情勢の特徴 - 2021年8月後半
●「コンビニの時短営業が広がっている。日本経済新聞社が実施した2020年度のコンビニエンスストア調査では、国内最大手のセブンーイレブン・ジャパンなど大手3社の時短営業店が2000店規模に達した。全店売上高は6.1%減と記録を遡れる約40年間の調査で初めて前年を下回った。厳しい経営環境が続くなか、加盟店のオーナーをつなぎ留めるために、各社で時短営業を許容する動きが一層広がりそうだ。」(『日本経済新聞』2021.08.18)
●「新型コロナウイルスの影響で借金を返せない個人らの債務を減免する特例措置の手続きが空転している。売上高が激減した飲食店の経営者やコロナで雇い止めにあった派遣社員など1000件超の申請があったが、債務の整理が成立したのはわずか3件。すべての債権者の同意や弁護士の確保など課題は多く、苦境にある個人を支える制度になっていない。新制度はローンの免除や減額を弁護士などの専門家が個人を支援する形で、債権者である金融機関と調整する。土台となるのは自然災害などで家屋が被災するなどして借金の返済が困難になった個人や個人事業主の債務を減免する仕親みだ。『自然災害ガイドライン』と呼ばれ、全国銀行協会などが15年に定めた。20年12月にコロナの影響で収入や売り上げが減った人も対象に加える制度を始めた。ガイドラインの運営機関によると20年12月から21年6月末までの7カ月の申請は1085件にのぼった。このうち785件が金融機関などと債務整理の手続きに入った。ただし、債務整理で最終的な合意に至ったのはわずか3件にとどまる。手続きが進まない理由の一つに、コロナの場合は返済が難しくなった証明がしにくいという点がある。震災で家屋が倒壊した場合は、自治体から罹災証明書の発行が受けられるため被害を認定しやすい。…自治体や公的機関が手掛ける制度融資もハードルになっている。金融機関の債務減免と同時に個人事業主が事業をたたむ場合、制度融資までを減免対象に含めるかは自治体ごとに見解が分かれる。…債務減免にあたってはすべての債権者の同意が必要で、公的機関を含め減免に応じない債権者が1人でもいると手続きが進まなくなる。コロナが原因で借金の返済に苦しむ人は複数の金融機関から借り入れているケースも多く、減免に後ろ向きな債権者が現れると手続きが滞りがちだ。」(『日本経済新聞』2021.08.26)
●「国土交通省は26日、2022年度予算の概算要求を発表した。一般会計の国費総額は前年度比17.6%増の6兆9349億円。うち公共事業関係費は18.8%増の6兆2492億円を要求する。グリーン社会の実現など成長分野の施策に重点配分する特別枠『新たな成長推進枠』を活用し、最大限の要求額を計上。2年目に入る『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』や関係省庁と進める盛り土の総点検を踏まえた対応は事項要求とし、予算編成過程で検討する。」(『建設工業新聞』2021.08.27)
●「国土交通省は直轄工事で試行している『「労務費見積り尊重宣言」促進モデル工事』を拡大する。2021年度の試行予定件数は7月16日時点で契約・公告・入札情報サービス(PPI)公表済みの工事で40件。20年度の実績(契約ベースで24件)を上回る。元請が下請の見積もりを尊重し、下請が適正な労務賃金を支払う取り組みを全国で後押しすることで技能者の処遇改善につなげる。」(『建設工業新聞』2021.08.16)
●「国土交通省は25日、2020年度に実施した道路施設の定期点検結果を公表した。道路管理者に5年ごとに義務付けている近接目視や新技術を使った点検のサイクル2巡目(19~23年度)の2年目。点検の実施率は上がったものの、1巡目(14~18年度)で早期・緊急措置が必要と診断した橋梁の修繕で、地方自治体の対応に遅れが目立った。」(『建設工業新聞』2021.08.26)
●「国土交通省の公共事業予算が例年を上回るペースで執行されている。2021年度予算の執行率は6月未時点で60.2%。前年度同期の実績を3.5ポイント上回った。57.8%だった過去5年間(16~20年度)の平均値と比べても高い水準になる。1月に成立した2020年度第3次補正予算の執行率も66.8%。12年度以降で年度末ごろに成立した1兆円前後の大型補正予算で最も高かった。」(『建設工業新聞』2021.08.31)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、47都道府県建設業協会の会員企業を対象に『特定技能外国人の受け入れ状況』を調査した(2月現在)。特定技能制度を活用する上で前提となる受入計画の認定を受けた会員は78社で、実際に受け入れている人数の合計が118人。建設業全体に占める割合はいずれも1割以下にとどまっており、新型コロナウイルス感染症に起因した国際的な人流停滞、制度活用に伴う就労環境の整備などが低調さの背景にあるとみられる。」(『建設通信新聞』2021.08.16)
●「建設業振興基金は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能者への普及促進に向け、新たな実証実験を始める。CCUSで就業履歴を蓄積(カードタッチ)する技能者のモチベーションが直接的に上がるよう、それぞれの元請事業者が独自に設定するポイントプログラムに応じて、電子マネーが還元される仕組みを試行する。実証実験の第1号は9月1日から奥村組の神奈川県の工事事務所で開始する。実証実験では、CCUSのカードタッチや元請事業者が設定する安全衛生活動や生産合理化活動などの対象活動に参加した技能者にポイントを付与する。各技能者がためたポイントは目標値に達するとコンビニなどで使える電子マネー(QUOカードPay)に交換できる。例えば、カードタッチ1日1回ごとで10ポイント、安全衛生講習会への参加30ポイント、合理化提案で50ポイントなどを加算していき、累計1000ポイントためると、1000円相当の電子マネーなどを還元するイメージだ。」(『建設通信新聞』2021.08.18)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能者登録数が63万人を超え、CCUSカードを保有する建設技能者が増加する中、工事現場にカードリーダーが設置されておらず、カードタッチ(就業履歴の蓄積)できない“カードリーダー難民”が続出している。CCUSのメリットを建設技能者が享受し、システム普及をより一層加速させる上で、事業者・技能者登録とともに、官民連携によるカードリーダーの設置徹底が急がれる。」(『建設通信新聞』2021.08.19)
●「国土交通、農林水産両省は10月時点で技能労働者に支払われる賃金などを調べる『公共事業労務費調査』を、昨年度と同じく書面送付と電話での聞き取りで実施する。調査対象工事約1万件を選定し、9月に入ってから対象業者に通知。約11万人の技能労働者が対象になる見込みだ。賃金水準の正確な把握につなげるため、調査票の回収率が低い傾向がある一人親方にも協力してもらえるよう重点的に呼び掛ける。」(『建設工業新聞』2021.08.20)
●「大手・準大手ゼネコン26社の2022年3月期第1四半期決算が出そろった。連結で13社が前年同期比増収、16社が営業減益(営業損失含む)となった。一方、10社は営業増益を確保しており、明暗が分かれた格好だ。単体受注高は16社が前年同期比増で堅調さを保っているものの、利益面での不安を抱えての滑り出しとなった。…単体の粗利率で見ると、12社が前年同期を下回り、15社(非公表企業除く)が1桁台となった。土木の粗利率は13社が2桁を維持するなどおおむね堅調だが、建築は12社が前年同期を下回り、18社が1桁台だった。建築の粗利率を開示している23社の平均粗利率は8.1%となった。コロナ禍以前から始まっていた超大型物件での競争激化に加え、コロナ禍による需要減退の影響で準大手クラスの案件でも競争が激化し始めていた影響が顕在化したとみられる。受注高は、16社が前年同期比増で、土木は16社、建築は18社が前年同期を上回った。防災・減災、国土強靭化の予算が確保されていることで土木の需要は安定していることに加え、建築もコロナ禍から経済が回復する兆しがあり、受注面は底堅く推移している。ただ、激しい競争の中で受注高を確保することになれば粗利率がさらに悪化しかねず、各社の踏ん張り時となっている。」(『建設通信新聞』2021.08.17)
●「国土交通省は建設工事で安全衛生経費の適切な支払いを促すため、元請と下請の契約時などに活用できる安全衛生対策項目の『確認表』を検討する。工種ごとに必要な安全衛生関係の資機材や教育活動などをリストアップ。元下ごとの準備や費用分担の考え方を整理し認識のずれを解消する。先行的に3工種程度を抽出し、年度内にも確認表のたたき台を作成する。」(『建設工業新聞』2021.08.18)
●「国土交通省は、2020年3月末における建設関連業(大臣登録業者)の登録状況をまとめた。登録業者数は、前年度比で測量業が0.7%減の1万1630者、建設コンサルタントが0.0%減の3956者、地質調査業が0.2%増の1270者。測量業は登録業者が最も多かった03年度(1万4750者)との比較で21%の減少となった。03年度末をピークに17年連続での減少となっている。」(『建設通信新聞』2021.08.24)
●「日本道路建設業協会(道建協、西田義則会長)は、国土交通省が発注した舗装工事を対象に、働き方改革の実態調査を実施した。調査結果によると、『適正な工期が設定されている』と感じた割合は回答数ベースで6割を超えた。『年間を通じて施工時期の平準化ができている』と感じたのは3割程度にとどまった。調査結果を受け、道建協は工程に影響がある現場条件の明示徹底などを国交省に要望していく。」(『建設工業新聞』2021.08.25)
●「東京23区内で2021年度第1四半期(4~6月)に公表された延べ床面積1万平方メートル以上の大規模建築計画は、延べ床面積の合計が前年度同期比18.3%減の34万5617平方メートルと、過去5年間で最低水準となった。東京五輪・パラリンピック関連の工事が一段落して大型プロジェクトが端境期にあることに加え、新型コロナウイルスの感染拡大が事業手続きなどに影響を与えているようだ。」(『建設工業新聞』2021.08.16)
●「国土交通省らは住宅と非住宅建築物の脱炭素化に向け、2030年までに取り組む施策の工程表をまとめた。建築物省エネ法で定める『省エネ基準』への適合を義務づけて段階的に引き上げ、30年には新築でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)と同程度の水準にする。ZEHへの支援拡充を通じ、30年には新築一戸建て住宅の6割で太陽光発電設備の設置を目指す。国交省と経済産業、環境両省が合同で設置した『脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会』(座長・田辺新一早稲田大学創造理工学部教授)の会合を10日にウェブで開き、事務局が工程表の案を示した。住宅と小規模建築物は、省エネ基準への適合を25年度に義務化する。経過措置として22~24年度は、建設時に補助金を受け取ったり税制上の優遇を受けたりする際の要件に基準への適合を加える。中規模と大規模の建築物は適合を義務化済みで、今後は求める水準を引き上げる。大規模は24年度以降、中規模も26年度以降、省エネ基準に対する1次エネルギー消費量の削減率を示す『エネルギー消費性能(BEI)』を0.8以下にしてもらう。ZEHの建設に対する支援策を22年度に新たに設ける。税制上の優遇や融資といった手法を想定する。現在展開中の補助事業も30年ころまで継続する。ZEBへの補助事業は1件当たり最大10億円が受け取れるなど『現行でもかなり手厚い措置』(経産省担当者)といい、今後は認知度の向上に力を入れる。」(『建設工業新聞』2021.08.17)
●「政府は7月に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流を踏まえ、災害を引き起こす可能性が高い不適切な盛り土の対策方針を決めた。土砂災害警戒区域の上流部や区域内にある盛り土を『重点対象箇所』に位置付け、総点検する。年内にも暫定結果を公表する予定だ。土地利用規制を含め、安全確保策など制度面の対策強化も検討する。」(『建設工業新聞』2021.08.17)
●「政府は昨年6月に成立した『改正マンション建て替え円滑化法』の一部を12月に施行する。老朽化したマンションを対象に設けた三つの優遇制度のうち、▽容積率緩和の特例▽マンション敷地売却制度―の二つがスタート。団地の敷地分割制度は2022年4月に開始する予定だ。優遇制度の適用可否を判断する『要除却認定基準』は、27日に国土交通省が開催する有識者会議に最終案を諮った上で決定する。」(『建設工業新聞』2021.08.20)
●「東京電力ホールディングス(東電HD)は、福島第1原子力発電所から出る放射性物質トリチウムを含む処理水を海底トンネルで沖合約1キロに放出する計画案をまとめた。5、6号機の沿岸に立坑を構築しシールドマシンで海底に延長約1キロ、直径約2.5メートルのトンネルを構築する。海底の地質を確認する海上ボーリング調査の結果などを踏まえ、工期や工事費も含め詳細を詰める。」(『建設工業新聞』2021.08.27)