情勢の特徴 - 2021年12月前半
●「総務省は30日、2020年国勢調査の確定値を公表した。経済活動の主な担い手となる生産年齢人口(15~64歳)は7508万7865人となり、5年前の前回調査から226万6232人減った。ピークだった1995年の8716万4721人に比べ13.9%少ない。…総人口は1億2614万6099人で5年前から94万8646人減った。総人口の減少は2調査連続となる。生産年齢人口の減少は日本経済の足かせとなる。現在の生産年齢人口は7580万7317人だった1975年を下回る水準だ。総人口に占める割合も59.5%と1950年以来70年ぶりに6割の大台を割り込んだ。2010年代は景気回復などで女性や高齢者の就労は増え人口減を補った。労働力調査によると20年の就業者数は6676万人で10年前より6.0%増えた。…こうした女性や高齢者の就労拡大にも限界はある。生産性を高めなければいずれ生産年齢人口の減少の影響を補いきれなくなる。日本の労働生産性(労働時間あたりベース)の伸び率はアベノミクス下の12年から19年まで年平均1.1%と一定の改善があった。それでも20年時点で1時間あたりに生み出す付加価値は48.1ドルと主要7カ国(G7)で最も低い。経済協力開発機構(OECD)各国平均の54.0ドルも下回る。」(『日本経済新聞』2021.12.01)
●「今夏に開催された東京五輪・パラリンピックの大会経費が、見通しよりも1~2割ほど減って1兆5000億円程度まで圧縮される可能性があることが3日、関係者への取材で分かった。新型コロナウイルス対策のため赤字の拡大が懸念されたが、公費の追加負担は生じない見通しとなった。大会経費を巡っては、2019年12月時点で1兆3500億円を見込んでいた。新型コロナの感染拡大によって延斯決定した後、コロナ対策費の960億円を含む計2940億円が追加発生。大会経費は1兆6440億円にまで膨らんだ。」(『日本経済新聞』2021.12.04)
●「岸田文雄首相は6日、第2次政権発足後初の所信表明演説に臨んだ。成長戦略としてデジタルや脱炭素の分野を中心に政策項目を列挙した。日本経済の成長底上げにどうつなげるか具体論が問われる。新型コロナウイルスの変異型『オミクロン型』の拡大を踏まえ、ワクチンの3回目接種は前倒しを表明し『大事なのは最悪の事態を想定することだ』とも訴えた。…首相は成長と分配の好循環を実現する『新しい資本主義』をコロナ禍に伴う危機後の目標に位置づけた。成長戦略の柱として①イノベーション②デジタル③気候変動④経済安全保障--の4分野を並べた。」(『日本経済新聞』2021.12.07)
●「財政制度等審議会(財政審、財務相の諮問機関)は3日、国の2022年度予算の編成に向けた建議をまとめた。財政上の三つのリスクの一つとして『震災などの自然災害』を挙げ、『危機に対応できる財政余力を確保しておくことが不可欠だ』と指摘。社会資本整備に当たっては『量』から『質』への転換を促すため、防災・減災対策や生産性向上対策、老朽化対策といったインフラ整備の各分野で『これまで以上にソフト対策とハード対策を一体のものとして効果を最大化させることは絶対条件』と強調した。」(『建設工業新聞』2021.12.07)
●「政府・与党は7日、住宅ローン減税の見直しの大枠を固めた。ローン残高の1%を所得税などから差し引く現行の控除率を0.7%に縮小する。新築の減税期間は原則10年間、特例で13年間となっているのを原則13年間とする。省エネルギーや脱炭素に貢献するような環境性能の高さに応じて税優遇に濃淡をつけ、中間層に恩恵が及びやすい制度に改める。」(『日本経済新聞』2021.12.08)
●「自民党の税制調査会は9日午前の総会で、2022年度税制改正大綱案をとりまとめた。企業の投資や賃上げを巡り、優遇の拡大と縮小を織り交ぜて促す方針を盛り込んだ。金融所得課税の強化は『税負担の公平性を確保する観点からあり方について検討する必要がある』と明記した。…株式の配当や売買にかかる金融所得課税の強化を巡り、検討方針を示した。『高所得者層の所得に占める金融所得などの割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況がみられる』と分析した。こうした状況を『是正』する必要があると強調した。金融所得課税の税率は現在一律20%だ。年間の所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる『1億円の壁』と呼ぶ問題が指摘されている。…賃金を積極的に引き上げる企業への優遇税制を『抜本的に強化する』と記載した。『長期的な視点に立って一人ひとりへの積極的な賃上げを促す』と強調した。雇用者全体の給与総額の増額分を法人税額から差し引く控除率は大企業で最大30%、中小企業で最大40%にする。同時に『収益が拡大しているにもかかわらず賃上げも投資も特に消極的な企業』を対象に研究開発などに関する投資減税の優遇を停止する措置を強めるとも記した。…住宅ローン減税は25年まで4年間延長する。ローン残高の1%を所得税などから差し引く現行の控除率を0.7%に縮小する。新築の減税期間は原則10年間を13年間にする。低金利が続き税額控除額がローンの支払利息額を上回る『逆ざや』が生じているのを是正する狙いだ。『経済状況が感染症の影響によって依然として厳しい状況にあることを踏まえた当面の措置』と位置付けた。」(『日本経済新聞』2021.12.09)
●「国と資材関係団体が参加する2021年度の『建設資材需要連絡会合同会議』が14日にオンライン形式で開かれた。主要建設資材の需要見通しや直近の需給動向などを相互に確認し、公共事業の円滑執行を支える安定的な資材の需給に向け情報共有や意見交換を行った。原油価格などの高騰を背景に、資材の安定的な価格水準や供給量の確保を懸念する声も聞かれた。…国交省が先月公表した21年度の主要建設資材需要見通しによると、対象6資材のうちセメントと生コンクリート、木材、普通鋼鋼材が前年度を上回る見込み。アスファルトは前年度を割り込むと予測した。21年度の建設投資見通しが前年度比2.9%増となったことから資材需要は高まるとみている。」(『建設工業新聞』2021.12.15)
●「国土交通省は、労務費・法定福利費の確保を徹底するため、地方自治体と民間発注者団体、元請け・下請けの建設業者団体に対応を通知した。本来、固定費であるべき労務費・法定福利費による受注競争を防ぐため、公共発注者(自治体)の確認機能の強化を促すとともに、元下で足並みをそろえた内訳明示の取り組みを提示。技能者の賃上げ年間2%という目標に向け、国交省として関係各者に能動的な取り組みを求めた。」(『建設通信新聞』2021.12.02)
●「国土交通省は資材や原油の価格が高騰している現状を踏まえ、公共・民間発注者に適正な工事契約を要請した。材料費や燃料費が市場価格を参考に適切な価格設定になるよう、受発注者間で配慮してもらう。経営基盤が弱い中小企業などで資金繰りの悪化が懸念される年末を控え、下請契約の適正化を確保する観点で対応を求める。」(『建設工業新聞』2021.12.03)
●「東京都世田谷区は、2022年度から試行予定の新たな入札制度に関する事業者向け説明会を23日から1月19日の間に計4回開く。公契約条例の順守を総合評価方式で加点評価する試みを区内事業者に周知する。試行案件の公告は22年2月から開始する見通し。…新たな試行では、公契約条例に基づく労働報酬下限額の順守や労働環境整備の取り組み状況を総合評価方式の評価項目に追加する。配点は合計で15点とし、退職金制度などの労働福祉制度配備で3点、建設業労働災害防止協会への加入と同協会のコスモスまたはコンパクトコスモス認定で最大4点を加点する。ほかに、▽建設キャリアアップシステムの登録▽男女共同参画やワーク一・ライフ・バランス(WLB)▽障がい者雇用▽若年者雇用――の評価により各2点を加える。労働報酬下限額を順守できない場合や障がい者雇用の法定雇用率に達していない場合にはそれぞれ減点する。」(『建設通信新聞』2021.12.06)
●「東京都中野区は、公契約条例のたたき台をまとめた。工事、委託、指定管理委託を対象とし、工事は予定価格1億8000万円以上、委託は予定価格1000万円以上が適用範囲となる。事業者には労働報酬下限額以上の支払いを求める。工事の下限額は設計労務単価を、委託は区職員や同種労働者の賃金をそれぞれ参考にして時間単位で定める方針だ。」(『建設通信新聞』2021.12.06)
●「トヨタ自動車労働組合は2022年の春季労使交渉で賃上げの要求方式を見直す。従来の全組合員平均で要求額を出す方式は廃止する。代わりに、職種や階級ごとに細分化して要求する執行部案をまとめた。トヨタの労使交渉は『脱一律』の流れが鮮明となる。大企業の多くの労組が取り入れる組合員平均による要求を止めることで賃上げ相場のけん引役だったトヨタの役割がさらに薄れるのは必至。他の企業の賃上げ交渉にも影響を与えそうだ。変更理由についてトヨタ労組は『(個々の組合員の)水準をわかりやすくし、組合員が当事者意識を持ちやすくするため』(幹部)と説明した。」(『日本経済新聞』2021.12.02)
●「自動車や電機など主要な産業別労働組合でつくる金属労協は3日、2022年の春季労使交渉で『月3000円以上』のベースアップ(ベア)を要求する方針を決めた。金子晃浩議長は記者会見で『新型コロナウイルス禍で厳しかった前年より経済環境は好転している』と指摘。雇用の維持を最優先に掲げた前回から一転し、賃上げへの回帰を掲げた。労組の中央組織である連合はベアと定期昇給(定昇)で4%程度の賃上げを求める方針を決めた。岸田文雄首相は『3%を超える賃上げを期待する』と表明。金属労協が決めた3000円以上のベアは1%台に相当し、『定昇と合わせると両者の要求と同水準』(金属労協幹部)だという。ベアの要求は9年連続になる。異なるのはその本気度だ。21年交渉では雇用維持の確認を優先した結果、ベアを要求した労組は全体の7割、ベアを獲得したのは同4割にとどまった。」(『日本経済新聞』2021.12.04)
●「国土交通省は4日、建設キャリアアップシステム(CCUS)のポータルサイトを初めて開設した。利用のための各種手引きに加え、技能者の能力評価や専門工事企業の施工能力の見える化、建設業退職金共済制度との連携、公共工事でのインセンティブ付与といったCCUSに関連する各種施策を網羅した。建設業で働くやりがい・魅力を発信する建設業団体の取り組みも併せて掲載することで、『一体的な情報発信で担い手の確保へ普及に努める』(同省不動産・建設経済局建設市場整備課)としている。」(『建設通信新聞』2021.12.07)
●「厚生労働省はインターネットを介して求人情報を提供する求人サイトについて、運営する事業者に国への届け出を義務付ける制度を導入する方針だ。事業者の名称や所在地などの情報を報告させる。事業者には必要に応じて行政処分ができるようにする。転職市場の活発化に向けて、求職者が安心してサービスを利用できる環境を整える。8日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会に、求人サイトのルールに関する報告書案を示す。2022年の通常国会に職業安定法改正案を提出する方向で調整する。制度案ではサイトを運営する事業者に求人や求職者数の情報、サービス内容や適正な運営のために取り組んでいる事項などを定期的に報告することを義務付け、国が実態を把握できるようにする。就業条件は最新かつ正確な情報の掲載を保つよう求める。また個人情報を他人に知らせないことなども義務付ける。」(『日本経済新聞』2021.12.08)
●「『人権無視』や『憲法違反』『立法権の侵害』--。おどろおどろしい言葉が並ぶのは、建設職人基本法超党派国会議員フォローアップ推進会議が実施した同法基本計画の見直しのためのアンケートの質問項目の一部だ。その矛先は建設キャリアアップシステム(CCUS)に向く。CCUSにかかるコストやメリットで議論はあることは事実だが、“憲法”まで持ち出した批判に業界関係者は困惑する。同会議は建設職人基本法に基づく基本計画の見直しに向け、6日に開催した。安全衛生経費が下請けまで確実に支払われる方法について、議長を務める二階俊博議員らから厚生労働省や国土交通省に実効性のある施策の具体的な回答を求めるなど白熱した議論が交わされた。会合の後半では、建設職人から直接意見を募ったという基本計画の見直しのためのアンケート結果が示された。手すり先行足場とCCUSのいずれかに関連した質問が大部分を占め、特にCCUSに関しては『そもそも人をランク付けすることは人権無視で失礼である』『法の下の平等に反するなど憲法違反の制度。なぜ建設職人のみがランク付けされるのか』『国会の審議を経ておらず、立法権の侵害である』といった問題点が選択肢として設定された。アンケート回答者の53%がCCUSを廃止すべきと選択したことを踏まえ、立憲民主党の議員らは相次いで否定的な見解を示した。…今回のアンケート調査はサイトにアクセスすれば、同一者が何度でも回答できるなど真正性に疑義が持たれている。日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会、住宅生産団体連合会、全国建設労働組合総連合の業界6団体は信頼性に欠けるデータに基づいて施策の方向性が決定されてしまいかねないとして、今回のアンケートへの回答拒否を表明している。」(『建設通信新聞』2021.12.08)
●国民春闘共闘委員会はこのほど、来春闘に向けて取り組んでいる「はたらくみんなの要求アンケート」の第1次集約を明らかにした。11月10日時点で寄せられた2万4633人分を集約したもの。生活実感が「かなり苦しい」が12.5%、「やや苦しい」は38.2%で、苦しいと答えた人が5割を超えた。家計の不足分について最多は月5万円で33.1%、3万円が18.7%など。賃上げ要求では、1万円が最多の30.7%、3万円が17.1%、2万円が15.6%と続いた。加重平均では2万3977円だった。非正規労働者では、フルタイムで賃上げ要求は1万円が最多の28.1%、2万円が14.4%、5000円が13.6%の順。時間額では、100円が34.7%で最多。50円20.7%と続く。仕事や職場での不満・不安(三つ選択)については、正規雇用労者では、「人手が足りない」がトップの18.1%、「賃金が安い」16.6%、「休暇が取れない」11.4%、「労働時間が長い」9.8%の順だった。非正規雇用者では、「雇用契約を更新されないのではないか」がトップで24.0%。「賃金が安い」13.8%、「仕事がなくなるのではないか」13.2%、「正規・非正規の賃金・労働条件などの格差」9.2%と続いている。(『しんぶん赤旗』2021.12.08より抜粋。)
●「国土交通省は10日、2022年度に適用する建築保全業務労務単価を決定したと発表した。22年度の単価は全職種・全国平均で前年度に比べ4.1%上昇した。単価上昇は10年連続となった。3カテゴリー・12分類別の伸び率は、保全技師・保全技術員(6分類)が4.4%上昇、清掃員(3分類)が4.5%上昇、警備員(3分類)が3.1%上昇となった。」(『建設工業新聞』2021.12.13)
●「建築大工の働き方改革は道半ば--。住宅建設を手掛ける中小規模の工務店が労働基準法などに対応しきれていない実態が、木造住宅関連団体で構成する『建築大工技能者等検討会』(座長・蟹澤宏剛芝浦工業大学教授)の調査で分かった。時間外労働の割増賃金を法定通りに支払っていない事業者や、年5日の有給休暇を取得させていない事業者が半数近くを占める。2024年4月から建設業に適用される時間外労働の罰則付き上限規制への対応が早急に求められる。…働き方改革関連の設問を見ると、労働基準監督署への36協定の届け出を『毎年している』は36%、『以前したことがある』が13%、『一度もしていない』が51%だった。時間外労働の割増賃金を『法定通り支払っている』は52%にとどまり、『法定通りではないが支払っている』が36%、『一切支払っていない』も12%あった。有給休暇を『年5日取得させた』は51%で、『年5日ではないが数日取得させた』が26%、『1日も取得させていない』が22%だった。週休2日の確保も十分に進んでいない。労基法の最低ラインとなる『週休1日制』が45%を占める。『週休2日制(土日)』が12%、『同(平日含む)』が4%といずれも低水準で、『隔週2日制』は26%だった。技能者を新規採用しても早期に離職してしまう実態も浮き彫りになった。過去3年間の入職者1021人のうち、離職者は約半数の547人に達した。技能者の雇用条件の改善に向け、関連法令に基づく適正な働き方を担保する環境整備が事業者側に求められる。」(『建設工業新聞』2021.12.15)
●「大字ゼネコンが手持ち工事の採算悪化に備えて、工事損失引当金を積み増している。上場大手4社の2021年9月末時点の残高合計は半年前から3割増え、19年3月末比で2倍に膨らんだ。大型再開発の利幅が低下していることに加え、鉄鋼など建材価格の高騰が響く。手持ち工事の急速な採算悪化は、来期以降の収益性にも影を落とす。工事損失引当金は工事受注後の予算作成時あるいは施工中に、売上高を超える損失が生じる可能性が高いと判明した場合、事前に見積もった損失金額を引き当てる。建設資材や人件費などが受注時想定より上昇した場合や、想定外の工期延長が発生した場合などに積み増すことが多い。4社の工事損失引当金残高の合計(連結)は21年3月末時点で442億円。鹿島は9月末時点の連結の数値を公表していないが、単体は140億円から136億円とほぼ横ばい。連結を3月末と同水準(141億円)と仮定すると、9月末の4社合計は573億円と3月末から3割増えた。大林組は21年9月に233億円で、21年3月から半年で97億円増えた。…清水建設はコロナ禍による海外建築工事での人件費増などを理由に、20年3月の60億円から1年半で101億円積み増した。完成工事総利益率(単体)の22年3月期見通しは前期比4.7ポイント減の7.6%と、期初予想(9.4%)を引き下げ。純利益は前期比25%減の580億円と当初予想を据え置いたが、建設事業の減益を不動産物件の売却で補う見込みだ。引当金が増えた背景には受注段階での利幅が悪化していることがある。東京五輪関連工事などの一巡で、1社数百億円以上の大型再開発を中心に受注獲得競争が激化。さらに21年は建設資材高が進んだ。受注から着工まで長期間かかる大型工事ほど影響は大きい。…竣工が来期以降の手持ち工事ではさらに引当金を積む懸念もある。資材高は足元で騰勢が一服。新型コロナの変異型『オミクロン型』の感染拡大もあり先行きは不透明だが、受注時の水準まで下落する可能性は低い。」(『日本経済新聞』2021.12.02)
●「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で、ゼネコン各社の海外事業はかじ取りが難しい状況にある。国や地域で違いはあるものの、一時期に比べ民間投資で持ち直しの動きが見えつつある。2021年度上半期(4~9月)の海外建設受注高もー定の水準を確保した。ただ新型コロナの変異株『オミクロン株』の拡大による入国制限の強化、ミャンマーの政変など懸念材料もあり、先行きを楽観できる状況にはない。各社は土木、建築両分野で慎重にターゲットを絞り、新規案件の獲得に力を注ぐ。」(『建設工業新聞』2021.12.08)
●「積水ハウスが9日発表した2021年2~10月期の連結決算は、純利益が前年同期比30%増の1158億円だった。新型コロナウイルス禍で在宅時間が増加し、住まいの快適性や広さを求める需要が高まり、販売が好調だった。鋼材などのコストは上昇したが、採算のよい中高価格帯の住宅が伸び、利益を押し上げた。売上高は4%増の1兆8448億円、営業利益は25%増の1682億円だった。売上高、営業利益は同期間として過去最高となった。」(『日本経済新聞』2021.12.10)
●「伊藤忠商事は15日、準大手ゼネコンの西松建設と資本提携する方針を固めた。西松建設と対立する株主の投資ファンドから、議決権ベースで約10%の株式を取得し筆頭株主になる。取得額は150億円程度になる見通し。インフラ投資や老朽施設の建て替えが増えるなか、取引関係のある両社が連携を深めることで需要を取り込む。同日午後に発表する。伊藤忠は村上世彰氏らが関わるアクティビスト(物言う株主)のシティインデックスイレブンス(東京・渋谷)から株式を取得する。村上氏とシティは西松建設の発行済み株式を一時最大で約25%保有し、株主還元などを巡って対立していた。10月に西松建設の自社株のTOB(株式公開買い付け)に応じ、TOBで売り残した持ち分を伊藤忠が全て買い取る。伊藤忠はこれまで非上場のゼネコンに出資したことはあったが、準大手以上との資本提携は初めて。西松建設とは不動産開発などで取引がある。子会社や出資先を通じ建材の製造や販売を手掛けており、販路を拡大するうえで、技術面で知見があるゼネコンとの連携強化が必要と判断した。」(『日本経済新聞』2021.12.15)
●「東京都が2030年までに実現を目指すカーボンハーフは、CO₂排出量を00年比で半分に削減しようという試みだ。都は、条例改正によりビルなどの大型建築物向けに設定している環境性能基準の強化を検討している。これまで対象外だった中小規模の戸建てやマンションに高断熱化・省エネルギー対策などを促す新制度も設ける考えだ。改正を検討しているのは、『都民の健康と安全を確保する環境に関する条例』。環境負荷低減につながる施策の実施などを目的に創設している。同条例は、建築物の環境性能確保に関する制度の根拠になっている。その一つが、一定規模以上の建築物を新築する際、建築主に提出を義務付けている建築物環境計画書制度だ。計画書には、断熱・省エネルギー性能など環境性能を高める取り組みをまとめ、都が3段階に分けて評価する。現在は延べ2000平方メートル以上の建物が対象となっている。都は、同条例改正に当たり計画書制度を強化する。取り組みの評価基準を一層強化するとともに、再生可能エネルギー設備の設置を義務付ける。新しい制度も創設する。計画書制度の対象から外れた中小規模の新築建物に対し、断熱・省エネ性能の最低基準や誘導基準を設定する。計画書制度の強化に当たって、▽省エネ性能最低基準の強化▽再エネ設置の最低基準新設(義務化)▽3段階の評価基準などの強化・拡充――の3つの方向性を示している。」(『建設通信新聞』2021.12.07)
●「国土交通省は7日、社会資本整備審議会の部会を開き、2050年カーボンニュートラルに向けた住宅・建築物の省エネルギー対策などについて、議論を集約した報告書の案を示した。25年度以降に新築される原則すべての建築物を対象に、省エネ基準適合を義務付ける。地方自治体が定める特定の区域を対象に、建築物での再生可能エネルギー導入効果の説明を建築士に義務付けることができる制度を設ける。」(『建設通信新聞』2021.12.08)
●「政府は分譲マンションの建て替え条件を緩和する検討に入る。所有者の賛同割合の引き下げなどを柱に区分所有法の改正をめざす。建て替えやすくして老朽化マンションの増加に歯止めをかける。2022年度にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する。建て替えに必要な賛同を現在の『5分の4』から、共用部の変更や管理組合法人の解散などを決める場合と同じ『4分の3』かそれ以下に引き下げる内容を軸とする。相続などを経て連絡がつかなくなった『所有者不明』の区分所有者は一定の条件で意思決定から除外する案も議論する。」(『日本経済新聞』2021.12.10)
●「国土交通省は10日、2021年度第2四半期の建築物リフォーム・リニューアル調査の結果をまとめた。全体の受注高は前年度同期比6.5%増の3兆0266億円。19年度第4四半期以来、6期ぶりの3兆円台となった。住宅を中心に新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んだ前年度から回復の兆しが見られ、『事業者からは共同住宅での大規模修繕の需要も高まっているとの声も聞いている』(同省建設経済統計調査室)としている。」(『建設通信新聞』2021.12.13)
●「内閣府は10日、『盛土による災害の防止に関する検討会』の第3回会合を開き、危険な盛土を防止する制度的対応の方向性を議論した。静岡県熱海市の土石流災害で課題が明らかになった建設発生土の搬出については、工事の元請事業者と発注者の両方を対象に規制を講じるべきとの意見が多く上がった。2021年内に報告書をまとめる。国土交通省は22年の通常国会に関連法案の提出を目指している。」(『建設通信新聞』2021.12.14)
●「厚生労働省は建築物の解体・改修に伴うアスベスト(石綿)飛散防止策を強化するため、2022年3月に『石綿事前調査結果報告システム』の運用を始める。同4月1日に施行される改正石綿則では一定規模以上の解体・改修工事の施工業者を対象に、石綿使用の有無に関係なく事前調査の結果報告を義務付ける。報告方法はインターネット申請に当たる同システムの活用を原則にする。事前調査結果の報告対象となる工事は、▽解体部分の延べ床面積が80平方メートル以上の建築物の解体工事▽請負金額が100万円(税込み)以上の建築物の改修工事▽請負金額が100万円(同)以上の特定の工作物の解体または改修工事―のいずれかに該当するケース。」(『建設工業新聞』2021.12.14)
●欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は9日、スマホのアプリなどを通じて単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」を会社の従業員として認め、最低賃金や有給休暇などを保障する法案を発表した。欧州委員会は近く欧州議会へ法案を提出する。タクシーや荷物の配送、食事宅配など多くの分野で、インターネットを通じて労務やサービスをする「プラットフォーム」企業がEUでも成長。企業側は、そこで働く「ギグワーカー」と呼ばれる労働者を「独立した自営業者」とみなし、労働者としての権利を認めてこなかった。しかし、欧州各国で雇用関係を認める判決が相次ぐ中、欧州委は2月から労使の聞き取りを進めるなど法案を準備していた。欧州委が発表した法案は、プラットフォーム企業が、労働者に対し次の五つの基準のうち二つ以上を課していれば、労働者を従業員として認める。基準は、①報酬水準や上限を決定②電子的手段で労働の成果を監督③顧客との関係づくりや他の業者と働くことを制限④服装やサービスの受取人への仕事の進め方などルールがある⑤労働時間や休みの制限―。労働者と認められれば、法定や労働協約上の最低賃金が認められるほか、EUが労働者に認めている産前産後の休暇、育休、介護・看護休暇などの有給休暇を付与。スマホで仕事を待つ「待ち時間」も労働時間に含まれるようになる。また、安全と健康を保障する労働の改善や労使の交渉も推進される。(『しんぶん赤旗』2021.12.12より抜粋。)