情勢の特徴 - 2022年2月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「内閣府は7日、日本経済の現状分析や見通しなどをまとめたリポート(ミニ白書)を公表した。25~34歳で労働所得の格差が拡大する傾向にあると指摘し、背景に『男性の非正規雇用比率の高まり』があると分析した。単身世帯の所得が伸び悩み、若年層は結婚して子どもを持つという選択が難しくなっているとの見解も示した。…数値が大きいほど所得格差が大きいことを示す『ジニ係数』について一人ひとりの年収をベースに計算した。全体では02年の0.414から07年の0.416に上がったものの、その後は低下し、17年は再び0.414になった。所得格差は全体として拡大傾向にはなく、07~17年には穏やかに縮小していたと分析した。年齢別では若年層で労働所得の格差が広がった。25~29歳は02年の0.240から17年は0.250に上昇し、30~34歳も02年の0.311から17年は0.318に上がった。内閣府は『男性の非正規雇用の比率が上昇し、労働時間が減少した』と説明した。」(『日本経済新聞』2022.02.08)
●「経済産業省は、大企業と、その下請けとなる中小企業の取引適正化をさらに進めるため、取り組みを強化する。価格交渉・転嫁の状況が不十分な企業に対し、下請振興法に基づく行政指導『助言(注意喚起)』の本格実施に踏み切る。2026年までの約束手形の利用廃止に向けては、具体的なロードマップの検討を各業種団体に依頼し、自主行動計画への反映も求める。」(『建設通信新聞』2022.02.14)
●「内閣府が15日発表した2021年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.3%増、年率換算で5.4%増となった。2四半期ぶりのプラスだった。新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言の解除で個人消費や設備投資が回復し全体を押し上げた。21年通年は1.7%増となり3年ぶりのプラス成長となった。」(『日本経済新聞』2022.02.15)
●「政府は夏をめどに、取引先などの人権侵害リスクを調べて予防する『人権デューデリジェンス(DD)』の指針をつくる。サプライチェーン(供給網)に強制労働や児童労働が無いかの調査の手順を示す。人権侵害リスクを巡る企業や政府の対応で日本は米欧に比べて遅れている。供給網から外される懸念もあり、企業に実施を義務づける法制化も視野に入れる。」(『日本経済新聞』2022.02.15)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、建設業の一人親方問題への対応を目的とした『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』の改訂案を公表した。公平・健全な競争環境が阻害する偽装一人親方化を防ぐため、10代や経験3年未満の一人親方を対象に雇用関係を結ぶよう誘導することとし、元請けの指導に応じず改善が見られない下請企業は現場入場を認めない規定を設ける。改訂案に対するパブリックコメントを3月3日まで実施し、4月から施行する。」(『建設通信新聞』2022.02.03)
●「国土交通省は、『直轄工事における総合評価落札方式の運用ガイドライン』を見直す。近年の工事品質の確保や働き方改革、新型コロナウイルス感染症対策などの取り組みを踏まえ、標準的な対応となった事項をガイドラインに反映する。複数提案や過度なコスト負担を要するいわゆる“オーバースペック”提案を評価しないことやヒアリングはオンライン開催が可能であることなどを明確化した。」(『建設通信新聞』2022.02.07)
●「政府は8日、賃上げ企業を総合評価方式の入札契約手続きで加点する制度運用を見直した。賞与や時間外手当などを含む給与総額や総人数費を加点基準にしている賃上げ実績の評価方法を拡充。新たに『基本給あるいは所定内賃金、継続勤務従業員の平均賃金』を加え、各社の経営状況などに応じ柔軟に選択できるようにした。」(『建設工業新聞』2022.02.09)
●「国土交通省は、賃上げを表明した企業に対する総合評価落札方式での加点措置に関して、基本給や継続雇用している社員のみを対象とした賃上げが評価対象となることを明確化した。昨年末の通知では支払い給与総額での上昇しか示されていなかったが、さまざまなケースを想定して、実態として従業員の賃上げが意思のある企業が加点を受けられるよう、網羅的な評価項目を明示した。」(『建設通信新聞』2022.02.10)

労働・福祉

●「雇用の回復が鈍い。厚生労働省が1日発表した2021年平均の有効求人倍率は1.13倍と、前年比0.05ポイント下がった。下げ幅は新型コロナウイルスの感染拡大1年目の20年(0.42ポイント)より縮んだものの、3年連続のマイナスで14年(1.09倍)以来の水準に落ち込んだ。総務省が同日発表した21年平均の完全失業率は2.8%で前年から横ばいだった。」(『日本経済新聞』2022.02.01)
●「日本建設産業労働組合協議会(日建協、角真也議長)は1月31日、2022年の賃金交渉基本構想を公表した。月例賃金と一時金は引き続き向上を目指す。初任給は加盟組合で目標を定めて取り組む。コロナ禍や資機材・原油価格の高騰など企業実績への影響も懸念されるが『安心して働き続けられる賃金水準の維持、向上は不可欠』(日建協)としている。要求提出日は3月24日、指定回答日は4月7日に設定した。」(『建設工業新聞』2022.02.01)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(角真也議長)は1月31日、2021年11月に実施した『4週8閉所ステップアップ運動』の結果を公表した。平均閉所日数は6.43閉所(土木工事=6.56閉所、建築工事=6.32閉所)となった。加盟35組合のうち、30組合の計3907作業所(土木1815作業所、建築2092作業所)を対象に現場閉所の日数を集計した。土日祝日の日数を踏まえて補正した4週8閉所指数は、5.15閉所(土木工事=5.25閉所、建築工事=5.06閉所)21年6月の閉所指数6.00閉所から下がったものの、20年11月の閉所指数5.04閉所に比べて改善した。年度別の指数平均は、20年度が5.31閉所、21年度が5.57閉所で『順調に改善している』と評価する。」(『建設通信新聞』2022.02.02)
●「国際協力機構(JICA)などは2日までに、政府の目指す経済成長を2040年に達成するために必要な外国人労働者が、現在の4倍近い674万人に上るとの推計をまとめた。アジア地域からの人材が期待されるが、経済成長によって日本で働こうという意欲が次第に薄れる国もあり、42万人の労働力が不足するとも分析した。JICA関係者への取材で分かった。」(『日本経済新聞』2022.02.03)
●「東京都内の建設現場で死亡事故が増えている。2021年の死亡者は転落など24人で、前年から10人増えた。新型コロナウイルス禍で現場のコミュニケーションが不十分になり、安全意識の共有が困難になっているとの声が業界から挙がる。東京労働局は『極めて憂慮すべき事態』として、現場パトロールなどを通じた指導を強化している。同労働局のまとめによると、建設業の労働災害の死者数は近年、14年の37人をピークに減少傾向にあった。21年の死者数はこれから労災認定される事業も想定されるため、さらに増える可能性があるという。労働者が4日以上休業した労働災害の件数も、21年は1061件で前年に比べ13.8%増加した。」(『日本経済新聞』2022.02.05)
●「厚生労働省は、『建設業の一人親方などの安全衛生活動支援事業』を拡充する。一人親方が入場する建設工事現場への巡回指導の件数を2021年度事業の1.5倍に増やす。厚労省の22年度予算案には、支援事業の実施に必要な経費1億0700万円を計上した。事業では、建設業の一人親方などが安心して働けるよう、安全衛生に関する基本的な知識を十分身付ける機会が得られなかった一人親方などの安全衛生活動を支援する。具体的には、一人親方などへの安全衛生教育、一人親方が入場する工事現場への巡回指導などを実施する。また、工事現場で一人親方などを管理する元請けなどの事業者にも、一人親方などに対する安全衛生対策を推進する。」(『建設通信新聞』2022.02.08)
●「厚生労働省は、新型コロナウイルス感染による労働災害件数を除いた2021年(1—12月)の労働災害発生状況(速報、1月7日時点)をまとめた。建設業での死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)12.6%増(30人増)の269人と増加した。死亡者数が過去最少だった258人の20年確定値と比べ、現時点で既に11人多い。また、休業4日以上の死傷者数も、前年同時点比2.4%増(325人増)の1万3775人と増加に転じた。確定値は4月末ごろにも公表する。」(『建設通信新聞』2022.02.14)

建設産業・経営

●「国土交通省がまとめた建設大手50社の工事受注動態統計調査によると、2021年の受注総額は過去10年で最大の15兆7839億円(前年比10.2%増)だった。00年(15兆9439億円)以来の高水準となる。発注機関別に分類すると、過去10年で海外工事は9番目と落ち込んだが、国内の民間工事は2番目、公共工事は3番目と好調だった。国内の民間工事は11兆1240億円(前年比14.1%増)で、19年(11兆4317億円)に次ぐ規模。うち製造業が2兆2528億円(前年比13.5%増)、非製造業が8兆8712億円(14.3%増)だった。不動産業やサービス業、製造業からの受注が好調だった。国内の公共工事は3兆8055億円(7.4%増)。うち国の機関は2兆6403億円(13.0%増)、地方の機関は1兆1652億円(3.5%減)だった。」(『建設工業新聞』2022.02.01)
●「帝国データバンクは、2021年の『建設業の業界動向調査結果』をまとめた。倒産件数は前年比15.8%減の1066件で、調査を開始した1964年度以降最少だった。21年度からの『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』(21~25年度)で公共工事が堅調なことなどが要因という。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、政府が企業の資金繰り支援を強化。コロナ禍前の19年比でも倒産件数が約25%減少した。ただ、潜在的に破綻リスクを抱える企業は2.6万社に上ると指摘している。』(『建設工業新聞』2022.02.03)
●「賃上げ企業を総合評価方式の入札契約手続きで加点する国の施策に関連し、日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が制度運用の意見をまとめた。従業員1人当たり平均の給与額が前年度に比べ3%以上増えると加点評価する大企業向けの基準を見直し、増加率を3%の4分の1に抑えるよう要望。これまで賃上げに踏み切ってきた企業とそうでない企業で不公平感がでないよう、既に賃上げした企業は2年分の実績を見るなど柔軟な対応も求めた。」(『建設工業新聞』2022.02.08)
●「清水建設は9日の取締役会で、日本道路に対してTOB(株式公開買付)を実施することを決めた。清水建設による現在の株式所有割合は24.84%。TOBによって50.10%まで引き上げることで、連結子会社化する。日本道路は賛同している。老朽化インフラの更新工事で案件単位の連携を超えたグループとして協業体制を構築する。両社の技術力と経営資源を相互補完・有効活用することで、より付加価値のある提案活動を実施。JVでの受注の拡大を狙う。」(『建設通信新聞』2022.02.10)
●「上場大手ゼネコン4社の2022年3月期第3四半期決算が出そろった。連結では3社が増収、1社が減収で、全社が営業減益となった。各社とも受注は堅調で手持ち工事も積み上がっているものの、完成工事総利益(粗利)率は低下局面から横ばい局面に向かいつつある。22年3月期第3四半期の連結決算のうち、売上高は清水建設が前期比減となり、大林組、鹿島、大成建設は前期を上回った。通期見通しの達成に向け、順調な消化が進んでいる。営業利益については、大成建設が『追加変更の獲得や原価低減が図れる案件が少なかった』とするように、近年の競争激化を反映し、全社が2桁を超える減少となった。…一方、受注高は全社が前期を上回り、堅調な状態が続いている。…ただ、受注時利益に目を向けると、『大型建築案件の競争が激しい状況が続いており、悪化はしていないが、良くもなっていない』(大林組)、『建築は大型開発の案件はあるものの、競争の厳しさは続いている』(鹿島)、『大型案件の受注時採算は激しい受注競争を背景に依然としてワンランク低いところにある』(清水建設)と低下局面は抜けつつあり、横ばい局面に入ったとみられる。」(『建設通信新聞』2022.02.14)
●「国土交通省は10日、建設工事受注動態統計調査の2021年(1—12月)の集計結果を公表した。全体の受注高は前年比3.3%増の106兆9495億円。公共機関からの受注は都道府県や市区町村など地方の機関を中心に下落した。他方、民間受注は1件5億円以上の大型案件が増加。不動産業の事務所や製造業の工場・発電所などが増加に寄与した。内訳は元請受注高が3.2%増の69兆8877億円、下請受注高が3.6%増の37兆0619億円となっている。業種別では、総合工事業が4.4%増の64兆6838億円、職別工事業が3.0%増の15兆9078億円、設備工事業は1.1%増の26兆3580億円となった。」(『建設通信新聞』2022.02.14)
●「大手・準大手ゼネコン26社(単体27社)の2022年3月期第3四半期決算が14日までに出そろった。連結で16社が減収。16社が営業減益、3社が営業損失となった。単体の建築の完成工事総利益(粗利)率は、18社が10%を割り込んでおり、15社が前年同期を下回った。受注の堅調さを背景に受注時利益が上昇すれば粗利率の回復に期待がかかる。連結売上高は、9社が増収となった。前期、前々期に東京五輪後の需要の端境期やコロナ禍の影響で受注が減少した影響が出ているとみられる。連結営業利益は、通期で14社が前期を下回り、3社は営業損失となる見通しで、受注競争激化や資材高の影響が顕在化した格好だ。ただ、通期で通期予想を大幅に下方修正した企業も、特定工事における損失計上としており、来期以降への影響は小さいとする声は少なくない。」(『建設通信新聞』2022.02.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省がまとめた2021年(1—12月)の建築着工統計調査報告によると、新設住宅着工戸数は前年比5.0%増の85万6484戸で5年ぶりに増加に転じた。新型コロナウイルス感染症の影響により10年以来の低水準に落ち込んだ前年からの反動増となった。ただ、コロナ禍前の水準までは戻っておらず、資材価格の高騰・供給遅延や感染症の再拡大といったリスク要因もあり、予断を許さない状態が続いている。新設住宅のうち、持家は9.4%増の28万5575戸だった。1960年以来、60年ぶりの低水準を記録した前年から回復した。貸家は4.8%増の32万1376戸。直近のピークである17年(41万9397戸)から3割近く下落し、いったんは下げ止まった格好だ。分譲住宅は1.5%増の24万3944戸。6年ぶりの減少となった前年から再び増加に転じた。内訳はマンションが6.1%減の10万1292戸、戸建て住宅が7.9%増の14万1094戸となっている。反転した戸建てとは対照的にマンションは減少が続いている。」(『建設通信新聞』2022.02.01)
●「国土交通省は4日、空港の脱炭素化に向けた取り組み方針を策定した。空港施設・車両の省エネルギー化や再生可能エネルギー導入を促進し、2030年度までに13年度比46%以上のCO₂排出削減を各空港で達成する。太陽光発電を中心とする再エネの発電容量目標は30年度230万キロワットに設定した。空港施設のうちターミナルビルなど空港建築施設の取り組みは、ワーキンググループ(WG)を設置して22年度に深掘りする。同日に開いた『空港分野におけるCO₂削減に関する検討会』の第4回会合で、目標、取り組み方針、工程表をまとめた。」(『建設通信新聞』2022.02.08)

その他