情勢の特徴 - 2022年4月前半
●「公正取引委員会は、労務費や資材・燃料費の転嫁拒否事例の実態把握に向けた緊急調査の対象業種の一つに『総合工事業』を選んだ。具体的な調査内容を精査し、2022年度の早い時期に各企業へ調査票を送付。独占禁止法に規定する『優越的地位の濫用』が疑われる行為があれば個別に立ち入り調査を行う。各業種に発注者側と受注者側の両面の立場があることを踏まえ調査に当たる方針。総合工事業では受発注者関係と元下関係の両方に踏み込むことになる。政府が昨年12月に決定した『パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ』に基づく取り組み。各産業界の所管省庁に事前の実態調査を依頼し、緊急調査の対象を総合工事業など22業種に絞り込んだ。対象業種では価格転嫁の阻害要因として値上げ要請を理由とする転注・失注リスクなどが確認され、発注者や元請の立場が強く価格交渉が困難になっている可能性がある。緊急調査の結果は報告書にまとめ年内に公表する。」(『建設工業新聞』2022.04.01)
●「中小企業庁は、岸田政権が掲げる、『成長と分配の好循環』の実現に向け、下請Gメン(取引調査員)の体制を拡充し、下請取引の監督を強化した。建設業を含むあらゆる業種の下請企業を対象にするヒアリングは、2022年度に1万件以上を目指す。下請企業から集めた声は、所管省庁が定める取引適正化の業種別ガイドラインや業界団体が策定する自主行動計画の改定、下請振興法に基づく行政指導の実施などにつなげる。下請Gメンは、下請企業への訪問を通じて、発注先企業との取引に関する悩みや、業界内の悪い取引慣行などをヒアリングすることが仕事。17年から配置している。ヒアリングの実施件数はこれまで年間約4000件。『成長と分配の好循環』の実現に不可欠な『中小企業への適正な利益の分配』と『下請取引の適正化』を強力に推進するため、最長5年間の任期付き国家公務員である下請Gメンの人数を21年度の120人から過去最多の248人に増やした。併せて、ヒアリングで下請取引の問題が明らかになった個別の発注先企業を対象に同様の事案がないかを全国で調べる。“水平展開”を担当する『特別調査班』と、知的財産関連の取引問題に専門的に対応する『知財Gメン』を下請Gメンの中に創設している。」(『建設通信新聞』2022.04.07)
●「企業の倒産が歴史的に少なくなっている。東京商工リサーチが8日発表した2021年度の倒産件数は5980件で、1964年度の4931件に次ぐ57年ぶりの低水準だった。新型コロナウイルス禍に対応した賃金繰り支援策で、返済能力が低い会社の倒産まで抑え込んだ側面が大きい。原材料高などが懸念材料で、倒産が一転して増える可能性はある。」(『日本経済新聞』2022.04.09)
●「政府は上場企業など約4000社が四半期ごとに公表する決算書類で、法律で開示を義務づけている四半期報告書を廃止する検討に入った。証券取引所の規則に基づき開示する決算短信に一本化する。内容に重複が多いため企業側の事務負担を軽減することが目的だ。投資家が企業価値を正当に評価するため、四半期ごとの決算開示そのものは維持する。」(『日本経済新聞』2022.04.14)
●「建設経済研究所と経済調査会は13日、最新の2022年度の建設投資の見通し(4月推計・名目)を発表した。建設投資の総額は前年度比0.5%増の61兆9800億円。1月に発表した前回予測からは1兆0100億円の下方修正となった。災害復旧事業費の減少や政府統計の実績値などを反映した。公共投資の減少を好調な民間の非住宅投資が補い、全体として横ばいで推移するという見方に変更はない。」(『建設通信新聞』2022.04.14)
●「国土交通省は3月31日、公共工事発注者の入札・契約に関する実施状況を示す『入契調査』の結果を公表した。ダンピング(過度な安値受注)対策は、低入札価格調査基準の算定式を最新モデル以上に改めた市区町村が7割を超えるなど取り組みが継続して前進した。働き方改革では工期設定で従事者の休日を考慮する割合が微増。他方、市区町村の半数超は考慮しておらず、時間外労働の上限規制の適用開始が迫る中で、公共発注者側にも適切な対応が求められる。」(『建設通信新聞』2022.04.01)
●「東日本建設業保証が前払金保証実績を基にまとめた2021年度の公共工事動向によると、請負金額は前年度比13.9%減の7兆6216億0100万円だった。12年度(7兆3116億円)と同水準で、8兆円を割り込むのは9年ぶりとなる。工事場所別では東北、関東、甲信越、北陸、東海の各地区で軒並み減少。都県単位でもその大半が落ち込んでいる。請負金額は13-16年度まで8兆5000億円超で推移。17・18年度(8兆2000-3000億円)も一定額を維持し、19・20年度(8兆6000-8000億円)」に増加したため、21年度の低調さが際立っている。」(『日本経済新聞』2022.04.05)
●「国土交通省は公共発注者が工事特性や地域実状を踏まえ、最適な入札契約方式を選択する方法をまとめたガイドラインを改定した。平時時と災害時の2パターンで、工事内容や現場条件に応じ多様な入札契約方式を絞り込むフロー図を明記。リスク管理で有効な技術提案・交渉方式や、フレームワーク方式(包括・個別発注方式)の位置付けも明確化した。改正指針は各地方整備局に送付し、地域発注者協議会などを通じて地方自治体にも周知する。」(『建設工業新聞』2022.04.05)
●「政府は、老朽化インフラの増加に対応するため、維持管理業務で新技術の導入拡大を後押しする。業務を効率化、高度化し、インフラメンテナンスにかかるコストを抑制する。施設管理者が新技術を活用しやすい環境を整えるため、技術カタログやマニュアルの策定、予算措置や技術開発など政策を強化している。今後、各分野の新技術導入状況などを調査。点検や診断の質の向上、コスト縮減につながる効果的な事例を収集し、今秋までに整理する方針だ。」(『建設工業新聞』2022.04.14)
●「国土交通省は市区町村発注業務を対象にダンピング対策の働き掛けを強化する。2021年7月1日時点の実態調査によると、低入札価格調査制度か最低制限価格制度が未導入の市区町村は全体の約半数を占める。両制度がほぼ浸透している工事と比べ改善が進んでいない状況を踏まえ、年度内にも両制度の導入実態を近隣自治体と比較できる形で『見える化』する方針。地方自治体の契約担当者などが参加する地域別の会合でも主要議題にする考えだ。」(『建設工業新聞』2022.04.15)
●「全国建設労働組合総連合東京都連合会(全建総連都連、菅原良和執行委員長)は、組合員を対象とした2021年の賃金調査報告書をまとめた。賃金変動をみると、『上がった』は6.7%で、14年以降で最も低い水準となっている。8330人から回答を得た。雇用形態別の賃金は常用が前年比1.6%増の1万7472円で、07年以降で最も高い。手間請けは2.6%減の2万1341円、1人親方が2.9%減の2万0950円だった。」(『建設通信新聞』2022.04.01)
●「2022年度が1日スタートする。『成長と分配の好循環』を掲げる岸田政権の賃上げ政策が本格的に始動。公共事業で賃上げを後押しする環境が着々と整う中、基本給のベースアップを検討、実施するゼネコンや建設コンサルタントも出ている。10年連続で引き上げられた設計労務単価が専門工事業で働く技能者に行き渡るよう官民の取り組みも加速。公共工事の追い風を民間工事にも波及できるかどうか――。成果を求められる1年になりそうだ。」(『建設工業新聞』2022.04.01)
●「都道府県の約9割が建設キャリアアップシステム(CCUS)の利用促進策を実施または検討していることが、国土交通省などの調査で分かった。政令市でも半数超の13市が実施または検討と回答した。その他の市区町村では全体の5%程度にとどまるが、都道府県を筆頭に地方自治体でのCCUS導入に向けた動きが着実に広がりつつある。国交省、財務、総務の3省が入札契約適正化法(入契法)に基づいて毎年実施している人契調査の最新の結果によると、全都道府県のうち、41団体がCCUS利用促進策を実施または検討していると回答した。具体的な方策の内訳(複数回答)を見ると、義務化モデル工事の実施が6団体、検討が4団体、活用推奨モデル工事の実施が6団体、検討が12団体となった。総合評価での企業評価の実施は9団体、検討は17団体、入札参加資格審査での評価の実施は6団体、検討は13団体だった。それぞれの項目で全体の1割が実際に利用促進策を実施し、それに加えて2割が導入を検討している状況にある。」(『建設通信新聞』2022.04.11)
●「主要ゼネコンが過去3カ年で採用した新卒社員の離職率が改善している。日刊建設工業新聞社のアンケートに回答した33社の2018年度新卒社員の3年以内離職率の平均値は14.4%。17年度新卒と比べ1.1ポイント低下した。若手の研修制度やフォロー体制の拡充などで19社が離職率の低下につなげた。10%以上20%未満が17社で最も多く、10%未満が10社、20%以上30%未満が5社だった。」(『建設工業新聞』2022.04.13)
●「建設資材の高騰問題を受け、日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は国に求める対策項目をまとめた。工事でコスト上昇分が適切に価格転嫁されるよう、地方自治体や民間発注者に対し、工事標準請負契約約款に基づく対応を指導するよう要望。価格転嫁された後の市場環境に考慮し、民間発注者の投資意欲を維持していくため時限的な税制や金融の支援措置も必要とした。」(『建設工業新聞』2022.04.04)
●「中小企業庁は原材料の高騰にあえぐ建材・住宅設備産業や建設機械産業を対象に、価格交渉・転嫁の実態調査結果をまとめた。建材・住宅設備メーカーでは、建設会社との力関係などで価格転嫁をしにくく、下請企業が原材料の増加コストを負担するケースがあるという。建設機械メーカーは労務費の上昇に関し『価格交渉すらできない』『(価格改定要請に対し)転注を示唆される』と指摘。原材料の高騰や労務費の上昇を価格転嫁しやすい環境づくりが急務になっている。」(『建設工業新聞』2022.04.08)
●「民間信用調査会社の東京商工リサーチがまとめた2021年度(21年4月~22年3月)の建設業倒産件数(負債1000万円以上)は、前年度比1.0%減の1105件となり、年度として2年連続で減少した。バブル末期の1992年度以降の30年間で過去最少を更新。負債総額は6.3%増の1054億5600万円だった。」(『建設工業新聞』2022.04.12)
●「国連の気象変動に関する政府間パネル(IPCC)は4日、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度以内に抑える目標達成の方策をまとめた。世界の温暖化ガス排出量は遅くとも2025年には減少に転じさせる必要があるとする。排出量を30年に半減するには、最大で30兆ドルの投資が必要になる。再生可能エネルギーの普及や化石燃料からの脱却など、需給両面で各国に対策を迫る。」(『日本経済新聞』2022.04.05)
●「国土交通省は4日、国土審議会の計画部会を開き、2023年内の閣議決定を目指す新たな国土形成計画の策定に向け、大都市リノベーションなど3点をテーマに議論した。大都市圏に今後求められる対応として、産業・都市機能の集積を生かした日本経済のけん引と、医療・介護需要増大への対応の2点を方向性に示した。」(『建設通信新聞』2022.04.05)
●「国土交通省は国土作りの基本計画となる次期『国土形成計画』の骨格に、リニューアル中央新幹線の開業で生まれる巨大経済圏『スーパー・メガリージョン』を位置付ける。リニアの開通で、3大都市圏間のシナジー(相乗効果)が劇的に高まると期待。鉄道の乗り換え利便性の向上や、高速道路網とリニア駅を結ぶ連絡道路の整備などに力を入れ、効果を周辺地域に波及させていく方針だ。」(『建設工業新聞』2022.04.05)
●「東京電力福島第1原子力発電所事故に伴って、福島県内の除染で出た放射性物質を含む土壌などについて、環境省は8日、帰還困難区域での発生分を除き、中間貯蔵施設(同県大熊町、双葉町)への搬入を3月末でほぼ終えたと発表した。帰還困難区域では、早期の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)で除染が続いており、2022年度以降も搬送が続く。」(『日本経済新聞』2022.04.09)
●「ロシアのウクライナ侵攻に伴う世界的な木材高騰が、日本の輸入価格に本格的に波及してきた。カナダ産の製材品や欧州産の集成材原料は4~6月期の対日価格が前期比2割近く上がった。ロシアからの供給が止まった欧州の木材不足が深刻で、日本の欧州産輸入も平年比で3割減る。ハウスメーカーなどのコスト高が長期化しそうだ。」(『日本経済新聞』2022.04.12)
●「米インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムのニューヨーク市スタテン島の物流施設で、同社として米国初となる労働組合結成が決まった。インフレやガソリン価格高騰に対応したさらなる給与の引き上げなどを求めた従業員側が支持を集めた。世界的にも物価上昇が見込まれる中、企業は従業員などへの分配を改めて問われることになる。」(『日本経済新聞』2022.04.03)
●「米長期金利の上昇を受け、住宅ローン金利が急騰している。米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、4月8~14日の週に30年固定金利(平均)は5%となった。5%台に乗せるのは2011年2月以来、11年2カ月ぶり。住宅ローンの申請件数は足元で前年比4割減の水準まで減った。高騰が続く住宅価格とローン金利の上昇で、家が買いにくい状況となっている。」(『日本経済新聞』2022.04.15)