情勢の特徴 - 2022年2月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「上場企業の2021年4~12月期は、純利益の合計が前年同期比58%増の32兆921億円で過去最高だった。コンテナ運賃が高止まりする海運、資源高の恩恵を受けた石油や商社などが大幅増益となり、全体をけん引した。増益または黒字転換した社数は全体の70%で四半期決算が始まった08年以降で最も高い。赤字企業の割合は10%と前年同期より11ポイント低下した。」(『日本経済新聞』2022.02.18)
●「経済産業省は下請けの中小企業15万社を対象に、原材料コストや人件費の上昇分を価格転嫁できたかどうか大規模な調査に乗り出す。昨秋調査の3倍強にあたる企業に対象を増やし、4月に実施する。悪質事業者の洗い出しを急ぐとともに、大企業との取引環境の一段の改善につなげる。円滑な価格転嫁を進めなければ、賃上げの裾野も広がらないと判断した。中小企業向けの調査に先立って経産省は、3月までに大企業を中心とした発注側の企業に下請け対象を徹底するよう求める。4月調査はこの結果を受注側から裏付ける狙いで、ヒアリングを通じ発注側の対応を集約。スコア付けする。下請け企業との価格交渉にあたって、一方的な交渉拒否など下請け振興法上の問題があると判断した場合、国が文書で注意喚起や指導をする。これまでは独占禁止法や下請代金法に違反する極端に悪質なケースに限り、公正取引委員会が対応してきたが、今回は指導の対象も広げる。」(『日本経済新聞』2022.02.19)
●「都道府県と政令市の2022年度予算案が22日、ほぼ出そろった。都道府県の一般会計総額は前年度比2.5%増の58兆1287億円となった。普通建設事業費は4.8%増の6兆4196億円で、26都道府県で伸びたが2桁を超える大きな伸びは見られなかった。大都市圏を中心に新型コロナウイルス感染症対策の経費が膨らんだ一方、コロナ収束後を見据えた成長戦略の1つに脱炭素を位置付け、具体的施策を打ち出す自治体が相次いだ。」(『建設通信新聞』2022.02.24)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、2020年度の直轄の調査・設計等業務に関する入札・契約の実施状況をまとめた。契約件数は前年度より456件増の1万2378件。当初契約額は4203億円で前年度(3692億円)と比較して13.8%の増加となった。全体に占める発注方式別の割合は件数、金額ともに前年度と同水準だった。総合評価落札方式は導入以来、経年的に増加しており、件数、当初契約額ともに過去最大となった。」(『建設通信新聞』2022.02.17)
●「国土交通省は、地方自治体によるダンピング(過度な安値受注)対策の徹底に向け、2022年度から調査基準価格や最低制限価格の算定式を非公表または独自基準にしている自治体への働き掛けに乗り出す。人口10万人以上の市での算定式の見直しが進んだことから、適正化の動きをさらに加速する。年度内に公表予定の21年度の入契調査(公共工事入札契約適正化法に基づく実施状況調査)を基に精査し、改善促進を始める。」(『建設通信新聞』2022.02.17)
●「国土交通省は、元下間などの工期に関する契約実態の調査結果をまとめた。9割超の元請けが工期の交渉があった場合、変更を認めていると回答した。一方で下請側から見ると、変更交渉したことがある業者は全体の6割で、4割は交渉経験がなかった。一部ではあるものの短い工期での施工を強いられる例も確認された。2024年度からの時間外労働の上限規制適用が迫る中、受発注者や元下間で一体となった工期適正化への対応が急務となっている。同省は21年度の下請取引等実態調査で初めて工期に関する質問を設けた。建設業法改正で著しく短い工期による請負契約の締結の禁止が規定されたことなどを踏まえ、元下間や受発注者間の工期について交渉の実態などを調査した。工期の変更交渉への対応は全体の94.7%が変更を認めていると回答した。他方、5.3%あった変更を認めないとした理由(複数回答)は、『あらかじめ決められた(発表された)供用時期を変更できない』が67.5%で最も多く、『関連工事に影響を及ぼす』(48.0%)、『発注者(施主)の予算執行の都合』(33.0%)、『地元や利害関係者への影響』(14.2%)などが続いた。」(『建設通信新聞』2022.02.17)
●「国土交通省は民間発注工事に特化した工期の実態調査を始める。工期設定や工期変更が適切に行われているかどうか、建設企業だけでなく民間発注者も対象にウェブアンケートで聴取する。公共工事と比べ民間工事は実態把握が難しく、工期適正化が進んでいないとの指摘も後を絶たない。特に取り組みが遅れている工事種類などの傾向を分析し、2020年10月施行の改正建設業法で規定された『著しく短い工期の禁止』の実効性を高める狙いがある。」(『建設工業新聞』2022.02.22)
●「国土交通省は、直轄土木工事で適用する積算基準の一般管理費等率と低入札調査基準価格の一般管理費等の乗率を2022年度から引き上げる。従業員の給与などに相当する一般管理費など建設企業の継続に必要な諸経費を発注段階から見直すことで、公共工事の円滑な施工確保を図る。従業員の処遇改善や働き方改革に取り組む建設企業にとっては総合評価落札方式での賃上げ加点措置と合わせて追い風となる。」(『建設通信新聞』2022.02.25)

労働・福祉

●「帝国データバンクの調査によると、54.6%の企業が2022年度に賃金改善を見込む意向であることが分かった。…調査時期は1月18~31日。調査対象は全国2万4072社で、有効回答数は1万1981社(回答率49.8%)。建設業は2010社が、建材・家具・窯業・土石製品卸売業は356社が回答した。22年度の意向について賃金改善を『見込む』は54.6%(21年度見込み比12.6ポイント上昇)、『見込まない』は19.5%(8.5ポイント低下)となった。具体的な内容は基本給を改定するベースアップ(ベア)や賞与など。賃金改善を見込むと回答した企業のうち、賃金改善の内容は『ベア』が46.4%、『賞与(一時金)』が27.7%だった。賃金改善を見込む理由としては『労働力の定着・確保』(76.6%)が最も多かった。」(『建設工業新聞』2022.02.16)
●「岸田文雄首相の『成長と分配の好循環』の実現に向けた企業の賃上げ要請に対し、建設産業でも呼応する動きが出始めている。日刊建設通信新聞社が大手・準大手ゼネコン、建築設計事務所、建設コンサルタント、道路舗装会社、設備工事会社、メーカーの計132社を対象に実施した『人材採用調査』によると、ゼネコン4社、建築設計3社、コンサル6社、道路舗装3社、設備5社の計21社が賃上げの『実施を決めた』と回答した。全体の半数以上が『検討している』とした。」(『建設通信新聞』2022.02.18)
●「国土交通省は18日、3月から適用する『公共工事設計労務単価』を発表した。全国の全職種平均(単純平均値)は2.5%(2021年3月比)の伸び率で、10年連続の上昇となった。全職種の平均金額(加重平均値)は2万1084円で、単価の公表開始以降の最高値を更新した。昨年度と同様に新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて下落単価を据え置く特別措置を導入してはいるが、下落した範囲は3分の1に縮小した。担い手確保・育成のために技能者の年間賃上げ2%を目指してきた官民の取り組みの成果が結実した。」(『建設通信新聞』2022.02.21)

建設産業・経営

●「カーボンニュートラルの広がりに伴い、ゼネコン各社が低炭素コンクリートの開発を加速している。製造工程での二酸化炭素(CO₂)排出量を一般的なコンクリートよりも削減したり、内部にCO₂を固定したりする技術を確立することで脱炭素社会の実現に貢献する。発注者側であるデベロッパーが低炭素コンクリートを活用する方針を表明する動きも出ている。」(『建設工業新聞』2022.02.17)
●「建設業情報管理センター(CIIC、上田健理事長)は、約4.8万社の企業データを集計した『建設業の経営分析(2020年度)』をまとめた。経営の健全性を示す自己資本比率は前年度比1.46ポイント増の36.59%で、5年続けて過去最高を更新。売上高はほぼ横ばいだったが総資本の厚みが増しており、財務体質の改善が進んでいると分析している。経営分析はCIICに経営状況分析を申請した企業の財務諸表を用いて実施。20年4月~21年3月に決算期を迎えた企業を調査対象に、収益性や健全性、生産性を示す計26指標の動向を分析している。資本金5億円以上などの大企業は除外しており、中小建設企業分析に特化した基礎資料と位置付けている。自己資本比率の上昇は9年連続。売上高別に見ると、1億円以上の階層がいずれも40%を超えている。5000万円以上は30.97%(前年度比2.49ポイント増)、5000万円未満は6.49%(5.16ポイント増)と売上高が少ない階層でも改善が著しい。業種別、地域別でもすべて数値が改善した。収益性の指標となる総資本経常利益率は前年度比0.17ポイント増の5.67%となり、5年連続で良化している。」(『建設工業新聞』2022.02.17)
●「東京製鉄は21日、建設用鋼材のH形鋼や異形棒鋼などの3月分の契約価格を前月から1トン3000円(2~3%)引き上げると発表した。原料に使う鉄スクラップの価格や電力コストの上昇を踏まえ、2021年11月分以来4カ月ぶりに値上げする。熱延鋼板や厚鋼板など鋼板類は前月から据え置く。…電炉の鉄鋼メーカーが主原料に使う鉄スクラップは、中国鋼材消費の増加期待と需給の引き締まりから国内外で値上がりし、指標価格が13年半ぶりの高値圏にある。原油や液化天然ガス(LNG)の高騰で電力価格が上昇し、電炉のエネルギーコストも膨らむ。建材類は都市部の再開発や物流施設といった大型物件向けの需要が堅調で、一部の大型サイズは品薄とされる。自動車減産の影響で市中の在庫が積み上がっている鋼板類と比べて需給に緩みはない。これまでの値上げ幅が鋼板類と比べて小さかったことも踏まえ、生産コストの増加分を製品価格に転嫁する。」(『日本経済新聞』2022.02.22)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)の会員企業が施行する建設現場で二酸化炭素(CO₂)の排出削減が進展している。1月に公表した2020年度『CO₂排出量調査報告書』によると、施工高1億円当たりの20年度原単位削減率は13年度比で前年度から4.5ポイント改善し9.6%となった。新技術を最大限活用した施工の効率化が奏功。資材調達や供用後の運用段階に至る過程も含め、会員各社による地道で継続的な省エネ活動も成果につながったようだ。調査は建設現場で発生するCO₂の『排出量調査』と『削減活動調査』に分けて実施した。排出量調査は現場敷地の電源や重機の燃料などとして最低2カ月以上使った電力や灯油、軽油、重油の量を把握し、施工高当たりの排出量を算定。削減活動調査は各工事での達成度合いを集計した。排出量調査は会員52社が20年4月~21年3月に施行した2287現場(建築1149現場、土木1138現場)、削減活動調査は2144現場(同1051現場、同1093現場)が対象になる。20年度のCO₂総排出量は394.9万トン(前年同比11.2%減)。工種別割合は土木28.5%、建築71.5%だった。日建連は総排出量が減った要因に関し、事務所でのこまめな消灯や空調温度の適正化など会員各社が地道に取り組んできた省エネ対策の影響を強調している。東京五輪・パラリンピック関連施設工事の収束や新型コロナウイルス流行拡大の影響も列挙。その結果、20年度施工高(14兆7671億円、前年度比6.8%減)が減ったことを挙げている。」(『建設工業新聞』2022.02.22)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「不動産経済研究所が24日発表した全国の新築マンション発売戸数は前年比29.5%増の7万7552戸だった。首都圏や近畿圏の伸びがけん引して3年ぶりに前年実績を上回り、新型コロナウイルス前の水準も超えた。用地取得費の上昇などで平均価格は5年連続で過去最高となった。22年は発売戸数減も見込まれ顧客の購入意欲が続くかは不透明だ。地区別にみると、全体の4割強を占める首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の発売戸数は前年比23.5%増えた。近畿圏のほか、東海・中京圏、北海道や九州・沖縄など全地域で前年実績を上回った。新型コロナの影響で、1976年以来44年ぶりに6万戸を割り込んだ2020年から回復した。全体の発売戸数は3年ぶりに増加し7万戸を回復したものの、過去最多だった1994年の19万戸弱の4割程度にとどまる。一方、平均価格は5115万円と5年連続で過去最高値となった。首都圏で2.9%、近畿圏で9.1%上がった。他の中核都市でも札幌市など駅前の高層マンションが価格を押し上げた。」(『日本経済新聞』2022.02.25)
●「東京都の住民が東京外郭環状道路(外環道)の工事差し止めを求めた仮処分申し立てで、東京地裁が、一部の工事を差し止める決定をしたことが28日、分かった。住民側の代理人弁護士が明らかにした。弁護士によると、28日の決定はシールドマシン2基によるトンネル掘削工事を差し止める内容。外環道では工事現場上の東京都調布市の住宅街で陥没事故が発生した。」(『日本経済新聞』2022.02.28)
●「林野庁は建築プロジェクトでの木材利用を拡大するため、木造化や木質化に積極的な地方自治体と事業者への支援を強化する。昨年10月に施行した建築物木材利用促進法で行政(国、自治体)と事業者の協定制度を創設した。2022年度から非住宅建築物の木材利用に関する補助制度で協定締結者を優先的に支援する。補助金の要領を策定する過程で支援内容も固める。」(『建設工業新聞』2022.02.28)

その他