情勢の特徴 - 2022年3月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「中小企業庁は、業界団体が取引適正化に向けた取り組みをまとめる。『自主行動計画』の点検結果を3日に公表した。昨年10~11月に経済産業省所管の12業種46団体を対象にフォローアップ調査を実施。労務費の上昇分を取引価格に反映できたと回答した発注者は71%。一方、受注者は28%にとどまった。価格転嫁以外の項目でも、受発注者間の認識に大きなギャップがあった。自主行動計画は18業種51団体が策定済みで、毎年計画のフォローアップ調査を実施している。中企庁は、策定団体のうち経産省所管団体の調査結果を集計した。所属会員企業の計7288社に調査票を発送し、2376社(回答率33%)から回答を得た。建設関連の対象業種・団体は、機械製造業の日本建設機械工業会、建材・住宅設備の日本建材・住宅設備産業協会など。建設業団体は国土交通省所管のため、対象に入っていない。調査結果によると、原材料費を取引価格に『だいたい反映できた』と回答した割合は発注者が76%。受注者で38%。受注者の回答も比較的高水準だったが、建材・住宅設備の受注者の回答は26%で、対象業種の中で唯一30%に達しなかった。中企庁は『建設工事関連の元請事業者との力関係で転嫁しづらい状況が考えられる』と分析。エネルギー価格を『だいたい反映できた』と答えた発注者は70%、受注者が26%だった。休日確保など働き方改革の影響で、短納期発注や急な仕様変更が発生した場合の発注者のコスト負担状況も調査。30%の発注者が『だいたいできた』と自己評価した一方、『発注者が適切にコストを負担した』と回答した受注者は15%にとどまった。」(『建設工業新聞』2022.03.04)
●「都道府県の2022年度予算案が7日に出そろった。普通建設事業費などを含む投資的経費が21年度を上回るのは21都道府県。21年度当初予算発表時に20年度の投資的経費を上回ったのは6県だった。防災・減災対策などに優先的に取り組む自治体の姿勢が鮮明になった。新型コロナウイルス対策に加え、コロナ後を見据えICT(情報通信技術)などに力を入れる自治体も目立った。新型コロナ対策費用の拡大を背景に一般会計予算額が過去最大になった自治体は2桁に上った。医療体制の充実に加え、中小企業への支援や消費喚起策など経済対策に多くを配分した。コロナ下でも経済活動を維持するため、以前にも増して力を入れ始めたのがデジタル化だ。これまでICTが未踏だった分野にも一気に広がる可能性がある。」(『建設工業新聞』2022.03.08)
●「東京商工リサーチが8日に発表した2月の全国企業倒産件数は、前年同月比3%増の459件だった。2021年5月以来、9カ月ぶりに増加に転じた。だが、倒産件数は57年ぶりの低水準となった21年通年の月間平均(503件)を下回っており依然、低水準で推移する。新型コロナウイルス禍における政府や金融機関の支援策が、企業の資金繰りをつないでいる。負債総額は5%増の709億8900万円だった。増加は4カ月ぶり。廃棄物処理のカンポリサイクルプラザ(京都府南丹市、負債額79億円)など大型の倒産が目立ち負債総額を押し上げた。業種別では新型コロナ禍の影響が大きい飲食業が39件と5%増えた。変異型『オミクロン型』の流行で、先行きの不透明感が高まった。医療・福祉事業や学術研究・専門技術サービス業など、その他のサービス業も倒産が増えた。」(『日本経済新聞』2022.03.09)
●「経済産業省は9日、ガソリン価格の上昇を抑えるための補助金を10日から1リットル当たり17.7円支給すると発表した。これまでの5円から増やす。ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が上がり、米国によるロシア産原油の禁輸などで高騰は続きそうだ。補助上限を25円に引き上げたばかりだが上限到達は近い。価格への介入には限界がある。資源エネルギー庁が発表した7日時点のレギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)は1リットル174.6円だった。前週から1.8円上がった。上昇は9週連続。2008年以来の高値水準が続く。…原料の原油価格は高止まりが続く。ロシアのウクライナ侵攻により原油の欧米指標先物は今週、いずれも一時08年以来となる1バレル130ドルを超えた。政府は元売りに支給する補助金の上限を10日以降、これまでの1リットル5円から25円へと引き上げる。全国平均のガソリン価格を1リットル172円でとどめることをめざす。10日からは17.7円を支給する。補助金がなければ14日に189.7円と予想しており、08年に記録した過去最高の185.1円を上回る。標準となるドバイの原油価格は7日以降、1バレル120ドル台後半で推移している。この水準が続き補助金がなければ21日のガソリン価格は1リットル当たり200円前後と見込まれる。補助金の支給額は17日にも25円の上限に達する可能性がある。25円への拡充にあたり、21年度予算の予備費から3500億円を追加で確保した。25円の支給を1カ月間続けると最大3500億円程度が必要と見込んだためだ。補助金は3月末までの期間限定としているが延長の公算は大きい。原油価格が下がらず25円の補助を続けると4月中にも財源が底をつく恐れがある。」(『日本経済新聞』2022.03.10)
●「ロシアのウクライナ侵攻が各国のインフレに拍車をかけそうだ。国際商品は主要品目の4割が過去最高値圏に入った。消費者物価上昇率もさらに高まり、米国は3月に40年ぶりに8%台に達するとの見方がある。市場の長期予想も過去最高に達した。米欧は金融緩和の修正を急ぐが、急ピッチの引き締めは回復基調の世界経済を冷やすリスクをはらむ。国際商品市場でロシアの生産シェアが大きい品目が急騰している。軍事侵攻や経済制裁で供給網が遮断・混乱する恐れが強まっているためだ。金融情報会社リフィニティブによると、ロシアの生産シェアが約2割の天然ガスで欧州の指標価格となるオランダTTFは7日、1メガワット時あたり初の300ユーロ台をつけた。侵攻前の2月23日の約4倍に急騰した。原油の北海ブレント先物の期近物は7日に一時1バレル139ドル台と2008年以来の高値をつけた。小麦はロシアが世界最大の輸出国でウクライナと合わせて世界の3割を供給する。8日に一時1ブッシェル13.6ドルと最高値を更新した。侵攻前からの上昇幅は5割を超えた。…今後の焦点は消費者物価への波及だ。経済協力開発機構(OECD)加盟国平均のインフレ率は1月に前年同月比7.2%と31年ぶりの水準に達した。新型コロナウイルス危機からの経済の回復過程で高まる需要に供給が追いつかない状況だ。3月以降はウクライナ危機の影響が加わる。JPモルガン証券が原油価格の上昇を織り込んで試算した4~6月期の世界の物価上昇率は侵攻前の予測に比べ0.9ポイント上方修正となった。さらに加速する可能性もある。…日本は企業物価指数が2月に9.3%上がり、41年ぶりの伸びになった。消費者物価指数は直近公表分の1月で0.5%の上昇にとどまるが、今後、価格転嫁が進めば上昇率が拡大していく可能性がある。携帯電話料金の引き下げの影響が一巡する4月以降、2%台に乗るとの見方もある。」(『日本経済新聞』2022.03.13)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は今国会で成立を目指す『宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)』を踏まえ、盛り土行為の安全確保に必要な留意点などをまとめた設計・施工の運用マニュアルや、既存の盛り土の安全対策に関するガイドラインを作成する。宅地造成など単一分野で定めていた指針や手引を、盛り土全般に適用する統一的な形に改める。法律公布から『1年以内』とする施行日までに内容を固め、地方自治体や開発事業者らに周知する。」(『建設工業新聞』2022.03.09)
●「国土交通省と総務省は、都道府県などの地方自治体に調査基準価格・最低制限価格の算定式を適切に見直し、ダンピング(過度な安値受注)対策を講じるよう要請した。4日の中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)による低入札価格調査基準の算定モデル改正を受け、都道府県・政令市に9日付で対応を通知した。新しい中央公契連モデルは、調査基準価格の算定式のうち、一般管理費等の参入率を『0.55』から『0.68』に引き上げた。最新の諸経費動向調査の結果を基に、企業として継続するため必要な経費を反映した国交省直轄の改正基準に準じている。」(『建設通信新聞』2022.03.10)
●「国土交通省が14日に東京都内で開いた中央建設業審議会(中建審)総会で、原燃料や資材価格の高騰が建設工事に与える影響を巡り受発注者が意見を交わした。中建審委員を務める日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長は、国や民間発注者に対し工事費にコスト上昇分を適切に転嫁するよう要請。民間発注者からは高止まりしている工事費の定着に強い危機感を示した。」(『建設工業新聞』2022.03.15)

労働・福祉

●「国土交通省と日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会の建設業4団体は、2月28日に開いた意見交換で、2022年はおおむね3%の技能者の賃上げを目指すことを申し合わせた。昨年3月の意見交換で年間2%以上の賃上げ目標を掲げて取り組んできた結果、最新の公共工事設計労務単価では主要12職種の全国平均で3%の引き上げに至ったことなどを踏まえ、前年度を上回る目標を設定した。」(『建設通信新聞』2022.03.01)
●「2023年春卒業予定の大学生らを対象にした企業説明会や採用情報の発信が1日に解禁された。日刊建設工業新聞社が主要ゼネコン34社を対象に実施した人材採用アンケートによると、今春入社予定の新卒(大学・大学院)社員は前年に比べ84人減の計3267人となる見通し。技術系が82.4%を占める。3年目を迎えたコロナ下での採用活動は、オンラインを駆使して各社が優秀な人材確保に注力している。」(『建設工業新聞』2022.03.02)
●「国土交通省は、登録基幹技能者を認定するための講習を行う職種として、新たに『解体』を追加した。2月14日付で講習の実施機関として全国解体工事業団体連合会(井上尚会長)を指定した。同協会は長期的に全国で2万5000人の機関技能者育成を目指す。今回の登録により、登録基幹技能者講習の対象は39職種となった。」(『建設通信新聞』2022.03.08)
●「建設産業界での定年延長の動きが加速している。日刊建設通信新聞社が大手・準大手ゼネコン、建築設計事務所、建設コンサルタント、道路舗装会社、設備工事会社、メーカーの計132社を対象に実施した『人材採用調査』によると、既に定年年齢を61歳以上に設定している企業は、2019年調査時(2月)の15社から3年で倍増以上の32社となり、今後の定年延長を決定した10社も加えると全体の3割を超える。大手・準大手ゼネコンでは、31社中9社が22年度末までに定年年齢を61歳以上に設定する。調査票は、1月上旬から対象企業に順次送付し、『定年延長の予定』の質問にゼネコン31社、設計事務所19社、コンサル19社、道路舗装11社、設備29社、メーカー16社の計125社が回答した。19年の調査以降毎年、定年延長について質問しており、年齢を61歳以上に設定している企業は19年が15社、20年が22社、21年が24社と確実に増加しており、今回、30社を超えた。『実施する』(10社)と『検討中』(40社)を含めると、全体の62%に達する。…建設業界が定年延長に積極的に動くのは、▽若年層の採用難▽24年4月からの時間外労働の上限規制に向けた人材確保▽技術・ノウハウの適切な伝承――の3点が背景にあると考えられる。特に現場に専任の技術者を配置する必要があるゼネコンなどは、技術者数が業績に直結する上、時間外労働の上限規制が始まるとさらなる人員数の確保が不可欠で、こうしたことを見据え、定年延長を人材確保の一手段として進めているとみられる。」(『建設通信新聞』2022.03.09)
●「国土交通省は、建設業の一人親方問題への対応を目的とした『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』の改訂内容を決定した。雇用関係にあるにもかかわらず社会保険加入や働き方改革などの規制を逃れるための“偽装一人親方化”を防止するため、約2年間にわたる検討の成果を同ガイドラインに反映した。9日に開いた検討会で改訂案が了承された。月内に業界団体などに対して改訂を通知し、4月1日から施行する。改訂ガイドラインでは、『請け負った仕事を自らの技能と責任で完成できる個人事業主』を建設業界が目指す一人親方の基本的な姿に位置付ける。施工スキルだけでなく、安全衛生の知識や従事年数、職長などの経験から判断、建設キャリアアップシステム(CCUS)に基づく能力評価でレベル3相当を要求水準とする。他方で、業界が目指す一人親方とは異なる、社会保険加入や働き方改革などの規制逃れを目的とした社員の偽装一人親方化を防ぐ規定も整備した。…2026年度以降には確認事務の負担軽減や技能者の処遇改善の観点から、『適正でない一人親方の目安』の運用を目指す。経験年数が一定未満、あるいはCCUSのレベルが一定未満の技能者が一人親方として扱われている場合など適正でない一人親方の目安と働き方自己診断チェックリストの活用の在り方について、改訂ガイドラインの運用状況を踏まえて23年度末をめどに方針を提示する。」(『建設通信新聞』2022.03.11)
●「新型コロナウイルス禍による労働市場への打撃があらわになり始めた。日本で1年以上失業状態にある人は2021年10~12月期で流行前に比べ31%増の64万人と、リーマン危機以来の増加が続く。人手不足が賃上げを呼び、さらなる物価上昇につながる米国とは対照的に、日本では長期離脱後の就労復帰が難しく、賃金が物価を押し上げる力も弱い。総務省の労働力調査で失業期間が1年以上の人を長期失業者とした。日本ではリーマン・ショック後の10年をピークに減少に転じ、18年7~9月期は48万人と1997年以来の低い水準だった。コロナの流行で経済情勢が悪化し、長期失業は21年4~6月期は72万人まで膨れ上がった。コロナ前の19年同期に比べ1.5倍の水準で、21年10~12月期まで前年同期比で5四半期連続2ケタ増だ。総務省は『コロナ禍で経済活動が低迷した20年の影響が、1年経過して長期失業者の増加に表れている可能性がある』と説明する。19年12月に2.2%だった完全失業率はコロナ禍で上昇し20年10月に3.1%まで高まった。経済活動の持ち直しで直近22年1月は2.8%まで低下したものの経済構造の変化や特定産業への強い打撃で失業者が労働市場に滞留し始めている。失業者予備軍も増えている可能性がある。厚生労働省は国が休業手当を助成する雇用調整助成金などの対策は失業率を2.6ポイント押し下げる効果があったと分析する。失業を増やさない効果の半面、休業者を企業内に抱え込ませる側面もあった。」(『日本経済新聞』2022.03.15)
●「国土交通省は、14日に開いた中央建設業審議会の総会で、経営事項審査の改正案を示した。担い手の育成・確保を促進するため、新たに建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入状況を評価する。元請けとしてカードリーダー設置など就業履歴を蓄積できる環境を整備することで加点対象となる。6月に改正内容を公布し、2023年1月の施行を予定する。」(『建設通信新聞』2022.03.15)

建設産業・経営

●「竹中工務店の2021年12月期決算は連結・単体ともに増収増益となった。受注競争の激化や原材料価格の高騰など先行きの不透明な状況が続く中で、生産性の向上など建設事業の高度化が奏功。竹中土木など一部の子会社の工事利益が増加したことで利益面の改善が進んだ。コロナ禍で打撃を受けているホテル運営(開発事業)も一部で回復がみられたという。売上高は連結が前期比1.8%増の1兆2604億円、単体が1.9%増の9890億円。中核である建設事業は連結が0.5%増の1兆1524億円、単体が1.6%増の9577億円となった。工事の採算性を示す完成工事総利益(粗利)率は連結が0.3ポイント増の9.4%、単体が0.2ポイント減の9.0%と受注競争の激化や原材料価格の高騰など厳しい局面にあっても一定の粗利率を堅持。単体の粗利は0.2%減の862億円となっている。業績の先行指標となる建設事業の受注高は堅調に推移。民間分野の設備投資が持ち直しつつある中で、連結が4.7%増の1兆2011億円、単体が5.1%増の9862億円を確保した。特に前期比で99.1%増となった北海道を筆頭に中部圏や近畿圏での受注の伸びが目立つ。…次期(22年12月期)の業績見通しは全体として前期並みを想定。売上高は連結が2.7%増の1兆2950億円、単体が0.1%増の9900億円を見込む。」(『建設通信新聞』2022.03.01)
●「同族経営も少なくない地方の建設会社にとって後継者をどう育てるかは大きな課題といえる。さまざまな業種の企業経営者が頭を悩ませる状況にあって、関東エリアに拠点を構える産業のうち、建設会社の『後続者不在率』がここ数年、低下傾向にあるという。民間信用調査会社の帝国データバンクが実施した調査の結果をベースに、首都圏8都県(山梨県含む)の業界団体などに後継者問題の現状や対応をまとめた。同社がまとめた中小企業の『業種別後継者不在率動向調査(建設業)』によると、首都圏8都県の後継者不在率は平均で2018年の71.6%から21年では65.1%と6.5%低下した。調査は同社の信用データを基に実施。建設業のデータ数は約1万7000社だった。後継者不在率が低下した要因として、業界団体が挙げるのは『脱同族企業化』の流れだ。栃木県建設業協会(谷黒克守会長)は『ここ4、5年で会員のうち20社近くが代替わりしているが、非親族への承継が明らかに増えている』と指摘する。以前と比べ『非親族への承継に強い抵抗感がなくなってきた』と、経営者の意識の変化を感じている。」(『建設工業新聞』2022.03.01)
●「建物の鉄筋に使う異形棒鋼の取引価格が、13年4カ月ぶりに1トン10万円を超える高値水準まで急上昇した。指標品は前月比8%高い。鉄スクラップ相場などが再び高騰したため電炉の鉄鋼メーカーが販売価格を大幅に引き上げ、需要家のゼネコンが段階的に受け入れた。コスト高に耐えきれないメーカー側の商慣習を見直す姿勢も強めている。指標となる16ミリメートル品の大口需要家渡し価格は、東京地区で現在1トン10万5000円前後。前月比8000円(8%)高い。およそ5カ月ぶりに値上がりし、2008年11月以来となる1トン10万円の大台に乗せた。異形棒鋼は電炉の鉄鋼メーカーが主に製造している。値上がりの主因は原料に使う鉄スクラップの高騰だ。鉄筋くずなどからなる標準品種『H2』の電炉の鉄鋼メーカーの買値は、東京地区で現在1トン5万7000円前後。1月下旬に付けた直近の安値と比べ9%高い。08年8月以来の高値圏にある。中国の景気刺激策の強化による鋼材消費の拡大観測などを背景に急速に値上がりした。原油や液化天然ガス(LNG)の高騰で電力価格が上昇し、電炉のエネルギーコストも大きく膨らむ。製鋼の際に脱酸素剤として使うフェロシリコンなどの合金鉄も昨夏から高止まりしている。…鋼棒の需要は『全体で見ると活況とは言いがたい』(鉄鋼商社の担当者)。都市部の再開発案件での需要が底堅いものの雑居ビルなど中小規模の鉄筋コンクリート造(RC造)の建設は少なく、鉄筋用の小形棒鋼の出荷は伸び悩む。それでも、原料・製品ともに先高観が強く、ゼネコン側は必要量を確保するため値上げを段階的に受け入れている。今後も取引価格の上昇が続く公算が大きい。」(『日本経済新聞』2022.03.04)
●「全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)は、会員企業に実施した2021年度『人材確保・育成対策等に係る実態調査』の結果をまとめた。公共工事で発注機関別に適正な予定価格や工期の設定、最新の積算基準が適用されているかを確認。予定価格の設定は多くの会員会社が受注する市町村発注工事で、6割超が『適正でない』と回答した。調査対象は会員約2330社で31.7%の738社が答えた。昨年11月末時点の結果を集計。業種別割合は土木62.3%、土木・建築27.6%、建築7.7%。資本金別は1000万~2000万円(48.5%)と2000万~1億円(41.3%)に集中。完成工事高別では1億~10億円未満が最多の55.7%を占める。公共工事で適正な予定価格が設定されているか調べた結果、複数回答で寄せられた1975件のうち『適正でない』が1132件、率にして57.3%と半数を大きく超えた。発注機関別は市町村が最も高い65.3%の586件、次いで都道府県54.4%の417件、国41.5%の129件の順だった。全中建によると、背景には市町村の財政力に余裕がなく厳しい予算での案件発注が多い状況がある。予定価格を根拠なく低く設定する『歩切り』の存在も指摘している。回答企業からは最低制限価格が予定価格の90%前後に設定された場合、利益が確保できないなどの意見もあったという。」(『建設工業新聞』2022.03.04)
●「建売住宅大手が在庫の積み増しに動いている。飯田グループホールディングス(GHD)など上場3社の建売住宅の在庫を含む棚卸し資産は、2021年12月末時点で20年12月末より25%増えた。新型コロナウイルス禍を機に住宅販売が好調で、減った在庫の埋め戻しが遅れていたが、20年6月末に近い水準に戻った。原材料高が続くなか在庫を確保できるかが今後の収益を左右する。飯田GHDとオープンハウスグループ、ケイアイスター不動産の棚卸し資産と回転日数を1~6月期と7~12月期の半期ごとに集計した。オープンハウスGは21年1月に連結子会社化したプレサンスコーポレーションの売上高や資産は除いた。3社合計の棚卸し資産は21年12月末時点で1兆41億円と20年12月末より25%増えた。21年7~12月期の期中平均の棚卸し資産を売上高で割って算出する回転日数は3社平均で148日。直前の21年1~6月期(134日)より11%長く、1年前の20年7~12月期(146日)と比べて2%伸びた。ただし、3社合計の在庫は20年7月~21年6月までの1年間はむしろ減っており、回転日数は短縮傾向にあった。コロナ禍初期の20年4~5月の緊急事態宣言下で土地を仕入れる活動が停滞した。一方、狭い賃貸住宅などから持ち家へ移る需要が活発化。仕入れた在庫と販売用の在庫の両方が一気に減った。一般的には回転日数の低下は経営効率の高さを示す。だが足元では在庫の積み増しが難しいなか、想定外の低下となった。7~12月でようやく歯止めがかかった形だ。…住宅市場が好調ななか、建て売りの戸建て住宅はマンションの価格高騰についていけない人々の受け皿でもある。…各社は販売機会を逃すまいと適正な在庫の積み増しを模索する。飯田GHDは『販売棟数の半数程度の在庫水準が望ましい』(西野弘専務)とするが、原材料の値上げや供給不足が懸念だ。21年から顕在化した『ウッドショック』の影響で木材の供給は不安定だ。トイレや窓サッシ、給湯器など住宅設備機器も調達遅れや値上げが目立つ。各社は今のところ住設機器の在庫を多めに確保するが、『この状況が続けば住宅販売数も絞らざるを得ない』(住宅業界関係者)との声もある。資材や建材不足で着工が鈍れば、適切な住宅在庫を確保できなくなり売り上げも減少する、という望まぬ在庫回転日数の短縮を招く恐れもある。」(『日本経済新聞』2022.03.09)
●「積水ハウスが10日発表した2022年1月期の連結決算は、純利益が前の期比25%増の1539億円と最高益を更新した。新型コロナウイルス禍の新たな生活様式に対応した戸建て住宅の販売やリフォームが国内で好調で、1棟あたりの単価も上昇した。増収増益を見込む23年1月期は木材など資源価格の上昇が懸念材料になる。同日、300億円を上限とする自社株買いも発表した。22年1月期の売上高は6%増の2兆5895億円と過去最高だった。事業別では、主力の国内の戸建て事業が9%増収だった。省エネルギー性能や断熱性などが高くエネルギー収支を実質ゼロにするZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)や、室内換気システムなど付加価値の高い提案が奏功した。同事業の売上高営業利益率は12%で、2ポイント上昇した。賃貸住宅もZEH対応で7%増だった。建築・土木事業は前の期にあった複数の大型物件の反動などを受けて14%だった。」(『日本経済新聞』2022.03.11)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「2020年に東京都調布市で陥没事故が起きた東京外郭環状道路(外環道)のトンネル掘削工事を巡り、同市住民らが国や東日本高速道路などを相手に工事の差し止めを求めた仮処分申し立てで、東京地裁は28日、一部区間の工事を差し止める決定をした。目代真理裁判長は決定理由で『具体的な再発防止策が示されておらず、工事再開により陥没の恐れがある』と指摘し、同じ工法による工事の中止を命じた。」(『日本経済新聞』2022.03.01)
●「3~4年後の東京の街並みはどう変わるか。日本経済新聞が2021年末時点の都内の市街地再開発の計画を集計したところ、建設中の住宅戸数は3万戸を超えて過去最高を更新した。低金利で都心のマンション需要が高止まりしている。ただ都内の人口は減少に転じ、供給過剰を懸念する声が出ている。再開発は都心に集中し、周辺部は災害対策の遅れが目立つ。東京都が再開発を認可し、工事を終えていない事業中の案件を集計したところ、住宅や商業施設など全用途の再開発は40地区を超えた。延べ床面積は820万平方メートルを超え、東京駅前の丸ビル約50棟分に相当する。20年比で10%増と過去最高を更新した。再開発で建設中の住宅は8%増の3万戸超だった。市区町村別では中央区の約1万1600戸が最多。過去20年間に同区の再開発で建設された住戸数とほぼ同じで、21年の大阪府全体の新築マンションの年間供給戸数を超える。千代田と港を加えた都心3区に全体の約半数が集中する。…再開発で建設するマンションはもとの地権者が住み替えつつ、新たな入居希望者に販売する。限られた敷地に多くの住戸数を設けるため、大半が高層のタワーマンションになる。東京消防庁によると、20年末時点で東京23区内にある20階建て以上の建造物は960棟と10年で約260棟増えた。…1970年代に始まった東京都の市街地再開発は、都市計画の決定ベースで270地区を超える。古い住戸が多く、路地の狭い地域を一定の強制力で整備して災害に備える目的があった。だが近年は高単価で住宅を販売できる都心部でまとまった土地を確保し、規制緩和の恩恵を得る手段になっている側面がある。『周辺部では小規模開発や個別の建て替えを支援する工夫が必要だ』と明治大学の野澤千絵教授は指摘する。空き家が増える日本を『住宅過剰社会』と位置づけ、無節操な住宅建設に警鐘を鳴らす。『タワマン主体の再開発では規制緩和や税金を投入する公共性は見出しにくい』と指摘する。タワマンの建て替えは多くの住民の合意形成が要る。都心好立地に林立すれば、将来の成長に向けた用途転換ができず、東京の競争力を損なう恐れがある。野澤教授は『都市開発の根底にはバブル後の「都市集住の推進」が残る。人口を増やす住宅を善とする思考から脱却し、新しい枠組みを示すべきだ』と話す。」(『日本経済新聞』2022.03.04)
●「米国で住宅用木材の価格が急騰している。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の先物価格は1週余りで一時16%上昇し、約10カ月ぶりの高値を付けた。ロシアのウクライナ侵攻や欧州などの経済制裁のあおりで、欧州からの木材供給が停滞するとの観測が広まったためだ。『ウッドショック』などで高値が続く米国相場で上昇圧力が強まった。」(『日本経済新聞』2022.03.10)
●東日本大震災後に造られた災害公営住宅。「終(つい)の住み家」として入居した被災者が、家賃負担増やコロナ禍で孤独な生活を余儀なくされている。…「負担だけ増える状況です」。そう語るのは、仙台市の災害公営住宅に子ども2人と暮らす40代女性。両親と暮らしていた市内の実家が津波で全壊し、仮設住宅暮らしを経て2016年から災害公営住宅に入居した。震災後、宮城県内21市町が災害公営住宅を建設し、1万5088世帯(2021年現在)が入居している。深刻化しているのが、「収入超過世帯」といわれる一定以上の所得がある世帯の家賃増。この女性の世帯の家賃は約3倍に上がった。…収入超過世帯は入居4年目から段階的に家賃が割増で請求される。11市町が据え置き期間を設定してきたが、その期間も終わり、家賃が約16万円近くになった世帯もある。収入超過世帯は県内に約1200世帯あり、働き盛りの若い世帯の退去によるコミュニティー維持困難にもつながっている。(『しんぶん赤旗』2022.03.10より抜粋。)

その他

●「国土交通省は11日、2021年度第3四半期の建築物リフォーム・リニューアル調査の結果をまとめた。全体の受注高は前年同期比21.6%増の3兆1581億円。2期連続で3兆円を超えた。住宅工事は18年度第4四半期以来、11期ぶりの1兆円台となった。同省建設経済統計調査室は『共同住宅での大規模修繕の需要が高まっている』という事業者の声を紹介した。受注高の内訳は、住宅に関係する工事が17.1%増の1兆0332億円、非住宅の工事が23.9%増の2兆1249億円となっている。工事種類別にみると、住宅に関係する工事は、増築が50.4%減の120億円、一部改築が15.2%減の200億円、改装・改修が31.1%増の8397億円、維持・修理が16.7%減の1614億円だった。非住宅工事は、増築が275.1%増の2345億円、一部改築が5.7%減の331億円、改装・改修と維持・修理は合計で14.9%増の1兆8573億円となった。」(『建設通信新聞』2022.03.14)