情勢の特徴 - 2022年4月後半
●「金融庁は18日、金融審議会の作業部会を開き、上場企業が開示する2種類の決算書類を一本化することを了承した。金融庁は金融商品取引法で上場企業に開示を義務付けている四半期報告書を廃止し、内容を充実したうえで証券取引所のルールに基づく決算短信に一本化する方針だ。」(『日本経済新聞』2022.04.19)
●「政府は26日、原油価格や物価高騰を踏まえた総合緊急対策を閣議決定した。原油価格の高騰対策やエネルギー・原材料・食料の安定供給対策、中小企業を中心とした価格転嫁円滑化策を講じる。建設分野では原材料費の取引価格を反映した適正な請負代金、工期確保が図られるよう公共・民間の発注者に周知を徹底する。特にアスファルト合材は原料であるストレートアスファルトの上昇分を価格に転嫁するため、関係する事業者に働き掛ける。」(『建設通信新聞』2022.04.27)
●「日銀は28日、大規模な金融緩和策の維持を決めた。指定した利回りで国債を無制限に買い入れる『指し値オペ』を毎日実施することも決めた。日銀が金利を低く抑え込む姿勢を明確にしたことで、28日の東京外国為替市場では円相場が20年ぶりに1ドル=131円台をつけた。市場では緩和修正に動くとの観測が絶えず、日銀は難しいかじ取りを迫られる。」(『日本経済新聞』2022.04.29)
●「2021年度の公共工事投資は14兆円まで低下し、3年ぶりに15兆円を割り込んだ。前払保証会社が発表している公共工事動向をみると、21年度累計の請負金額は14兆0502億円で、13年度以降で最高額だった20年度(15兆3657億円)と比べて8.6%減少。底だった15、17年度(13兆9677億円、13兆9080億円)は上回るものの、18年度(14兆0680億円)の水準に逆戻りしている。東日本大震災の復旧・復興事業の進展で漸減してきた東北の落ち込みが著しく、ピーク時から半減している。」(『建設通信新聞』2022.04.18)
●「2012年12月に中央自動車道で発生した笹子トンネル天井板落下事故を教訓としたインフラ老朽化対策の取り組みを次のステージに進めるため、国土交通省の有識者会議でインフラメンテナンスの今後の在り方を巡る議論が始まった。人員や予算が不足する市町村などでインフラの安全性や信頼性が十分に確保されていないという危機感を背景に、広域的なインフラを総合的で多角的な視点で捉える『地域インフラ群再生マネジメント(仮称)』への転換を打ち出す方向だ。」(『建設工業新聞』2022.04.19)
●「財務省は公共事業の効率化によるコスト縮減の観点で、発注方式の工夫や発注ロットの拡大、国庫債務負担行為(国債)の活用などの対応を促す。計画・設計段階の見直しがコスト縮減に大きく寄与することを背景に、施工者のノウハウを設計に生かす発注方式の工夫を通じ『限られた財源で多くの事業量が確保できる方策を国土交通省で検討すべき』と主張した。」(『建設工業新聞』2022.04.22)
●「産学官で組織するインフラメンテナンス国民会議の傘下に、市区町村の首長らで構成する新たな会議体が立ち上がる。メンテナンスに高い関心を寄せる市区町村約700団体が参加。維持管理・更新に充てる予算や人員が不足する基礎自治体共通の課題を踏まえ、効率的で効果的なメンテナンスの知見や意識を共有。首長同士が意見交換する場とし、トップダウンで関連施策を強力に推進する狙いがある。」(『建設工業新聞』2022.04.25)
●「都道府県発注工事で建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録状況などを企業評価に活用する取り組みが広がっている。工事成績評定で加点するモデル工事や、総合評価方式での加点などインセンティブ措置を導入すると表明した都道府県は3月末時点で35団体に達した。CCUS登録率が低い傾向にある地方の建設会社にとって動機付けになるとして、国土交通省は残る団体への働き掛けを強化。2022年度内にも全都道府県で企業評価の導入を目指す。」(『建設工業新聞』2022.04.18)
●「厚生労働省は、建設アスベスト(石綿)訴訟の最高裁判決などを受け、一人親方など労働者以外の者も保護措置(安全衛生対策)の対象に加えた労働安全衛生規則等改正省令の公布に伴い、15日付で施行通知を都道府県労働局に出した。2023年4月1日に改正省令を施行する。一人親方などが新たに労働安全衛生法に基づく措置対象となることから、特に建設業、製造業の関係事業者に対して周知の徹底を指示するとともに、関係団体と十分連携するよう労働局に求めた。また、同日付で建設業関係団体を始めとした約650の関係団体にも改正省令の施行を通知。これまで安衛法の保護対象としてこなかった一人親方などに対して、新たに事業者に措置義務を課す改正のため、関係事業者、一人親方などに十分に周知が図られるよう、会員団体・企業に対する周知への協力を要請した。改正したのは、▽労働安全衛生規則▽有機溶剤中毒予防規則▽鉛中毒予防規則▽四アルキル鉛中毒予防規則▽特定化学物質障害予防規則▽高気圧作業安全衛生規則▽電離放射線障害防止規則▽東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則▽酸素欠乏症等防止規則▽粉じん障害防止規則▽石綿障害予防規則――の11省令。」(『建設通信新聞』2022.04.19)
●「建設産業専門団体連合会(岩田正吾会長)は、専門工事企業の働き方改革や技能者の評価に関する調査結果をまとめた。技能者に対する給与支払額を分析すると、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録(申請中含む)している企業の水準が他の企業に比べて高いことが分かった。CCUSのカードリーダーが設置されていた現場の割合は、『0%』と回答した企業が4割を超え、『20%未満』も3割超で普及途上段階にあると指摘した。」(『建設通信新聞』2022.04.26)
●「仕事に就いていても一定期間休んでいる『休業者』の数が高止まりしている。2021年度は211万人で、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する前を大幅に上回り、完全失業者より多い水準だった。国の補助金を背景に、企業が雇用者を抱え込む状況にあり、必要な産業への労働移動を阻んでいる可能性がある。総務省が26日に発表した労働力調査によると、休業者数は21年度に211万人だった。前の年度に比べて51万人減ったが、コロナの影響がまだ小さかった19年度比で見ると約30万人多い。21年度の完全失業者数(191万人)より20万人も多い。業種別で休業者が多いのは宿泊業・飲食サービス業(25万人)、卸売業・小売業(24万人)などコロナ感染の拡大に伴う行動制限の影響を強く受けた業種だ。長期的には少子高齢化による人手不足が続くと予想し、企業は働き手を休ませて雇用を維持している。」(『日本経済新聞』2022.04.27)
●「住宅用建材や設備の価格高騰や納期遅延によって工務店の受注が減少している。全建総連(中西孝司中央執行委員長)の調査結果(15日時点)によると、全国にある工務店の半数が約1年前に比べ受注が減ったと回答。背景には建材の高騰や不確実な納期の影響で工期を設定できず契約成立まで至りにくい状況がある。工務店からは行政に対し、経営の安定を後押しするような支援策を求める声が挙がっている。」(『建設工業新聞』2022.04.27)
●「ゼネコンなど建設企業へのTOB(株式公開買い付け)が増加している。2021年度に日本国内で届け出のあったTOBのうち、建設業を対象とした買い付けの総額は過去最高の2908億円にのぼった。成長に向けた業容変革の動きに加え、アクティビスト(物言う株主)との対立が促している面がある。国内の建設需要は飽和状態にあり、歴史的に動きの鈍かった建設業界の再編が今後、加速する可能性もある。M&A(合併・買収)助言のレコフによると、記録の残る1997年度以降で最大だった。目立つのが、成長に向けた業容変革を狙うTOBだ。公共インフラなどに強い道路舗装会社との提携や環境分野を強化するための動きが相次ぐ。…TOBが進む背景には業界の飽和がある。国土交通省によると建設業許可業者数は21年3月末時点で47万3952業者で近年は横ばい傾向だ。建設業は『90年代後半から00年代前半に他産業では再編の波があったものの、建設業では景気刺激に伴う公共投資で業者数が温存されてきた』(楽天証券経済研究所の窪田真之氏)歴史がある。工事受注という業界構造から『合併しても入札に応じられる枠が増えないため、M&Aに後ろ向きな企業が多かった』(建設大手幹部)。10年代以降、東日本大震災後の復興や東京五輪などに向けた建設投資が増えたが、今後、国内市場は縮小する見通し。各社は再エネ事業やインフラ関連などの新市場を見据え、道路子会社などとの関係を強化する。業界内の事情に加え、財務健全で資金余力もあるのに割安な建設株を取得しようとするアクティビストへの対抗策の意味合いもある。」(『日本経済新聞』2022.04.20)
●「建設資材の価格高騰が止まらない。経済調査会の調査結果(8日時点)によると、RC造やSRC造に使う異形棒鋼が1トン当たり11万1000円(東京地区)となり前月に比べ1万円上昇。S造に使うH形鋼も同11万5000円(同)で5000円アップした。ストレートアスファルト(ストアス)の高騰を受けアスファルト合材も全国的に値上げ基調。ウクライナ情勢などの影響が長期化しており、当面は原材料や燃料が高値で推移し、価格高騰に歯止めが掛かりそうもない。」(『建設工業新聞』2022.04.20)
●「建設資材価格の高騰の影響が、地域建設業にも及んできた。民間工事ではマンション工事の発注をずらすよう提案した企業もあるほか、公共工事でも『地方自治体の工事で、値上がりの発注価格への反映が追いついていない』として受注の手控えを検討する企業も現れている。こうした動きが広がれば、公共・民間とも需要が堅調にもかかわらず建設市場が冷え込みかねず、公共・民間とも早急な発注価格への転嫁が求められている。建設資材価格の変動に対しては、過去数度の鋼材価格急騰を経て、スライド条項・単品スライド条項といった制度・仕組みが整えられてきた。このため、公共工事受注を中心とする地域の建設業者にとってはこれまで、資材価格の変動が大きな問題となることば少なかった。ところが今回のコロナ禍と経済回復による急激な需要変動、それに伴う輸送体制の混乱、ウクライナ情勢の緊迫化などを背景とする建設資材の高騰を受け、『公共工事もすべて逆ざや(資材高によって原価が受注価格を上回る状態)』(北海道の地域建設会社幹部)という声が上がるほど地域建設業も大きな打撃を受けている。国土交通省直轄工事については、きめ細かな単価見直しやスライド条項の適用などによって『ほぼ問題はない』(関西の地域建設会社社長)とするものの、一方で『市などの自治体では、議会案件の場合、価格変更を認めてもらえることは少なく、今回の資材高騰で逆ざやが発生している』(中国地方の建設会社)と市町村発注工事を受注の主力とする地域建設業に大きな影響が出ているという。こうした事態を受け、各県の建設業団体も自治体への要望活動を活発化させている。特に深刻化しているのが、中国地方の建設会社社長が指摘する『そもそもの発注価格がまったく合わない』という点だ。自治体の発注単価は、定期的な調査に基づいて見直されているものの、今回のような数カ月連続で急激に単価が上がる現象に対応できず、『単価の見直しが追いついていない』。その結果、『(一定量の受注はどうしても必要だが)入札参加を見送りたいと思う案件もある』と口にする状況にまで陥っている。公共工事のような資材価格変動に対応する制度がない民間工事を請け負っている地域建設業はさらに深刻だ。関西の地域建設会社社長は、有志の建設会社社長が集まる会合で『関西では生コンの組合から、1立方メートル当たり2万3900円に引き上げるという通知が届いた。1年前より1割も高い』と苦境を吐露した。価格の先行きが見えず、『協力会社に見積もりを出しても、契約書にはんこをついてくれない。そのまま下手に受注して着工後にさらに単価が上がれば元請けが大赤字を被る可能性があり、危なくて受注できない』とし、直近のマンション建設工事では事業主に『(事業計画上いま着工しなければならないもの以外は)工事発注を待った方が良いと提案した』というほどだ。こうした状況が続けば、『(発注見送りや受注回避によって)建設投資が絶対に落ち込む』と断言する。建設市場は、コロナ禍でも『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」などの公共事業や首都圏の再開発事業など需要が堅調に推移しており、少なくとも2025年ごろまでは同様の環境が続くと期待されていた。だが、今回の資材高騰によって、需要があるにもかかわらず建設市場が冷え込むという事態が発生しかねない。建設市場が冷え込めば、地域経済が落ち込み、引いては日本経済全体の冷え込みにもつながる。今後の経済下支えのためにも、官民挙げて、上昇する資材価格の発注価格への転嫁を進める必要がある。」(『建設通信新聞』2022.04.21)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、会員企業95社を対象とした受注調査結果を発表した。(3月の調査対象は94社)。2021年度累計(21年4月-22年3月)は、前年度比2.8%増の15兆4633億9600万円で、20年度累計とは異なり、官公庁の減少を民間が下支えした格好だ。」(『建設通信新聞』2022.04.28)
●「環境省と国立環境研究所は15日、2020年度に国内で排出された温室効果ガスの総量(確報値)を公表した。二酸化炭素(CO₂)換算で前年度比5.1%減の11億5000万トンとなり、7年連続で減少した。3年連続で調査開始(1990年)以降の最少値を記録した。政府が目指す排出削減の30年度目標(13年度比46%減)の指標となる13年度と比較すると18.4%減になった。環境省は減少要因を新型コロナウイルスの影響によって製造業の生産量や旅客・貨物輸送量が減少し、エネルギー消費量が低下したためと見ている。」(『建設工業新聞』2022.04.18)
●「政府は建築物省エネ法改正案を22日に閣議決定した。2025年度以降、省エネ基準への適合を原則全ての新築建物に義務化。大手事業者が供給する住宅に高い省エネルギー性能を求める『住宅トップランナー制度』の対象も拡大する。省エネ化改修や木材利用の促進に向け、建築基準法上の制限も緩和。今国会で成立すれば、一部規定を除き公布後3年以内に施行する。」(『建設工業新聞』2022.04.25)
●「全米企業エコノミスト協会(NABE)が25日に発表した4月の企業調査によると、7割の米企業が2022年1~3月期に賃金を引き上げた。原材料コストが上がっていると指摘する企業も増えた。人件費とともにコスト増が収益を圧迫し、今後の経営リスクとしてみる企業が多いことが浮き彫りとなった。調査は4月4~12日に実施された。賃上げを実施したと答えた企業の割合は70%と、1月時点の前回調査(60%)を大きく上回った。同調査を実施している約40年間で、最も高い割合という。」(『日本経済新聞』2022.04.26)