情勢の特徴 - 2022年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「新型コロナウイルス禍での経済対策で膨らんだ主要国の家計貯蓄が消費に向かいつつある。内閣府が27日に公表した報告書『世界経済の潮流』によると、日米欧の累積貯蓄額はこの2年ほどで500兆円強に達した。米国は2022年1~3月期にコロナ禍以降初めて消費超過に転じた。積み上がった貯蓄が消費を下支えするとみている。20年1月以降の累積の貯蓄額は、米国で22年3月末までに2.6兆ドル(約335兆円)、ユーロ圏と日本で21年12月末までにそれぞれ0.8兆ユーロ(約115兆円)、52.6兆円となった。合わせて直近の額は503兆円に上る。コロナ対策で個人向けの給付金や失業者への家賃支援が貯蓄に回った。移動制限などで消費の機会が限られたことも背景にある。足元で変化の兆しが出てきた。米国は22年1~3月期に貯蓄が減少に転じた。19年同期と比べた直近の消費支出は6410億ドル増え、コロナ禍以降初めて消費が貯蓄を上回った。ユーロ圏や日本でも貯蓄の増加幅が縮小しつつある。ユーロ圏で消費は286億ユーロ増えた。日本も同様の動きを見せる。」(『日本経済新聞』2022.07.28)
●「住宅ローン業界で、返済中に病気になったり亡くなったりした場合にローン残高がゼロになる団体信用生命保険(団信)の競争が熱を帯びている。ネット銀行を中心に、がん保障を申し込む際の上乗せ金利を安くしたり、特約の品ぞろえを増やしたりする動きが活発だ。固定金利は上昇してきた一方、政策金利に連動する変動金利は優遇拡大による実質的な引き下げ合戦が続く。各行とも限界に近づき、競争の舞台が団信に広がってきた。」(『日本経済新聞』2022.07.29)
●「山際大志郎経済財政・再生相は29日の閣議に2022年度の経済財政報告(経済財政白書)を提出した。今の物価上昇局面は過去に比べ幅広い品目が値上がりしていると分析した。それでもインフレ圧力は米欧より弱い。『デフレ脱却には物価と賃金がともに安定的に上昇していくことが必要」と指摘し、労働生産性の向上を課題にあげた。」(『日本経済新聞』2022.07.29)
●「政府が29日公表した2022年度の年次経済財政報告(経済財政白書)は、日本経済の課題として企業の投資の少なさを指摘した。2000年代以降、利益を貯蓄に回す額の方が多い状況が続いている。成長期待の低下やデフレ下での経営姿勢の保守化が背景にあるとみる。生産性や成長力の底上げに向けて、グリーンやデジタルの分野の投資拡大を促している。」(『日本経済新聞』2022.07.30)

行政・公共事業・民営化

●「東京都北区は、公契約条例を制定した。周知期間を経て、2023年7月1日に施行する。特定労働者への賃金支払いなどの事項を定めており、適正な労働環境を整備し公共工事などの品質を確保する。主な対象は予定価格9000万円以上の工事または製造の請負契約、予定価格2000万円以上の業務委託契約、1年間の管理経費が2000万円以上の指定管理協定の案件となる。23年7月以降、受注者には下限額以上の賃金の支払いに加え、確認書(チェックシート)の提出を義務付ける。区は条例の順守状況を確認するため立入調査を実施するほか、報告書の提出も求める。違反があった場合は、措置命令や契約解除、公表といった罰則措置を講じる見通し。労働報酬下限額は、最低賃金や公共工事設計労務単価、先行する自治体の条例などを参考にして決める。労働報酬下限額を定める公契約審議会は年内に設置する。事業者・労働者団体の関係者、学識経験者など7人の委員で構成する。」(『建設通信新聞』2022.07.19)
●「国土交通省は建設発生土の適正処理を推進する観点で、資源有効利用促進法に基づく立ち入り検査や勧告・命令の対象事業者を拡大する。『年間完工高50億円以上』と規定していた対象要件を『25億円以上』に引き下げる。従来通り一定規模以上の建設業者に限定しつつ、民間建築のうち地下階がある建物を手掛ける建設業者もほぼカバーできるようにした。」(『建設工業新聞』2022.07.21)
●「内閣府は2022年度の国による公共事業予算の執行状況(5月末時点)をまとめた。各府省の報告ベースで予算額は5兆9838億円。うち契約が完了しているのは2兆0466億円で、契約率は34%だった。支出済み額(1149億円)の割合は2%となった。政府全体で、資材価格や物価の高騰への対策として、公共事業の前倒し執行に力を注いでいる。そのフォローアップ調査の一環で執行状況を整理した。結果を踏まえ『例年通り順調に執行している』と分析している。」(『建設工業新聞』2022.07.27)
●「国土交通省と中小企業庁は2022年度の下請取引等実態調査を始めた。全国の建設業1万4000者を調査対象とし、21年7月1日から22年6月30日までに実施した他の建設業者との取引実態を調べる。22年度は、最近の急激な物価高騰を踏まえた価格転嫁や、資材納期の長期化に伴う工期設定の状況を質問に加えた。調査によって建設業法令違反行為などが判明した場合は、是正を指導する。」(『建設通信新聞』2022.07.28)

労働・福祉

●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、週休二日実現行動計画に基づく、2021年度通期のフォローアップ報告書をまとめた。4週8閉所以上を達成した現場は、前年度より4.6ポイント上昇して37.9%となった。このうち、土木は9.7ポイントの大幅増となり、50%に到達した。民間工事が主体という難しさはあるものの、建築も微増ながら1.5ポイント上昇し、28.0%となっている。ただ、21年度末までに4週8閉所の100%達成を目標としていただけに、宮本会長は『もっといくと思っていたが、この程度の数字になってしまった』と落胆を隠さない。特に、民間建築工事での実現の難しさを改めて指摘した上で、国土交通省との連携を一層強め、民間発注者の理解獲得に努める方針を示した。」(『建設通信新聞』2022.07.21)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、建設キャリアアップシステム(CCUS)普及の目標達成に向けた『推進方策2022』を策定した。活動の柱に『施工能力等の見える化評価の活用』を新たに追加した。安全大会や協力会集会などの場を使い、専門工事会社による見える化評価制度の申請などを働き掛ける。」(『建設通信新聞』2022.07.22)
●「技能実習制度を巡り、古川禎久法相は29日の閣議後記者会見で関係省庁と見直しを議論する考えを示した。制度は途上国の若者らに日本の技能・技術を学んでもらうことを理念としているが、人手不足を補う労働力として扱っている実態と乖離(かいり)があるとの意見が出ていると指摘。『長年の課題を歴史的決着に導きたい』と話した。年内にも有識者会議を設置する。」(『日本経済新聞』2022.07.30)

建設産業・経営

●「大和ハウス工業が10月にも戸建て住宅を値上げする。異例となる2年連続の値上げで、引き上げ幅は販売価格の3%以内になる見込み。鉄骨や木材などの価格上昇に対応する。6月には積水ハウスも値上げしている。住宅価格は個人消費への影響が大きい。消費者が住宅ローンの返済に回せる可処分所得は減っており、インフレの波が消費を冷やしかねない。」(『日本経済新聞』2022.07.17)
●「石炭価格の世界的な高騰を受け、セメントの値上げに向けた動きが強まっている。建設物価調査会(北橋建治理事長)によると、直近3カ月で値上げ額の一部が一気に浸透。経済調査会(森北佳昭理事長)の速報では、今年に入り全47都道府県庁の所在都市でセメント価格が1トン当たり1000~2000円程度上昇している。秋以降さらなる値上げに踏み切るメーカーもあり、今後の行方が注目される。」(『建設工業新聞』2022.07.19)
●「日刊建設通信新聞社は、建設コンサルタント業務の売上高上位50社程度を対象に総合評価落札方式に関するアンケートを実施した。回答があった39社の2021年度実績は、受注金額が前年度比6.3%増の1702億8100万円、受注件数は4.9%増の4771件とともに増加した。受注件数を入札件数で割った受注率は全社平均で28.1%となり、前年度から0.3ポイントの微増となった。3割以上の『高打率』企業は1社増えて15社。23社が前年度より受注率を高め、24社は受注金額を伸ばしている。」(『建設通信新聞』2022.07.26)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、法人会員94社を対象とした2022年度第1四半期(4-6月累計)の受注調査結果をまとめた。受注総額は、前年同期比19.9%増の3兆4113億0500万円となった。官公庁工事は低調な水準が続いてるものの、全国各地で大型の物流施設や工場、オフィスなどが計画されている民間工事が全体をけん引している。国内の受注総額は、14.6%増の3兆1748億7200万円。このうち、民間は31.4%増の2兆4505億9700万円、官公庁は20.3%減の7145億4500万円となっている。」(『建設通信新聞』2022.07.28)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は15日、新たな国土形成計画の中間とりまとめを公表した。人口減少や少子高齢化、巨大災害リスクへの対応などの課題に対し、官民共創などを基軸に、デジタル活用による新たな生活圏の構築などを進める。持続可能な国土形成をはじめ、地方から全国へのボトムアップによる成長、東京一極集中の是正を目指す。重点的に取り組む分野として、▽地域の関係者がデジタルを活用して自らデザインする『地域生活圏』の構築▽スーパー・メガリージョンの進化▽産業の構造転換・再配置により機能を補完し合う国土の実現▽国土利用計画――の四つを示した。取り組み推進に当たっては、『官民共創』『デジタルの徹底活用』『生活者・事業者の利便の最適化』『横串の発想』を基軸とする。」(『建設通信新聞』2022.07.19)
●「東京カンテイ(東京・品川)がまとめた6月の首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の中古マンション平均希望売り出し価格(70平方メートル換算)は、前月に比べ6万円(0.1%)高い4705万円だった。値上がりは14カ月連続となる。一方、上昇率は5月(0.2%)を下回り、直近3カ月でみても上昇率は縮小傾向が続く。」(『日本経済新聞』2022.07.27)
●「厚生労働省はトンネルの天井板や発電設備といった特定工作物の解体・改修工事で、アスベスト(石綿)の飛散防止対策を強化する。28日に東京都内で有識者会議を開き、石綿使用の有無に関する調査実施者の要件などを検討した。既に固まっている建築物の要件をベースに、対象範囲や講習内容などの方針をまとめる。特定工作物は種類が多岐にわたるため、特徴ごとにグループ化することも模索する。」(『建設工業新聞』2022.07.29)

その他