情勢の特徴 - 2022年8月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国内のホテルや旅行会社の1割に当たる約5000施設が、新型コロナウイルスの感染拡大後の2年間で閉業した可能性があることが分かった。訪日客の増加で旅行関連の需要は伸びていたが、行動制限が長引いて経営が難しくなった。観光ビザの発給など外国人観光客の入国が徐々に再開されるなか、宿泊業からの人材流出も続いており、受け入れ体制に懸念が出かねない。日本経済新聞とNTTタウンページ(東京・港)で共同調査した。ホテルや旅館、旅行会社など旅行・宿泊関連の施設が対象だ。NTT東日本とNTT西日本の電話帳『タウンページ』の情報を基に、1件の電話番号登録数を1施設とみなした。2022年5月末の登録数は5万3000施設と、感染拡大の初期にあたる20年5月末と比べて5000施設減った。18年5月~20年5月の2年間では約3600施設が減っており、コロナ下で閉業や倒産のペースが4割早まった。」(『日本経済新聞』2022.08.2)
●「各省庁が月末までに財務省へ提出する2023年度予算概算要求で、国土交通省の基本方針案が明らかになった。22年度予算の概算要求時と同じく▽国民の安全・安心の確保▽社会経済活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大▽豊かで活力ある地方づくりと分散型の国づくり―に重点を置く。政府が6月に決定した『経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)』を踏まえ、建設資材の高騰を考慮し必要な事業量を確保すると明記する。基本方針案では頻発する大規模災害に対応した強靭な国土づくりを強力に進める必要性を第一に挙げた。『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』を計画的に推進。経済活動の好循環に向け所管各分野でグリーン化やデジタル化、生産性向上、国際競争力の強化に取り組む。ポストコロナの住まい方や働き方を見据えた地方づくりや東京一極集中から脱した分散型の国づくりを推進する必要性も強調した。」(『建設工業新聞』2022.08.04)
●「政府は企業が事業活動にあたって人権を侵害するのを防ぐため、順守すべき項目を示す指針をまとめる。企業には取引先を含めて差別や児童労働などの行為がないかの特定を求め、予防と解決の取り組みや経緯の公表を促す。日本は米欧と比べて取り組みが遅れ、対応を怠ればグローバル企業の調達先から外されかねない。指針をもとに国際基準での対応を急ぐ。」(『日本経済新聞』2022.08.05)
●「新型コロナウイルス禍からの回復が続いてきた世界の企業業績が悪化に転じた。主要企業の2022年4~6月期の純利益は前年同期比7%減と、20年7~9月期以来7四半期ぶりにマイナスとなった。原材料高や中国の都市封鎖(ロックダウン)、株安などが重荷となり、自動車や電機、情報通信、金融などが振るわなかった。」(『日本経済新聞』2022.08.09)
●東京商工リサーチが8日発表した7月の企業倒産件数(負債1000万円以上)は、前年同月比3.7%増の494件だった。政府の資金繰り支援で件数は低水準に抑えられているものの、増加は4カ月連続。燃料価格高騰の影響で、運輸業の倒産は5カ月連続で増加した。産業別の倒産件数は、運輸業が26件(前年同月20件)。燃料高に加え、人手不足も経営を圧迫した。建設業は96件(同70件)、不動産業は23件(同16件)に増えた。サービス業は155件(同163件)とやや減少したが、このうち宿泊業は10件(同6件)と増加。長引くコロナ禍が足を引っ張っているとみられる。(『しんぶん赤旗』2022.08.10より抜粋。)
●帝国データバンクは8日、原材料の仕入れ価格上昇や、十分に価格転嫁できないことが原因で経営に行き詰った「物価高」倒産が、7月に31件に上ったと発表した。2018年の調査開始以来、単月としては最多。資源や原材料の価格高騰が中小企業を直撃しており、今後も物価高を理由とした倒産が増えそうだ。(『しんぶん赤旗』2022.08.10より抜粋。)
●「外資企業が割安感の強まった日本の不動産買いに動いている。円安の進展で商業用不動産のドル建て価格指数は異例の水準に低下し、香港系ファンドのガウ・キャピタル・パートナーズは今後2年で過去2年間の6倍超の最大5000億円強を投じる方針だ。低金利を背景に、投資利回りをはかる『イールドスプレッド』も安定し、海外勢の投資は続く見通し。円建て価格に上昇圧力がかかる可能性もある。」(『日本経済新聞』2022.08.12)
●「内閣府が15日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.5%増、年率換算で2.2%増だった。新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置の解除で、個人消費が回復して全体を押し上げた。設備投資も伸びた。実質GDPの実額は542.1兆円と、コロナ前の2019年10~12月期(540.8兆円)を超えた。」(『日本経済新聞』2022.08.15)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は1日、業務のダンピング(過度な安値受注)対策について、地方自治体の取り組み状況を初めて見える化した結果を公表した。低入札価格調査制度と最低制限価格制度のどちらも導入していない市区町村の割合が5割を超えた都道府県は、20道府県に上る。工事に比べて導入が大幅に遅れているため、国交省は業務のダンピング対策強化を求める事務連絡を1日付で都道府県と政令市に通知した。」(『建設通信新聞』2022.08.02)
●「国土交通省は3日、有識者会議を立ち上げ、建設業が将来にわたって持続可能な産業となるために必要は施策の方向性の議論を始めた。建設業の持続可能性を妨げる課題として、『資材価格の変動』と『技能者の処遇改善』の2点を提示。資材価格変動への対応は受発注者間の片務性を踏まえた民間工事の契約の在り方、処遇改善への対応では重層下請構造の適正化を含めて議論する。2022年度内の取りまとめを目指す。」(『建設通信新聞』2022.08.04)
●「国土交通省は5日、不正処理のあった『建設工事受注動態統計』について、二重計上があった2013年度以降の公表値を訂正した。過大計上額は15年度と16年度の5.2兆円が最大だった。5月に有識者らの検討会議で決定した推計手法を採用して算出した。検討会議の座長を務めた青山学院大学の美添泰人名誉教授は、5日の説明会で国内総生産(GDP)への影響について『(過大計上は)想定していた範囲内であり軽微と考えている』と述べた。内閣府は15日公表予定の4~6月期のGDP速報値にあわせ、今回の国交省の訂正を反映させる方針だ。」(『日本経済新聞』2022.08.06)

労働・福祉

●「勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部と建設業振興基金は7月29日、建退共の電子申請方式と建設キャリアアップシステム(CCUS)のデータ連携機能を強化した新バージョンの試行を始めた。元請企業または一次下請企業が、現場で働くすべての技能者の就業履歴情報を扱える『一括作業方式』を新設した。これを採用すれば、二次以下の下請企業はデータ連携に関連する事務作業がなくなる。大手ゼネコン数社の現場で1カ月ほど試行し、9月作業分から本格運用を開始する見通しだ。両システムの連携強化によって、民間工事現場への退職金制度の普及による技能者の処遇改善などが期待されている。」(『建設通信新聞』2022.08.01)
●「古川禎久法務相は7月29日の閣議後会見で、外国人技能実習制度の見直しを本格的に検討すると明言した。技能実習生が国内の人材不足を補完する労働力として扱われる傾向があり、人材育成を通じた国際貢献という制度の目的との乖離(かいり)が指摘されている。制度趣旨の徹底や、送り出し時に負う不当な借金の問題解消などを論点に制度の改善を図る。関係閣僚会議の下に有識者会議を年内にも設置する予定だ。建設業関係は技能実習生の受け入れが最も多く、制度見直しによる影響を受けることになる。」(『建設工業新聞』2022.08.01)
●「中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は1日、2022年度の最低賃金の目安を全国平均で時給961円にすると決めた、前年同比の上げ幅は31円と過去最大で、伸び率は3.3%になった。足元で進む物価上昇などを反映し大きな伸び率となる。企業は賃上げに必要な利益をあげるために、生産性の向上を迫られる。」(『日本経済新聞』2022.08.02)
●「厚生労働省が5日発表した毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた6月の実質賃金は前年同月比で0.4%減少した。3カ月連続のマイナスとなった。ボーナスの増加などで賃金自体は伸びたが、円安やウクライナ情勢の影響による食料品やエネルギーの物価上昇に追いつかなかった。」(『日本経済新聞』2022.08.05)
●「建設業振興基金が運営する建設キャリアアップシステム(CCUS)の2021年度決算が確定し、単年度での黒字化を試算より2年早く達成した。技能者、事業者、就業履歴の各登録数も21年度目標をクリアし、順調に伸びている。一時はシステムの存続が危ぶまれたが、料金改定などを経て収支が改善した。累積赤字を依然抱えているものの、CCUSの安定的な運営に向けた一つの節目を迎えたことになる。」(『建設通信新聞』2022.08.05)
●「東京電業協会(西山勉会長)は、2021年の電工と現場代理人の労務費実態調査結果をまとめた。賃金日額(賞与含む)は、今回の電工の代表値である平均年齢42.1歳で2万6079円だった。20年(平均年齢41.6歳)比で2.1%増え、5年連続で上昇した。22年公共工事設計労務単価(電工・東京)の2万6700円(前年比3.9%増)よりも621円低かった。この乖離(かいり)の幅は前回調査で163円の低さまで縮まっていたが、再度、幅が広がったことになる。」(『建設通信新聞』2022.08.08)
●「建設分野の特定技能外国人の受け入れ対象が、建設業に関連する全作業に拡大されることになった。受け入れが可能な業務区分を、全作業がカバーできる▽土木▽建築▽ライフライン・設備―の3区分に再編・統合する。現行の19区分では受け入れ対象が一部の職種に限られるため、専門工事業団体などから職種追加を求める声が挙がっていた。政府が近く改正する建設分野の運用方針に新たな業務区分などを位置付ける。」(『建設工業新聞』2022.08.09)
●「日刊建設工業新聞社が建設関連95社に実施したアンケートで、48%が2022年度の初任給(大学卒、総合職)を引き上げたことが分かった。引き上げた企業のうち、3割弱は1万円以上の引き上げ幅だった。23年度の初任給は現時点で1割強が引き上げる予定。2年連続で引き上げる予定の企業は7社だった。人材獲得競争が激化する中、初任給を上げて優秀な若手の確保につなげる狙いだ。基本給を底上げするベースアップ(ベア)の実施に合わせ、初任給も引き上げたケースもある。」(『建設工業新聞』2022.08.10)

建設産業・経営

●「生コンクリート業界が、建設資材の価格高騰を受けて動き出している。具体的には、東京地区生コンクリート協同組合(東京協組、斎藤昇一理事長)の取り組みを説明した。言及したのは東京協組が検討している、契約当初の価格に拘束される『契約ベース』から実際に生コンを出荷する時点での価格で納入する『出荷ベース』に契約方式を2023年4月以降から変更するというもの。10月中には具体的な内容を公表したい考え。」(『建設通信新聞』2022.08.01)
●「国土交通省は建設業法令順守ガイドラインを改定した。建設発生土など建設現場から生じる建設副産物の運搬・処理経費は、建設業法上の『通常必要と認められる原価』に含まれることを明確化した。元請けや発注者が経費相当額を一方的に削減したり、経費担当額を含めずに請負契約を結ぶことで、通常必要と認められる原価に満たない金額となる場合は、『不当に低い請負代金の禁止』に違反する恐れがあると指摘している。」(『建設通信新聞』2022.08.10)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は、工事現場で発生する公害(苦情)の2021年度実態調査結果をまとめた。振動や騒音などが発生した現場の6割で工費が増加し、3割超で工期が遅延していることが判明。こうした事態を未然に防ぐため、発注者に対し公害リスクを想定した工法や手順などの検討をあらかじめ行うよう呼び掛けている。」(『建設工業新聞』2022.08.10)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「住宅の梁(はり)や柱に使う国産の集成材の流通価格が2年ぶりに下落した。資材高による住宅価格の上昇の影響で足元の新設住宅着工数が伸び悩むなか、輸入材の増加などを受けて木材需給の逼迫感が薄れてきている。国産針葉樹合板も上昇が一服した。高騰が続いていた木材相場に変化の兆しがあらわれた。」(『日本経済新聞』2022.08.02)
●「国土交通省は2日、社会資本整備審議会道路分科会の基本政策部会を開き、2040年を見据えた道路政策ビジョンの実現に向けた道路施策の今後の取り組みをまとめた。技術革新による道路の『進化』と、人々が滞在・交流する空間への『回帰』の二つの方向性につながる各施策について、直近から中長期に実施する内容を示した。」(『建設通信新聞』2022.08.03)
●「復興庁は5日、新産業創出等研究開発基本計画案を公表した。福島復興再生特別措置法に基づき、2023年4月に設立する福島国際研究教育機構が中心となって進める研究開発が産業化、人材育成などの取り組み方針をまとめた。エネルギー分野の開発方針では、浜通りに脱炭素で災害に強い次世代型のスマートシティの実証地区を構築することなどを打ち出した。研究開発は、▽ロボット▽農林水産業▽エネルギー▽放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用▽原子力災害に関するデータや知見の集積・発信――の5分野を基本とした。」(『建設通信新聞』2022.08.08)
●「文部科学省は8日、公立学校施設の耐震改修状況フォローアップ調査の結果をまとめた。福島県の一部を除く施設が対象で、小中学校の校舎や体育館など11万3738棟の耐震化率は、4月1日時点で99.7%だった。耐震化を実施していない建物は、前年同時点から156棟減り288棟になった。高等学校なども含めた公立学校全体で耐震性がない建物は570棟となっている。」(『建設通信新聞』2022.08.09)
●「東京23区内で2022年度第1四半期(4~6月)に公表された大規模建築計画(延べ床面積1万平方メートル以上)は、前年同期と比べて11件多い23件だった。延べ床面積の合計は248.2%増の120万3586平方メートルで、ともに過去5年間で最高水準となった。コロナ禍で働き方や生活様式が変わる中、板橋区や江戸川区といった都心エリア以外でも大規模な開発案件が増えている。」(『建設工業新聞』2022.08.10)
●「(独)住宅金融支援機構は2021年度フラット35利用者調査を実施、その結果を8月2日に公表した。今回、フラット35利用者の取得住宅の内訳について、中古戸建と中古マンションを合計した中古住宅の割合が2004年度の調査開始以来24.7%と最も多くなったことが分かった。」(『日本住宅新聞』2022.08.15)

その他