情勢の特徴 - 2022年7月前半
●「NEXI(日本貿易保険)はコロナ禍、ウクライナ危機におけるNEXIの対応実績と今後の取り組みを明らかにした。2021年度の支払保険金は前年度比165%増の612億円と、01年の法人設立後2番目に多い保険金を支払った。このうちコロナ禍関連は、75%を占める461億円となった。」(『建設通信新聞』2022.07.04)
●「建設経済研究所と経済調査会は6日、2022年度と23年度の建設投資見通しを発表した。22年度は、物価変動を含む名目値が前年度見通しとの比較で3.1%増の62兆7600億円、物価変動を除く実質値が1.8%減の52兆8824億円と予測した。急激な物価高騰の影響で大きな差が生じている。今回初めて推計した23年度は物価が高止まりするとみて、名目値、実質値ともに2.3%増と推計した。」(『建設通信新聞』2022.07.07)
●「新型コロナウイルス下で低く抑えられていた企業倒産が増加に転じている。東京商工リサーチが8日発表した2022年1~6月の全国企業倒産件数は3060件と前年同期比1%増え、2年ぶりにプラスに転じた。政府主導の資金繰り支援策の効果が薄れ、倒産要因にコロナ禍を含むケースが3割増えた。原油高や原材料高などが響き、運輸や建設業の倒産が目立つ。…倒産が増えた背景の一つに、コロナ関連の支援策の効果が薄れていることがある。感染拡大後、政府はコロナ禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する『ゼロゼロ融資』などで資金繰りを支援した。経済活動の再開に伴い、融資の返済を始める企業が増えた半面、業績が上向かず、資金繰りに行き詰まり、廃業を決めたケースも目立つ。こうした二極化の動きはコロナ関連融資の返済動向にも表れている。日本政策金融公庫が21年3月末までに融資した約70万件のうち、同月末時点で元金返済中は36%だったが、22年3月末時点では57%に増えた。一方で経営が上向かず、追加の融資や条件の変更を実施した企業は22年3月末時点で合わせて13%にのぼる。倒産の増加には原油や原材料の価格高騰の影響も大きい。1~6月の産業別の倒産件数では、運輸業(25%増)や建設業(9%増)、農林漁・鉱業(35%増)などの増加が目立つ。ガソリン価格の高止まりが響き、トラック運送会社などが経営破綻する事例が相次いだ。」(『日本経済新聞』2022.07.09)
●「世界人口の年間増加率が、統計を遡れる1950年以降で初めて1%を割り込み最低となったことが、国連が11日に発表した推計で明らかになった。人口規模が世界最大の中国も長年の『一人っ子政策』などが響いて2022年から人口減に転じ、23年にはインドと逆転する。人類史でも特異な20世紀の経済成長を支えてきた人口爆発は近く終わりを迎える。国連は19年以来、3年ぶりに世界の人口推計を改定した。世界的な少子高齢化や新型コロナウイルスの影響で、世界人口の増加率は20年に初めて1%を割り込み、22年は0.83%まで落ち込んだ。1%割れが明らかになったのは今回が初めて。産業革命を経て世界人口は1900年の16.5億人から100年間で約4倍に急増し、20世紀の繁栄の基盤となった。2022年11月15日に80億人に達すると国連は予測するが、2086年に104億人でピークを迎えるとみる。前回推計ではピークは2100年の109億人としていたが、大幅に前倒しした。これまでは主要な働き手である生産年齢人口(15~64歳)の比率が高い『人口ボーナス』が経済成長の重要な源泉だったが、急速な少子高齢化で好循環は幕を下ろそうとしている。」(『日本経済新聞』2022.07.13)
●「2023年10月に導入される消費税の仕入税額控除の新方式『適格請求書等保存方式(インボイス制度)』を巡って、建設業の元下取引で制度導入を見据えた準備対応が進んでいない。現行制度で納税義務が原則免除される『免税事業者』を対象とした全建総連のアンケートによると、制度導入後の税負担の在り方などで上位企業と何らかの協議をした一人親方は1割程度に過ぎなかった。数年間の経過措置が設けられるとはいえ、元下双方が制度内容を理解し、どう対応すべきか十分に話し合う必要がある。」(『建設工業新聞』2022.07.13)
●「総務省は2021年度の地方自治体による公共事業予算の執行状況をまとめた。20年度からの繰り越し分と21年度予算分を合算した予算額は24兆2140億円。契約率は前年度を2.2ポイント上回る81.0%。支出済み額の割合も2.5ポイント高い54.5%となった。21年度に繰り越し分の予算額(7兆5840億円)が多いのは『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』の初年度(21年度)の事業費を20年度第3次補正予算で確保したためだ。5か年加速化対策の事業執行が順調に進み、全体の契約率や支出済み額の割合を押し上げた格好だ。繰り越し分の契約率は91.5%、支出済み額の割合は68.7%だった。21年度予算だけの額は16兆6300億円。契約率は76.2%で支出済み額の割合は48.1%となった。」(『建設工業新聞』2022.07.01)
●「国土交通、農林水産両省は10月時点で技能労働者に支払われる賃金を調べる『公共事業労務費調査』の実施内容を公表した。昨年度と同じく書面調査を原則としつつ、来年度の本格導入を見据えオンライン調査を一部工事で試行。調査票の回収率や無効標本の棄却率の改善につなげ、賃金水準を正確に把握する。斉藤鉄夫国交相と建設業主要4団体が2022年の賃金上昇率の目標として『おおむね3%』の実現に取り組むことを申し合わせており、本年度調査はその成否を判断する最重要指標となる。」(『建設工業新聞』2022.07.05)
●「公共工事を請け負う施工者の下請次数を制限する取り組みが都道府県で広がりつつあり、導入済みの8府県で下請次数を抑える効果が上がっていることが、国土交通省の調査で分かった。土木は2次まで、建築は3次までとしている団体が多い。施工体制の重層化は、工事の品質や安全性の低下、下請企業の請負額減少、労務費へのしわ寄せなどにつながると懸念されている。国交省は重層下請構造改善に有効な手段とみており、8府県の先行事例を水平展開すべく周知していく方針だ。」(『建設通信新聞』2022.07.12)
●「国家公務員に30日、夏のボーナス(期末・勤勉手当)が支給された。管理職を除く一般行政職(平均34.2歳)の平均支給額は前年比11.5%減の約58万4800円だった。2年連続のマイナスで7万6300円下がった。減少幅は額も率もともに平成以降で最大となった。支給月数は前年の2.195カ月から1.97カ月に減った。二つの減額を実施したためだ。一つは2021年の給与法改正で規定した民間との支給月数の差を縮小するための0.075カ月分になる。もう一つは21年冬のボーナスで見送った0.15か月分の反映だ。新型コロナウイルス禍だった昨冬、民間企業に国家公務員のボーナス減額が波及するのを回避する狙いで今夏に導入を先送りしていた。職員の平均年齢が前年に比べて0.4歳低下し、平均給与が下がったことも響いた。」(『日本経済新聞』2022.07.01)
●「厚生労働省は7日、建設現場の労働災害で最も多い墜落・転落災害の防止策に関する議論を再開した。発生件数が多い屋根や屋上、開口部などからの墜落災害では、安全帯の着用など法令上最低限の防止措置さえ講じられていないケースが多い。法令順守の徹底へ、安全設備の設置に関するマニュアルを大幅に見直す。足場での作業時の災害を防ぐため、組み立て後と作業開始前の点検体制を強化する方向。安全性の高い本足場の使用を原則とし、一側足場は例外として法的に位置付け、一定の条件下での使用にとどめる。」(『建設工業新聞』2022.07.08)
●「都道府県と政令市が発注工事で導入する建設キャリアアップシステム(CCUS)の企業評価で、取り組み状況の詳細が明らかになった。国土交通省のまとめによると、2025年度の実施予定を含めて、都道府県は35道府県、政令市は11市が、モデル工事での工事成績評定の加点など企業評価の導入を表明している。京都府、鳥取県、山口県、香川県の4府県は22年度に取り組みを始めた。…発注工事で▽モデル工事など工事成績評定での加点▽総合評価落札方式での加点▽入札参加資格での加点▽カードリーダーなど設置費用補助――の四つのうち、一つ以上を実施している都道府県は…32道府県。…政令市は、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、相模原市、浜松市、名古屋市、大阪市、堺市、岡山市、広島市の11市が、四つのうち一つ以上の取り組みを実施中。」(『建設通信新聞』2022.07.13)
●「建設業の現場で求められる働き方改革の実現を目指し、以前から厳しさが指摘されていた民間工事の工期の適正化に向けた機運が高まってきた。国土交通省は実態把握を目的に、建設会社と民間発注者の両方を対象としたアンケートを大々的に実施。これを端緒に本年度から、現場レベルで受発注者間の契約締結状況などを聞き取りするモニタリング調査に乗り出す。個別案件の工期実態を直接把握し、必要に応じ発注者に注意喚起していく方針だ。」(『建設工業新聞』2022.07.14)
●「厚生労働省が14日にまとめた2022年上期(1-6月)の労働災害発生状況(速報、7月7日時点)によると、建設業の死亡者数は、前年同期と比べ4.4%減(5人減)の108人となった。一方、建設業の休業4日以上の死傷者数は6805人で7.2%増(460人増)だった。」(『建設通信新聞』2022.07.15)
●「国土交通省はコンクリート生産性向上策の一環で検討している生コン情報の電子化で、直轄工事での施行を近く始める。関東地方整備局発注工事のうち既契約を含めた複数案件を対象とする予定だ。生コンの仕様や配合、製造などの紙伝票を電子データに切り替え、施工や品質管理を含めた関係者間のやりとり時間の削減や手戻り防止に役立てる。2023年度末に電子化に対応する形でJIS改正を想定。民間工事も対象に運用ガイドラインを検討する。」(『建設工業新聞』2022.07.04)
●「公共工事前払金保証事業会社3社(東日本建設業保証〈東保証〉、西日本建設業保証〈西保証〉、北海道建設業信用保証〈北保証〉)の2021年度決算が出そろった。営業収益のうち、収入保証料は前年度比で東保証(11.7%減)と西保証(1.2%減)が減少し、北保証(4.4%増)が増加。東保証は福島第1原発事故に伴う環境再生事業の減少が響いた。北保証は北海道新幹線関連工事などの進展がけん引した。」(『建設工業新聞』2022.07.06)
●「建設関係団体の2022年度定時総会が6月末までにほぼ終了した。多くは対面形式で行われ、3年ぶりに懇親会を開いた団体もあった。建設資材の価格高騰など業界を取り巻く環境は厳しさを増している。参院選も終わり今後は、編成が想定される国の22年度第2次補正予算での公共事業関係費確保が焦点となる。…日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長は、過去に例がない資材の大幅な値上がりに危機感を募らせる。日建連は民間発注者に資材高騰の現状を説明する資料としてパンフレットを作成。経団連(十倉雅和会長)にも会員への周知を要請した。今後は政府による補正予算編成を想定し、公共事業費の確保とともに物価高騰で民間建設投資が落ち込まないような経済対策を求める方針だ。『労務単価引き上げなどの施策が下請も含む建設業全体の賃上げに適切に反映されるよう取り組んでいかないといけない』と話すのは全国建設業協会(全建)の奥村太加典会長。防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策に充てる公共事業費の支出平準化とともに、対策終了後のいわゆるアフター5カ年対策と予算確保の必要性を訴えた。全国中小建設業協会(全中建)の土志田領司会長は、市町村を中心とする地方自治体発注工事の依存度が高い会員の特性を踏まえ、安定経営に向け『最低制限価格率95%以上』を呼び掛けた。依然として予定価格から10%以上低い安値受注を容認している事例がある背景も説明した。」(『建設工業新聞』2022.07.11)
●「住宅の壁や床に使う国産針葉樹合板の最高値の更新が続いている。足元の流通価格は前年同期のおよそ2倍となった。ウクライナに侵攻したロシアから原料の供給が停止された余波で国産丸太の価格が上昇し、物流費の高騰なども響いている。当面は高値で推移するとの見方が広がっている。」(『日本経済新聞』2022.07.01)
●「静岡県熱海市で発生した土石流を受けて、各都道府県が行った盛り土総点検で判明した『不備にある盛り土』の県別の箇所数が日本経済新聞の調査で分かった。国は3月、点検結果として不備のある盛り土が全国に1089カ所あると公表したが、県別の数などは明らかにしていなかった。…盛り土総点検は2021年7月、熱海市で盛り土を起点にした土石流により28人の死者・行方不明者が出たことを踏まえ国土交通省などが各県に依頼した。▽必要な災害防止措置の有無▽廃棄物の有無など禁止事項の確認▽許可・届け出など手続きの有無▽手続き内容と現状の一致――の4項目を点検対象とした。3月公表の点検結果では、全国の盛り土計3万6354カ所のうち1089カ所で4項目のうち1つ以上の不備が見つかった。このうち516カ所では土砂崩れを防ぐための水抜きなど災害防止措置がとられていなかった。国は『都道府県が主体の点検』として県別の数などを公表しなかった。今回、日経新聞が行った調査には46都道府県から回答があった。茨城は回答が間に合わなかった。総点検で不備のある盛り土が見つかったのは39都道府県…『不備のある盛り土』が最も多かったのは、千葉の329カ所。静岡(193カ所)や神奈川(74カ所)が続いた。」(『日本経済新聞』2022.07.05)
●「森トラストは5日、東京23区内を対象とした2021年のオフィス供給量の調査結果を公表した。延べ1万平方メートル以上の大規模オフィスの供給量は61万平方メートルで、過去20年間で最も少ない数値となった。今後5年の供給量も過去20年の平均を下回る見通しで、低水準が続くと見ている。」(『建設工業新聞』2022.07.06)
●「国土交通省と経済産業省は11日、建築物エネルギー消費性能基準を検討する有識者会議を開き、改正建築物省エネ法に伴い新設する分譲マンションのトップランナー制度の目標年度を2026年度などとする案をおおむね原案通り了承した。23年春の施行を目指す。そのほか、大規模非住宅建築物の省エネ基準の引き上げ案なども了承した。省エネ基準の段階的な引き上げに向けて、『分譲マンションの住宅トップランナー基準』『大規模非住宅建築物の省エネ基準』『共同住宅などの外皮性能の評価単位・方法』『住宅の誘導基準の水準の仕様基準』『共同住宅などの外皮性能にかかるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準を上回る等級』などを見直す。」(『建設通信新聞』2022.07.12)
●「東京電力福島第1原子力発電所事故を巡り、同社の株主らが旧経営陣5人に計22兆円を東電に支払うよう求めた株主代表訴訟の判決で、東京地裁は13日、旧経営陣4人に計13兆3210億円の支払いを命じた。朝倉佳秀裁判長は津波対策を怠ったと判断した。原発事故を巡る旧経営陣の責任を認めた判決は初めてで、国内の裁判の賠償額としては過去最高とみられる。」(『日本経済新聞』2022.07.14)
●「岸田文雄首相は14日、首相官邸で記者会見し原子力発電所を今冬に最大で9基稼働すると表明した。国内消費電力のおよそ1割に相当する電力を確保する。火力発電の供給能力も10基増やす。電気代負担を実質的に軽減する新枠組みも打ち出し、電力不足解消へ政策総動員で臨む。」(『日本経済新聞』2022.07.15)
●「安倍晋三元首相が8日死去した。67歳だった。奈良市で参院選の街頭演説中に銃で撃たれた。安倍氏は2006~07年と12~20年の2度にわたり首相を務め、通算の在任日数は3188日で憲政史上最も長かった。安倍氏は8日午前11時半ごろ、奈良市内の路上で演説をしていたところ、男に背後から銃撃された。右首と左胸を負傷し、病院に運ばれた。現場近くにいた警察官が男を取り押さえ、殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。搬送先の奈良県立医科大付属病院は8日の記者会見で、午後5時3分に死亡が確認されたと明らかにした。弾丸は体内から発見されなかった。死因は失血死とみられる。安倍氏は午後0時20分に搬送され、心肺停止状態だったという。奈良県警によると左肩に1カ所、頸部(けいぶ)に2カ所の銃創があった。」(『日本経済新聞』2022.07.09)