情勢の特徴 - 2022年1月後半
●「政府が17日召集の通常国会に2022年度予算案を提出したことで、一般会計の『公共事業費』は、土木分野の『公共事業関係費』が6兆0575億円、船舶建造費なども含む建築分野の『その他施設費』が5632億円で、土木分野と建築分野を合わせた『公共事業費』の総額が6兆6207億円となることが分かった。また、21年度補正予算の公共事業費は、公共事業関係費1兆9968億円、その他施設費6553億円の計2兆6521億円となっていることから、今後本格的に執行する『16カ月予算』の公共事業費は、公共事業関係費の8兆0543億円、その他施設費の1兆2185億円を合わせた9兆2728億円になる。」(『建設通信新聞』2022.01.18)
●「東京商工リサーチが18日発表した2021年の休廃業・解散企業の件数は、前年比11%減の4万4377件だった。政府が休業協力金や実質無利子・無担保融資などの施策を矢継ぎ早に打ち出したことで、『事業継続の判断が先送りされ、休廃業の大幅減少につながったとみられる』(東京商工リサーチ)。」(『日本経済新聞』2022.01.19)
●「建設経済研究所と経済調査会は26日、最新の2022年度の建設投資の見通し(1月推計・名目)を発表した。建設投資の総額は前年度比0.3%増の62兆9900億円。21年11月に発表した前回予測からは500億円の下方修正で、投資総額で見ると大きな変化はない。内訳を見ると21年度補正予算の公共事業関係費が20年度第3次補正予算に比べて減少したことを踏まえて政府建設投資を下方修正した。他方、事務所などが好調な民間の非住宅投資を上方修正し、政府投資の減少を民間投資の増加が補う格好となった。」(『建設通信新聞』2022.01.27)
●「総務省が28日発表した2021年の住民基本台帳の人口移動報告によると、東京都に転入した人から転出した人を差し引いた『転入超過』は5433人だった。比較可能な14年以降で最少を更新。東京23区は初めて転出が転入を上回った。新型コロナウイルス禍でテレワークの普及などが進み、都心から人が出ていく動きが加速している。23区では、区外や他県への転出者から転入者を差し引くと1万4828人の転出超過だった。コロナ禍前は5万~7万人程度の転入超過で推移してきたが、人の流れが大きく変わっている状況を映す。東京都全体への転入超過は20年に比べて8割減り、2年連続で最少を更新。転入者は21年で42万167人と、20年から3%減った。東京は20年5月に、比較可能な13年7月以降で初めて転出超過となった。21年は入学や就職で都内への転入が増える3~4月を除く月で、転出の方が多かった。東京都からの転出は41万4734人と、20年から1万3千人ほど増えた。転出者を多く受け入れたのは近隣県で、東京に埼玉、千葉、神奈川を加えた『東京圏』では8万1699人の転入超過になった。20年から1万7544人減ったものの、高い水準を保つ。」(『日本経済新聞』2022.01.28)
●「国土交通省は14日、改正公共工事品質確保促進法(品確法)に基づいて決定した『新・全国統一指標』について、全国の2020年度の取り組み状況を公表した。前年度と比べると、週休2日対象工事の設定割合が全国のブロック・県域で進展した。平準化率などは地域によって進捗にばらつきがあり、全体平均としては横ばいとなった。結果をまとめた同省官房技術調査課は『1年ごとで大きく変化するものではないが、24年度の目標値達成へ各ブロック・地域方策を議論することが重要だ』と説明する。」(『建設通信新聞』2022.01.17)
●「国土交通省は17日に開会した通常国会に提出する盛り土規制関連法案の概要を明かした。宅地造成規制法を改正し、宅地や森林、農地など土地の利用区分にかかわらず人家に影響を及ぼす可能性のある盛り土を許可制にして規制の網を広げる。建設発生土の適正処理は今回の法改正とは別に対応を検討する。資源有効利用促進法に基づく既存の枠組みを拡充し、搬出先の明確化と工事間の有効利用を一体的に推進する。」(『建設工業新聞』2022.01.18)
●「総務省は地方自治体の2021年度上期(21年4~9月)の公共事業予算執行状況を公表した。20年度からの繰越額と21年度当初予算の合算額23兆4950億円に対し、契約率は62.7%。前年同期から2.2ポイントの上昇となった。支出済み額の割合も0.8ポイント上回る19.0%だった。」(『建設工業新聞』2022.01.18)
●「国土交通省は、地方自治体を対象とした施工時期の平準化やダンピング(過度な安値受注)対策の改善状況をまとめた。平準化のための具体的な取り組みが未実施の自治体(人口10万人未満の市区)は2020年度の42団体から15団体に減少した。ダンピング対策(人口10万人以上の市)も調査基準価格・最低制限価格の算定式を見直す動きが広がっている。同省は取り組みを進める上での課題も聴取しており、より小規模な自治体への展開を視野に働き掛けを加速する。」(『建設通信新聞』2022.01.20)
●「国土交通省は工事現場内外で義務付けられている施工体系図や標識の掲示方法の一つとして、デジタルサイネージなどICT(情報通信技術)機器の利用規定を明確化した。従来の印刷物での掲示方法と同じような役割を果たせるよう要件を設定し、現場判断で利用しやすくする。印刷物は下請業者の入退場のたびに張り替えが必要になるなど多くの手間やコストがかかっていただけに、業務負担の軽減が期待できる。建設業団体や地方整備局、都道府県に掲示方法の解釈に関する通知文書を27日付で出した。施工体系図の掲示にICT機器を活用する場合、▽工事関係者が必要な時に確認できる▽デジタルサイネージなどで確認可能と両面内外に分かりやすく表示している▽施工分担を簡明に確認可能な画面サイズ・輝度・文字サイズ・デザイン▽スライドショー方式の機器の場合は全体の確認に長時間を要しない―の四つの要件を満たしてもらう。現場外部に掲示する場合は施工時間外でも近隣住民などが確認できるよう、人感センサーや画面タッチによる画面表示機能を原則とする。近隣配慮で夜間などの画面表示が難しいケースもあるため、その場合は特例として画面消灯時にインターネット上で施工体系図を閲覧できるよう工夫してもらう。許可番号や商号を記載した標識の掲示でもほぼ同様に対応してもらう。」(『建設工業新聞』2022.01.31)
●建設現場でのアスベスト(石綿)で健康被害を受けた人のうち、国などに損害賠償訴訟を起こしていない被害者らを救済する給付金法が19日、施行された。同法によると、石綿肺や肺がんなどにかかった人は550万~1150万円、亡くなった人は遺族に最大1300万円が支給される。対象になるのは、1972年10月~75年9月に石綿の吹き付け作業に当たったか、75年10月~2004年9月に一定の屋内作業に従事し、石綿関連の健康被害があった労働者ら。医師の診断日などから20年以内に請求できる。(『しんぶん赤旗』2022.01.19より抜粋。)
●「建設業での労働災害による2021年(1-12月)の死亡者数は4年ぶりに増えることが確定した。死傷者数も3年ぶりに増加する情勢であることが分かった。厚生労働省が20日にまとめた21年の労働災害発生状況(速報、1月7日時点)によると、建設業での死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)14.2%増(34人増)の274人と、4年ぶりに増加した。死亡者数が過去最少だった258人の20年確定値と比べ、現時点で既に16人多い。近年の確定値までの推移を踏まえると、21年の死亡者数(確定値)は295-305人程度になるとみられ、3年ぶりに300人台となる可能性も出ている。また、休業4日以上の死傷者数は、前年同時点比8.6%増(1172人増)の1万4856人と3年ぶりに増加に転じた。死傷者数も近年の確定値までの推移から、21年の確定値は1万6150-1万6260人程度になると見込まれる。」(『建設通信新聞』2022.01.21)
●「全国中小建設業協会(土志田領司会長)は、会員団体に所属する若手経営者を対象とした働き方改革などに関するアンケートの結果をまとめた。時間外労働の削減、週休2日とも7割以上で前向きな姿勢を示すが、現場条件や工期に起因した取り組みの遅れが依然として散見される。…働き方改革のうち、時間外労働は『少し改善されている』(57%)と『時間外労働はない』(16%)を合わせて73%に達する。その理由として、『社内での分業と他部門との協力体制を構築した』『工程管理を見える化し、効率的な工程管理を実現した』『(発注者による)週休2日や書類の簡素化が進んだため』などを挙げる。一方、『大変多い』は27%で、人手不足や無理な工期発注、煩雑な提出書類の処理、現場の自然環境が要因となっている。週休2日については『実現している』(23%)、『取り組んでいる』(47%)が70%を占める。『取り組むことを検討中』は24%だった。『取り組めない』(6%)理由は、時間外労働が『大変多い』と共通する。」(『建設通信新聞』2022.01.21)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録事業者が広がっている。国土交通省の調査によると、市場全体の元請完成工事高で3分の2を占める企業がCCUSに登録済み。主要な元請建設業団体(日本建設業連合会〈日建連〉、全国建設業協会〈全建〉)の会員企業に限ると、CCUS登録事業者は完工高ベースで約8割に達する。設備・ハウスメーカーなどでも登録数が順調に伸びていることが明らかになった。25日に開かれたCCUSの運営協議会運営委員会で国交省が説明した。昨年12月末の登録データを基に日建連と全建の会員企業の完工高ベースの登録率を算出すると、完工高300億円以上の企業群は98%(昨年8月末実績92%)、10億~300億円未満の企業群は64%(50%)、10億円未満の企業群は36%(22%)だった。この4カ月で完工高が比較的少ない企業でも登録が進展したことになる。住宅関連市場を担う設備・ハウスメーカーなどの登録率も同じく完工高ベースで算出すると、完工高300億円以上の企業群は73%(65%)、10億~300億円未満の企業群が43%(34%)、10億円未満の企業群が24%(16%)だった。」(『建設工業新聞』2022.01.26)
●「厚生労働省が28日にまとめた2021年10月末時点の外国人雇用状況によると、建設業の外国人労働者数は前年同月末比0.8%減の11万0018人となった。今回データを公表している17-21年(5年)の中で初めて減少に転じた。建設業で外国人を雇用している事業所数は7.3%増の3万3608カ所だった。19年4月に創設した在留資格『特定技能』の労働者数での『建設』は2657人で、特定技能で受け入れが認められている14分野で4番目に多い。全産業では、国内の外国人労働者が0.2%増の172万7221人、外国人労働者を雇用している事業所数が6.7%増の28万5080カ所。07年に事業主に対して届け出を義務化して以降、労働者数、事業所数のどちらも最高を更新したものの、増加率は減少している。…建設業の外国人労働者数の在留資格別内訳は、『技能実習』が7万0488人と64.0%を占めている。永住者などの『身分に基づく在留資格』は1万8850人、特定技能も含む『専門的・技術的分野の在留資格』が1万3924人。また、『特定活動』は6899人だった。許可を得て建設業で留学生が週28時間以内のアルバイトをするなどの『資格外活動』は853人、『不明』は4人となっている。」(『建設通信新聞』2022.01.31)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)の環境委員会温暖化対策部会は、『2020年CO₂排出量調査報告書』をまとめた。CO₂排出量原単位(施工高1億円当たりのCO₂排出量)削減率は、1990年度比で26.1%まで伸びている。また、『CO₂排出量原単位を30-40年度の早い時期に「40%削減」を目指す』上で基準年となる、13年度比でも9.6%に達し、着実に進展している。」(『建設通信新聞』2022.01.24)
●「日刊建設通信新聞社は、主要建設会社を対象に設備投資に関するアンケートを実施した。21年度の設備投資見込額では、100億円以上との回答が7社あった。トップは清水建設の750億円(前年度比28.1%減)、次いで大林組405億円(150.9%増)、戸田建設330億円(72.6%増)、鹿島292億円(20.2%減)、西松建設271億1000万円(46.0%増)、長谷工コーポレーション140億円(36.2%減)、東鉄工業107億5800万円(139.8%増)となっている。…21年度の主な設備投資予定(複数回答)としては、ソフト・システム開発が20社と最も多く、社屋・施設の建設・改修が続き、その後、工具・器具(実験用・観測用など)・備品の購入、工事用機械の購入、土地・不動産・建物(賃貸用)の取得、工事用機械の維持更新、土地・不動産・建物(事業用)の取得、カーボンニュートラル対応の順となっている。」(『建設通信新聞』2022.01.25)
●「賃上げを実施する企業を公共調達の総合評価方式で加点評価する措置について、日刊建設工業新聞社が主要ゼネコンを対象にアンケートを実施したところ、多くの企業で対応を決めかねていることが分かった。加点を目的に『賃上げを予定している』と回答した企業もある一方、多くの企業は対応について『検討中』や『未定』と回答。運用に関する情報が不足していることなどを背景に、対応に苦慮している様子がうかがわれた。」(『建設工業新聞』2022.01.25)
●「昨春に製材品でみられた木材の品不足が、合板で顕在化してきた。住宅の壁や床に使う国産の構造用合板の流通価格が1カ月ぶりに最高値を更新した。底堅い住宅向け需要に加え、マレーシアなどからの輸入品が減少。国産に切り替える動きが出て、品薄感が強まっている。ハウスメーカーの建築コストを押し上げ、採算の悪化要因になる。指標である針葉樹合板(厚さ12ミリ品)は、東京地区の問屋卸価格が現在1枚1500円。2021年12月に比べ100円(7%)高くなった。店頭で数量制限を実施するホームセンターも一部でみられる。合板メーカーから直接買うことが多いプレカットメーカーも、必要な量を確保できず問屋などから調達するケースが出ている。需要は堅調だ。新型コロナウイルス禍で在宅勤務が広がり、仕事をするスペースが取りやすい戸建てへ住み替える需要が郊外を中心に伸びている。21年11月の分譲戸建住宅の着工戸数は1万2509戸。前年同月に比べ10%多く、7カ月連続で増えた。合板の国内流通量の約半分を占める輸入品が減り、需給を一段と引き締めている。主力のマレーシア産は、現地の合板工場の稼働が落ちているもよう。新型コロナの変異型『オミクロン型』の感染拡大で、出稼ぎの労働者の確保が難しい。雨期で山から丸太を切って運ぶことが思うようにできず、原料不足で生産を増やせていないという。21年1~11月のインドネシアとマレーシアからの輸入量は148万9856立方メートル。新型コロナで日本が買い控えていた20年の同期比ではプラスだが、19年比では7%少ない。市場では『新規の注文は断られることが相次いでいる。海上コンテナ物流の混乱で納期も読めない』(木材商社)との声がある。輸入品が出回りにくくなり、ハウスメーカーやホームセンターが国産合板に切り替えて調達する動きが出た。不足を見越し、前倒しで買い集めるメーカーもあるという。国内の合板メーカーはフル操業を続けているものの、需要を補い切れていない。農林水産省がまとめた21年12月の国産針葉樹合板の在庫は9万2096立方メートル。前年同期に比べ18.4%少ない。8カ月連続で、需給均衡の目安とされる10万立方メートルを下回る。21年は米国で住宅需要が急増し、輸入木材で作る柱材や梁材などが短期間で大幅に上がる『ウッドショック』が起きた。現在は代替材の調達などで逼迫感もおさまり上昇は一服している。今回は東南アジアの供給制約を起因のひとつとし、値上がりする商品は合板に移った。スギなどの原料の丸太は、国産の製材品の需要増で値上がりが続く。原油高で木の板をはり合わせる接着剤価格も上昇するなど、合板の製造コストは上がっている。原料高を受け昨秋以降、合板の値上がりが続く。2月からの追加値上げを模索する大手メーカーもある。先高観が強まり、市場では『次は合板ショックが来る』(問屋)との指摘も出ている。」(『日本経済新聞』2022.01.27)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が27日発表した会員95社の2021年度第1~3四半期(21年4~12月)の建設受注額は10兆0144億円だった。コロナ禍の影響で工事発注の先送りなどが相次いだ前年度同期に比べ11.4%増となり、持ち直し傾向が顕著に見られた。市場が堅調に推移している状況にあって、日建連は21年度の最終的な受注額が前年度(15兆0404億円)を上回ると予測。一方で受注競争は厳しくなるとみている。」(『建設工業新聞』2022.01.28)
●「不動産経済研究所が25日発表した2021年の首都圏新築マンションの平均価格は、前年比2.9%上昇の6260万円と過去最高になった。過去最高を更新するのはバブル期の1990年(6123万円)以来31年ぶり。金融緩和を背景に多額の住宅ローンを設定して購入する消費者が増えている。物件の先高観から都市部で積極購入する富裕層も目指す。」(『日本経済新聞』2022.01.26)
●「北海道や東北地方を中心に甚大な津波被害の発生が予想される日本海溝・千島海溝地震に備え、自民党の議員連盟は地方自治体が取り組む対策施設の整備を強力に後押しする関係法の改正を検討している。2013年に改正した南海トラフ地震対策特別措置法の内容を踏襲し制度を設計する方針。市町村の避難タワー整備や高台移転への財政支援などが盛り込まれる見通しだ。日本海溝・千島海溝地震特措法改正案として今国会への提出を目指している。」(『建設工業新聞』2022.01.27)
●「福島第1原子力発電所で増え続ける処理水の海洋放出に向け、東京電力ホールディングス(東電HD)は海底トンネルの建設を今春にも本格化する。原子力規制委員会に昨年12月提出した処理水関連施設に関する申請書では6月ごろの着工を想定していたが、委員から約3カ月で審査を終えるという意向が示されているという。準備工事を着実に進めつつ地元関係者にしっかりと情報を発信し、認可取得後、速やかに掘削作業に入る考えだ。海底トンネルはトリチウムを含むALPS(アルプス、多核種除去設備)処理水を希釈し、沖合約1キロに放出するための設備になる。5、6号機の沿岸に位置する東側の敷地に放水立坑を築き、シールドマシンの発進立坑として活用。海底に延長約1キロ、直径約2.5メートルのトンネルを構築する。沖合約1キロの海底を地盤改良して放水口を備えたケーソンを沈め、トンネルと接続する。同社は立坑の完成までを『環境整備工事』と位置付け、3月の完了に向け工事を進めている。施設設計などをまとめた許可申請書によると、シールド掘進や希釈放出設備などの現地据え付け・組み立てに6月ごろ着手。2023年4月中旬の完成を計画している。」(『建設工業新聞』2022.01.27)