情勢の特徴 - 2021年9月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●民間債用調査会社の帝国データバンクが14日午後4時現在で集計したデータによると、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた企業倒産は全国で2039件だった。うち、東京、神奈川、埼玉、干葉の1都3県で全体の32.6%を占めた。集計の対象は、法的整理または事業停止(銀行取引停止処分は対象外)、負債額1000万円未満および個人事業者を含む。都道府県別にみると、東京が449件、大阪が222件、神奈川が116件、兵庫が91件など。東京と神奈川のほか、埼玉(52件)と千葉(48件)を加えると、首都圏の1都3件で665件、全国の32.6%を占める。業種別では、飲食店が343件、建設・工事業が208件、ホテル・旅館が109件、食品卸が106件など。(『しんぶん赤旗』2021.09.16より抜粋。)
●コロナ禍で低所得世帯ほど家計は赤字に―。日本生活協同組合連合会(日本生協連)が発表した2020年『家計・くらしの調査』結果から、こんな実態が明らかになった。調査は全国の組合員を対象に毎年行っているもの。2020年の収入や支出などの家計状況について聞いた。有効回答数は749件。世帯年収400万円未満は年間42万6786円の赤字に。赤字額は前年から3万4806円増えた。また、世帯年収600万円未満は年間24万1260円の赤字だったが、赤字額は前年から2万6955円減った。一方、世帯年収600万円以上は黒字となり、全世帯では77万8006円の黒字に。黒字額は前年より約2万3182円増えた。(『しんぶん赤旗』2021.09.20より抜粋。)
●「消費税の仕入税額控除の新方式『適格請求書等保存方式』に対応するため必要になる『適格請求書(インボイス)発行事業者』の登録申請受け付けが10月に始まる。新方式を巡っては、現行制度で納税義務が原則免除される『免税事業者』の取引排除や収入減を懸念する声が挙がっている。国税庁は免税事業者に適用する経過措置や事務負担軽減措置を周知。取引先と協議し、登録申請の必要性を検討するよう呼び掛けている。」(『建設工業新聞』2021.09.22)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は民間工事を含めたダンピング排除へ対応策を検討する。16日に会見した長橋和久不動産・建設経済局長が『コロナ禍の影響もあり、特に建築分野で競争環境が厳しくなり、ダンピング受注を余儀なくされている実態も聞こえてきている』と民間市場の動向を指摘。技能労働者の賃金水準の上昇に向けた業界全体の取り組みを滞らせないため、『関係者の声に耳を傾けながら、ダンピング排除へ迅速に対応していきたい』と表明した。」(『建設工業新聞』2021.09.17)
●「東京都北区は、(仮称)公契約条例の制定に向けて検討を具体化する。労働報酬下限額を定める『賃金条項型』の導入を想定しており、11月にも条例案骨子を公表する見通し。区民意見などを募集した上で2022年6月議会に条例案を提出する予定だ。21日の区議会で明らかにした。20年12月議会で条例の調査検討を求める陳情が全会一致で採択されたことを受け、先行事例の情報収集など庁内検討を進めてきた。条例により適正履行・適正品質を確保することで、地域経済の維持・発展につなげることが狙い。新たに制定する条例には、対象となる契約・労働者の範囲や労働報酬下限額の設定などの規定を盛り込む。立ち入り調査や違反事実の公表など条例違反に対する区の権限も示す方針だ。(仮称)公契約審議会の設置も計画する。議会の承認を得られれば、周知期間を経て23年7月にも条例を施行する考え。」(『建設通信新聞』2021.09.22)
●「政府は、官公需法に基づく2021年度の国などの契約の基本方針を固めた。国や独立行政法人などが中小企業・小規模事業者に発注する契約目標率は、61.0%とする。前年度の契約目標率を1.0ポイント上回り、過去最高を更新する。21年度も引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえ、中小企業・小規模事業者に対してこれまで以上に受注機会の増大に配慮する。7兆9082億円の21年度官公需予算総額に占める中小企業・小規模事業者向け契約目標額は、4兆8240億円。4年連続して4兆円台となり、過去10年で最も多い契約目標額にする。契約の基本方針は24日に閣議決定する予定。」(『建設通信新聞』2021.09.24)
●「赤羽一嘉国土交通相は29日に開いた建設業4団体との意見交換会で、技能労働者の賃金水準を『おおむね2%以上』引き上げる目標の達成に向け、改めて協力を要請した。10月に実施する公共事業労務費調査を踏まえ、『賃金の上昇が労務単価の上昇につながる好循環を維持できるよう引き続き取り組みを進めたい』と表明。ダンピング受注を控えるようくぎを刺し、適正な価格で下請契約を結ぶよう求めた。」(『建設工業新聞』2021.09.30)

労働・福祉

●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)の労働委員会は、会員企業を対象とした2020年度労働時間調査の報告書をまとめた。コロナ禍の影響で他産業の総実労働時間が減少する中、建設業はエッセンシャルワーカーとして事業継続が求められたことから、前年度と同水準の約2200時間に達した。時間外労働については、24年度から建設業にも適用される労働基準法の上限である『年間720時間以内』に合致した割合が約9割を占めたものの、法令順守の観点からより一層の改善が不可欠となる。」(『建設通信新聞』2021.09.21)
●「上場企業が2020年度にアルバイトや契約社員ら非正規従業員を約21万人減らしたことが分かった。新型コロナウイルス禍による休業や工場の操業度低下などで働く場が減少した。正社員が1万人強の減少にとどまったのとは対照的だ。立場の弱い働き手に学び直しの機会を提供するなどキャリア形成を後押しする対策が求められる。上場企業の多くが有価証券報告書で『平均臨時従業員数』などとして公表している非正規従業員数(年度内の平均人数)を日本経済新聞が集計した。前年度と比較できた2543社(上場子会社や変則決算除く、上場企業の約65%)の合計で、前の年度から21万5953人(5%)減った。非正規従業員はデータが取れる10年度以降一貫して増えたが、コロナの影響で19年度に1万3122人(0.3%)減と初めてマイナスに転じてから2年連続で減少した。一方、20年度の正社員数は1万4825人(0.1%)減だった。」(『日本経済新聞』2021.09.26)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、47都道府県建設業協会の会員企業を対象とした『働き方改革の推進に向けた取り組み状況などに関するアンケート調査』の結果をまとめた。残業時間、休日取得とも改善しているものの、事務所に比べて現場では遅れがみられる。担い手の確保・育成や2024年度から建設業にも適用される時間外労働の上限規制を見据え、働き方改革のさらなる進展が求められる。各建協の会員企業4625社から8月1日現在の働き方改革の取り組み状況について回答を得た(回答率25.0%)。全建が21年度から始めた『目指せ週休2日+360時間(2+360・ツープラスサンロクマル)運動』は、取り組んでいる割合は2割弱にとどまるが、『取り組みを検討している』が3割を超え、今後の拡大が見込まれる。取得休日数を職場別にみると、現場は4週8休と4週7休が前回調査から若干増加したものの、ともに2割を下回り、4週6休以下が6割超を占める。一方、事務所は4週8休が5割に達し、乖離がある。4週8休の実現に向けた取り組みとして、施工の効率化や社員の意識、能力向上、ICTなどの活用が多いものの、『下請企業への4週8休での見積もり依頼』が増加している。現場の1カ月当たりの残業時間は『15時間未満』が横ばいの5割で最多。45時間以上は1割弱だった。事務所は『15時間未満』が約9割で、45時間以上は存在しなかった。36協定の締結条項は、『一般条項のみ』『特別条項を含む』を合わせ、約9割に上る。同協定に基づいて1年間で延長できる時間数をみると、現場、事務所とも『160時間未満』『160時間以上260時間未満』『260時間以上360時間未満』が6割以上を占めるが、現場では『540時間以上720時間未滞』『720時間以上』がそれぞれ増加し、合計で2割を超える。」(『建設通信新聞』2021.09.29)
●「全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)は、会員企業に実施した『働き方改革の推進に向けた取り組み状況等に関するアンケート調査』の結果をまとめた。会員企業が直接雇用している技能労働者の賃上げ状況は、4割強が『2%以上引き上げたもしくは引き上げる予定』と回答。国土交通省と建設4団体が3月の意見交換会で合意した21年に『おおむね2%以上』の賃金上昇を目指す目標達成に向け、着実に対応が進んでいるようだ。…国交省と建設4団体による技能労働者の賃上げに関する申し合わせ事項の取り組み状況は36.6%が『取り組みを検討している』、33.3%が『取り組んでいる』と回答し、約7割が前向きに動いている。ただ『知っているが取り組む予定はない』(10.2%)、『知らない』(20.2%)という企業も約3割あった。会員企業による技能労働者の賃上げ状況を調べたところ、回答した3706社のうち42.1%が『2%以上引き上げた(引き上げる予定含む)』と答えた。次いで『2%未満引き上げた(同)』(30.0%)、『引き上げない』(27.7%)、『引き下げた(引き下げる予定含む)』(0.2%)の順だった。」(『建設工業新聞』2021.09.29)
●「全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)は、会員企業を対象に実施した建設キャリアアップシステム(CCUS)導入の調査結果をまとめた。調査時期は昨年10~12月。6割超の企業が『導入済みもしくは導入する予定』と回答した。導入しない企業が挙げた理由は『費用負担ができない』が約半数を占めた。全中建は引き続きCCUSのメリットを丁寧に説明し普及拡大を目指す。調査対象は約2260社。30.8%の696社が回答した。業種別の割合は土木66.1%、土木建築23.9%、建築7.6%、その他2.4%。従業員は10人未満24.5%、10~50人61.9%、51~100人8.6%、101人以上5%だった。完成工事高別は1億円未満8.9%、1億~10億円未満62.5%、10億円以上28.6%となっている。」(『建設工業新聞』2021.09.30)

建設産業・経営

●「準大手ゼネコンの西松建設は21日、発行済み株式の27%を上限に自社株TOB(株式公開買い付け)に乗り出すと発表した。1株3626円で21日終値(3565円)を2%上回る水準。買い付け総額は最大543億円となる。対立していた筆頭株主の投資ファンドが応募することで合意している。買い付け期間は22日から10月20日まで。1500万株を上限に買い取る。取得資金は自己資金のほか、みずほ銀行からの最大500億円の借り入れでまかなう方針。西松建設の筆頭株主は村上世彰氏らが関わるアクティビスト(物言う株主)のシティインデックスイレブンス(東京・渋谷)だ。シティと村上氏は同日、保有する1389万株(発行済み株式の約25%)全株をTOBに応募する契約を西松建設と結んだ。西松建設とシティインデックスは保有不動産の売却といった資産効率化策や、大規模な自社株買いなどの株主還元策を巡って対立してきた。5月には西松建設がシティインデックス側に25%超の株式の購入を行わないことを要請して合意していたが、8月以降にシティインデックスが保有比率を従前の23.87%から引き上げていた。」(『日本経済新聞』2021.09.22)
●「建設業の完工高上位30社で、社員1人当たり営業利益高が減少を続けている。2020年度(20年4月-21年3月単体決算業績)では30社中14社が19年度を上回ったが、特に上位5社の下落幅が大きい。30社の平均は663万円で、15年度(627万円)以来5年ぶりに700万円を下回り、ピークの17年度(810万円)に比べて18.1%減となった。18年度から減少が続いており、DX(デジタルトランスフォーメーション)化や新常態(ニューノーマル)に伴う社会・事業環境の変化の中、営業利益をどう上げるかが課題となっている。」(『建設通信新聞』2021.09.22)
●「鹿島と竹中工務店、清水建設を中心にゼネコン16社が施工ロボットやIoT(モノのインターネット)分野で技術連携する。『建設RXコンソーシアム』を22日に設立した。就労人口の減少など建設産業を取り巻く共通の課題に、ロボットを活用した生産性向上などで対応。ベースになる研究や技術開発で連携しコストと労力を抑えながら、独自性が発揮できる分野に各社が経営資源を配分。生産性などを高め、より健全な競争ができる環境を整える。」(『建設工業新聞』2021.09.24)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省が21日発表した2021年の基準地価は住宅地や商業地など全用途の全国平均が前年比0.4%下がり、2年連続の下落となった。際立ったのが2年目の新型コロナウイルス禍の下で進む地価の『地殻変動』だ。全国的に下落する中で上昇した地点に目を向けると、海外の緩和マネー流入や在宅勤務による住環境の再評価というけん引力が浮かび上がる。」(『日本経済新聞』2021.09.22)
●「静岡県熱海市で7月に発生した大規模土石流は起点の土地での不適切な盛り土が原因だとして、被災した伊豆山地区の住民ら計70人が28日、土地の現旧所有者とそれぞれの会社などに計約32億円の損害賠償を求めて静岡地裁沼津支部に提訴した。住民らは『土石流は明確に「人災」により生じた』と主張している。…原告は住民のほか、亡くなった住民の家族や営業休止を余儀なくされた温泉施設の関係者ら。被告は2011年まで起点に土地を所有していた神奈川県小田原市の不動麿管理会杜(清算)と同社の元幹部、11年にこの土地を取得した現所有者の男性と、男性が設立した東京都千代田区の不動産会社。起点に土砂を搬入したとされる事業者も被告に加えた。現所有者の代理人弁護士は『公正な態度で粛々と裁判に臨む。(不動産会社も被告としたことには)本件と関係なく、不当だ』と話した。不動産管理会社の元幹部はこれまでの取材に『問題となるような造成はしていない』と主張している。訴状によると、7月3日の土石流で26人が死亡、1人が行方不明となったほか、131軒の家屋が損壊した。『現在も復興・復旧のめどは立っていない』としている。原告側は、①旧所有者側が起点の土地を売却した際の重要事項説明書に『旧所有者は崩れた盛り土を硬化処理する』との記載がある②現所有者側が『盛り土の崩落を防ぐ安全対策を実施する』と記した文書を静岡県に提出――といった証拠に基づき、どちらも盛り土崩落の危険があることを認識していたと主張する。」(『日本経済新聞』2021.09.28)
●「森トラストは27日、東京23区内を対象にしたオフィス供給量の調査結果を発表した。2020年の供給量は、5000平方メートル以上1万平方メートル未満の中規模オフィスが2年連続で減少した。延べ1万平方メートル以上の大規模オフィスは過去20年で2番目の高水準だった。今後5年間の平均供給量は低水準で推移する見通し。過去20年の平均を2割下回ると見ている。」(『建設工業新聞』2021.09.28)

その他