情勢の特徴 - 2021年11月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府が近く策定する新たな経済対策の概要が分かった。主要項目に防災・減災、国土強靭化の推進を引き続き位置付け、流域治水の考え方に基づく治水対策や予防保全を前提とした老朽化対策に取り組むことを明記。加えて7、8月に発生した大雨による浸水災害・土砂災害などを踏まえて新たに必要性が生じた対策も推進する。」(『建設通信新聞』2021.11.16)
●「建設経済研究所と経済調査会は16日に『建設経済モデルによる建設投資の見通し』(11月推計)を発表した。2021年度の建設投資は、前年度比2.7%増となる62兆5200億円と推計。年度後半にかけて着工戸数に鈍化の兆しがあることから民間住宅投資が減速すると想定し、前回の7月推計との比較で4500億円の下方修正となっている。22年度見通しは政府が近くまとめる新たな経済対策などを織り込み、7月推計から1兆1700億円上方修正して、0.8%増の63兆0400億円とした。」(『建設通信新聞』2021.11.17)
●「政府は19日の臨時閣議で、国の支出や財政投融資を合わせて、55兆7000億円の財政措置を講じる経済対策を決定した。民間支出などを含む事業規模は78兆9000億円に上る。防災・減災、国土強靭化に充てる財政支出は4兆6000億円で、事業規模は5兆円程度となる。政府は今後、財源の裏付けとなる2021年度補正予算案と22年度予算案の編成を急ぐ。補正には31兆9000億円を計上し、年内の成立を目指す。財政支出のうち、国費は43兆7000億円、財政投融資が6兆円。対策の柱ごとの財政支出額は、新型コロナウイルス感染拡大防止に22兆1000億円、ウィズコロナ下での社会経済活動の再開に9兆2000億円、『新しい資本主義』の起動に19兆8000億円、防災・減災、国土強靭化に4兆6000億円となっている。」(『建設通信新聞』2021.11.22)
●「国土交通省は住宅ローン減税に対する会計検査院の指摘を受け、制度を見直す方針を固めた。控除率を引き下げて不必要な借り入れを抑止。減税期間の延長措置でトータルの支援規模は維持する。来年度の税制改正に向けた議論で与党や財務省などに働き掛け、実現を目指していく。19日の閣議後会見で斉藤鉄夫国交相が明らかにした。住宅ローン減税は住宅の取得後10年間、毎年末のローン残高などのうち1%に当たる額を所得税から差し引く。会計検査院は5日岸田文雄首相に提出した会計検査報告で制度の不備を指摘。現行制度では不必要な借り入れを助長する恐れがあるとし、改善を求めた。」(『建設工業新聞』2021.11.22)
●「政府は、26日の臨時閣議で、2021年度補正予算案を決定した。一般会計の歳出総額は補正予算として過去最大の35兆9895億円に上った。19日に決定した経済対策の関係経費は31兆5627億円で、そのうち『防災・減災、国土強靭化など国民の安全・安心の確保』には2兆9349億円を充てる。12月6日に召集する見通しの臨時国会に提出する。」(『建設通信新聞』2021.11.29)
●「政府は29日、新型コロナウイルスの水際対策を巡り全世界からの外国人の新規入国を原則停止すると発表した。新たな変異型『オミクロン型』の世界での急拡大に備える。30日午前0暗から適用し当面1カ月間は継続する。帰国するすべての日本人にはワクチン接種者を含め14日間の自宅などでの待機を求める。」(『日本経済新聞』2021.11.30)

行政・公共事業・民営化

●「内閣府は地方自治体が策定する個別施設ごとの長寿命化計画で、記載内容の標準化に取り組む。現状、所管省庁や施設類型によって項目にばらつきがある。必須事項などを整理し、2022年度にも結果を公表したい考えだ。適用時期は、自治体の事務負担に配慮しながら慎重に見極める。適切な維持管理を後押しし、予防保全型のインフラメンテナンスへの転換を目指す。」(『建設工業新聞』2021.11.17)
●「厚生労働省は日本で働く外国人の統計を新たに整備する検討を始めた。就業内容や賃金などを継続的に把握できるようにする。現在は外国人の労働状況を細かく追える統計がほぼない。今後増加が続くと見込まれる外国人労働者のデータ整備により、賃金改善や失業者への支援など適切な政策につなげる。早ければ2023年度にも調査を始める。」(『日本経済新聞』2021.11.23)
●「政府が26日に決定した2021年度補正予算案に盛り込まれた国土交通省関係施策の詳細が分かった。国庫債務負担行為の新たな枠組みとして『事業加速円滑化国債』を設定し、従来の補正予算で難しかった複数年にまたがる事業を可能とする。事業規模の大小にかかわらず、橋梁やダムの付け替え道路、樋門・樋管など工期が長くなりがちな事業に柔軟に対応できるようになる。」(『建設工業新聞』2021.11.30)

労働・福祉

●「新型コロナウイルス感染者のうち、労働災害が認定されたのは約1%にとどまることが厚生労働省のまとめで分かった。業務起因の感染なら労災の対象となるが、一般の企業では『感染経路が不明確』などを理由として対応しないケースがある。ただ、職場でのクラスター(感染者集団)発生は多く、制度の周知や企業側の理解が求められる。…医療や介護の従事者であれば、業務外での感染が明確でない限り、原則労災の対象だ。他の業種でも業務起因が明らかな場合のほか、感染経路が不明でも多くの顧客と接する労働環境だった場合は対象となる。厚労省の集計では、コロナ感染に伴う労災保険の申請件数は9月末で1万8637件。このうち認定されたのは1万4834件だった。170万人超の感染者総数の1%弱となっている。認定は医寮従事者が77%(1万1403件)だった。同省担当者は『職場で感染した可能性が高いと判断しやすい医療従事者以外は、そもそも申請自体が少ない』と話す。」(『日本経済新聞』2021.11.16)
●建交労軽貨物ユニオンは、軽貨物業で働くフリーランス(個人事業主)のドライバーを対象にアンケート調査を実施した。コロナ禍による配達需要増の一方で、運賃の引き下げや不払い、長時間労働など、過酷な労働実態が明らかになった。アンケートはドライバー83人から回答を得た。年齢別では40代以上が86.6%を占めている。1日の平均労働時間は、「12時間以上」が最も多く25.3%。「10時間超~12時間未満」と「8時間超~10時間未満」がいずれも20.5%など、8時間以上の割合が全体の66.3%に上っている。雇用契約でないため規制がないことが背景にあるとみられる。週当たりの就労日数も、「週6日」「ほぼ毎日」を合わせて48.2%と、半数近くがほとんど休みなく働いている。(『しんぶん赤旗』2021.11.17より抜粋。)
●「出入国在留管理庁が人手不足の深刻な業種14分野で定めている外国人の在留資格『特定技能』について、2022年度にも事実上、在留期限をなくす方向で調整していることが17日、入管関係者への取材で分かった。熟練した技能があれば在留資格を何度でも更新可能で、家族の帯同も認める。これまでの対象は建設など2分野だけだったが、農業・製造・サービスなど様々な業種に広げる。」(『日本経済新聞』2021.11.18)
●「国家公務員には拘束時間が長い『ブラック』職場のイメージがつきまとう。実際、新型コロナウイルス対策を担う内閣官房の職員の1月の残業時間は月平均122時間、最長は378時間に達した。一日も休まず、毎日12時間働いた計算だ。内閣官房に限らず、中央官庁の職員の長時間労働は深刻な水準にある。特に若手職員への負担は大きい。2020年10~11月に各府省の常勤職員5万1000人を対象にした正規勤務時間外の『在庁時間調査』では、20代総合職の3割が過労死ラインと呼ばれる月80時間を超えていた。国会開会中は大臣の答弁作成などで超過勤務になりやすい。議員からの質問通告をもとに深夜から未明まで資料を作り、翌日は朝9時から午後5時まで国会対応に臨む。そんな生活が日常化している。就職先としての人気にも陰りが見える。21年度の国家公務員試験の倍率は総合職で7.8倍と過去最低だった。受験者数もピーク時の4割以下。若手の離職も増え、自己都合を理由に総合職を辞めた20代の職員は19年度に86人と6年で4倍に増加した。」(『日本経済新聞』2021.11.22)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、『建設キャリアアップシステム(CCUS)の新たな数値目標』にかかる2021年度上期のフォローアップ調査を実施した。実態をより的確に把握するため、会員企業の完工高に基づいて日建連平均を試算。現場登録率、カードリーダー設置率はいずれも90%程度、登録現場の事業者、技能者登録率がそれぞれ約60%に達し、堅調に推移している。今後は取り組みが遅れる会員への普及促進のほか、全体的に低調なカードタッチ率の改善が不可欠となる。」(『建設通信新聞』2021.11.22)

建設産業・経営

●「大手・準大手ゼネコン26社(単体27社)の2022年3月期第2四半期決算が15日までに出そろった。連結で11社が増収となったものの、17社が営業減益、3社が営業損失となった。特に単体の建築の完成工事総利益(粗利)率では、17社が10%を割り込んだ。個別案件の損失が全体の業績に影響を与えやすい環境になっており、慎重な利益管理が求められている。」(『建設通信新聞』2021.11.16)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、10月に全国9地区で開いた国土交通省などとの地域懇談会・ブロック会議の議論を反映した意見・要望書をまとめた。国土や地域の守り手である地域建設業の持続性を高める観点から安定的な事業量の確保を求めるほか、働き方改革、建設技能者の賃金水準の2%上昇に直結する工期の適正化、ダンピング(過度な安値受注)対策の強化などを要望。要望項目は岸田文雄内閣が掲げる『成長と分配』にも寄与するとしている。」(『建設通信新聞』2021.11.18)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は、2025年度までに建設現場の生産性を20年度比で10%高める新たな目標を設定した。15年度に策定した『建設業の長期ビジョン』で掲げた生産性向上の目標(25年度までに10%以上の省人化)は達成済み。17年度以降減少してきた建設技能者数が今後5年間でさらに減ると見込み、意欲的な目標設定で生産性をアップしながら、週休2日や働き方改革を一層後押しする。」(『建設工業新聞』2021.11.24)
●「海外建設協会(相川善郎会長)は、2021年度上期(4-9月累計)の海外建設工事受注実績の速報値をまとめた。受注総額は前年同期比47.3%増の7185億9300万円となった。コロナ禍が長期化する中でも会員企業が地道な受注活動を継続したことが持ち直しにつながったとみられる。ただ、感染症に限らず、世界の経済、政治情勢には不碓実性が残っており、『楽観視はできない』(山口悦弘副会長・専務理事)ため、引き続き動向を注視する方針だ。」(『建設通信新聞』2021.11.25)
●「新型コロナウイルスの流行に起因する民間企業の建設投資の抑制傾向が長期にわたっている。建設物価調査会(北橋建治理事長)は新型コロナが建設投資計画に与えた影響に関する9月1日時点の調査結果を公表。約1割の企業が投資時期の後ろ倒し・前倒しや中止・無期限延期を判断していることが分かった。一方で調査後の9月末に断続的な緊急事態宣言がようやく解除された。今後は投資意欲の回復が期待される。調査は四半期ごとに実施。9月1日時点の調査は資本金1億円以上の企業から抽出した4424社が対象で、うち1161社の回答を集計した。2021年10~12月期以降の建設投資計画を『変わらない』と回答したのは71.8%(6月1日時点の調査で71.8%)。『後ろ倒しになった』『中止または無期限延期』との回答は11.4%(7.9%)、『前倒しになった』が0.7%(0.8%)だった。…投資計画が後ろ倒しになった主な要因を見ると、▽自社のキャッシュフロー確保=回答数40(6月1日時点49)▽市場の先行き不透明感=55(50)▽海外製材料・資材の輸入の都合=3(2)▽国内工場の材料・資材の生産の都合=7(6)▽在宅勤務による計画実施の都合=5(5)▽外注先の活動縮小・自粛=13(10)―などが多かった。キャッシュをそれなりに確保できていても、先行きが見えない状況で難しい投資判断を迫られている経営者の苦悩が透けて見える。」(『建設工業新聞』2021.11.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、不動産取引の活性化などを目的に、土地と建物にひも付いた官民共通コードとして設定する不動産IDについて、不動産登記簿上の不動産番号(13桁)に特定コード(4桁)を加えた計17桁の番号とする方向で、ルールの検討を進める。土地や戸建住宅、区分所有建物など不動産の類型にかかわらず、桁数を統一することで、不動産業などによる実務的な取り扱いがしやすくなるとしている。」(『建設通信新聞』2021.11.17)
●「首都圏で物流施設の賃料が高止まりしている。不動産サービス大手シービーアールイー(CBRE、東京・千代田)によると、7~9月の3.3平方メートルあたりの賃料は過去最高となった前四半期と同水準の4470円。施設供給も高水準だが、新型コロナウイルス禍による電子商取引(EC)市場の拡大を背景に物流会社や小売業による賃借需要が旺盛だ。 首都圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県を中心とする地域)の大型物流施設のうち、複数テナントが使う延べ床面積約3万3000平方メートル以上の物流施設200棟を調査し、賃貸面積や募集賃料などを集計した。7~9月は新たに59方5000平方メートル規模の施設供給があった。四半期として史上4番目の規模の新規供給が2四半期連続で続くが、賃料は2008年以降の最高値となる水準を維持した。地域別では外環道が前四半期比0.4%上昇の5220円と上昇率が高かった。沿道の埼玉県内で新規施設が竣工する予定で入居者集めが活発になっていることが大きい。一部地域の施設供給が少ない国道16号エリアも0.2%上昇の4470円だ。…需要も堅調だ。コロナ禍の巣ごもり需要で20年の物販系EC市場規模は、前年比で2割増加した。消費地から近い首都圏の物流施設は利便性が高く、施設需要は根強い。一度に扱う荷物も増える中で、多くの荷物を扱える大型施設に機能を統合する動きもある。一方で、1%台が続いてきた空室率は上昇の兆しも見えてきた。CBREによると首都圏の施設の空室率は7~9月に2.6%と1.1ポイント上昇。19年9月末以来、2年ぶりに2%台となった。20年12月末まで0.5%と過去最低の水準だったが、その後3四半期連続で上昇した。最も逼迫した状態から脱したという見方が強い。」(『日本経済新聞』2021.11.19)
●新型コロナ感染症の影響で生活が困窮した人が、自治体の「自立相談支援機関」に経済的な問題や住まいに関して、相談する件数が増えている。厚生労働省によると、2020年度の相談件数は速報値で78万6195件(前年度比3.2倍)だった。コロナ前後を比較すると20代、30代の新規相談者の増加幅が大きくなっており、それぞれ3.5倍、3.3倍となった。男女問わず20代以上のすべての年代で、就労者からの相談が大きく増加。「仕事を探したい/探している(現在無職)」人も増えている。相談の理由として「経済的困窮」は前年同月比3.2倍にのぼり、すべての年代で1位となった。「住まい不安定」(同2.2倍)や「ホームレス」(同1.6倍)といった住まいに関しても多く挙げられた。厚労省によると、困窮者の家賃を補助する「住居確保給付金」の相談件数(20年度)は前年度比約35.8倍になった。(『しんぶん赤旗』2021.11.21より抜粋。)

その他