情勢の特徴 - 2021年10月後半
●「新型コロナウイルスの感染拡大以降、全国の飲食店の閉店が4万5000店に上ることが日本経済新聞とNTTタウンページ(東京・港)の共同調査で分かった。全体の1割に当たる。自治体の時短協力金では十分に支えきれないことが浮き彫りになった。国は営業制限を段階的に緩和する方針だが客足がコロナ前まで戻るかは不透明で、支援を急ぐ必要がある。NTT東日本・西日本が持つタウンページのデータベースは飲食店の住所や電話番号が原則無料で登録され、閉店に伴って削除依頼などがあれば1週間で反映される。1件の電話番号登録数を1店舗とみなした。感染拡大が始まった2020年1月末には約45万8000店が登録されていたが、21年8月末で41万3000店と4万5000店(1割)減った。」(『日本経済新聞』2021.10.17)
●「国土交通省は19日、2021年度の建設投資見通しを公表した。総額(名目値)は、前年度の見込み額(60兆9000億円)との比較で2.4%増の62兆6500億円となった。民間投資が新型コロナウイルス感染症の影響で減少に転じた前年から持ち直し、単純比較が可能な直近7年間で最大規模となる見通しだ。政府投資は前年度比2.4%増の24兆5300億円。全体投資額と同様に直近7年間七最大規模となる。防災・減災、国土強靭化など土木投資を中心に堅調で、3年度連続の増加を予測する。民間投資は3.2%増の38兆1200億円と推計している。新型コロナで大きく落ち込んだ前年度を含めて3年ぶりの増加を見通す。水準は直近7年間で上から4番目と高くはなく、あくまで大幅減からの反動増だ。」(『建設通信新聞』2021.10.20)
●「財務省は20日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会歳出改革部会を開き、社会資本整備に対する現状認識と課題を提示した。『社会資本の整備水準は大きく向上』との認識を崩さず、『社会インフラは概成しつつある』との姿勢を改めて示した。その上で、防災・減災対策はソフト対策を促進する必要があることや、建設業の生産性向上による事業費やコスト低減を主張した。防災・減災対策の政策目標は、『より多くの人が災害リスクの低い土地に居住し生活すること』だとし、『災害リスクの高い土地の人口動態などによって防災・減災対策の取り組みを評価』すべきだとした。また、新たな災害復旧対策の例として、被災地域の原形復旧を行わず、集落などを別の地域に移転させるインセンティブの強化を挙げた。建設業に対しては、製造業や全産業に比べて生産性が大きく劣後しているとする指標を示した上で、生産性向上を通じたコスト削減を求めた。工期短縮や省人化に向けた新技術の導入を加速するとともに、AI(人工知能)活用などさらなる効率化のための新技術開発を提案した。」(『建設通信新聞』2021.10.21)
●「政府は26日、新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)の初会合を開き、成長と分配の好循環などをコンセプトとする『新しい資本主義』の具体化に向けた議論を始めた。同会議は『新しい資本主義を起動させていく』(岸田首相)ための取り組みを緊急提言として11月上旬にまとめるとともに、2022年春に新たな経済社会のビジョンを策定する。政府は緊急提言の内容を衆院選後に策定する経済対策に反映する。」(『建設通信新聞』2021.10.27)
●「国土交通省は、公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づき、発注者による入札・契約の適正化に関する取り組みやその実施状況を確認する『入契調査』に着手する。今年度はダンピング(過度な安値受注)対策に焦点を当てて調査項目を重点化した。低入札価格調査の対象となった工事での履行確保措置の実施状況や予定価格の積算内訳の公表の有無などを新たに調査項目に加えた。入契法の適正化指針に沿って、公共工事の発注者における取り組みの状況や講じている措置の実態を把握する入契調査は、2002年度から実施している。一般競争入札・総合評価落札方式の導入、低入札価格調査制度・最低制限価格制度の導入、低入制度の調査基準価格の公表時期、請負代金内訳書における法定福利費の明示状況、施工時期の平準化の取り組みといった公共発注者に求められる事項の進捗を確認する。今年度は20日に財務省、総務省との連名で、対象となる国の各省庁(19団体)や独立行政法人などの特殊法人(124団体)、地方自治体(1788団体)に調査票を送付した。11月中旬までに回答を集め、22年2月下旬に調査の結果を公表する。」(『建設通信新聞』2021.10.21)
●「国土交通省は、地方自治体における施工時期の平準化を促進するため、取り組みに遅れの見られる自治体を支援する。今年度はターゲットを人口10万人未満の市区まで拡大し、平準化の取り組みが進まない要因や課題をヒアリングした上で、適切な対応を促す。20日に対象となる315団体にアンケートを送付し、その結果を踏まえて11月中に個別ヒアリングを実施する。国交省と総務省が5月に公表した2021年度の自治体における施工時期の平準化の取り組み状況では、前年度調査で約30団体あった平準化のための取り組みが未実施の人口10万人以上の市区がゼロになったことを始め、多くの項目で進捗が確認できた。一方、人口10万人未満の自治体では未実施が大部分を占めていた。20年度に集中して取り組みを促してきた人口10万人以上の市区で改善が見られたことから、国交省は対象を10万人未満の市区まで広げる。10万人未満の市区(533団体)のうち、平準化のための取り組みが未実施の42団体、平準化率が0.5未満の256団体に対し、抱えている課題などを調査する。アンケートの結果を分析し、対応すべき課題がある自治体に対しては個別のヒアリングを実施する。平準化に向けた取り組みの現状・課題、地域の建設企業からの平準化の状況や発注時期に関する具体的な意見・評価・要望、自治体の実務担当者が感じている課題・留意点を確認する。」(『建設通信新聞』2021.10.22)
●「東京・中野区は『(仮称)中野区公契約条例』の制定に向けた考え方を示した。建設業の担い手確保を後押しするため、一定規模を超える区発注工事で報酬下限額を設けるよう規定する。予定価格1億8000万円以上の工事などを対象にする考え。学識者を交えた専門組織で年度ごとに下限額を検討することも規定に加える。2023年度からの制度適用を目指し、年度内に条例案を区議会に提出する。区は条例に対象となる労働者の範囲や報酬下限額の設定に関する規定などを条例に盛り込む方針。報酬下限額を検討する専門組織『(仮称)中野区公契約審議会』の設置も条例で規定する。審議会は区長の諮問機関という位置付けで、事業者と労働者の代表や外部有識者を構成員にする。社会・経済情勢などを踏まえ、客観的で公平な下限額設定が実現できる体制を目指す。派遣を含めた下請会社の社員だけでなく一人親方も対象範囲にする。建設工事以外でも人件費の占める割合が高く、予定価格が1000万円を超える特定業種などへの委託案件にも適用する。区への報告書提出を義務付け、受注者間の連帯責任条項も設ける方針だ。議会で条例が可決されれば、22年4月1日から施行する予定。下限額設定などの手続きを経て、『23年4月1日以降に締結する契約・協定から新制度を適用させたい』(総務部経理課)としている。」(『建設工業新聞』2021.10.22)
●「国土交通省は、15日に開いた中央建設業審議会の総会で、建設業における担い手の育成・確保を促進するため、建設キャリアアップシステム(CCUS)を現場に導入する元請企業を経営事項審査で評価することを提案した。経審改正の方向性を示し、担い手の確保・育成や災害対応、環境配慮に取り組む建設企業を適正に評価するため、新しい審査項目を盛り込む。具体的な加点幅やその条件、ウエートなどは年内か年明けに開く次回の中建審総会で示す。現行の経審では自社で雇用する技術者、技能者の育成・確保に関する状況は評価対象だが、下請負人の雇用者の処遇改善の取り組みに対する加点措置はない。国交省は担い手の育成・確保の重要性は元下を問わず業界の共通認識であると指摘。公共工事品質確保促進法(品確法)では下請負人に使用される者の労働条件の改善が元請けの努力義務となっていることも背景に経審での対応を提案した。評価対象はCCUSを現場で導入している元請企業。技能者がCCUSで就業実績を蓄積するには、現場の元請企業による現場登録やカードリーダー設置、現場利用料の支払いなどが必要であることから、導入企業は処遇改善に相応の役割を果たしていると判断できることから評価の対象とする。」(『建設通信新聞』2021.10.18)
●「厚生労働省が20日にまとめた2021年1-9月の労働災害発生状況(速報、10月7日時点)によると、建設業の死亡者数は、前年同期と比べ1.7%増(3人増)の183人となった。また、建設業の休業4日以上の死傷者数は1万0574人で9.1%増(882人増)だった。 死亡者数の業種別は土木が69人、建築が86人、そのほかが28人。月別では1月23人、2月24人、3月19人、4月18人、5月15人、6月24人、7月26人、8月18人、9月16人だった。…事故別では『墜落・転落』が72人で建設業の39.3%を占める。『はさまれ・巻き込まれ』は20人、『崩壊・倒壊』が17人、『交通事故(道路)』が14人だった。前年同期と比べ、『交通事故(道路)』は13人減っているものの、『墜落・転落』が7人増えている。また、建設業の死傷者事故別人数は『墜落・転落』が3215人と最も多く、死傷者数の30.4%を占める。『転倒』と『はさまれ・巻き込まれ』は各1084人、『飛来・落下』が893人、『切れ・こすれ』が883人などとなっている。」(『建設通信新聞』2021.10.21)
●「2018年3月卒業者で建設業に就職した3万9027人のうち、就職後3年以内に仕事を辞めたのは1万3734人で、卒業後3年以内離職率が35.2%となったことが、厚生労働省が10月22日にまとめた新規学卒就職者の離職状況から明らかになった。前年(17年3月)の卒業者と比べ離職率は2.2ポイント下がった。このうち、高卒者は1万4128人の就職に対し、6078人が仕事を辞めたことから、3年以内離職率は3.1ポイント低下の42.7%だった。2年ぶりに離職率は下がったものの、全産業の高卒離職率36.9%と比べ、建設業の離職率は5.8ポイントも高い。各業種とも離職率が例年と比べ低下していることから、建設業への定着が進んだとはいえず、高卒者の4割超が離職する状況は変わっていない。 大卒者の18年3月卒業者は、建設業に2万0171人が就職し、3年以内に5649人が離職、離職率は1.5ポイント低下の28.0%となり、2年ぶりに離職率が下がった。全産業の大卒離職率31.2%と比較でも、建設業の離職率は3.2ポイント低い。大卒建設業の3年以内離職率が30%を下回ったのは4年連続となる。」(『建設通信新聞』2021.10.25)
●「建設業での女性活躍を支える新団体として一般社団法人の『女性技能者協会』が26日に発足した。建設現場で働く女性技能者が継続して働ける環境づくり、技能や知識の向上などでさまざまな活動を展開する。女性技術者の活躍を後押しするプラットフォームは多く存在しているが、女性技能者に焦点を当てたケースはあまりない。女性技能者の活躍を幅広くPRし入職者の増加につなげる。」(『建設工業新聞』2021.10.27)
●「北海道、東日本、西日本の公共工事前払金保証事業会社3社による建設業景況調査で、地元建設業界の景況感が悪化していることが明らかになった。3社が20日に公表した7~9月の調査結果によると、景気に関するBSI値(景況判断指数=『良い』と『悪い』の回答差)はマイナス11.5。前期(4~6月)からマイナス幅が3.0ポイント拡大した。受注総額のBSI値もマイナス14.0(前期はマイナス11.0)で減少傾向が強まっている。調査は3社と取引がある建設会社2545社を対象に9月実施。有効回答率は90.1%だった。」(『建設工業新聞』2021.10.21)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は22日、『下請取引適正化と適正な受注活動の徹底に向けた自主行動計画』を改定した。『建設業法令遵守ガイドライン』(国土交通省所管)の見直しを受けて、『割引料を始め、手形などの現金化にかかるコストの協力会社への提示』『手形期間は60日以内』の2項目を努力義務に設定。約束手形の利用廃止を視野に、発注者を含む関係者全体で前金払いの充実などに取り組むことも明記している。」(『建設通信新聞』2021.10.25)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、会員企業95社を対象とした受注調査結果を発表した。2021年度上期(4-9月)は前年同期比13.4%増の6兆2230億1600万円。コロナ禍で低調だった20年度上期(5兆4900億円)からの反動増となったものの、19年度上期(6兆1100億円)を上回る水準まで回復している。国内は12.3%増の6兆0921億1000万円。そのうち、官公庁は2.7%増の1兆7008億0900万円。国の機関(8.8%増の1兆1080億4100万円)が堅調に推移する一方、地方の機関(7.0%減の5927億6800万円)が落ち込んでいる。民間は17.0%増の4兆3770億2700万円。製造業(17.9%増の8440億5400万円)、非製造業(16.8%増の3兆5329億7300万円)とも好調で、全体を押し上げている。特に非製造業の中でシェアの大きい不動産業が17.7%増の1兆2730億4300万円、サービス業が16.4%増の7715億8600万円で伸びている。海外は98.8%増の1309億0600万円となっている。」(『建設通信新聞』2021.10.28)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)が18日発表した4~9月の首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築マンションの発売戸数は前年同期比44.7%増の1万2809戸だった。新型コロナウイルスの影響で大幅減だった2020年の反動が出た。在宅勤務が定着し郊外住宅を購入する人が増加。平均価格も上昇し過去最高だった。4~9月の増加は13年以来8年ぶり。地域別の発売戸数では東京23区が57.9%増えたほか、神奈川県や埼玉県でも大幅増だった。新型コロナの感染拡大で不動産各社が営業活動を自粛したため、20年は調査開始以来初めて1万戸を下回ったが、21年はコロナ前の水準まで戻った。21年4~9月の平均価格は6702万円と10.1%上昇し、同期間の過去最高を更新した。平均価格が1億円を超える『億ション』物件の販売が好調だった東京23区は17%上昇の8686万円だった。価格が上がった中でも、消費者の購入割合を示す契約率は首都圏で70.6%と好調の目安である70%を上回った。新型コロナを機に広がった住まいの多様化から1年たったが、マンションや戸建てを含め買い替え需要は続いている。当初、在宅勤務に絞られた働き方は最近、出社とテレワークを組み合わせた形が多い。今後も同様の働き方が続くとみたファミリー層などはそれぞれの生活スタイルに合った物件を探している。」(『日本経済新聞』2021.10.19)
●「環境省は、建築物解体などの工事で実施する石綿飛散防止対策を現場の周辺住民らと共有するリスクコミュニケーションについて、2017年4月に公表したガイドラインを見直す。一部の規定を除いて4月に施行された改正大気汚染防止法の内容や、最新のリスクコミュニケーション事例などを反映する。記載内容を検討する有識者会議を立ち上げた。22年3月ごろに新たなガイドラインをまとめる。」(『建設通信新聞』2021.10.19)
●「住宅の壁や床に使う国産合板の流通価格が一段と上昇し、14年3カ月ぶりの高値を付けた。住宅着工が徐々に持ち直し需要が戻る一方、メーカーは新型コロナウイルスの流行の影響で人手を減らしており供給体制が追いつかない。梁(はり)などに使う製材品も高値が続いており、住宅の建設コストを押し上げる要因になる。」(『日本経済新聞』2021.10.22)