情勢の特徴 - 2022年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』(2021~25年度)が2年続けて補正予算で措置され、公共事業関係の大型補正予算編成が当面続きそうだ。こうした流れを見越し、複数年にまたがる事業が難しい補正予算の課題を克服する対応策が相次いで打ち出されている。国は国庫債務負担行為(国債)の新たな枠組みとして『事業加速円滑化国債』を創設。発生増加が見込まれる異常気象など事故が理由の繰り越し申請手続きを円滑化する方策も合わせて講じる。」(『建設工業新聞』2022.03.22)
●「22日成立した2022年度予算は社会保障費の膨張などで一般会計総額が107兆円と過去最大になった。ロシアのウクライナ侵攻による資源高の加速など想定外の事態も生じている。政府は物価高対策をまとめる方針で、早くも歳出圧力が高まる。夏には参院選も控える。国会の議決を経ずに使途を決められる予備費が便利な財布となり、バラマキ色が強まる懸念がある。社会保障費は高齢化による自然増などで21年度当初比4393億円(1.2%)増え、初めて36兆円を超えた。新型コロナウイルス対応などで膨らんだ国債の元利払いに充てる国債費も5808億円(2.4%)増の24.3兆円と高水準が続く。社会保障費と国債費の合計で全体の6割弱を占める。一方で編成時に想定していなかった資源高など経済環境の変化への対応が迫られている。政府は10日、ガソリン価格抑制に向けた石油元売りへの補助金を最大5円から25円に引き上げた。17日に早くも上限に達するなど急騰は収まる気配がない。」(『日本経済新聞』2022.03.23)
●「建設経済研究所は、2035年度までの建設投資額(実質値)の中長期予測を『建設経済レポートNo.74』で公表した。今後も潜在的な建設投資の需要は十分にあり、需要に応えるために供給側である建設業の生産性向上と担い手確保が必要であると結論付けた。反対に建設業の就業率を維持できなければ、潜在需要を供給能力が大きく下回り、投資額が現状よりも減少すると予測している。」(『建設通信新聞』2022.03.28)
●家計の実支出に占める非消費支出の割合が高まっている。非消費支出とは直接税と社会保険料を合わせた額。直接税には所得税と住民税、社会保険料には健康保険料、公的年金保険料、介護保険料などが含まれる。総務省「家計調査」によると、消費支出と非消費支出を合わせた実支出に占める非消費支出は、2人以上の世帯のうち勤労者世帯では、2021年に26.7%となった。この数字は比較可能な00年以降でもっとも高い水準だ。非消費支出の内訳の推移を見ると、直接税が非消費支出に占める割合は00年の45.5%から21年の41.9%へ低下した。一方、社会保険料は54.4%から58%へ上昇。とりわけ介護保険料は集計をはじめた05年の1.5%から21年の3.3%へ上昇した。(『しんぶん赤旗』2022.03.31より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「総務省は地方自治体の2021年度第1~3四半期(21年4~12月)の公共事業予算執行状況を公表した。21年度当初予算と20年度の繰越額を合算した24兆0715億円に対し契約率は72.5%。前年度同期に比べ0.9ポイントの上昇となった。支出済み額の割合も0.9ポイント上回る31.4%だった。」(『建設工業新聞』2022.03.25)
●「東京・中野区は4月1日に『中野区公契約条例』を施行する。一定規模を超える発注工事で報酬下限額を設ける。条例に基づく『公契約審議会』を8月に立ち上げ、報酬下限の設定額や運用方針などを審議していく。2023年度に制度運用を始動する。公契約条例の制定は東京都内の市区町村で13団体目になる。対象工事は予定価格1億8000万円以上など。下請会社の社員だけでなく一人親方にも適用する。人件費が大部分を占める委託業務(予定価格1000万円以上)と、施設の指定管理者も対象になる。公契約審議会は区長の諮問機関の位置付けで、事業者団体と労働者団体の代表、学識者らで構成。審議した下限額は23年3月に告示する。」(『建設工業新聞』2022.03.29)
●「国土交通省は、民間や地方自治体工事での元下間の請負代金の見積・契約に関するモニタリング調査の結果を明らかにした。調査対象となった契約の2、3割で法定福利費の割合が著しく低い、または大幅な一括値引きがあったことが分かった。特に公共工事で落札率が低くなるほど傾向が顕著だった。同省は28日付で調査対象企業に対して適正な契約締結を要請。支店長など下請契約の実務に携わる者を含めて徹底を図るよう求めた。」(『建設通信新聞』2022.03.30)
●「道路インフラの維持管理や更新に充てる地方自治体の予算が不足している。国土交通省の調査によると、自治体の約9割が現状の予算規模では橋梁やトンネルなど既設道路施設全般を十分に維持管理できなくなる恐れがあると回答した。全国で老朽ストックが増大している状況にあって、点検や修繕などの取組みを着実に進めるための予算を確保し、重点計上することが必要になりそうだ。調査結果は国交省がまとめた『道路橋の集約・撤去事例集』の中で初めて公表した。都道府県や政令市、市区町村に実施し1663団体が回答。2019年6月時点の状況を集計した。『現状の予算で既存の道路施設を維持管理していける見込みである』と回答したのが10.3%だった。一方、現状の予算では道路施設を十分に維持管理できない可能性があるとして、『現状の予算を維持管理に重点化する必要がある』が71.6%、『道路施設を減らすことを考ええている(考えないといけなくなる)』が18.1%となった。9割弱が予算面で道路施設全般の維持管理に不安を抱えていることが明らかになった。」(『建設工業新聞』2022.03.31)

労働・福祉

●「正社員として働く人が2021年に3565万人と過去最多になった。新型コロナウイルス禍でも人口減を背景とする構造的な人手不足が続き、企業が安定した労働力の確保に動いた。非正規職を正規職に置き換える流れが生まれている。コロナ後の成長に向けては、人材の質を高める再教育や柔軟な働き方を認める環境整備が課題になる。総務省の労働力調査によると、21年は就業者のうち『正規の職員・従業員』(役員や自営業者などを除く)は3565万人と前の年に比べて26万人増え、比較できる13年以降で最多だった。非正規は26万人減り、2064万人となった。正規は7年連続増加、非正規は2年連続の減少だった。正社員の増加が目立つのは女性だ。男性は2343万人で横ばいだが、女性は1222万人と過去最多を更新した。業種別では人手不足が深刻な医療・福祉が10万人増と際立つ。製造業や情報通信業、金融業・保険業など幅広く女性正社員を増やす働きがみられる。」(『日本経済新聞』2022.03.22)
●「厚生労働省が18日にまとめた2021年(1—12月)の労働災害発生状況(速報、3月7日時点)によると、建設業での死亡者数は前年同期比(前年同時点比)11.9%増(30人増)の283人となった。建設業での労災による死亡者数は4年ぶりに増えることが確定し、死亡者数が過去最少だった258人の20年確定値と比べ、既に現時点で25人多い。確定値は4月末にもまとめる。また、休業4日以上の死傷者数は、前年同時点比7.5%増(1107人増)の1万5835人と3年ぶりに増加した。死傷者数の21年確定値は1万6000人台になると見込まれ、15年から6年続いた1万6000人未満が途切れるとみられる。」(『建設通信新聞』2022.03.22)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は会員企業が取り組む時間外労働の削減をより強く後押しする。建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用される2024年4月を目標に、日建連は上限規制の達成を目指していた。目標を1年前倒しし23年4月の達成を目指す。会員の取り組み事例などを整理したガイドラインを策定。週休2日の確保を柱とする対策の実行も促し、働き方改革の実現につなげる。」(『建設工業新聞』2022.03.25)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は23日の理事会で、技能者の賃金水準引き上げに向けた取り組みを決議した。2月末に国土交通省と日建連など建設業4団体が申し合わせた、今年の賃金水準上昇率の目標『おおむね3%』を目指す。目標に沿った下請契約を徹底し、すべての工事でダンピング受注を排除する。理事会後に会長名で会員各社に通知した。」(『建設工業新聞』2022.03.25)
●「全建総連とNPO法人建設政策研究所は『2021年全建総連賃金実態調査』を行い、このほど結果を公表した。2021年の大工の賃金は全国平均で『労働者(常用)』が日額1万4888円と、前年比428円減(2.9%減)、過去5年でもっとも低い数字となった。また、『一人親方・手間請』の大工は1万6732円で同951円増(5.7%増)だった。…『労働者』の全職種平均(大工・各種の平均)は1万4672円と、前年比379円減(2.6%減、)、また『一人親方』の全職種平均は1万7538円で、同1100円増(6.3%増)となった。この結果について、両団体は『設計労務単価が上昇を続けていることから、労働者との日額の差が拡大する結果となった』と指摘している。」(『日本住宅新聞』2022.03.25)
●「国土交通省は、4月1日から施行する『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』の改訂を30日付で建設業団体に通知した。法定福利費など労働関係諸経費の削減を意図して技能者の個人事業主化を進める“偽装一人親方化”への対応を目的に、目指すべき一人親方の姿や元請、下請それぞれの役割と責任などを規定した。一人親方自身に適切な働き方を促すとともに、偽装一人親方化を防ぐため、『働き方自己診断チェックリスト』を活用した就労条件の確認を実施する。一人親方とその一人親方と請負契約を結ぶ建設企業が契約する工事ごとに使用し、仕事依頼の諾否や内容の決定権、報酬の支払われ方、資機材の負担、特定企業への専属性などの判断項目から働き方を確認する。」(『建設通信新聞』2022.03.31)

建設産業・経営

●「全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)が2022年度の事業計画を策定した。建設業界や会員各社の将来を担う人材の安定確保に向け、建設技能者のさらなる賃上げが柱の処遇改善を推進する。取り組みを支えるツールとして建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及により力を注ぐ。建設業を対象にした時間外労働の罰則付き上限規制適用開始を2年後任控え、働き方改革として『目指せ週休2日+360時間(ツープラスサンロクマル)運動』に引き続き取り組む。」(『建設工業新聞』2022.03.16)
●「建設産業に関連する資機材や燃料の高騰に歯止めがかからなくなっている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を契機に、木材や鉄鋼、石油関連製品、燃料などの価格が上昇。メーカーらは自助努力が限界と判断し価格転嫁の動きを強めている。先が読めないウクライナ情勢も暗い影を落としており、コストやサプライチェーン(供給網)により大きな影響を与える可能性がある。」(『建設工業新聞』2022.03.18)
●「インフロニア・ホールディングス(HD)は22日、東洋建設の完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。東洋建設は同日開いた取締役会でTOBへの賛同と応募の推奨を決議した。2022年3月期の業績予想を単純合算すると連結売上高は8622億円となる見込みで、実現すれば上場大手4社に次ぐ規模となる。グループ全体でシナジー(相乗効果)を発揮し、インフロニアHDが目指す『総合インフラサービス企業』の実現につなげる。」(『建設工業新聞』2022.03.23)
●「建設資材価格の急騰を受けて、建設業が窮状打開へと動き出している。日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、顕著な影響が見られる民間工事の発注者との現状共有を目的に業界共通の説明資料を作成。工事契約時の資材価格・工期変動に関する条項の設定とその徹底にも乗り出し、改善への道筋をつける。全国建設業協会(奥村太加典会長)や全国中小建設業協会(土志田領司会長)は引き続き動向を注視しつつ、地方協会と会員企業の声に即応できる体制を維持する。」(『建設通信新聞』2022.03.24)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は2022年度の事業計画をまとめた。将来にわたる担い手確保に向け、官民協働で推進している技能者の賃上げに引き続き注力。発注者と連携した適正な請負代金の受注や工期設定を徹底する。公共工事設計労務単価の継続的な上昇につなげる好循環実現を目指す。インフラ投資の促進やカーボンニュートラル対策にも力を注ぐ。」(『建設工業新聞』2022.03.24)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が会員95社を対象に集計した2月の建設受注額は、前年同月に比べ0.3%減の1兆2752億円だった。民間受注は2月単月として過去10年で最高額を更新。前月に続き1件当たり100億円超の大規模民間建築工事が相次いだ。」(『建設工業新聞』2022.03.29)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「16日午後11時36分ごろ、宮城県登米市や福島県相馬市などで震度6強を観測する地震が発生した。気象庁は両県沿岸に津波注意報を発令した。震源は福島県沖で、深さは約60キロ。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.3と推定される。東北新幹線が脱線したほか、東京電力管内で200万戸を超える大規模な停電が発生した。」(『日本経済新聞』2022.03.17)
●「地価上昇の波が東京都心から周辺に広がっている。2022年の公示地価で東京・埼玉・神奈川の3都県の住宅地はプラスに転じ、千葉県は上昇幅を拡大した。新型コロナウイルス禍でテレワークが増えるなど生活が変化し、郊外でも住宅需要が高まる。人口が増えれば消費が拡大し、次の投資を呼び込んで地域が活性化する好循環も期待される。…総務省によると21年は東京23区で初めて域外から転入した人数を転出者が上回った。都全体の転出者は41万4734人で前年から約1万3000人増えた。転出先として目立つのは近隣県だ。埼玉、千葉、神奈川3県で半数超を占めた。人の流れの変化は地価にも反映されている。22年の公示地価は全国平均で住宅地と商業地がいずれも2年ぶりに上がった。県庁所在地別に住宅地の上昇率をみると、さいたま市1.5%、千葉市1.0%、横浜市0.8%と東京近隣の伸びは全国平均の0.5%を上回った。コロナ後の働き方の変化が背景にある。国土交通省によると、テレワークする人の割合は20年度に19.7%と前年度の2倍に高まった。東京からの移住先として人気の高い長野県軽井沢町は10~11%程度のプラスで上昇の勢いが強まっている。…一方で都心の住宅人気も依然根強い。中央区や豊島区など8区が2%以上の上昇となった。東京圏で最高価格をつけたのは港区赤坂の高級マンション『ホーマットロイヤル』だった。好立地の高級マンションは共働きで世帯所得の高い『パワーカップル』などを中心に販売が好調だ。住宅上昇の裾野が広がれば、商業地にも波及する。1都3県の商業地はそろって回復した。東京と埼玉はプラス圏に浮上した。」(『日本経済新聞』2022.03.23)
●「政府のワーキンググループ(WG)は22日、日本海溝・千島海溝沿いで発生が想定される最大級の巨大地震(マグニチュード9クラス)について、対策を提言する報告書を公表した。巨大な津波によって死者数が10万人を超えると見込まれることから、被災地となる積雪寒冷地の特有課題を踏まえつつ、避難路・避難施設の整備や集団移転の検討など、津波からの人命確保を中心に対策を講じるよう求めている。中央防災会議(会長・岸田文雄首相)の『日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討WG』が、報告書をまとめた。WGは、2021年12月に被害想定を公表しており、日本海溝の地震で約22万棟の建物が全壊し、最大約19万9000人が死亡すると推計した。千島海溝の地震では、全壊が約8万4000棟、死者数が最大約10万人と見込んだ。両地震ともに津波が被害の主因としている。被害想定を踏まえた今後の対策は、『人命を救う』『被害を最小化する』『回復をできるだけ早くする』の3点を目標に設定すべきと提言。具体的な対策は、▽津波からの人命確保▽各般にわたる甚大な被害への対応▽広域にわたる被害への対応▽対策を推進するための事項――の4つに分けて整理した。」(『建設通信新聞』2022.03.23)
●「マンションの管理計画が適切かを自治体が認定する新制度が4月1日に始まるが、同日に受付を始めるのは全体の5%程度の自治体にとどまることが国土交通省の調査で分かった。主要地域でも東京都の板橋区や町村部、名古屋市など一部にとどまる。2020年成立の改正マンション管理適正化法に盛り込まれた認定制度だが、多くの自治体は準備に時間を要している。制度開始には、マンションがある区や市が管理の適正化のための計画を任意でつくることが必要だ。町村部は一般に都道府県が計画をつくる。国交省の調査によると2月中旬時点で、4月1日までに同計画を作成するとしたのは、回答のあった区市や都道府県の5%程度の45だ。30%弱が計画作成の意向は持つが、時期は『24年度以降』など、かなり先の場合もある。さらに、計画作成後も事務的な準備時間を要する場合もある。」(『日本経済新聞』2022.03.31)

その他

●「ロシア軍の侵攻が続くウクライナから国外へ逃げる難民の増加が止まらない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると15日時点で290万人を超えた。その6割を引き受ける隣国ポーランドなど周辺国の受け入れは限界に達しつつある。関係国の分担は不可欠な情勢だ。日本も難民認定の枠外の特例として周辺国からの避難民の扱いで受け入れ数を増やす。民主主義陣営の一員として責任を共有する姿勢が試される。」(『日本経済新聞』2022.03.16)