情勢の特徴 - 2021年8月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は建設業者が下請代金を支払う手段の改善を求める。中小企業庁と公正取引委員会が3月に改正した『手形通達』を踏まえ『建設業法令順守ガイドライン』を改正し、7月30日に建設業団体などに通知した。下請代金をできる限り現金で支払うとともに、『約束手形』を利用する際も支払い期日の短縮や現金化にかかる割引料のコスト負担に配慮するよう働き掛ける。」(『建設工業新聞』2021.08.02)
●「各省庁が月末までに財務省へ提出する2022年度予算概算要求で3日、国土交通省の基本方針が明らかになった。▽国民の安全・安心の確保▽社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大▽豊かで活力ある地方づくりと分散型の国づくり―の3本柱を設定。中長期的な見通しで公共事業予算を安定的に確保し、気候変動の影響で激甚化・頻発化する自然災害やカーボンニュートラル、デジタル化の潮流に適切に対応する。」(『建設工業新聞』2021.08.04)
●「総務省が4日発表した人口動態調査では、新型コロナウイルス禍を受けた外国人の流入域も浮かび上がった。海外からの転入者から国外への転出者などを差し引いた差分と生産年齢人口(15~64歳)は、ともに7年ぶりの減少となった。コロナ禍での入国制限で留学生や技能実習生の流入が滞ったことが背景にある。」(『日本経済新聞』2021.08.05)
●「東京商工リサーチが10日発表した7月の企業倒産件数は、前年同月比40%減の476件だった。減少は2カ月連続。466件にとどまった1966年以来、7月として半世紀ぶりの低水準だった。政府や金融機関の資金繰り支援が下支えし、全産業で倒産件数が減少した。負債総額は714億6500万円と29%減った。比較的規模の小さな倒産が多く、負債額が1億円未満の倒産が380件と全体の8割を占めた。業種別では繊維工業や金属製品製造業、医療・福祉事業が大きく減った。新型コロナウイルス感染拡大の影智を強く受ける飲食業は37%減、宿泊業も14%減だった。営業時間短縮などの要講に応じた飲食店への協力金が7月以降、迅速に支給されていることが飲食業の倒産抑制につながった。『まん延防止等重点措置』が解除された一部の地域で経済活動が再開したことも影響した。一方、新型コロナ関連倒産は138件と前年同月比41%増えた。2021年の累計は903件と、既に20年通年の累計件数を超えた。政府の給付金の恩恵を受けない小売却などの苦境が続いている。」(『日本経済新聞』2021.08.11)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、直轄での建設キャリアアップシステム(CCUS)活用モデル工事の試行状況をまとめた。2021年度から原則化した一般土木のWTO工事は、20年度の38件から67件に拡大。関東地方整備局(24件)や近畿地方整備局(13件)を中心に取り組みを進める。地場企業が参加するCランクでも対象件数を20年度から倍増しており、モデル工事を通じて技能者の処遇改善を積極的に後押しする。」(『建設通信新聞』2021.08.04)

労働・福祉

●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)は3日、東京都内のホテルで第98回定期大会を開いた。任期満了に伴う役員改選で新議長に五洋建設労働組合の角真也氏を選任した。魅力ある建設産業を目指し『日健協ビジョン2030』も発表。21年度活動方針案には産業政策活動と加盟組合支援を柱に、作業所アンケートや4週8閉所ステップアップ運動の推進などを盛り込んだ。」(『建設工業新聞』2021.08.04)
●「国土交通省は、2020年度の直轄工事における週休2日の実績を明らかにした。20年度中に契約した直轄工事(営繕、港湾空港関係を除く)約8500件のうち、7746件を週休2日対象として公告。対象工事の88.5%に当たる6853件で週休2日の取り組みが実施された。同省では21年度から発注者指定型の週休2日工事を段階的に拡大していく方針を示しており、建設業に罰則付き時間外労働規制が適用される24年度までに、計画的な取り組みを進めていく。」(『建設通信新聞』2021.08.06)
●「国土交通省は、労務賃金の適正な支払い促進を目的とした『「労務費見積り尊重宣言」促進モデル工事』の対象工事を拡大する。2021年度は、20年度実績(契約ベースで24件)の約1.7倍となる40件で試行を予定する。対象は段階選抜方式を適用するWTOの一般土木工事。労務費を内訳明示した見積書を尊重する元請企業に対して、モデル工事でインセンティブ(優遇措置)を付与することで、担い手の確保・育成や賃金上昇の好循環の流れを後押しする。」(『建設通信新聞』2021.08.10)
●「新型コロナウイルスの影響で経済活動の抑制が続く中、失業の長期化が懸念されている。総務省が10日に発表した労働力調査(詳細集計)によると、2021年4~6月の失業者233万人のうち、失業期間が1年以上に及ぶ人は74万人で3割以上を占めた。失業者の全体数も増加傾向が続いている。失業期間別では、3カ月未満が41%、3カ月以上が59%だった。うち1年以上は32%で、前年同期から6ポイント近く増えている。失業者の実数で見ても、1年以上の人は同35%(19万人)と大幅に増えている。」(『日本経済新聞』2021.08.11)
●2021年度の地域別最低賃金(時給)改定の答申が12日、沖縄を除いて地方最低賃金審議会で出そろった。人口加味した全国加重平均で現在の902円から930円になる見込み。…答申の最高額は東京の1041円、最低額は高知の820円。昨年は中央最賃審議会が目安額を示さず、全国平均1円増にとどまったが、今年は…全国同額で28円増の目安額が示された。(『しんぶん赤旗』2021.08.13より抜粋。)
●「日本の年間労働時間が大幅に減っている。2020年は1人平均1811時間となり、3年前に比べ116時間縮小した。時間外労働の上限規制導入など一連の働き方改革が動き出したところに、新型コロナウイルスの流行が重なった。働き盛り世代を中心に長時間労働者が少なくなっている。今後、効率的な働き方がどこまで定着するかが焦点となる。」(『日本経済新聞』2021.08.14)

建設産業・経営

●「上場大手4社の2022年3月期第1四半期の決算がまとまった。連結では4社とも増収減益となった。特に利益面では、4社とも完成工事総利益(粗利)率が前年同期を下回った。コロナ禍以前から続いている大型案件での競争激化の影響が顕在化している。受注はコロナ禍からの回復の兆しも見られ、不透明な中でも堅調な状態で懸念は小さいものの、利益面では今後の大きな落ち込みを食い止められるか、瀬戸際に立っている。連結売上高は、各社とも豊富な手持ち工事の進捗により堅調に推移した。単体で前年同期を下回った鹿島も『工事終盤の案件が少なく、着工前の設計・施工案件が多い。順調に進捗すれば通期の見通しはクリアできるのではないか』とする。ただ、連結の営業利益、経常利益、純利益のいずれの項目とも4社すべてが大幅な前年同期比減で、連結営業利益に影響を与える単体の粗利率は、鹿島を除く3社が2桁を切るなど、全社が土木・建築とも前年同期を下回った。着工して間もない案件が多いなど工事の進捗状況による利益率の低下という面もあるものの、『工事が大型化しており、建築受注に占める大型案件の割合が45%を超えている。コロナ禍以前から大型案件では競争が激化しており、それらの案件に手持ちの大型案件が入れ替わっている』(大林組)、『ここ数年の激しい受注競争の影響も少なからずある』(清水建設)、『ここ数年の競争環境に厳しさが増している中で、国内建築を中心に受注競争の影響が徐々に表れ始めているのは事実』(大成建設)と、大手ゼネコン間での競争激化の影響が粗利に表れてきたことは否定できない。」(『建設通信新聞』2021.08.10)
●「大和ハウス工業が10日発表した2021年4~6月期連結決算は、純利益が前年同期比17%増の385億円だった。新型コロナウイルス禍で家で過ごす時間が延び、住環境を見直す動きから国内外で戸建て住宅販売が好調だったほか、コロナ関連の特別損失が減った。ただ、取引時間中に発表した利益が市場予想に届かず、株価は下落した。売上高は3%増の9206億円だった。商業施設と事業施設の開発物件売却を除く事業で増収を確保した。国内外で住宅事業が堅調に推移している。米国では郊外での旺盛な住宅需要を背景に戸建て販売が好調だった。米国子会社では想定以上の受注が入り、木材価格の高騰『ウッドショック』や人手不足の影響を緩和するため、週単位で販売価格を見直している。オーストラリアでも宅地販売が順調に進んだ。戸建ての海外売上高は前年同期比4割増えた。国内でも在宅勤務向けの住宅提案やウェブ販売で住宅購入意欲を取り込んだ。1戸当たりの平均売上高は4220万円と過去最高を更新した。戸建て事業全体では229億円の増収になった。賃貸住宅事業は管理戸数の増加や高い入居率を維持し利益率が改善したほか、請け負い・分譲の受注が回復した。マンション事業も完成物件の販売が進み増収となった。ただ、営業利益は5%減の584億円にとどまった。ショッピングセンターなど商業施設や物流施設など開発物件の売却が前年同期より少なかったことが響いた。海外のグループ会社の増加で人件費もかさんだ。」(『日本経済新聞』2021.08.11)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「不動産各社が住宅で木材を一段と活用する動きが目立ってきた。住友不動産は戸建てのリフォーム事業で従来は廃棄していた木材を再利用する取り組みを始めた。戸建て分譲住宅を手がけるケイアイスター不動産は注文住宅の国産材比率を100%に引き上げ、輸入材を使う場合に比べて環境負荷を減らす。改築や新築時の二酸化炭素(CO₂)排出量の削減などにつながる環境配慮の姿勢を消費者にアピールして、需要取り込みを狙う。…政府は4月、2030年度の温暖化ガス排出量を13年度比で46%以上減らす目標を決めた。住宅部門でも省エネルギー性能の向上や太陽光発電など再生可能エネルギーの導入などを加速する必要があり、コンクリートに比べて断熱性の高い木材の利用が住宅で一段と進む可能性がある。ウッドショックが懸念されていることもあり、輸入材よりも環境負荷を低減できる国産材への注目も高まる。三菱地所など建設・不動産7社も国産材の需要を掘り起こす取り組みを始めている。環境に配慮した住宅は消費者からの支持も得やすいとみられ、今後も不動産各社で木材活用が進みそうだ。」(『日本経済新聞』2021.08.02)
●「中古住宅の不足感が強まっている。東日本不動産流通機構によると、6月の在庫数はマンションが6年ぶり、戸建ては現行統計の開示を始めた2002年以降で最低となった。在宅勤務の広がりを背景に新たな住まいを探す人が多い半面、住宅を売りに出す人が少ないためだ。品薄感から住宅価格の上昇が続くなか、業界では相場高が住宅購入意欲を下げるとの警戒も出始めた。6月の首都圏の中古マンションの在庫件数は前年同月比26%減の3万3641件。19カ月連続で前年実績を下回り、15年4月以来の少なさとなった。新規登録件数は22カ月連続で減少した。中古戸建ても6月の在庫件数は1万4159件と13カ月連続で減り、過去最低となった。新規登録件数は16カ月連続で前年実績を下回った。」(『日本経済新聞』2021.08.03)
●「東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出を見据え、政府は水産物の風評被害に対応するための基金をつくる。販売の減少や価格下落などの被害が生じた場合、基金を使って買い取ることができるようにする。2011年の原発事故による需要の急激な落ち込みから水産業者は立ち直りつつあるが、中長期をにらんだ息の長い支援を打ち出す。政府は4月に処理水を海に放出する方針を決めたのを踏まえ、風評被害対策を検討してきた。月内をめどにまとめる対策に基金創設を盛り込む。国・地方の予算は通常ならば単年度で使い切る必要があるが、基金にすれば年度をまたいだ資金拠出が可能だ。…処理水の放出開始は23年春を想定しており、22年度までにあらかじめ基金を創設。来年度予算の概算要求に盛り込む。政府内には規模は10億円を超えるとの見方があり、当初何年分を積むかで金額は変わる。 政府・与党内には金額を大きくしたほうが事業者が安心するとの声の一方、風評被害を極力起こさないのだから小規模で構わないとの意見もある。今後編成を見込む21年度補正予算案に盛り込み、年度内に創設を前倒しする可能性もある。」(『日本経済新聞』2021.08.12)
●「政府は安全保障上重要と判断した土地に関し、外国資本の取引を規制する指定区域の検討を始めた。自衛隊のレーダー施設など600カ所程度の防衛関係施設のほか、原子力発電所などの周辺を想定する。対象となる土地の情報を管理し、中国を含む外資の動向を把握する体制を整える。」(『日本経済新聞』2021.08.12)

その他