利益)率はほぼ横ばいの11.9%(0.1ポイント上昇)。粗利益率が10%以上の企業は前年度に比べ1社少ない56社だった。」(『建設工業新聞』2021.07.16)
●「国土交通省が施工能力などに優れた専門工事会社の適正評価を促そうと運用開始した『見える化評価制度』で初の評価結果が公表された。他職種に先行し申請受け付けを開始した日本機械土工協会(日機協、山梨敏幸会長)が『機械土工』で5社、ダイヤモンド工事業協同組合(赤羽弘秋理事長)が『切断せん孔』で2社の評価を実施した。両団体以外に『見える化評価基準』を策定した職種で、今秋以降の申請受け付けを予定している団体もある。見える化評価制度は専門工事会社の『基礎情報』『施工能力』『コンプライアンス』の3項目を『☆』(星印)で評価する。専門工事業団体などの評価実施機関(原則、技能者の能力評価実施機関)は業界共通の『共通評価内容』と職種ごとの『選択評価内容』のバランスを考慮し配点を設定。最上位を『☆☆☆☆』(四つ星)とする4段階の評価基準を策定し、実施規定に基づき評価を行う。国交省は先行的に基準作りが進んだ6職種・9団体の評価基準を3月に初認定した。該当職種には今回評価を実施した『機械土工』と『切断せん孔』に加え、▽鉄筋=全国鉄筋工事業協会▽基礎ぐい=全国基礎工事業団体連合会、日本基礎建設協会▽とび・土工=日本建設躯体工事業団体連合会▽建築大工(工務店)=JBN・全国工務店協会、全建総連、全国住宅産業地域活性化協議会―が含まれる。」(『建設工業新聞』2021.07.29)
●「建設経済研究所と経済調査会は29日、2022年度の建設投資見通し(名目)を公表した。全体の建設投資は前年度比1.7%減の61兆8700億円。先行して回復する民間の住宅投資に加え、製造業などの設備投資が復調することから民間投資は微増を見込むが、東日本大震災の復興事業や19年度以前の補正予算分の事業の寄与がなくなるため政府建設投資が減少し、全体として微減と予測する。政府建設投資は、一般会計の公共事業関係費、防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策の事業費、地方単独事業費のいずれも21年度と同水準と推計。その上で、21年度に出来高として計上していた東日本大震災からの復興事業や19年度補正予算の事業分の投資額が減少すると分析した。民間住宅投資1.8%減の15兆4900億円と見通す。新型コロナウイルス感染症の影響からの反動増を見込む21年度の動きから、21年度末の住宅取得支援策の終了などにより22年度は例年のトレンドに戻るとした。節税メリットの縮小から長期にわたって減少を続けてきた貸家も下げ止まりの傾向にあり、全体の着工戸数は21年度とほぼ横ばいとなると予測している。民間の非住宅投資は2.0%増の16兆9600億円と予測。新型コロナの影響で手控えていた製造業の設備投資の復調や非製造業でも下げ止まりの兆しがあることから増加を見込む。ただ、民間の土木投資は発電用投資の鈍化や鉄道事業の業績悪化を背景にマイナス要因となる可能性がある。」(『建設通信新聞』2021.07.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「政府は所有者が分からない土地の活用促進策の検討に入った。公共目的で利用できる範囲を広げ、新たに小規模な再生可能エネルギー発電所や防災施設も対象に含める。使用期限も現行の10年から20年間に延長する方向だ。少子高齢化で相続されずに放置される土地は増加が続く。公共事業や地域の再開発の障害となっており、放置すれば経済活動の阻害要因になるとみて、利活用を急ぐ。」(『日本経済新聞』2021.07.19)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)が19日発表した1~6月の首都圏の新築マンションの発売戸数は前年同期比77.3%増の1万3277戸だった。新型コロナウイルスの影響で調査開始から初めて上半期で1万戸を下回った2020年から回復した。在宅勤務の普及などから買い替え需要が高く、コロナ前の19年に近い水準まで戻った形だ。1~6月の増加は18年以来3年ぶり。地域別の発売戸数では、東京23区が51.3%増えたほか、神奈川県や埼玉県を含め全地域で増加した。新型コロナの影響で不動産会社が営業活動を自粛した20年の反動もあった。郊外人気で東京23区の占める割合が落ちたため、平均価格は3.9%減の6414万円と9年ぶりに下落した。ただ、10年前からは約4割上昇している。1~6月の消費者の購入割合を示す契約率は72.5%と前年同期比4.2ポイント上昇し、好調の目安である70%を6年ぶりに上回った。」(『日本経済新聞』2021.07.20)
●「国土交通、経済産業、環境の3省は20日、2050年カーボンニュートラルの実現と30年度に13年度比46%減とする温室効果ガス排出削減目標の達成に向け、住宅と小規模建築物(300平方メートル未満)を対象に、建築物省エネ法に基づく省エネ基準適合を25年度に義務化するスケジュール案を公表した。省エネ対策の強化に当たって法改正する。…3省が提示した案によると、省エネ基準適合義務化の対象に25年度から住宅と小規模建築物を追加する。中規模(300平方メートル以上2000平方メートル未満)と大規模(2000平方メートル以上)の建築物は既に義務付けているため、この措置によってすべての住宅・建築物が義務化対象となる。」(『建設通信新聞』2021.07.21)
●「政府は26日公表した新たな地球温暖化対策計画案で、2030年度に温暖化ガス排出を13年度比46%減らす目標の分野別の内訳を示した。必要な削減量の3~4割は電気を再生可能エネルギー由来などに変える効果を想定する。残りはエネルギー消費自体を抑えてひねり出す。政策は乏しく、企業や家庭の省エネをあてこむ苦しい構図だ。計画案は環境省と経済産業省が有識者会議に提示した。30年度までに26%削減をめざした現計画を5年ぶりに改める。10月末の第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)までに閣議決定する。13年度の温暖化ガス排出は二酸化炭素(CO₂)換算で14億800万トン。政府目標の達成には30年度までに6億4800万トン減らす必要がある。工場などの産業部門は1億7300万トン(37%)削る。家庭部門は1億3800万トン(66%)の大幅な圧縮を見込む。運輸部門は8400万トン(38%)、業務その他部門は1億1800万トン(50%)それぞれ減らす。21日にまとめた新たなエネルギー基本計画の原案は、電力供給に占める再生エネの比率を13年度の11%から30年度に36~38%、原子力発電を1%から20~22%に高める構成とした。この通りになれば発電1キロワット時あたりのCO₂排出は0.57キログラムから0.26キログラムほどに減る。13年度に発電で排出した温暖化ガスは4億8400万トン。電源の切り替えだけで計算上は2億トンあまりを減らせる。現実は厳しい。直近の19年度の実績をみると、電力供給に占める再生エネの比率は18%、原発は6%にすぎない。30年度の電源構成が政府の考えているような姿になるかは不透明だ。」(『日本経済新聞』2021.07.27)
●「経済産業省や国土交通省などは2030年までに新築戸建て住宅の約6割に太陽光発電設備を設置する目標を設ける検討に入った。現状は1~2割とみられ、30年度の総発電量の36~38%を再生可能エネルギーでまかなうために大幅に引き上げる。住宅への太陽光設置の義務化は見送るため、どのように推進するかが課題になる。」(『日本経済新聞』2021.07.28)

その他