情勢の特徴 - 2022年5月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●企業倒産が歴史的な低水準を続ける中、「新型コロナウイルス関連破綻」が急増している。民間信用調査会社の東京商工リサーチがリポートをまとめている。3月の事業停止や法的準備を含むコロナ破綻は、月間最多だった2021年12月の179件を大幅に上回り、226件に達した。コロナ破綻は、21年2月からこの3月まで14カ月連続で100件を上回った。ただ事業者向けコロナ対策として導入された実質無利子・無担保融資の借入返済が始まるなか、「倒産」にも変化の兆しが見える。コロナ破綻は、4回目の緊急事態宣言が解除された21年10月から12月まで3カ月連続で月間最多を更新した。22年に入り、いったん落ち着いたかにみえたが、3月は月間最多を更新し、4月も177件が判明している。破綻ピッチが早まり、水面下に沈んでいた倒産の増加も現実味を帯びている。(『しんぶん赤旗』2022.05.04より抜粋。)
●「原材料価格やエネルギーコストの高騰を受け、国土交通省は経済産業省、公正取引委員会と連名で適正な価格転嫁に関する下請業者への配慮を建設業団体に要請した。建設業での原材料費の取引価格を反映した適正な請負代金、工期確保に政府全体で取り組むことを決定した4月26日の『原油価格・物価高騰等総合緊急対策』を受け、下請業者など中小企業への適切な価格転嫁を建設企業に求める。サプライチェーン全体でコストを負担することが重要との認識の下、価格変更協議など積極的な対応を呼び掛けている。」(『建設通信新聞』2022.05.06)
●「国の2021年度の税収が過去最高ペースで推移している。3月末時点の一般会計税収は50兆3611億円となり、20年度の同時点を11.9%上回った。新型コロナウイルス禍の打撃が大きかった20年度に比べて企業業績や所得環境が改善し、所得税、法人税、消費税がそろって増える傾向にある。税収は2年連続の過去最高更新が視野に入る。財務省が9日発表した21年度の3月末時点の一般会計税収は、これまで同時点で最も多かった18年度の46.1兆円も上回った。各年度の税収は3月期決算の企業の法人税収などが固まる5月分までを合算し、財務省が7月上旬に発表する。財務省は21年度の税収を63.9兆円と、2年連続で過去最高額を更新すると見込む。3月末時点で予算をどれだけ達成できているかを示す進捗率は78.8%となった。財務省主税局は『例年と比べても好調に推移している』と説明した。基幹3税と呼ばれる所得税、法人税、消費税はいずれも3月末時点で20年度の同時点を上回っている。なかでも法人税は前年比23.9%増の7兆5195億円だった。19年10月に10%に引き上げた消費税の増収効果も続いている。消費税収は3月末時点で15兆9821億円だった。原油などエネルギーの輸入額が価格高騰で増えたことも寄与した。21年度は21.1兆円と1989年の消費税導入以来の最高額を見込む。所得税は3月末時点で17兆8722億円と20年度より12.6%増えた。」(『日本経済新聞』2022.05.10)
●「岸田文雄政権が看板政策に掲げる経済安全保障推進法が11日の参院本会議で可決、成立する。半導体など戦略的に重要性が増す物質で供給網を強化し、基幹インフラの防護に取り組む体制を整える。2023年から段階的に施行する。経済安保法案は①供給網の構築②基幹インフラの安全確保③先端技術の官民研究④特許の非公開――の4本柱で構成する。」(『日本経済新聞』2022.05.11)
●「政府が今夏にも企業に対し、従業員の育成状況や多様性の確保といった人材への投資にかかわる19項目の経営情報を開示するよう求める。企業が従業員について価値を生み出す『人的資本』と捉えて適切に投資しているかを投資家が判断できるようにする。うち一部は2023年度にも有価証券報告書への記載を義務付ける。開示を通じて人材への投資を促すことで無形資産を積み上げ、日本企業の成長力を高める。」(『日本経済新聞』2022.05.14)

行政・公共事業・民営化

●「公共調達の受注者に自治体が定める作業報酬の下限額以上を労働者に支払うことを求める『公契約条例』制定の動きが東京都内で広がっている。中野区が4月1日に公契約条例を施行したほか、渋谷、足立、千代田、世田谷、目黒、新宿、杉並、葛飾、江戸川を含む10区と、多摩、国分寺、日野の3市が導入済み、このほか、北区が2023年7月の施行を目指して調整を進めている。」(『建設通信新聞』2022.05.06)
●「国土交通省は公共工事の設計金額の一部を切り下げて予定価格にする『歩切り』を行わないよう、地方自治体などに改めて働き掛ける。昨年1月の実態調査以降、全自治体で歩切りの根絶を確認したが、建設業団体から市町村などで歩切りがまだ存在すると指摘する声がある。歩切りの定義や違法性を分かりやすく解説するリーフレットを新たに作成し、11日付で都道府県などに送付。関係部局で歩切りへの認識を共有し適切な対応に当たるよう要請した。」(『建設工業新聞』2022.05.12)

労働・福祉

●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)が会員企業を対象に実施した休日の取得状況調査から、国とそれ以外の発注機関で週休2日への取り組み姿勢に乖離が見られた。全体では4週8閉所以上が約4割に達するものの、その達成率が6割を超える国土交通省が、3割以下にとどまる他の発注機関をけん引する形となっている。また、休日が少ない現場ほど、個人単位の時間外労働が増加する傾向が強く、法令を順守する上でも週休2日の実現が急がれる。」(『建設通信新聞』2022.05.10)
●「2030年までに40代の土木技術者が半数以下に減る見通しが、日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)の推計で分かった。会員企業で働く土木技術者のうち、20年時点で2割だった40代の割合は1割程度にまで減ると予測。40代の土木技術者には監理技術者や主任技術者、所長といった現場で重責を担う人も多い。こうした状況を踏まえ、日建連は公共発注機関に若手技術者の登用を促すモデル工事を提案していく。」(『建設工業新聞』2022.05.10)
●「下請企業で働く主任技術者の交代要員が不足していることが、日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)の調査で分かった。会員企業の協力会社の主任技術者らを対象に調査したとこと、9割弱は交代要員がいないか不足していると回答した。こうした状況を踏まえ、日建連は週休2日の取得や時間外労働削減といった観点から、速やかに主任技術者を確保する必要があると認識。国に対し実務経験による主任技術者資格要件の経験年数短縮を求めていく方針だ。」(『建設工業新聞』2022.05.10)
●「9年間で平均残業時間は半分に、有休消化率は1.5倍に――。社員口コミサイト運営のオープンワーク(東京・渋谷)がこのほどまとめた調査で、国内企業の働き方改革が大きく進んでいることが分かった。『待遇面の満足度』など働き手の意欲に関する指標も向上した。オープンワークのサイトは働き手が勤務先企業の待遇や労働条件を投稿できる。国内主要企業約6万社の1280万件超の投稿データを保有する。2012~21年に投稿された約35万件の口コミ情報を分析した。21年の残業時間は全業種平均で月24時間で、12年の46時間から半減した。有休休暇の消化率も同じ期間に41%から60%に高まった。19年施行の働き方改革関連法で残業時間の上限規制が課されたことに加え、新型コロナウイルス禍で、テレワークなどの柔軟な働き方が定着したことも背景にありそうだ。」(『日本経済新聞』2022.05.12)
●「厚生労働省は従業員の厚生年金加入を義務付ける個人事業所を広げる方向で今夏にも検討に入る。新たに飲食店や旅館などの業種を追加するかどうかを審議会で議論する。厚生年金に入れば老後の年金支給額が増える。現在は対象となっていない業種の待遇を改善し、少子高齢化で深刻になる働き手不足の緩和を図る。厚生年金は公的年金制度の一つで、会社員や公務員などが加入する。老後に国民年金(基礎年金)に上乗せして年金が支給される利点がある。法人では全業種でフルタイム労働者らの加入が義務付けられる一方、個人事業所は従業員数と業種によって義務と任意に分かれる。任意加入の事業所では『実際の加入は一部にとどまる』(厚労省関係者)のが現状だ。厚労省は早ければ今夏に社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会で議論を始める。5人以上の従業員を雇う個人事業所で新たに加入を義務付ける業種を検討する。現在は5人以上の従業員を雇う製造や土木など16業種で加入義務となっている。10月に弁護士や弁理士など『士業』を追加することが決まっている。夏以降の議論では飲食サービスと旅館のほかに理美容、農林水産業などの業種が追加候補になる。厚労省は2025年の通常国会に対象業種の拡大を盛り込んだ厚生年金保険法など改正案提出を目指す。」(『日本経済新聞』2022.05.13)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、角真也議長)は、13日の国土交通省本省・営繕部との意見交換会を皮切りに今年度の提言活動をスタートする。2024年に適用される時間外労働の上限規制を見据えた適正な工期の確保や4週8閉所の実現、技能労働者の処遇改善などについて意見交換する。政策提言書の内容は、▽改正建設業法の適切な運用▽4週8閉所(原則土曜閉所)の実現▽建設従事者の長時間労働の削減▽国土交通省の進める各種施策の定着▽建設キャリアアップシステム(CCUS)▽外国人建設就労者の安全確保▽単身赴任者の帰宅旅費の非課税化――の7つ。」(『建設通信新聞』2022.05.13)
●「国土交通省は、最新の建設業就業者の現状をまとめた。2021年の建設業全体の就業者数は前年より10万人少ない482万人。技能労働者数は9万人減り、309万人となった。年齢構成別で見ると、29歳以下の若年層は横ばいだった一方、55歳以上の高齢層が6万人減少した。単年のみの傾向では判断できないが、今後起こり得るベテランの大量離職に備え、担い手の確保が急務であることが改めて浮き彫りになった。」(『建設通信新聞』2022.05.13)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)登録技能者の能力評価(レベル判定)制度を巡って、国土交通省が制度見直しを視野に入れた検討を始めた。11日に東京都内で開かれた会合で大澤一夫官房審議官(不動産・建設経済局担当)は『制度を固く持つというより、むしろ専門工事団体の考えに沿って柔軟に進めていく。評価の仕方や基準も柔軟な対応に方針を変えていく』と明言。建設業団体から意見や要望を吸い上げ、技能者の処遇改善に一段とつながる制度を目指す考えを示した。…現行制度は国が能力評価の統一的なガイドラインを設け、全職種共通で技能レベルを4段階評価する仕組み。大澤審議官は会合で、一部の専門工事団体から『(レベル分けを)四つではなく八つにしてほしい』など、現場の実情に即した制度改善を望む意見が挙がっていることを紹介した。CCSUの運用開始から3年が経過したが、技能者が登録メリットを実感できないという声は依然多い。登録者数を増やすだけでなく能力評価制度が業界に浸透し、技能者の処遇改善に直接機能していく形にならなければメリットは顕在化しない。国交省はこうした問題意識を背景に、レベル分けの細分化など職種ごとの柔軟な対応を許容する方向にかじを切る考えだ。主要な専門工事団体などと意見交換する『CCUS評価制度懇談会』を昨年末に新設しており、制度改善のヒントやニーズを吸い上げる場とする。」(『建設工業新聞』2022.05.13)

建設産業・経営

●「国土交通省は、建設分野の受発注者間、元下間での資材や原油の価格高騰の影響に関する調査結果をまとめた。受発注者間の15%、元下間の10%で物価変動に基づく契約変更条項(いわゆるスライド条項)が含まれていないという実態が明らかになった。さらに、受発注者間の25%、元下間の14%では『物価変動に基づいて請負金額の変更を申し出たが受け入れてもらえなかった』と回答。同省は4月26日に決定した総合緊急対策を踏まえ、建設業団体や官民の発注者団体に適切な対応を要請する。」(『建設通信新聞』2022.05.02)
●「日本政策金融公庫(日本公庫)は信用保証利用企業動向調査の2022年1~3月期実績を公表した。全産業の資金繰り指数(DI値=「好転」と「悪化」の回答割合の差、季節調整値)は21年10月~12月期に比べ3.9ポイント低いマイナス27.9となり、マイナス幅が拡大。建設業で見ると、3.0ポイント下回る同26.4となった。4~6月期の建設業の予測値も1~3月期に比べ2.4ポイント低い同21.4で、さらに悪化するとの見方が出ている。」(『建設工業新聞』2022.05.06)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)が会員企業を対象に実施した2021年度の円滑な施工の確保に関するアンケートによると、発注機関によって若干のばらつきがあるものの、全体では工事発注時の工期設定に関して『短すぎた』との回答が5割を占め、前年度から変化していないことが分かった。また、受注者の責任ではない工事の一時中止が4割に上り、技術者が待機を余儀なくされるなど現場運営に影響を及ぼしている。」(『建設通信新聞』2022.05.09)
●「国土交通省は建設大手50社の2021年度『工事受注動態統計調査』の結果を公表した。受注総額は前年度比1.5%増の15兆0979億円で3年ぶりに増加した。民間工事の持ち直しを背景に、国内工事は1.5%増の14兆7350億円と2年連続で増加。海外工事は1.0%増の3629億円で前年度から続く低水準となった。受注総額は過去10年で18年度(15兆8590億円)に次ぐ2番目の数字。工事種別の内訳は建築が8.1%増の10兆3889億円、土木は10.7%減の4兆7091億円だった。」(『建設工業新聞』2022.05.09)
●「国土交通省は9日、2021年度(22年3月末時点)の建設業許可業者数を発表した。全国の許可業者は前年度比0.3%増の47万5293社。微増ではあるものの、許可業者数がピークだった1999年度末以降で初めて4年連続の増加となった。長年続いてきた増減トレンドが変化し、総数の下げ止まりが見て取れる結果となった。」(『建設通信新聞』2022.05.10)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省が4月28日に公表した建築着工統計調査報告によると、2021年度の新設住宅着工戸数は前年度比6.6%増の86万5909戸だった。持家、貸家、分譲住宅の全区分で前年度を上回り、3年度ぶりに増加に転じた。新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んだ前年度(81.2万戸)よりは回復したものの、水準としてはコロナ禍前の19年度(88.3万戸)には届かなかった。」(『建設通信新聞』2022.05.02)
●「林野庁はウクライナ危機による木材需給の逼迫を緩和するため、国産材の増産や採用を促進する。建築用木材の輸入材から国産材への切り替えにかかる経費を支援。原木と国産材製品の運搬や一時保管の費用もサポートする。政府の原油価格・物価高騰に対応する『総合緊急対策』の一環。財源として、2022年度予算の予備費で40億2400万円を確保する。」(『建設工業新聞』2022.05.09)

その他