情勢の特徴 - 2022年6月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は31日、経済政策『新しい資本主義』の実行計画案を公表した。家計資産を貯蓄から投資へ促す改革や人材教育、科学技術に重点を置いた。『資産所得倍増プラン』を年末につくり、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)を拡充する。分配政策を強調していた当初の方向性は薄まった。経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)案も示し、『防衛力の抜本強化』を明記した。」(『日本経済新聞』2022.6.01)
●「企業が収益力を取り戻してきている。財務省が1日発表した1~3月期の法人企業統計調査では経常利益が前年同期比13.7%増の22兆8323億円となり、1~3月期としての過去最高を更新した。製造業は18.4%増、非製造業は10.9%増だった。ただ、稼いだ利益は企業内にとどまる。収益を投資に結びつけなければ、持続的な収益力の強化はおぼつかない。…企業の収益力を示す売上高経常利益率をみると、全産業では6.3%となり、1年前に比べ0.3ポイント上がった。新型コロナウイルス禍が本格化した2020年1~3月期に比べても、1.7ポイント上昇した。事務用機械や医療用品などを製造する業務用機器が8.6ポイント上昇の15.4%となったほか、情報通信機械も6.8ポイント伸び12.0%となった。…1~3月期の全産業の設備投資は前年同期比3.0%増にとどまる。利益余剰金は500兆円弱となり、コロナ禍の2年間で29兆円増えた。現金・預金も2年間で43兆円増え245兆円になった。稼いだ利益が投資にうまく結びついていない。」(『日本経済新聞』2022.6.02)
●「厚生労働省は3日、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が2021年は1.30だったと発表した。6年連続で低下し、出生数も過去最少だ。新型コロナウイルス禍後に出生数を回復させた欧米と比べて対策が見劣りする上、既存制度が十分使われず、支援が空回りしている。このままでは人口減少の加速に歯止めがかからない。」(『日本経済新聞』2022.6.04)
●「政府は7日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。岸田文雄首相が掲げる『人への投資』に重点を置き、3年間で4千億円を投じる。付加価値を生み出せる人材の育成が成長のカギを握る。現状では日本の投資は官民とも先進国で最低水準。先を行く世界との差を埋めるのは容易ではない。『新しい資本主義』の実行計画も閣議決定し、骨太の方針に反映した。…社会人のリスキリング(学び直し)、デジタルなど成長分野への労働移動、兼業・副業の促進、生涯教育の環境整備などが主な課題になる。デジタルスキルは職業訓練の講座の割合を今の2割程度から3割超に高める。転職が容易になるよう外部の専門家と相談しやすい体制も整備する。…女性や高齢者の働き手が増える一方で全体的な人口減少の制約があり、足元では労働力が頭打ちになっていることが影を落とす。デジタル化などに対応し、一人ひとりのスキルや生産性を高められなければ世界の成長から取り残されかねない。これまでの取り組みは手薄だった。内閣官房によると、企業による人への投資額は国内総生産(GDP)比で10~14年に0.10%にとどまった。米国(2.08%)やフランス(1.78%)に比べ圧倒的に少ない。米仏が横ばいや増加傾向なのに対し、日本は右肩下がりで差が拡大している。日本企業は従来、人件費をコストとみなす傾向があった。近年はデジタル化の加速などを背景に企業の競争力の源泉は従業員のスキルやアイデアとの考え方が広がる。経済産業研究所の森川正之氏が日本企業のデータから試算したところ、教育訓練投資の累積額が2倍になると労働生産性が2.2%上昇した。特にサービス業は2.5%高まり、効果が顕著だ。新しい資本主義の計画は従来の日本企業について『安価な労働力供給に依存し、コストカットで生産性を高めてきた』と総括し、軌道修正を図る。24年度までの3年間で4000億円を人への投資に充てると明記した。成長分野への労働移動で100万人を支援する。」(『日本経済新聞』2022.6.08)
●「政府は7日の閣議で、2023年度の予算編成方針を示す『経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)』と、岸田政権の看板政策『新しい資本主義』の実現に向けた『グランドデザイン及び実行計画』を決定した。いずれも国民の安全と安心を確保するため、国土強靭化や防災・減災への投資加速を盛り込んだ。『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』後も中長期の対策を引き続き明示する重要性が書き込まれるなど『強靭化政策にとってかなり踏み込んだ内容になった』(政府関係者)という。」(『建設工業新聞』2022.6.08)
●「日本の所得が海外に流出している。ロシアのウクライナ侵攻による資源高に円安が加わり輸入価格が高騰しているためだ。流出額は2022年1~3月期の年額換算で11兆5000億円を超え、比較できる1980年以降で最大となった。4~6月期はさらに悪化する可能性が高い。企業や家計の負担が増し、国内需要が縮小しかねない。企業は値上げに動き始めたが、消費をさらに冷やすリスクもある。」(『日本経済新聞』2022.6.11)
●「13日の外国為替市場で円相場が一時、1ドル=135円台前半まで下落した。金融不安で『日本売り』に見舞われていた1998年以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準に逆戻りした。円安を招く構図は当時と様変わりした。浮かび上がるのは産業競争力を底上げしてこなかった日本経済のもろさだ。円相場は対ドルで一時1ドル=135円22銭近辺まで下落した。今年の円の下落率は1割強に達し、世界の主要通貨で最も価値を下げた。米欧でインフレが加速し、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が金融引き締めを急ぐ一方、金融緩和を続ける日銀との差が一段と鮮明になっている。海外と日本の金利差がさらに広がるとの見方から海外ヘッジファンドなど円売りが勢いづいた。…根本的な問題は円安を生かすための産業競争力が失われている点だ。内閣府によると98年度に10%だった日本の製造業の海外生産比率は20年度に22%強と2倍になった。国内産業の空洞化が進み、コンピューター(周辺機器含む)は98年時点で輸出が輸入を7000億円強上回っていたが21年に2兆円を超す輸入超過になった。人手不足を補う投資も出遅れた。新型コロナウイルスとウクライナ危機は国際的な供給網の再構築の必要性を浮かび上がらせた。今後も円売り圧力は強まる。円安を生かすために長期的な視点にたった産業強化策を急ぐべきだ。」(『日本経済新聞』2022.6.14)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)が3月に改正した、工事請負契約に関する低入札調査基準価格の算定モデルについて、都道府県の導入状況をアンケート調査した結果をまとめた。対応済みと対応予定を合わせると、全47団体の8割に当たる39団体が2022年度内に導入するとしている。『既に対応済み』が29団体で、61.7%を占めた。これに『22年10月までに対応予定』(8団体)と『22年10月以降の22年度中に対応予定』(2団体)を合わせると、22年度内に導入する都道府県は83.0%となる。一方で、『対応予定なし』は2団体、『現時点で未定』は4団体あった。最新の中央公契連モデルに近い独自基準を設けているなど『その他』は2団体だった。中央省庁や独立行政法人、高速道路会社などで構成する中央公契連は、最新の諸経費動向調査結果を踏まえて算定モデルを3月に改正し、企業として継続するために必要な経費を考慮して『一般管理費等×0.55』を『一般管理費等×0.68』に引き上げた。国交省は、4月1日以降に入札公告した直轄工事で最新の中央公契連モデルを採用している。」(『建設通信新聞』2022.6.03)
●「政府は民間資金等活用事業推進会議(会長・岸田文雄首相)を3日に首相官邸で開き、新たな『PPP/PFIアクションプラン』を決定した。岸田政権が『新しい資本主義』で重視する官民連携の柱にPPP/PFIを据え、取り組みを抜本的に拡大する。コンセッション(公共施設等運営権)はスタジアム・アリーナ、集約型公共交通ターミナルを整備する『バスタプロジェクト』など新領域を開拓。PFI実施自治体も全国に広げる。取り組みの強化で2022~31年度の10年間で事業規模30兆円の達成を目指す。」(『建設工業新聞』2022.6.06)
●「国土交通省は建設業の法令順守の徹底に向けた2022年度の取り組み方針を決めた。元下間の取引実態などを把握するため昨年度開始したモニタリング調査と連動する形で、法令違反が疑われる事案への立ち入り調査と報告聴取に注力する。重点項目として▽著しく短い工期の禁止▽価格転嫁(スライド条項などの設定・運用)―の二つを設定。本年度から受発注者間の契約状況にも踏み込み、必要に応じ発注者にも適切な対応を要請するなど注意喚起を強める。」(『建設工業新聞』2022.6.07)
●「時間外労働の罰則付き上限規制が建設業に適用されるまで2年を切る中、都道府県発注工事の工期設定状況が国土交通省の調査で分かった。工期算定基準は全都道府県が制定済み。さらに全都道府県が、同基準で▽週休2日など休日確保▽降雨・降雪・出水期など作業不能日▽労務・資機材調達など準備期間▽工事完成後の自主検査や清掃などを含む後片付け機関―のいずれも考慮していると回答した。今月から来月にかけ全国で開かれる2022年度上期『ブロック監理課長等会議』(入札契約担当課長会議)を前に、現時点の対応状況を都道府県にアンケートした。工期算定基準の対象工事は『原則すべて』が31団体、『一部対象外工事を明示』が12団体、『対象工事を一部に限定』が4団体だった。対象外の工事例として▽小規模・少額工事▽大規模・複数年度工事▽漁港・トンネル・ダム・下水道など特殊工事▽通年維持工事▽災害復旧など施工時期・現場条件に制約がある工事―が挙がった。」(『建設工業新聞』2022.6.09)
●「秋田県は建設関連企業の働き方改革を強力に後押しする。9日に総合評価方式の運用手引を改定し、賃金水準の向上に向けた取り組みを評価項目に追加した。国土交通省の加点措置に準じ、受給者1人当たりの平均受給額の増加率が大企業で3.0%以上、中小企業で1.5%以上の場合、2.0点を加点する。7月1日以降に契約する総合評価方式のすべての工事と業務に適用する。」(『建設工業新聞』2022.6.10)

労働・福祉

●「岡山市の建設会社で働いていたベトナム人技能実習生の男性(41)が、日本人従業員による暴行の被害を訴えている問題で、法務省と厚生労働省は31日、技能実習適正化法に基づき、受け入れを仲介した『岡山産業技術協同組合』(岡山市中区)の監理団体の許可を取り消した。実習先を指導すべき立場にありながら適切に対応せず、厳しい行政処分が必要と判断した。実習生受け入れに関する業務が5年間できなくなる。古川禎久法相は閣議後記者会見で『監理団体が適正に機能せず、極めて悪質な人権侵害が発生したことは、制度そのものに内在する重大な問題と認識している』と指摘。再発防止に努めるとともに、技能実習制度の在り方に関しても検討を進める考えを示した。」(『日本経済新聞』2022.6.01)
●「厚生労働省は5月31日、2021年(1—12月)の職場での熱中症による死傷災害発生状況(確定値)をまとめた。休業4日以上の死傷者は前年比41%減(398人減)の561人、死傷者のうち死亡者は10%減(2人減)の20人となった。このうち建設業は、死傷者数が40%減(85人減)の130人だったものの、死傷者のうちの死亡者数は57%増(4人増)の11人となった。」(『建設通信新聞』2022.6.01)
●建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや中皮腫になったとして元建設作業員や遺族らが7日、東京、札幌、横浜、大阪、福岡など全国10地裁で一斉に損害賠償を求める訴訟を起こした。原告は合計190人に上り、建材メーカーに求める損害賠償は最大約39億円となる見込みだ。建設アスベスト訴訟は昨年5月、最高裁が国と一部建材メーカーの責任を認定。裁判を起こしていない被害者にも最大1300万円の給付金を支給する給付金法が今年1月施行された。しかし建材メーカーは和解による解決や給付金への拠出を拒否している。今回の訴訟は、建材メーカーに賠償とともに救済基金への参加を求めて起こしたものだ。(『しんぶん赤旗』2022.6.06より抜粋。)

建設産業・経営

●「大成建設は非上場の不動産投資信託(REIT)に参入する。来春の組成に向け資産運用会社を設立し、10年後をメドに1000億円の運用規模をめざす。清水建設や西松建設も組成準備を進める。開発不動産をREITへ売却して資金を早期に回収し、次の案件に振り向ける。総資産を膨らませずに効率よく不動産開発を進めて収益基盤を拡大する。大成建設は5月、資産運用会社『大成不動産投資顧問』を設立した。自社が6割、グループの大成有楽不動産などが4割出資した。2023年春に私募REITを組成し、150億円規模の不動産運用を始める。みずほ証券を財務アドバイザーとする。地銀、生損保、年金基金などから出資を受けるほか、自社グループも出資する。金融機関から融資も受ける。5月時点で保有する3000億~4000億円相当の不動産の一部をREITに組み込み、3~4年後に500億円、10年後に1000億円の運用規模をめざす。また首都圏でオフィスビルや中型マンション、物流倉庫など安定収益を見込みやすい物件を軸に開発してREITに売却する。テナントが入った状態で長期間保有し、4%前後の運用益をめざす。他社でも私募REITの運用が広がる。…ゼネコンは建設事業の収益が景況感に左右されることから安定収益が見込める不動産開発事業の拡大を進める。開発物件を長期保有することで自社計画の投資枠を超えてしまう恐れもある。物件を私募REITに売却することで投資枠を効率的に回転させたい考えだ。」(『日本経済新聞』2022.6.03)
●「全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)は7日、東京都千代田区の経団連会館で2022年度定時総会を開き、前年度の決算を承認するとともに本年度の事業計画や収支予算を報告した。本年度は将来にわたる担い手確保策として技能者の賃上げを柱とする処遇改善を推進。24年度に適用される時間外労働の罰則付き上限規制に備え、引き続き『目指せ週休2日+360時間(ツープラスサンロクマル)運動』も展開していく。」(『建設工業新聞』2022.6.08)
●「積水ハウスは9日、戸建て住宅を手掛ける米チェスマー・グループ傘下の事業会社など4社を買収すると発表した。買収額は約5億1400万ドル(約690億円)。同事業会社を核に、2025年度には日本と同程度の1万戸程度の住宅を海外で供給できる体制を整える。米国では人口が依然として増えており、住宅需要が旺盛だ。海外事業のけん引役とする。」(『日本経済新聞』2022.6.10)
●「中小企業らのM&A(企業合併・買収)仲介などを手掛ける日本M&Aセンター(東京都千代田区、三宅卓社長)が建設業での展開に力を入れている。建設業の取り扱いが増加しており、業種別でも最多となっている。後継者不在による事業継承を要因とするケースが約6割と多いものの、人材・資機材の確保につなげたり、大手傘下に入って成長を狙ったりするケースも増えている。生産性や競争力を高める手段として注目されており、同社はさらに増加するとみる。同社の年間成約実績によると、2017年に50件弱だった建設業界でのM&Aが、19年に100件を超え、21年には17年比で約2.5倍に増えた。21年の譲渡企業の業種別内訳では、建設業が最多で23.1%を占めた。同社が手掛ける建設業のM&Aは事業承継型が多いが、スケールメリットを生み出すようなケースも目立つという。重機や設備が必要な建設会社が同業・類似業種と業界再編を狙いにM&Aを行い、仕入れのコストダウンや重機の稼働率を上げて、経営効率を高める事例などがある。資機材の効率的な調達やグループ一括採用による人材確保につなげる成長戦略型の事例も出ている。同社の業種特化事業部業界再編部の前川拓哉シニアチーフは『生産性向上やスケールメリットを生かす有効な手段として理解されてきたため広がっている』との認識を示す。」(『建設工業新聞』2022.6.10)
●「大和ハウス工業は全国にある住宅展示場を5年で3割減らす。新型コロナウイルス禍で来場者数が減少しているうえ、展示場を契機とした注文住宅の契約率が低下していることに対応する。今後、デジタル技術を活用した住宅販売へ段階的に移行する。人口減少で国内の注文住宅市場は20年で25%縮小した。展示場を大きく減らす取り組みは住宅各社の営業手法に影響を与える可能性はある。」(『日本経済新聞』2022.6.11)
●「全国中小建設業協会(全中建)の土志田領司会長は東京都内で10日開いた定時総会で、地方自治体の公共事業の依存度が高い中小建設業界にとって『最低制限価格率95%以上』にすれば安定的な企業経営につながると訴えた。依然として自治体発注工事で予定価格から10%以上低いダンピング受注を容認している事例があることを指摘した上で、国などに対して自治体担当者への指導強化を求めた。若者に選ばれる建設業に向けた働き方改革宣言として、本年度は『おおむね3%の賃金アップ』に会員各社がそれぞれ取り組むことを申し合わせたと表明。従業員の賃金引き上げのほか、働き方改革などを進めるには、適正価格での工事受注が欠かせないとの考えを改めて強調した。」(『建設工業新聞』2022.6.13)
●「内閣府と財務省は13日、四半期ごとに実施している法人企業の景気予測調査(4~6月期)の結果を発表した。建設業・大企業の景気に関するBSI値(景況判断指数=「上昇」と「下降」の回答差)はマイナス18.6で、非製造業の中で最も低かった。前回(1~3月期、11.1)を29.7ポイント下回りマイナスに転じた。5月15日時点を対象に調査した。ロシアがウクライナに軍事侵攻してから、初めての調査となる。資源価格の上昇や部品の供給制約などが景況感に影響したとみられる。」(『建設工業新聞』2022.6.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「住宅関連企業で賃貸戸建て住宅の開発の動きが広がっている。投資用物件を扱う武蔵コーポレーション(さいたま市)は埼玉県などで中古戸建てを購入・改装して居住者を募集する事業を始め、飯田グループホールディングス(GHD)も自社で賃貸戸建てに投資するファンドの組成を検討する。新型コロナウイルス禍で居住動向が変化し、マンション賃料も高騰する中、消費者の賃貸戸建てのニーズの高まりに対応する。…ここにきて各社が賃貸戸建て開発を強化する背景にあるのが、コロナ禍で変化した住宅ニーズとマンション賃料の高騰だ。テレワークが浸透する中で、最寄り駅に近いマンションを選ぶ動機がやや薄れ、駅から遠くても執務環境を整えやすい間取りの広い戸建てを選ぶ人が増えている。新築マンションの価格高騰に連動し、賃貸マンションの賃料が上昇しているのも戸建ての賃貸需要を後押ししている。不動産サービス大手アットホーム(東京・大田)がまとめた全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向によると、東京23区の70平方メートル超の平均家賃は4月で34万1153円。コロナ前の20年1月と比べ5%上がり、首都圏の全地域で上昇傾向にある。住宅関連企業が中古戸建てを改装し、賃貸市場に供給すれば空き家問題に新たな解決策をもたらす可能性もある。日本には約850万戸の空き家があるとされ、住宅全体の約14%とされる。東京カンテイの井出武上席主任研究員は『(マンションなどに比べて)事業収支が合いづらい点はあるものの、需要の伸び次第で事業参入を検討する個人投資家や企業が増える可能性がある』と指摘する。」(『日本経済新聞』2022.6.02)
●「古くから地域に密着してきた川を、改めて資源として着目し、街づくりに生かす取組が広がってきた。国の制度に基づく自治体の整備計画登録数は2021年で244あり、09年の制度開始から3倍近くに増加した。河川敷を憩いの場としたり、アウトドア体験で観光客を呼び込んだりと多彩な手法で活性化の拠点とする。日本には約3万5500(1級、2級、準用)の河川があり、流域は1741市区町村のほぼ全てに及ぶ。国土交通省は水辺空間に新たな価値を付与しようと、09年から川辺を生かした地域整備計画を『かわまちづくり』として支援を始めた。治水が主だった河川整備に街づくりの視点を組み込むことで、自治体が地方創生推進交付金などを活用しやすくなる利点がある。都道府県別で(2県にまたがる計画は0.5ずつ)最も多いのは北海道で20カ所あった。東京都(16)、茨城県(15.5)、熊本県(12)が続く。企業などが河川敷を占用する場合に徴収する料金収入は20年度、総額約90億円となった。登録数の多寡が直結し、10以上の6都道県は平均6億円、5以上10未満の16府県は2.5億円、5未満の25県は0.6億円だった。」(『日本経済新聞』2022.6.04)
●「高齢者が安心して住宅に住めなくなっている。持ち家の修繕費の負担は増え続けている。長寿化によって修繕回数が増え、工事単価も10年で2割上昇する二重苦の様相だ。賃貸住宅でもオーナーの約7割が高齢者の入居に拒否感を抱く。公的な支援で対応しきれない部分が多く、民間の取り組みを効率的に生かしていく工夫が欠かせない。総務省の家計調査では、世帯主の年齢が60歳以上の二人以上世帯の持ち家率は2021年で90%を超える。多くの人が『終(つい)の棲家(すみか)』を確保しているようだが、落とし穴がある。消費者物価指数(20年=100、全国)で住居の外壁塗装や水道工事など『工事その他のサービス』をみると、21年までの約10年でおよそ2割上がった。この項目は主に戸建て住宅の工事費上昇を反映する。不動産コンサルタントのさくら事務所(東京・渋谷)の田村啓・ホームインスペクターは『人手不足などから、過去10年の工事費はほぼ一貫して上昇してきた。さらに、22年はウクライナ情勢などを受けた資材インフレもあり、騰勢は一段と強くなった』と話す。修繕は外壁や屋根の工事など15~30年程度で繰り返される項目が多く、『長寿化で生涯を通じて必要な工事回数も増えている』(田村氏)。マンションでも修繕の負担は重い。東京カンテイ(東京・品川)が首都圏で、竣工年別に新築時に定められる毎月積立金などを調べたところ、21年は10年前より4割弱高い。前年比こそマイナスだが、『多額の積立金を設定する高級マンションがたまたま少なかった影響で全体的な上昇傾向は変わらない』(井出武・上席主任研究員)という。積立金が大幅に上がった現在の水準も国土交通省がマンション修繕の積立金の目安として示すガイドラインの平均値(小規模物件、1平方メートル当たり月335円)に及ばず、さらなる増額が必要な例も多いとみられる。」(『日本経済新聞』2022.6.05)
●「政府は太陽光発電施設の乱開発による土砂災害を防ぐための対策方針を整理した。開発促進区域と禁止区域をあらかじめゾーニングし、メリハリを付けた立地誘導策を展開していく。促進区域での開発には財政支援を強める一方、ルールに反する開発は盛り土規制法などの罰則や、固定価格買い取り(FIT)認定の取り消しで抑制する。行政が撤去を代執行できる仕組みの創設も検討する。」(『建設工業新聞』2022.6.07)
●「政府が国会に提出していた建築物省エネ法などの改正案が13日の参院本会議で可決、成立した。改正により同法で定める『省エネ基準』への適合を2025年度以降、原則全ての新築建物に義務付ける。大手事業者が供給する住宅に高い省エネルギー性能を求める『住宅トップランナー制度』の対象も拡大。省エネ化改修や木材利用の促進に向け、建築基準法上の制限も緩和する。一部規定を除き、公布後3年以内に施行する。建築物省エネ法に加え▽建築基準法▽建築士法▽住宅金融支援機構法―などを一括改正した。現行制度は省エネ基準の適合義務対象を、延べ300平方メートル以上の非住宅建築物に限定している。改正で25年度以降はマンションなど住宅も含む。全ての新築建物に広げる。住宅トップランナー制度の対象は現在の一戸建て住宅や賃貸アパートに、分譲マンションを加える。」(『建設工業新聞』2022.6.14)

その他