情勢の特徴 - 2022年8月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「財務省が17日発表した7月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆4367億円の赤字だった。赤字は12カ月連続となり、赤字額は7月としては最大になった。エネルギー価格の高騰や円安のため輸入額が前年同月比47.2%増の10兆1895億円となり、5カ月連続で過去最大を更新した。」(『日本経済新聞』2022.08.17)
●「総務省が19日発表した7月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が102.2となり、前年同月比2.4%上昇した。消費増税の影響があった14年12月(2.5%)以来、7年7カ月ぶりの上昇率で、4カ月連続で2%台となった。資源高や円安でエネルギーと食料品の上昇が続いている。」(『日本経済新聞』2022.08.19)
●「財務省への提出期限まで残り1週間となった2023年度予算概算要求の調整が、各府省庁内で大詰めを迎えている。7月の参院選で与党が勝利したことにより、新たな経済対策の策定と、『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』の3年目分を含む22年補正予算編成の機運も高まりつつある。こうした中、『公共事業の予算が過大で消化しきれていない』と指摘する報道が一部で見受けられる。だが、決算などのデータを点検すると、近年の予算執行に問題はなく、この指摘は一つの側面を捉えたものに過ぎないことが分かる。当初予算と補正予算を合わせた歳出予算額で政府全体の公共事業関係費を見ると、近年は18年度7.6兆円、19年度8.5兆円、20年度9.3兆円、21年度8.1兆円で推移している。18年度スタートの『防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策』と、その後継として20年度第3次補正予算から計上された『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』が押し上げた。予算を消化できていないとの指摘で根拠の一つになっているのが、公共事業関係費の翌年度繰越額だ。決算を見ると、18年度3.2兆円、19年度3.9兆円、20年度は4.7兆円で、増えているのは真実としてある。だが、入札差金の発生などに伴って最終的に国庫へ返納する不用額が、歳出予算現額(歳出予算額に前年度繰越額を加えるとともに、予算費の使用や移替・流用などの増減を加味した額)に占める割合の不用率は、公共事業関係費が20年度に1.1%だった。社会保障関係費の2.5%や一般会計全体の2.1%を下回る。これは20年度に限った数字ではない。公共事業関係費の不用率は14年度以降、1%台で推移している。このデータから、公共事業関係費は繰越によってほぼ消化できており、他の予算に比べて不用率も低水準であることが分かる。…公共事業関係費の繰越額が増えていることの原因に、公共事業の担い手である建設業の人手不足を挙げる報道も一部あるが、実際はどうか。建設投資額はピークの1992年度から3割減少しているのに対し、建設業就業者数は2割減。ピークから四半世紀が経過し、現場施工の機械化などが進んでおり、マクロで見れば施工人員の確保は十分可能と考えられる。」(『建設通信新聞』2022.08.24)
●「国土交通省は25日、2023年度予算の概算要求を発表した。一般会計の国費総額は前年度予算比18.4%増の6兆9280億円。うち公共事業関係費は19.0%増の6兆2443億円を要求する。GX(グリーントランスフォーメーション)とDXへの投資などに配分できる特別枠『重要政策推進枠』を最大限活用。前年度と同じく『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』は事項要求とし、建設資材の価格高騰を踏まえた公共事業の必要経費も予算編成過程で確保を目指す。」(『建設工業新聞』2022.08.26)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、6月に中央建設業審議会が公共工事標準請負契約約款の改正を国土交通大臣に勧告したことを受け、直轄の工事請負契約書などを改正した。直轄工事で建設発生土の搬出先を明確化する条項を追加するとともに、直轄工事・業務の受注者における『役員等』の範囲を拡大するなど暴力団排除の徹底を推進する。9月1日以降に結ぶ契約から適用する。」(『建設通信新聞』2022.08.19)
●「国土交通省直轄工事で『単品スライド』条項の適用が増えている。港湾空港関係を除く地方整備局締結契約で2021年度は23件の工事に適用。▽全体▽単品▽インフレ―の3種類のスライド条項による現行の枠組みができた14年度以降、最多となった。単品スライドは物価変動分を工期末に精算変更する仕組み。22年度は適用工事が大幅に増加すると予測できる。これを見越し国交省は急激な資材高騰に対応できるよう運用ルールを6月に見直している。」(『建設工業新聞』2022.08.25)
●「政府は、官公需法に基づく2022年度の国などの契約の基本方針を固めた。国や独立行政法人など中小企業・小規模事業者に発注する契約目標率は、前年度に引き続き61.0%とする。『パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ』に基づき、公共調達において調達価格が労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を反映したものとなるよう、その対応を明記する。8兆6455億円の22年度官公需予算総額に占める中小企業・小規模事業者向け契約目標額は、5兆2738億円。09年度以来、13年ぶりに目標額が5兆円台となる。契約の基本方針は26日に閣議決定する予定。」(『建設通信新聞』2022.08.26)

労働・福祉

●「日本の行政を担う国家公務員の境遇がなかなか改善されない。裁量の低下や際限のない業務拡大、減らない残業――。実務を担う人手不足も相まって基盤が揺らいでいる。…3人に1人以上が非常勤になった。これが『日本株式会社』を支える国家公務員の実態だ。自衛隊員や裁判官などを除く一般職と呼ばれる国家公務員は2021年7月時点で42万人超で、うち37.2%の15万9千人を非常勤が占める。一般職全体はこの10年で1万8千人ほど増えたもののこの9割超が非常勤だった。省庁別にみると、公共職業安定所(ハローワーク)などを所管する厚生労働者は非常勤の割合が半分を超える。内閣府や環境省は半分近くで、消費者庁も3分の1以上を非常勤が占める。常勤の公務員は簡単には増えない。国は長年合理化目標を掲げる。直近では5年間で各府省庁のいまの定員をおよそ1割減らす内容だ。具体的にはこの5年で減らす人員は3万人規模になる。硬直的な指針は直面する問題へ柔軟に対応する力をそぎかねない。最近では厳しい安全保障環境やデジタル化などすぐに対応しなければならない課題が増えた。正規の職員全体の数は増えないのに対処すべき範囲ばかり広がる。人員と業務量の差を埋めるため、定員数に縛られない非常勤職員に頼る傾向が強まった。企業からの出向者も積極的に受け入れて穴を埋める。常勤、非常勤を合わせた民間出身者は21年10月時点でおよそ2400人おり、10年前と比べて倍増した。公務員の数は1989年の時点で82万人だった。数が見かけ上減ったのは国立大学の独立行政法人化や郵政民営化などに伴い多くが『準公務員』と呼べる身分に切りかわったためだ。準公務員が公共的な業務を代替する実情は変わらない。非常勤の増加という形で組織のいびつさに拍車がかかる。2012年の第2次安倍晋三政権の発足以降、首相官邸主導が進んだ影響もある。」(『日本経済新聞』2022.08.16)
●「土木・建築ともに主要職種の供給力がタイトになりつつある。建設生産システムに直結する労働需給のタイト感を見越し、既に元請けの全国企業も積み上がる手持ち工事残高と、今後も予想される旺盛な需要(建設市場)を前に、これまでのような受注・見積もり競争の激化から一転して抑制的な動きへ転じ始めた。何が起きているのか。7月末、国土交通省が公表した『建設労働需給調査(6月調査)』の結果を前に全国企業の支店幹部はため息をついた。地域別需給で、北海道の土木・建築の型枠工、鉄筋工(建築)の9月見通しがいずれも『困難』となっていたからだ。これまで東北や東京圏への労働力の供給源だった北海道も、いまや札幌を中心とした旺盛な建設需要を前に、労働需給のタイト感は増しつつある。そもそも関東を除く地区の労働需給見通しで供給力確保が『困難』となること自体が珍しい中、ことし4月の調査から北海道の労働供給力の確保『困難』が拡大し始めている。実際、ことし1月からの半年間で、北海道から沖縄までの10地域の型枠工(土木・建築)、左官、とび工、鉄筋工(土木・建築)、電工、配管工の8職種需給見通しで『困難』となったのは、3月調査までで2月調査の関東鉄筋工(建築)だけだった。しかし様相は4月調査から変わる。全国10地区中、関東と北海道だけが4月調査以降3カ月連続して型枠工、鉄筋工の供給困難見通しが続く。…全国的に建設市場が一定規模確保されたことは皮肉にも、全国企業にとって究極の対応策である、仕事量に余力のある協力企業による地域を越えた応援・供給にブレーキをかける結果となった。」(『建設通信新聞』2022.08.19)
●8月2日に答申が出た最賃引き上げの目安額は、全国加重平均31円増で961円としたが、東京などA・Bランクは31円、北海道などC・Dランクは30円と地域間格差を拡大させるものだ。…地方審議会での目安額への上積みが昨年の7県から20道県に拡大。…とくに低額地域のDランク17県のうち、ランク内トップの福島と審議中の岩手以外の15県が上積みを決定。全国最下位820円の高知、沖縄が3円上積みの33円増とし、821円の鳥取、愛媛、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島も2円上積みで33円増。(『しんぶん赤旗』2022.08.19より抜粋。)
●「外国人技能実習生が妊娠や出産をした際に、実習企業や受け入れを仲介する監理団体などから帰国を迫られる不適切な事例がないか、出入国在留管理庁と厚生労働省が、全国の実習生約490人を対象に実態調査を始めたことが20日までに、関係者への取材で分かった。妊娠や出産を理由とした不当な取り扱いは男女雇用機会均等法で禁じられ実習生にも適用されるが、妊娠した場合は帰国するとの誓約書に署名させられる悪質なケースもある。強制帰国や解雇を恐れた実習生が乳児を遺棄する事件もあり、国は調査結果を踏まえ、周知を強化したい考えだ。」(『日本経済新聞』2022.08.21)
●「厚生労働省がまとめた2022年1-7月の労働災害発生状況(速報値、8月8日時点)によると、建設業の死亡者数は、前年同期比3.0%増(4人増)の139人となり、全産業に占める割合は35.2%となっている。また、建設業における休業4日以上の死傷者数は、6.8%増(523人増)の8176人で、死亡・死傷者数とも増加傾向に歯止めが掛かっていない。」(『建設通信新聞』2022.08.22)
●「全国建設労働組合総連合(全建総連)は22日、建材・設備の価格高騰・納期遅延の影響に関するアンケート結果を発表した。工事原価の状況は、53.2%が『かなり上がった』と回答し、44.2%の『上がった』と合わせると、ほぼすべてが原価上昇に直面している。値上がり分の顧客への価格転嫁については、約6割が値上がり分の全部または一部を負担しており、経営への影響が懸念されている。」(『建設通信新聞』2022.08.23)
●「全国建設労働組合総連合(全建総連)は22日、建設工事現場で働く一人親方など9人を対象に実施した聞き取りの結果をまとめた。一人親方などからは『木造住宅の「町場」の現場の安全衛生対策意識が低い』『(安全衛生対策費用について)消費者が理解をしていない』『一般消費者(発注者)の安全対策は難しい』などの意見があった。聞き取りは、首都圏や京都、福岡で働く9人に対して7月下旬に実施。職種は大工や内装、石工、電気工事、型枠で年齢は40-70歳代、主な働き先がゼネコン、住宅メーカー、パワービルダー、町場だった。9人から安全衛生対策の状況、安全衛生対策費用、仕事の受注(請負)方法と契約関係、現場での連絡調整の状況、働き方改革への対応と個人事業者としてのメリットなどを聞き取った。」(『建設通信新聞』2022.08.23)
●「建設現場でアスベスト(石綿)を含んだ建材を扱い、健康被害を受けたとする元労働者と遺族が起こした集団訴訟は23日、大阪地裁で遺族1人と建材メーカー、日本インシュレーション(大阪市)との間の和解が成立した。原告側の弁護団によると、2008年以降に全国各地で争われてきた国とメーカーを相手取った訴訟で、企業側が和解に応じるのは初めて。」(『日本経済新聞』2022.08.24)

建設産業・経営

●「ゼネコン各社の利益面での苦戦が鮮明になっている。10日までに開示された大手・準大手ゼネコン26社(単体27社)の2023年3月期第1四半期の連結決算は全体の半数を超す15社が前年同期からの『営業減益』で推移。かねて指摘されている受注段階での採算の悪化に、物価高騰(資材価格の上昇)がリスク要因となって追い打ちをかける構造が続く。」(『建設通信新聞』2022.08.17)
●「上場ゼネコン大手4社(鹿島、大林組、清水建設、大成建設)の2022年4~6月期決算は2社が増収増益となった。鹿島は増収減益、大林組は減収減益。業績の先行指標となる単体受注高は3社で増加した。国内大型再開発や工場が活況で、老朽化した社会インフラの更新工事など豊富な受注案件があり受注環境は良好との見方が強い。一方、首都圏の大型案件で受注競争の激化が予想される。」(『建設工業新聞』2022.08.18)
●「建設物価調査会(北橋建治理事長)は18日、最新の建設物価調査リポートを発表した。建設工事に使用される資材の総合的な価格動向を示す『建設資材物価指数』の7月期は、建設総合全国平均で134.1と前月比で1.4ポイント上昇した。2020年8月から24カ月連続のプラスとなり、最高値を更新した。」(『建設通信新聞』2022.08.19)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「マンションの管理会社が理事会に代わってマンションを維持管理する『第三者管理方式』の導入が広がっている。三井不動産や住友不動産が試験導入しているほか、管理大手の長谷工コミュニティ(東京・港)も本格展開する。住民は理事を務める負担から解放される半面、住まいの維持管理への関心低下を懸念する声もある。共同住宅のマンションは居室はもちろん、共用部も含めて適切に維持管理していくことが欠かせない。ほとんどのマンションは管理組合内に置かれた理事会が、管理会社や工事会社との折衝に当たる『理事会方式』を採用している。なかでも、管理組合の理事長は『管理者』と呼ばれ、マンション管理の最高責任者と位置づけられる。第三者管理方式は、理事長に代わって管理会社の社員が管理者となってマンションの維持管理に責任を負う。組合総会の開催や修繕計画の策定、修繕積立金の管理、居住者への報告といった理事会のすべての業務を実質的に管理会社が担うことになる。住民は管理会社が適切に業務を進めているかを監督し、組合総会などで管理会社の提案に賛否を示すだけでよくなる。…第三者管理方式を採用すると、居住者は煩雑な理事業務から解放される半面、『理事会方式のマンションに比べ、維持管理への関心低下や管理会社への監視の目が甘くなる懸念がある』(横浜市立大学の斉藤広子教授)。」(『日本経済新聞』2022.08.19)
●「岸田文雄首相は24日、次世代型の原子力発電所について開発・建設を検討するよう指示した。原発の新増設を想定しない東日本大震災以降の方針を転換し、年末までに具体策をまとめる。再稼働する原発は2023年夏以降に最大17基へ増やし、中長期的な電力確保をめざす。」(『日本経済新聞』2022.08.25)
●「台風など大雨による浸水被害が大きく避難所を運営できなくなった自治体から、ほかの自治体に避難する『広域避難』の計画策定が遅れている。内閣府によると、具体的な計画のある自治体はゼロ。行政区域を越えて連帯を強化し、住民が円滑に避難できる体制をつくる必要がある。」(『日本経済新聞』2022.08.29)
●「国土交通省は、流域治水の取り組みをさらに加速させる。流域全体の治水安全度の向上を目指し、本川や支川、上下流一体となった流域治水型の河川整備を推進する。特定都市河川の候補箇所を公表して指定を拡大し、特定都市河川流域の貯留機能の保全などの取り組みを強化する。気候変動の影響で激甚化する災害からの安全安心の確保に向け、流域治水で目指すあらゆる関係者の協働に向けた事業や制度改正を推し進める。」(『建設通信新聞』2022.08.29)

その他